少女の気まぐれは、不思議な縁を紡ぎ出し   作:萩村レイン

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 この作品を開いていただいて、ありがとうございます。

 アイドルマスターシンデレラガールズ×ソードアート・オンラインのクロスオーバーの作品となっておりますので、ご注意ください。

 主人公は神谷奈緒ではありますが、時系列としてはSAOがクリアされてから一年と少したったある日、という認識でお願いいたします。

※以前「ハーメルン」の別アカウント(同じ「坂本 梓」名義)で投稿していた小説ではありますが、そちらのアカウントを誤って削除してしまったため、作品タイトルを変え、こうして新しく投稿することとなりました。


ほのかに甘い果実の焼き物、それを凌駕する苦い記憶

 それは、とある冬の日の昼下がり。あたしはその日オフを貰ったものの、友人と予定が合わずに一人寂しく秋葉原に買い物に行くことに決めた……そんな日の出来事。

 

 

 

「ふぅ、久しぶりだから結構買っちゃった。えっと……今からだと家に帰るのは中途半端な時間だし、ちょっと散策してみようかな」

 

 久々に来た秋葉原で買い物をし終えたあたしは、スマホで時間を確認して少し考えた後にそう決断する。ここからだと昔流行ったあの作品の和菓子屋さんにも行けるかな、なんて思いつつ徒歩で御徒町の方へと足を延ばしていった。

 

 そして特に考えなしに散策をしていると、とある喫茶店にたどり着いた。買い物に熱中しすぎていたのもあって、その喫茶店の看板を見てようやくお昼ご飯を食べてなかったことに気づいたあたしは、恐る恐る扉を開いてみた。

 中を見渡してみると、マスターが一人で、お客さんはあたし以外居ないみたい。席はカウンターと複数の大きめの丸い木製テーブル、合わせて二十から三十程度だろうか。しかしその席数の割にはそのお店は広いというわけではないようで、テーブルの間隔はそこまで離れてはいなかったけれど、かといって狭苦しいという印象は持たなかった。

 

「いらっしゃいお嬢さん。そんなところに突っ立ってないで、入ってきたらどうだ?」

 

「えっ……? あ、ご、ごめんなさいっ……」

 

 マスターからそう声をかけられてようやく、あたしは入り口で立ち止まったままだと気付く。あたしは多少の申し訳なさと恥ずかしさが入り混じったなんともいえない感情に支配されてしまい、少し体を小さくしてしまった。

 しかし不思議と悪い気にはならず、軽く小走りしながらカウンター席のひとつに近寄っていく。そして買い物の荷物が入っているかばんを下ろして隣の椅子に置くと、コートを脱いでかばんの上に置いてから、思いの外疲れていたためか若干俯きながら席に座った。

 

「はっはっは。なかなか表情が豊かだな、この前テレビで見た時以上だぞ」

 

と、野太くもどこか軽い口調でそう声をかけられてようやく顔を上げれば、その内容に驚きの色を隠せないまま、それまでしっかりと見ることのなかったマスターをまじまじと見つめる。

 その体格は以前ラグビーなどをやっていたと言われても違和感がなく、髪型はスキンヘッド。そして肌は黒人系であることは即座にわかる褐色で、身長は一八〇センチをゆうに超えているであろう。そのような見た目のせいか悪人とも取れなくはないものの、実際に声を聞けば優しい人物であることは容易に想像できた。

 

「へっ⁉ あ、いや、その…っていうより、あたしのこと、知ってるのか…?」

 

 私のことを知ってることに驚きが隠せないまま、そういつもの口調で問いかけてしまったほど動揺した。だってあたしたちはまだプロジェクトでデビューして間もなかったし、露出だってまだそんな……

 

「確かニュース番組か何かでデビューの時の特集が組まれてただろ? 嫁さんとその番組は見てた上に、俺がやってるゲームだったり、ここでその事を耳にはさむ事はよくあったからな。そんなことより、この中から好きなものを選んでくれ。といっても、メニューはそんなに多くないが」

 

 事情を聞いてほっとしつつようやく納得すると、少し申し訳なさそうにマスターからメニュー表を手渡された。そこに書かれているメニューを一つ一つ眺めていると、一つ気になるものが目に入る。

 

「あ、あのっ! マスター、このアップルパイって……?」

 

