クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 アドベント・オブ・チルドレン   作:オービタル

65 / 68
第六十話:黄昏の王女

 

一輝達がいる大陸【ローウェナ大陸】から西方の彼方にある大陸【モルドゥレイ大陸】の南部、荒涼とした岩石砂漠地帯「ダラマスカ」を領する交易都市国家「ネイブラスカ」で、黄昏の猫人は商業市場を見て回っていた。彼女は姿を身を隠し、ネイブラスカの王政庁から逃避行していた。視覚を失った彼女は聴覚と嗅覚を駆使しながら、人混みの中を歩く。

視覚が悪い事を良い事に、柄の悪い悪党に絡まれたり、金貨をせびりに来る奴等に取り囲まれることもあったが、彼女を相手に数十人相手は不足すぎる。その事に行政府達は彼女を『失願の獣人』と呼ぶ事になった。彼女はあらゆる野党や蛮族を殺し続け、さらには北方、南方の大陸【ウォーデラン大陸】と【アシュラミア大陸】の幻術皇と貴族評議会会長を暗殺し、高額な賞金首を持った最重要指名手配犯へとなっていた。

彼女は現在、ローウェナ大陸とアシュラミア大陸の中間部【ニルガル】の隠れ家に身を潜んでいた。

 

「行かないで……行かないでくれ!」

 

悪夢に魘されている彼女は、夢の中で誰かに問いかけていた。

 

「私を……見捨てないでくれ!!一輝っ!!!!」

 

愛する恋人…一輝に思いを告する彼女……シレーヌ・アステリアは悪夢から眼を覚ます。

 

「っ!!!!」

 

目を覚ましたシレーヌは身体中の汗を水浴びで流し、私服に着替える。

 

「貴族の豚共に取られた目が……疼く」

 

シレーヌは両眼を抑えつけ、過去の事を振り返る。

四年前、彼女がこの星に漂流し、未知の生命体に家族や友人、民を食い殺され、放浪していたところをノーザブル烈王国の奴隷商に売り飛ばされ、豚貴族に体を弄ばれ、自身や誇り、同じ奴隷であった者たちからの差別されていく運命であった。そして一年半が過ぎたある日、豚貴族の娘が婚約者に夫婦となると、シレーヌの綺麗な瞳を宝石の代わりとして、拷問具で両眼を取った。彼女の両眼は神秘の宝石ラピスラズリの如く、色彩な色に満ちていた。そして令嬢は結婚式を挙げ、幸せになったが、両眼を奪われたシレーヌは涙も流さず、仄暗い牢の中で一晩中泣いたと……。

愛、希望、勇気を失った彼女は館から脱獄し、貴族達を皆殺しにしていった。しかし彼女の両眼を指輪として身に付けていた令嬢とその夫はいなかった。そして彼女は誓った……誇りと純潔、自身、愛、希望、勇気を崩した貴族達と…両眼を奪い、それを婚約者の誕生日プレゼントにしたあの女に復讐すると……。

 

シレーヌは疼く両眼の痛みを抑えつけ、水と盗んだ痛み止めの薬を飲む。

 

「そろそろ、ネイブラスカの食糧調達しなきゃ……」

 

シレーヌはネイブラスカの食糧調達へと向かい、ワイン商や購入し、立ち去ろうとしたその時、衛兵が最近の噂話をしていた。

 

「最近、東方の【ラダトリス大陸】で奇妙な輩が現れてよ。」

 

「輩?」

 

「何でも……【七つの大罪】って言う七人組の蛮族らしいんだ。その七人はそれぞれの罪を背負い、魔王を名乗っていると。」

 

「へぇ〜」

 

「噂ではエレボス帝国に巨大な蜘蛛の化け物が向かって来たと同時に、イリアス神聖国に聳え立つ世界樹からあのグレイセスが舞い降りたとの事だ。」

 

「グレイセス!?あのこの世界を創生した龍の神の事か!!?」

 

「声が大きい!」

 

「あ、すまん……それで?」

 

「他にも赤と白の天使も舞い降りて、グレイセスと共に蜘蛛の化け物を倒したってよ」

 

「……それが?」

 

「その七人の大罪と、グレイセスや赤と白の天使は繋がっていて、予言や言い伝えにあったネフィリムとの戦いが始まるって事になるんだよ。」

 

「おいおい……それじゃヤバいだろ?」

 

「だからお前にこうやって密かに話し、これから俺たちはラダトリス大陸のノーザブル烈王国やエレボス帝国、ソルヴィフ王国、ジャッカス自由商業連合で各国に兵を招集しているらしいんだ。」

 

「マジかよ……休暇がなくなるなぁ」

 

「しょうがない」

 

兵達は店から出て行った事を確認したシレーヌは、メモ帳で情報を記録する。

 

「七つの大罪……グレイセス神…赤と白の天使…化け物……そんなの、私には関係ないね……」

 

シレーヌはそう呟き、店を出る。

商業市場はいつもみたいに賑やかであった。シレーヌは路地裏に隠れ潜んでいる親に捨てられた孤児達に食糧を分けていた。

 

「ありがとうお姉ちゃん♪」

 

「フフ♪」

 

シレーヌは微笑み、ギルドへと向かう。ギルドには複数の依頼書が提示されており、シレーヌはラダトリス大陸での招集を受ける事に。帰って隠れ家で考え事をするシレーヌは瞑想で緊張を無くす。

 

「…………」

 

翌日、ラダトリス大陸行きの船に乗り、傭兵団として航行して行く。船は何事も無く航行し、ジャッカス自由商業連合に到着する。シレーヌはノーザブル烈王国の傭兵団として招集され、何人かの傭兵達と共に、向かう。

 

「また……生き地獄の始まりの場所へと戻るのか…」

 

シレーヌは呟き、ノーザブル烈王国へと向かうのであった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。