ラビットハウスの常連プロゲーマー(仮)   作:そらなり

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どうも、そらなりです。

今回はちょっとばかし私のわがままなのかな? オリジナル回になります。

普通に物語を紡いでいたらおそらくやることはないだろうということをやりますのでお楽しみに!


ラビットハウスでアクションゲーム!

 昨日、ゲームに興味があると言っていたチノちゃんにプレイしてもらうべくラビットハウスにやって来た。

 

 それにココアちゃんのラテアートを手伝うためにもゲームを持って来るって約束しちゃったわけだし、早めに持って来るに越したことはないだろう。俺はカバンにゲーム機本体を4つとゲーム本体を3つ持ってきた。リゼちゃんも仲間はずれになっちゃうだろうし、カセットがなくても一緒にプレイできるようなゲームを持ってきたわけだし、これでみんなが楽しめるようになるだろう。

 

 今がまだ、中学校も高校も始まってない現状。時間に余裕があるのはしばらくこの春休みの間だけ。だから、この期間に紹介しておいた方がゲームに持っていた興味をよりのめり込ませると思った。

 

「チノちゃーん。ゲーム持ってきたよー」

 

 店のドアを開けてそこにいるであろうチノちゃんに俺は声をかける。……そういえば、チャット目的とコーヒー目的以外ではこの店に来たことないな。まぁ、喫茶店だから当たり前と言えば当たり前か。

 

 この時間の店内に客はかなり少ない。だからこの時間を選んでここに来たんだけど、今この店内にいるのは俺と、いると予想していたチノちゃんだけだった。……あれ? ココアちゃんは?

 

「あ、吉田さん。わざわざありがとうございます」

 

 店のカウンターで、宿題をしていたチノちゃんが俺が来店すると同時に立ち上がり俺のほうにとことこと駆け足気味にやってくる。実際、チノちゃんはゲームとかそういうのはあまりやらないというか苦手だと思っていたのに、こっちに駆けてくるチノちゃんの目は子供のようにきらめいていた。

 って、チノちゃんはまだ中学生なんだから子供で当たり前か。……あれ? チノちゃんに睨まれてる?

 

「いや、昨日言ったでしょ? ココアちゃんにもラテアートの練習を兼ねたゲームを持って来るって。せっかくだからチノちゃんにやってもらいたいゲームも持ってきたんだ」

 

 睨まれているように感じたからそれを誤魔化すかのように寄ってくるチノちゃんに昨日話していた内容を思い出してもらおうと話しかけた。

 

「あ、それも助かります。ココアさん、熱心なのはいいんですが、コーヒーの処理に困ってまして……」

 

 すると俺の目論見は成功したみたい。チノちゃんから出る鋭い視線がなくなるのを感じた。そしてチノちゃんの話を聞いて、まだココアちゃんと知り合って1日しか経ってないのにらしいなと思ってしまった。

 

「アハハ……。そうか。もうそんなに頑張ってるんだ」

 

「はい。ただ、コーヒーの飲みすぎで夜寝れなくなってしまっているせいで、今はちょっと休んでます」

 

 それにチノちゃんの言ってることも分からなくもない。コーヒーに含まれているカフェインはおそらく誰もが知っている眠気を覚ます効果を持つ物だと思っているだろう。

 それもそのはず。確かにその効果はあるのだから。けど、カフェインというものは眠気覚まし……覚醒作用のほかに解熱鎮痛作用や強心作用、利尿作用も含まれているのだ。だからカフェインの入った飲み物を飲んだ後や錠剤を飲んだ後はトイレに行きたくなったりするんだ。まぁ、トイレに行きたいと脳が命令を出すと眠気どころじゃなくなるといえば眠気覚ましを後押ししているのかもしれないけど、こういう効果を持っているということはなかなか知られていない。

 

「それは……仕方ないね。じゃあお店も暇なようだし、少し一緒にゲームをしようか?」

 