 出だしで声が少し裏返って、ちょっと気まずくなってしまった。今日のあたしは絶対なんか変だ。

 

「あぁ、それか。割と人気の品でな、昼の方ではよく頼まれる一品だ。いつもなら注文を受けてから焼くんだが、今日は事前に作ってくれとオーダーがあったからもうすぐ焼きあがるぞ。ひとつ食べてみるか?」

 

「え、で、でも、その人の分は大丈夫なのか……?」

 

「あぁ、一つ二つなら構わんさ。実のところ、毎回いくらか多めに作ってるからな。普段はしないんだが、今回は事情が事情だから特別サービスで割引するぞ」

 

 一人でそんなに食べるのか、とも一瞬思ったが、たぶん集団なのだろうと気付く。偶然とはいえ割引をしてもらえたため、今回はその集団の人たちにも感謝しないといけないな、と思った。

「本当か、ありがとうマスター! じゃあそれを二つと、飲み物はコーラでお願いするよ」

 

「おうよ、用意するから待っていてくれ。……っと、丁度良く焼けたみたいだな」

 

 マスターの返事の途中で丁度良くオーブンのタイマーが鳴ると、手慣れた手つきでオーブンからアップルパイの乗った鉄板を取り出していく。さすがだな、と思いながらその姿を眺めていると、

 

「はいよ、お待ちどおさま。アップルパイ二つとコーラだ」

 

という言葉とともに、フィリングを包み込んだアップルパイが二つ乗ったお皿とコーラが入ったグラスがあたしの目の前に置かれた。

 

「わぁ、このアップルパイ、美味しそうだな……!」

 

 こんがりと焼けたきつね色の生地と香りで思わず食欲をそそられてしまい、思わずそう口にしてしまう。

 

「だろ? 出来立ては特に美味しいから、遠慮なく食べてくれ」

 

 マスターの言葉に応じるように端の方を指でつまんでから体を乗り出し一口頬張ると、フィリングがぎっしり詰まっているためか口の中にりんごのほのかな甘さが広がっていく。そのあまりの美味しさは本当にいくら食べても飽きないほどで、このアップルパイ目当てにぜひ常連になろうかと思った。

 

「美味しそうに食べてもらって何よりだよ、ありがとうなお嬢さん」

 

「んく……いえいえ、こちらこそこんなに美味しいものを割引してもらって嬉しいです」

 

 と自然と笑みを溢しながら告げると、ふとあることを思い出す。

 

「そうえばマスター、ゲームであたしの話をよく耳に挟むって言ってたけど、最近のゲームとはいえそんなに聞く機会があるのか?」

 

 と、あたしは軽い気持ちでそう問いかけた。けど、これがいけなかったのかもしれない。

 

「あぁ、俺はゲームで商店をやっててな。お嬢さんも聞いた事があるかもしれないが、――――っていうゲームで知り合ったやつから資金を提供してもらって開いて……」

 

 それまでと変わらぬトーンで話すマスターの話を聞こうとコーラを飲もうとグラスを掴んだとたん、そのゲームの名前を耳にして頭が真っ白になり身体が固まってしまう。そして、その後に店内に入ってきた人たちの事は全く気付くことができなかった。だって、そのゲームはニュースで散々報道されてたものだったし、何より……もしかしたら、あと一歩で私が“囚われの身”に、もしかしたらそれ以上の事になっていたかもしれないゲームだったのだから――――――

 




 ここまで読んでいただいて、ありがとうございます。

 もしかしたら以前、作品の題名は違うけれどこの作品を「ハーメルン」で読んだことがある、という方もいらっしゃるかと思います。
 その方は、以前も読んでいただいてありがとうございます。実は私、数日前まで同じ「坂本 梓」名義で活動していたのですが、こちらの手違いにより前書きの通りそのアカウントを退会してしまったため、こうして再び投稿させていただくことになりました。

 ちなみに、この作品は2016年4月下旬辺り・・・つまり、この作品の投稿時(2017年10月27日)から1年半ほど前に投稿させていただいた作品となっております。

 なので、これからもお付き合いいただけるという方がいらっしゃいましたら、どうぞよろしくお願いいたします。

※前書きとストーリーを読んだだけでどんなキャラが出てくるか分かってしまった方に対しても、「○○というキャラは出てきますよね?」等の問いかけには対応できないため、ご容赦ください。
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