ロクでなし魔術講師と死なない少年   作:ハムちゃんず

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三話

 

 

 時は戻り現在。食堂で憤慨していた銀髪の少女システィーナは

 

「……うぅぅ~」

 

 その顔をリンゴのように真っ赤に染め恥ずかしそうに俯いていた。何故このようになっているかと言えば、簡単な事で、つい先ほどまではグレンとクロノに対する不満を吐き出すのに夢中で気づかなかったが吐き出し終わり冷静になると気付いた。——此処は多くの学生が利用している食堂だと。そして、優等生として通っている彼女が憤りの声を上げているのが気にならない学生は少なく、当然注目の的。それに気づいた彼女は自身に向けられている周囲の視線に恥ずかしくなり現在の状況に至った。

 

「えーと……」

 

 その状況に対し隣に座る金髪の少女ルミアは何かシスティーナの気を逸らせる話題は無いかと恥ずかしさで小さくなっている彼女を眺めながら悩んでいた。

 

「あっ!」

 

 どうやら話のタネが見つかったようでルミアの表情は明るくなる。

 

「そう言えばシスティ。あの噂、最近聞かなくなったよね?」

 

「……噂って、あの『不死の怪物(ノスフェラトゥ)』の噂? 確かに最近は聞かないけど」

 

 システィーナは未だに顔が赤いままだがルミアの話には自身も興味があるのか顔を彼女の方に向けた。

 

「うん、馬に轢かれてもピンピンしてたり、心臓を刺されて倒れても平然と立ち上がるっていう……」

 

「所詮は噂…………って思ってたけど数年前にあった最初の目撃情報から何度も目撃されてるのよね~」

 

 彼女達の話している『不死の怪物(ノスフェラトゥ)』の噂は帝国内でも有名な噂で目撃情報も数多く存在している。曰く銃で頭を撃たれても死なない。曰く胴体が千切れても死なない。などの事が多く目撃されている。しかし、その目撃情報の多さの割にその人物の素顔などは全く判明しておらず、分かっているのはその身に真っ黒なローブを纏い恐らく男であるというくらいのもの。そして、目撃情報の全てを同一人物とするならその人物は『永遠者(イモータリスト)』とは違い年を取っている。なぜなら最初の目撃情報の時には身長は160前半くらいだったものが一番最近のものでは170は確実に超えてたとの情報があった。そこからの推測としてかの怪物は成長期の少年なのではないかと専らの噂だった。なお、素顔が分からないなどの事から認識阻害などの魔術がかなりの練度で使えるのでは? とも噂されていた。しかし、

 

「でも、最近になって急に目撃情報がなくなったのよね……」

 

「そうだね……」

 

 その噂も少し前から目撃情報が全く無くなり最近ではあまり耳にしない。

 

「ルミアは不死になりたいとかって思う?」

 

 システィーナは少ししんみりした空気を変えるためにルミアに問いかける。不死。多くの人が憧れるそれに対して彼女もなりたいのかと純粋な興味も交えて。

 

「う~ん……私は思わないかな……」

 

 そして、ルミアの口から出た答えは否。それに対して理由を聞こうとシスティーナが口を開き掛けた時——

 

「ああ、そうだな……不死なんてロクなもんじゃねー……」

 

 前方から突然、男の声が割り込んできた。その声の方にシスティーナが顔を向ければ彼女を憤慨させていた内の一人のグレン・レーダスが其処に立っていた。朝の時よりもさらにボロボロになった姿で。

 

「前、座るぞ」

 

 そう言って彼はルミアの前の席に腰を下ろす。その表情は朝の腑抜けた表情と違い些か暗い。先程の発言と関係しているのだろうか? システィーナは彼に対する不満も忘れグレンに問い掛けた。

 

「あの、不死がロクなものじゃ無いってどういう意味ですか? 多くの人は憧れとかあると思いますけど……」

 