 それに、もう寝てしまっているのであれば、今は寝かしておく方がいい。眠いのに無理やり起こして、カフェインに頼られるとカフェインの過剰摂取によるカフェイン中毒で死に直結してしまうかもしれない。この先の未来がある中学生、高校生がそんな風にはなって欲しくない。

 

 そんな口実もあり、店が本当に暇そうだったからチノちゃんのゲームを教えるべくいつも座っている席へと腰かけた。

 

「そうですね。ゲーム、教えてください」

 

 俺が座った席に一緒に来たチノちゃんはそう言って俺のところに来る時にしていたキラキラした目をしていた。余程このゲームに興味があるようだ。……大丈夫。難易度も最初はそんなに難しくないし、アクションゲームだからやればやるほど上手くなる……。

 

『あのチノが、ゲームに興味を持つとはな……』

 

 ちょっとだけハマってくれるか不安になっていた俺をよそにティッピーさんがチノちゃんの変化にしみじみとしていた。確かに、俺もチノちゃんがゲームに興味を持つのは意外だと思ったけど、俺にとってそれは嬉しい誤算だった。一緒にプレイするゲーマーが増える程ゲーマーにとってうれしいことはない!

 

「おじいちゃんは黙っててください」

 

 だけどチノちゃんは目の前のゲームに夢中すぎてティッピーさんの声が邪魔だったみたい。辛辣にティッピーさんに告げるチノちゃんはまさにゲーマーの目をしていた。ただひたすらに目の前のゲームのことだけを考える集中力の塊の目。

 

『ガーン……』

 

 ただ、チノちゃんのティッピーさんへの言葉はかなり、ティッピーさんにダメージを与えたみたい。目から涙を流してるよ……。しかも、ブツブツと『これが反抗期というやつなのか……』とか『わしのチノが……』とか言ってる。本当に悲しかったんだろうな……。

 

 まぁ、それは俺には関係のないことだからティッピーさんには自力で復帰してもらおう。きっとチノちゃんが一言いえば元に戻るだろうし。今はゲームの操作説明をしないと。

 

「それで、今日持ってきたゲームがコレ。『超赤兄弟(スーパーレッドブラザーズ)』複雑な操作がないから簡単にできると思うよ」

 

 持ってきたゲーム機は携帯用ゲーム機版のもの。初代の赤ブラザーズよりも操作する数は多くなったものの、手軽で視覚的にもどんなことが起こっているのかが分かりやすい今作を選択した。

 

 専用ゲームハードであるVSは、2つ折り出来る携帯のようになっていて上画面とした画面が付いている。特にした画面はタッチパネルにもなっていてした画面を使うことによってよりゲームを簡単にプレイすることが可能になった。

 そしてした画面の左側には十字キーが付いていて右側には時計の3時のところにAボタンそこから時計回りで3の倍数のところにB、Y、Xの順でボタンが並んでいる。

 さらにはゲーム機を持つと両手の人差し指にもボタンがあるのが分かる。そこがR、Lボタンで左右に対象になるようについていた。他にも右側の下にstartボタンとselectボタンがあるが今はそんなに使うわけでもないので省略しよう。

 

 世界観としては赤と緑の兄弟を敵対視する黄色と紫の兄弟が甲羅に棘のついたカメを巧みに利用し、赤と緑の兄弟の幼馴染の桃色の姫を誘拐されてしまう。その幼馴染を取り戻すために赤の兄と緑の弟が地を駆け、海を泳ぎ、空を飛ぶ。そんなゲーム。

 

 けど、世界観というものは今はチノちゃんに説明するのは後回し。とにかく操作できるようになってからじゃないと話にならないから、まずは操作説明っと。

 

「まずはこのゲームを起動しよう」

 

 そのためにはまず起動してソフトを始めないとプレイするのも出来ない。

 

「はい」

 

 うきうきした様子で俺からチノちゃんは受け取ると、電源を探し始める。同じゲームを気を持ってきているからそこを押して一緒に電源を付ける。

 

 電源が付くとまずはプレイするゲームを選ぶ。今は1つしかないから選ぶようなことは簡単に進むことができる。そして軽快な音楽が聞こえ始め、タイトル画面が始まる。タイトルに『ボタンを押してください』と表示されていたおかげでチノちゃんは特に考えることなくボタンを押した。

 このゲームはセーブデータが3つ作れるから空のデータ1をチノちゃんに選んでもらう。すると少しだけムービーがあって、それもすぐに終わった。

 

 さぁ、ここからチノちゃんのゲーム人生の始まりだ!

