クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 アドベント・オブ・チルドレン 作:オービタル
訓練を始める前にサリアから急遽配給された男性ライダースーツ(パイロットスーツ)を渡されて着替えたグレイス。カラーリングは赤と黒のツートンでグレイスは結構気に入っていており、訓練場へ向かう途中……。
「ん?……ブッ!?」
どういうことか、アンジュが一糸纏わぬ姿をしておりドアを叩いていており、グレイスは思わず顔を真っ赤にして手で顔を隠し、見ないようにする。
「何やってるんですか!?」
「キャッ!? み!!見ないでください!!!」
アンジュはグレイスの姿を見るとすぐにしゃがんでなんとか裸姿を隠す。
「ご!ごめん!!!」
グレイスは慌てて後ろを向いて、そのまま女子更衣室のドアを叩く。
「副隊長!グレイスです!」
グレイスの返答に答えるかのようにサリアが顔を出してきた。
「あら、終わったの?」
「終わったの………じゃないです! なんでアンジュさんが素っ裸で出ているんですか?!」
「簡単よ、その子が『そんな服を着るくらいなら、裸になった方がマシです!!』っと言ったから、その要望に応えただけ」
アンジュのパイロットスーツを見ると血痕がある。
前の持ち主のか、女性だったら着たくもないし呪われそうだ。
結局、独りで着替えたことの無いアンジュはサリアの手伝いで着ることができた
そしてアルゼナルの医務室
「あ~らこんなに真っ赤に腫れ上がっちゃってぇ~。ジュクジュクになってるじゃない~」
医務室の医者が何やら腕の治療を受けているジルのを見て言う。
「ぐ…痛っ!?」
「あら痛い?痛い?痛いよねえ!」
ふざけているのか、人が痛がっている様子を見て危なく興奮しているその医者。
「つぅ…酒臭いよ! マギー!」
「あたっ!? ゴメンねえ~」
ジルの腕を治療しているアルゼナル軍医『マギー』のおふざけにジルは鉄拳を振り下ろす。
「たくっ…ジャスミン、そっちはどうなの?」
「外側のボルトが全部イカレちまってる。ミスルギ製の奴に替えとくけどちょっと値が張るがね」
「指令部にツケとくよ」
「毎度あり!」
ジャスミンがジルの義手の修理して結果を伝える。
ジルの義手をマギーが取り付けて、ジャスミンは何やら呆れる様子でジルに言う。
「だけどもうちょいデリケートに使って欲しいものだねえ、そいつはアンタ程頑丈に出来ちゃいないんだ」
「悪いね、じゃじゃ馬が暴れてさ」
ジャスミンに申し訳なさそうに言うジルは立ち上がって煙草を吸い始める。
「ああ、例の皇女殿下かい?」
「いいのかねぇ?皇女殿下と"あの男の息子"を第一中隊なんかにブチ込んじゃって?」
「…それでも駄目なら死ぬだけだよ」
っと不敵に笑いながらそう言うジル。
アルゼナルの訓練所、既に新人たちが訓練を開始していた。
「パラメイルデストロイヤーモード起動!シュミレーター起動!フリーダムチャンバー、チャージ完了!」
「フリーダムチャンバーチャージコンプリート!」
「アレスティングギアリリース!」
「あ…アレスティングギアリリースコンプリート!」
ココとミランダがヒルダとヴィヴィアンの指示に従い、確認を行う。その中でグレイスとアンジュはサリアからマシンの説明を聞いていた。
「へぇ~、これでドラゴンと戦うのですか?」
「そう、『パラメイル』、私達ノーマの棺桶よ」
「棺桶か……」
「あの、一体何をさせようと言うのですか?この私に……」
アンジュは頭が混乱している状態でサリアの棺桶発言には耳に入ってなかった。
「最初から出来るなんて思ってない。後は飛ぶ感覚を体に叩き込んで」
「了解です」
グレイスは真剣に承知し、サリアは二人のシュミレーターのドアを閉める。
「リクエストリフト・オフ!アンジュ機、レオン機、ゴーフォールド!ミッション07スタート!」
サリアの号令で景色が一変する。
「うわぁっ?!」
「うきゃああー!?」
次の瞬間、シュミレーター内部に凄まじいGが二人に襲い掛かってきた。
「す!凄い!! シュミレーターでこれ程のGが来るんだ?!」
「な、何なのですかコレは!?」
