地獄の中を愛馬と共に駆ける。味方の残骸を踏み越え、金の為に人を殺す。
轟音と共に、大地が人を吹き飛ばしながら抉られた。乾いた発砲音と同時に、隣に居た戦友が倒れ、絶叫し、大地を赤く染めた。
舌打ちする暇もなく、己にも放たれていた銃弾を両手に構えた独特の形状の鎌で流す。行商人に聞く遠く極東の戦士が成すと言われる神業と寸分違わぬ業を十、二十と行う我が身は達人などではない。単に銃口から弾道を計算し、直感と反応によって鎌をそこに『置く』のみだ。そうすれば銃弾は刃に沿う形で進路を変え、自分の体に傷をつけることはない。例えば複数回、高速で攻撃が出来たとしても必ず相手に数発は当ててみせると言うくらいには、己の動体視力には自身があるのだ。
周りの味方に銃弾が飛ぶ事もあるが、まぁ、後で酒でも奢れば許してくれると思いたい。
弾いた反動で回転させた鎌で、走り抜ける途中に横切る兵士4人の首を刎ねる。その勢いで、槍の様に尖った鎌の先で更に2人の兵士の首を突き、小休止がてらに銃弾への盾とする。
大砲、銃。これらの登場によって進化する戦場において、未だに鎌と言う評判の悪い武器を扱うのは己のみであろう。周りの戦友も「何故貴様は鎌、などという扱いに困る武器を使うのだ?」と問われる事は多い。その度に特に理由はない。強いて言うなら、肩を回すストレッチついでに出来るからだ。と返して苦笑させるのもご愛嬌。
確かに鎌、と言うのは戦いの中において取れる戦法が少ない。だが、それが問題になるのは自身より腕前のある、若しくは同等の相手との戦いの中のみだ。寧ろ、鎌だと侮った相手の首を刎ねるのは容易い。
愛馬と共に戦場を駆け、首を刎ねる。騎士としては些かアレなのかもしれないが己の生はこれで良いのだろう。強者との戦いは望まず、己の心のままに使命を全うする。英雄になど到底届かない、高潔さの欠片もない人生。生来面倒臭がり、私欲ともあまり縁のない自分には案外お似合いなのかもしれない。
ああ…となればきっと、必ず、この身が戦場に果てるとすれば。
それはそれは、呆気ないとしか言い様が無い死に様なのだろう。
そんな思考と共に鎌を振るい、地面に落ちる首の数を増やしていく。流石に、疲労が酷い。しかも少し前に出過ぎたかもしれない。流石に味方を巻き込む形で砲撃など行わないとは思うが、多方向から銃撃でもされれば一溜りもない。となれば一度戻って味方と足並みを揃えなければ―
そんな思考に気を取られていたからか。私はそれの接近に気付かず…すぐ傍で、風切り音がした。