 

 最初に1-1のステージを選択してもらってプレイ画面に移動する。画面の向こうにはプレイを始めると右上に制限時間とスコアが、左上には残機、獲得コインが表示される。そして地面の上に立って微動だにしない1人の男がいた。これがチノちゃんが操作するプレイヤーキャラクターのレッドだ。まずはこのプレイヤーキャラを移動させてみよう。

 

「基本的な操作を教えるね。まず左の十字キーの左右で移動ができるよ。やってみて」

 

 このゲームを選んだのは操作性の簡単さと持ち運びができるという手軽さを考えてのもの。十字キーと言われれば今までゲームをしたことがなくても形でどこのことを指しているのかは分かる。

 

「は、はい」

 

 俺の説明通りおぼつかない指ではあるが十字キーの右を押したチノちゃんのプレイキャラは右へと歩き始める。

それを確認した俺は、次に必要な動きをチノちゃんに教える。

 

「そして移動しているときに右のXかYのボタンを押すと走ることができる」

 

 制限時間があるため、早く移動できるダッシュは必要不可欠。それにテクニックも必要ないから移動ができれば十分使いこなすことができるはずだ。

 

「XかY……。あ! 速くなりました!」

 

 さっきと同じように今度は右でYボタンを押して移動を始める。すると先ほどより全然速い速度でプレイヤーキャラは移動を始めた。

 

「うん! 良い感じ。おっと、そろそろ敵の倒し方を教えるね。画面に怖い顔したキノコみたいなのが来たでしょ? それにあたると死んじゃうんだ」

 

 しっかりできたことが確認できたから次に必要な操作の説明。現状敵と遭遇すれば必敗。敵は横の衝撃には圧倒的な強度を持っているため、なんとかして倒す手段がないといけない。だけど、その倒す方法をチノちゃんはまだ知らない。

 

「え!? じゃ、じゃあどうすればいいんですか……?」

 

 だから絶対に負けてしまうということを聞いたチノちゃんはどうすればいいのかわからなくなってあわあわとゲーム機を上下に振っていた。そんなことをしても意味はないのに、そんなチノちゃんを見ているとどうしてか微笑ましくなっていた。

 

「倒される前に倒すか避けるしかない。BかAボタンを押してみて?」

 

 そんな不安そうにしているチノちゃんに解決策を教える。敵は横の衝撃にはプレイヤーが叶わないほど強いけど、プレイヤーが与える上からの衝撃には基本的に防御手段がない。だからジャンプして避けるか、潰す。

 

「B……。あ! 飛んだ!」

 

 俺の説明をしっかりと聞いてくれるから押してほしいと言ったボタンをすぐに押せるチノちゃんはそこで新しい動きをするキャラクターをキラキラした目で見つめていた。

 

「そう。そのボタンを押すとジャンプすることができるんだ。そして着地するときに敵を踏んでみて?」

 

 ジャンプボタンを押すことによって飛び跳ねたレッドを操作してチノちゃんはやってきたいかにも敵だと言わんばかりの茶色い何かに向かって着地を始める。

 

「踏む……。あ! 潰れました」

 

 今のチノちゃんの中には俺が説明したことを実行することに集中をしている。そのおかげがチノちゃんはなかなか呑み込みが早く、これならすぐに動きをマスターすることができるだろう。

 

「そうそう。いい感じだよ、チノちゃん」

 

 しばらく歩いたり、走ったりジャンプしたりを続けていると不意にチノちゃんのキャラクターの動きが止まった。どうしたのかとチノちゃんに尋ねようとしたら今度はチノちゃんのほうから俺に話しかけてくる。