「……考えてもみろ、不死って事は何度死ぬような目にあっても死ねないって事だ。ここで重要なのは死なないじゃなくて死ねない。つまり常人なら一度ですむ痛みを何度も味わうハメになる。そんなものがいいもので有るはずが無い」

 

「で、でも……普通に過ごしてたらそんな事には……」

 

 そう返すシスティーナの顔色はグレンの言った事を想像したのか青くなっている。隣のルミアの顔色も同様だ。

 

「甘いな……確かにそうなればいいだろうが、一度不死なんて事が周りに知られてみろ。周りはこぞってそいつを追い回すだろうよ。で、捕まれば実験動物扱いだろうな」

 

 その言葉でシスティーナとルミアの顔色はさらに青くなる。それを見てグレンは流石に言い過ぎたと思ったのか頭をかきながら表情をいつものだらしないものに戻し。

 

「まっ! お前らには関係無い事なんだけどな!」

 

 その言葉で安堵し幾らか顔色の戻った二人はある事に気が付いた。

 

「あの、ローグ君は一緒じゃないんですか?」

 

 朝の自己紹介の時の様子から親しい間柄である事が伺える二人。そんな二人なら食事を一緒に取るものと思っていたのだが、近くにクロノの姿は見当たらない。

 

「ん? あ~、あいつは食い気よりも眠気だからな~今も寝てんだろ」

 

「どんだけ寝たいのよ……」

 

 システィーナは転入生のあまりの睡眠欲にげんなりした様子で若干肩を落とす。そんな彼女をグレンはスルーして自らの食事を開始した。

 

「やっぱこの時期のキルア豆は美味ぇな!」

 

 その食事の様子はさながら好物を出された子供のようで、とても美味しそうに料理を食べ進めていく。そんな折にシスティーナは聞くなら今しかないと、朝から気になっていた事を聞く覚悟を決める。

 

「あの、先生と転入生の関係って何なんですか? やけに親しげでしたけど。兄弟にしては全く似てないですし……」

 

「ふふん♪ まあ、あいつより俺の方が圧倒的にカッコいいしな! 兄弟じゃないってのは分かっちまうか~」

 

 圧倒的ドヤ顔。

 

「いや別に普通に髪の色や瞳の色から判断したんですけど……」

 

 そんな引き気味な彼女の言葉は気分を良くしたグレンには届かない。

 

「まあ、あいつとの関係を言葉にするなら……穀潰し仲間だな!」

 

「何ですか、そのダメ人間同士の関係は……」

 

「あはは……」

 

 そのダメ人間感満載の答えにふとシスティーナは思い出す。最初のグレンの暗い雰囲気のせいで忘れていたがこの男と転入生には文句が山ほどあった事を。その事についてはっきり言ってやろうとグレンの座る方を睨むように見る。自身のかいた恥の分ものせて。

 

「この際だから言っておきますけど、って…………あれ?」

 

 しかし、先程まで彼の座っていた場所は既にもぬけの殻。グレンの影も形も無い。

 近くに座るのは気まずそうな表情のルミアのみ。

 

「……ねぇ、ルミア……先生は?」

 

 システィーナは顔を俯かせ肩を震わせ拳を握る。

 

 「えっと……もう食べ終わって行っちゃったよ……」

 

 そして、このルミアの発言の直後。システィーナはまたもや食堂中の視線を集める事となった。

 

 

 

 

一方その頃。教室では——

 

 

「……Zzz」

 

 食堂での事など露知らず、とても幸せそうにクロノは寝ていた。

 額に肉と落書きをされて。落書きした人物を目撃した生徒はこう語る。

 黒髪黒目の非常勤講師の男の人だったと。

 

 

 




 3話です!
 相変わらず文字数が少ないし主人公に至っては今だに寝てます!
 暇な時に少しづつ書いてるので不定期ですけどよろしくお願いします。
 ちなみにノスフェラトゥはルーマニア語で吸血鬼の総称を意味するものです。吸血鬼自体は出ませんけど。不死の怪物=回復力の凄い吸血鬼みたいな感じで。
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