シュミレーターの高性能のシステムにグレイスは驚きながら踏ん張り。一方のアンジュは悲痛の声を上げ、操縦桿を手離してしまう。
「アンジュ、操縦桿から手を離さない!上昇!そして旋回! グレイス、ちゃんと集中して前を見て!実戦はこんなもんじゃないわよ!」
サリアの更なる号令により機体の動きが変わる。アンジュは必死についていこうと踏ん張る中、グレイスは激しいGを徐々にコツを掴んでいく。
「最後に急降下訓練に移る!降下開始!」
「急降下? うわっ!?」
「ひゃああああー!?」
急降下のGにアンジュの身体が思わず浮いてしまう。
「急いで!地面に激突してしまうわよ!機器を上げて!」
サリアは万が一の時の為に緊急停止ボタンに手を伸ばそうとしたが……。
「…良し! コツはリベリオンと同じだ!!!」
グレイスは操縦桿を握り、アクセルの一気に回し、機体を急激に上昇させて停止する。
「(この感覚は…、エアリア!!)」
一方のアンジュもスポーツのやり方に似てすぐに機体を立て直し、遥か上空で停止したのを確認した。
「な…何なの?この二人…」
サリアは初めてのはずの二人のシュミレーション結果に驚愕の意を隠せなかった。
そして訓練を終えてアルゼナルの浴室でレオンを除くアンジュ達は汗をシャワーで流していた。
「いやあー、大したもんだな。グレイスはともかく、皇女殿下は初めてのシュミレーターで漏らさないなんてなあ!なあ、ロザリー?」
「っ!い、いえ私の初めてはそのですね…」
ゾーラに言われたロザリーはそれに視線を逸らし目が泳ぐ。
「気に入ったみたいねあの子と彼が…」
隣でロザリーの代わりに返答するヒルダ。
「ああ、悪くない…」
そう笑みを浮かべるゾーラ。
「ねえねえ!サリア! アンジュとグレイスって何? 超面白いんだけど~♪」
ヴィヴィアンにそう質問され一番端側でシャワーを浴びているアンジュと今は勿論この場にはいないグレイスの評価に思う。
「…2人とも、凄いとしか言い様がないわね」
サリアはそっと、そう呟くのであった。
その後、グレイスはサリアに連れられて、寝泊りする部屋へと案内された。部屋に到着したグレイスはサリアから鍵を渡される。
「後、これで最低限必要な物資は揃う筈だから」
「あぁ、ありがとうございます」
サリアから最低限の金を渡されて、グレイスに言う。
「それと起床は明朝5時だから、寝坊しないようにね」
「分かりました」
そう言ってサリアはその場を去って行き、グレイスは鍵を使って開けて部屋に入る。
グレイスは部屋に入るとそこには殺風景な部屋があった。1つしかない窓を中心に棚とベッドとタンスが対になる様に並んでいた。グレイスはベッドに寝転がり、これからの事を考える。
「(あれから、全然ラルスと話していないなぁ……ラルスは何をしているんだろう?)」
数日後、格納庫でエマがジルにレオンとアンジュの適性審査の結果を見せる。
「例の新人達ですが基礎体力、反射神経、近接対応能力、更に戦術論のリタイヤ全てにおいて平均値を上回っております。特にグレイスはアンジュより遥かに上回っています。」
「優秀じゃないか♪」
「『ノーマの中』では、ですね」
エマの皮肉にジルは見て、エマは敬礼し別れた。
一方、ジルは再び移動し、格納庫に来ていた、そこにはリベリオンことラルスがあり、メイが点検を行っていた。
「メイ。フィオナが乗っていたパラメイル、リベリオンといったか。何かわかったか?」
「あ、司令。この機体、機動性や出力が本当に他のパラメイルとは比べ物にならない位高いよ……」
『当然です。私が補佐に付いていますから……それにグレイス様以外のライダーは許可なく乗せられません』
「それは分かっている。無断で凄いなぁ、ラルスは…コンピュータなんでしょ?この機体について、何か凄い事知っているの?」
『分かりません……このリベリオンを開発したマスターにご訪ねてください。』
「え〜!そんな〜!」
「パラメイルの操縦敵性…特筆すべきものがある…か。ならば…」
そう言うジルはアンジュから取った指輪を取り出して見て、そして彼女の目の前に一機のパラメイルが格納されていた。それは、所々錆付いており年季を思わせる機体でもあった。