 

「あの……一つ聞いてもいいですか?」

 

 どうやらわからないことがあったみたい。それもそのはず。今のは基本操作でゲームの全部を教えたというわけではないから。

 

「何かな?」

 

 一体どんなことが聞かれるんだろうと少しワクワクしながらチノちゃんの質問を待った。人にゲームを教えるのなんて久しぶりだから結構ワクワクしてるんだよね。

 

「さっきからずっと空中を浮いている黄色のブロック?みたいなものは何なんですか?」

 

 疑問に思ったことをチノちゃんは聞いてくれた。確かにあのハテナブロックについて全く説明していない。それどころか、アイテムの存在をまだにおわせてもいなかった。チノちゃんがアイテムに気が付ける場面は一瞬。あの始まりのムービーのところだけど、それがあのハテナブロックを破壊したら出てくるなんて思わないよね。

 

「あぁ、それか。じゃあそのブロックの下でジャンプしてみて?」

 

 だから口で説明するよりも百聞は一見に如かず……ではないけど試してみればどんなことが起こるのかが分かる。

 チノちゃんが俺の言った通りハテナブロックの下でジャンプをするとレッドの頭がハテナブロックに激突する。

 すると赤いキノコにチノちゃんは驚いていた。

 

「……!? 中から毒キノコが出てきましたよ!?」

 

「毒キノコ……? アハハハハ!! それは毒キノコじゃなくて赤兄が強くなるアイテムだよ。試しにとってみて」

 

 予想外の言葉におかしくなって少し笑っちゃう。確かに赤ベースのキノコに白い点々があったから確かに毒キノコ身も見えなくもないか。けど、このゲームのアイテムは全部プレイヤーを強化するものだから取っておいてデメリットはほとんどない。

 

「……あ! 大きくなった!」

 

「そう。それで一回的に当たっても死ななくなった。後レンガ模様のブロックを壊せるようになったんだ」

 

 一段階強化されたレッドはレンガブロックを破壊することができる。試しにチノちゃんが近くのブロックを破壊してそのことを実践して見せた。

 後はざっと説明して、自分でやってもらえれば呑み込みが早いチノちゃんのことだからきっとうまくできる。そう思ってまだたどり着く前にこの先にあるギミックのことをちょっとだけ教える。

 

「それでね。少し進むと緑色の土管があるんだけど、そこで土管の穴がある方向の十字キーを押すともしかしたら土管の中に入れるかもしれない」

 

「……かもしれない?」

 

 土管の説明をするにはちょっと骨が折れるな……。入れる土管と入れない土管の違いは見た目にはないから実践するしかない。それを説明するとなるとなかなかに難しい。

 

「そう。かもしれない。こればっかりは外から見ただけじゃ判断ができないんだ。だから自分で試してみるしかない」

 

 だから試してみないとわからないということをチノちゃんに告げる。

 

「わかりました」

 

 すると土管の上に立つたびにレッドがしゃがみだすと言われたことをしっかりとやるような性格なんだということが分かる。それに、いちいちしゃがんで確認するチノちゃんが普通にかわいいと思ってしまう。

 

「あ! 入れました!」

 

 何度か試してみた結果チノちゃんは入れる土管を見つけることができた。自分で見つけることができたからか、初めてプレイヤーキャラが動いたときよりも嬉しそうにしているのが伝わってくる。

 

「じゃあ今はそのまま外に出てみようか。穴の方向にボタンを押すから帰るときは……?」

 

 だけど、今のチノちゃんのテクニックではなかなかこの土管下のステージは辛い。だから今は早く土管の外に出てクリアをまずしてもらいたかった。

 

「上のボタンですね」

 

 来たときとは別に頭のほうに土管の穴が向いているから今度は上ボタンを押してチノちゃんは土管ステージを後にした。

 外のステージに戻ってきたチノちゃんはゴールがあるであろう右側にどんどん進んでいく。途中穴に落ちないようにちょっとずつ、確認しながらジャンプしている様子がまだゲームに慣れていないことを物語っているが、それでも懸命にゴールを目指すチノちゃんの姿は以前ゲームを教えていた同い年の女の子と重なった。

 

「あとはゴールまで行けるから頑張って!」

 

 そんなチノちゃんを応援したくなって、声をかける。その後チノちゃんが黙々とゲームを進める。しかし、最後の最後でチノちゃんは油断してしまったのだろう。

 

「あっ!」

 

 敵キャラに気を取られて穴に落ちてゲームオーバー。画面が黒くフェードアウトしていきやがて最初のステージ選択画面に戻っていく。

 

「ドンマイ、チノちゃん。最初なんだから気にしない気にしない」

 

 少し落ち込んでいるチノを励ます。いくら簡単だとは言え初めてで捜査を始めて理解したのであれば1発でクリアできるとは言えない。けど、チノちゃんの場合は今までゲームに触れてこなかったから余計に緊張していたのかもしれない。

 慣れないことをしているのだから思った通りに動けなくて当然。それはゲームだけというわけではない。では、慣れないことを慣れるようにするにはどうすればいいか。そんなのは簡単。反復練習するしかない。

 けど、もう一つだけ方法がある。

 

「……吉田さん、少しお手本を見せてもらってもいいですか?」

 

 そのもう一つの方法。お手本を見る。最初のうちは自分で考えて行動するのは難しい。だから、どういう風にすれば正解なのか見せつけてあげればそこから自分なりのプレイに繋がる。

 ……なんだ。チノちゃんってゲームやったことないらしいけどかなりゲーマーじゃん。

 

「OK。ちょっと見てな、チノちゃん」

 

 頼まれたからには先生として教えてあげないとね。このゲームは完全クリアをしてるから操作なんて簡単にできる。さて、いっちょ本気出しますか!!

 

 チノちゃんが俺の肩を掴み、のぞき込むようにして画面を見ていた。しっかりと画面を見ていることを確認した俺はステージ選択しゲームを始める。

 

 さっきチノちゃんがクリアできなかったから選択できるステージは1つだけ。そのステージが始まった瞬間、敵がやってくる前に走って強化アイテムを取る。そして倒さずにただひたすらスルーをする。次に強化アイテムがあるところをジャンプで出現させそれも取る。ファイアレッドになったことを確認した将斗は連打で火を出しながらそれでもダッシュを止めなかった。見る見るうちにゴールまでの距離は縮まり、ゴール前の階段まで到着した。

 

 軽快にジャンプをした将斗は階段のてっぺんまで行き一番の大ジャンプでゴールポールのてっぺんに抱き着く。これがゴール。一番上にたどり着いたことで残機を1つ獲得し、さっきのチノちゃんの分を取り戻した。

 

 あまりにも早くクリアしたためかチノちゃんの目が画面から離れない。

 

 だけど少しすると頬を膨らませたチノちゃんが俺のことを睨んでくる。え……? どうしたんだろう?

 

「……吉田さん、さっきやってた大きいジャンプは何ですか?」

 

 あ~ぁ。そうか。チノちゃんが言ってるのは3段ジャンプの事。これはテクニックだから説明はまだ早いと思ったんだけど、チノちゃんは知りたいようだった。

 

「さっきのは3段ジャンプって言って走ってるときにタイミングよくジャンプするとなるんだ」

 

 ダッシュで勢いをつけてジャンプ。そして着地したタイミングでジャンプボタンを押す。そうすれば2回目、3回目のジャンプは特殊なアクションとともに飛距離が伸びる。そして高さも高くなる。ゴールする階段のところで使ったけどよく見ているなと少しばかり感心した。

 

「じゃあ、壁を蹴って反対方向にジャンプしたのは……?」

 

 チノちゃん、結構勉強熱心なんだった……。それがこんなところでも発揮されるなんて、ちょっと嬉しくなっちまうぞコノヤロー!!

 やっぱいいな。自分が好きな物が他の人も好きになってくれるこの感覚! 久しぶりに味わったよ。こうなったら俺もとことん教えるぞ!!

 

「あれは壁キック。壁で挟まれたところとか上に取らないといけないものがある時に使うんだ。穴に落ちちゃうときの悪あがきとしても使うね」

 

 床がないところを上に登りたいとき近くに壁が2つあれば上ることができる。壁に接触したときにタイミングよくジャンプボタンと壁と接している方とは逆のボタンを押すとできるテクニック。

 

 一通り説明が終わった後、チノちゃんは再び頬を大きく膨らませて俺のことを睨んでいる。

 

「……なんで教えてくれなかったんですか?」

 

 確かに教えなかったのはまずかったのかもしれない。チノちゃんにとっては知りたいことだったみたいだし、でもこれで教えるきっかけになったから結果オーライなのかな?

 

「まだ早いと思って。タイミングが重要だから難しいよ?」

 

 それにまだ基礎しか教えていない状況で知ってもなかなかうまくは出来ないだろう。普通にプレイしていて失敗してしまうテクニックでもあるのだからなおさらそう思ってしまった。

 

「そんなことはわかってます。だから吉田さんに教えてもらうんです」

 

 まっすぐなチノちゃんの瞳に、俺が写っていた。見つめられているということに気恥ずかしさを感じるよりも前に、俺のいる世界に飛び込んでくるチノちゃんが嬉しくなって、いっぱいいろんなことを教えてあげたいと思った。

 

「……分かった。わからないことがあったらまた聴いて」

 

 だから時間なら俺が無理やり作る。チノちゃんが聴きたいときに聴けるようにしてあげようと決意した。

 

「もちろんです」

 

 でも、チノちゃんには忘れないで欲しいことがある。ゲームに興味を持ってくれたのは嬉しいけど、これだけは言っておかないといけない。

 

「ただ、ちゃんとやらないといけないことをやってからね? 今はお店に人がいないからいいけど、勉強とか友達と遊んだりとかやることはいっぱいあるでしょ?」

 

 子供にはやるべきことがある。学校で勉強すること、宿題、友人と外で思いっきり遊ぶこと、そしてお店の手伝い。それがしっかりとできると約束をしてほしかった。ゲームはあくまでも娯楽。本気でやっていたとしてもそれだけは忘れてはいけない。そういうことが分かって欲しいから。

 

「はい。それも分かってます」

 

 ……けど、その心配もなさそうだ。チノちゃんはちゃんとできる。無責任な信頼かもしれないけど、お店の手伝いをしながら宿題をしたりと時間の使い方はかなり上手。だったらできる。

 

「ならよし! これからも楽しいゲーム生活を送ろう!」

 

 だから俺はこの言葉とともに3つのVSと3つのゲームを渡す。ピンク、水色、紫とカラーリングを分けたりと結構考えたけどこれで誰がどれになるか決めれば間違えることはないだろう。

 

「では、これからいっぱい付き合ってもらいますよ私をこんなにしたのは吉田さんなんですから」

 

 チノちゃんは笑顔のまま俺からVSたちを受け取り、そう言った。

 

 このことがきっかけでチノちゃんと徹夜でゲームしたり、オンラインで共闘したりすることになるのだが、今の俺にはチノちゃんがそこまでハマるなんて予想できていなかった。これから本当に俺とチノちゃんたちのゲーム生活が始まるのだった。

 

 




7月1日が水瀬いのりさんのライブということで書かせていただきました。と言ってもツアーなので前にも投稿する機会はあったんですけどね。

じゃあなぜ今日なのか。そう疑問に思うと思います。その理由は私がそのライブに参戦するからです!

友人がチケットを取ることができたので楽しんできますよ! 

曲を予習しつつかいた話ではありますが初めてのごちうさオリジナル回。いかがだったでしょうか? 正直ごちうさに関してはまだまだだと痛感いたしました。口調とかいろいろ勉強しないといけないようですね。

次回はアニメ2話分の話を予定しております。着物少女の登場ですよ! ……多分。

それでは、次回もお楽しみに!

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