少女の気まぐれは、不思議な縁を紡ぎ出し   作:萩村レイン

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 この作品では4日振りとなります。

 以前2話まで仕上げ、投稿させていただいていたので、こちらも投稿させていただきたいと思います。

 前話の終わりに入店した人は誰なのか、答え合わせも含めて読んでいただけたらと思います。


少女たちの邂逅、意外な事実を添えて

「――、――。……―ぇ、――。――っと奈緒、大丈夫なの?」

 

 あれ、どれくらいボーっとしてたんだろう。肩をゆすられつつそう声を掛けられたあたしは、手を置かれてる方を向くと……

 

「……え? 凛、加蓮、何でここに……?」

 

 不安そうにあたしを見つめる、同じプロジェクトでユニットを結成した二人がそこにいた。多分マスターの話を聞いて意識が飛んでる時に入ってきたんだろうけど、まさかこんなところで二人と会うなんて予想もしていなかった。

 

「あー……実はさ、ここのお店のアップルパイが美味しいみたいだから一緒に行こうって加蓮が言うから、私は仕方なく一緒に……」

 

「ちょっと! 凛だってアップルパイ食べたいって言ってたでしょ⁉」

 

「そ、それはそうだけど……」

 

 あぁ、プロデューサーからオフの事を聞いた後で加蓮が「三人で上野に行って買い物とかどう?」って誘ってきたのは、この時間帯にアップルパイを食べられるよう狙ってた事なのか……あたしはあたしで秋葉原でどうしても買いたいものがいくつかあったから、泣く泣く二人とは別行動になったけれど、どんな偶然なんだ一体。

 

「あー、いろいろと聞きたいことはあるんだが……何か嫌な事を思い出させちまったか?」

 

 と、会話が少し落ち着いて整理できたところで、マスターがあたしに向かって声を掛けてきた。そういえば、二人が来たことで意識が奪われてたからマスターの話の事、すっかり忘れてたな……

 

「ううん、大丈夫。マスターの言ってたゲーム、昔ちょこっと面白そうだなーなんて思ってたから、それを聞いて驚いちゃってさ……」

 

 あはは……と少し苦笑いを浮かべつつ、ある程度嘘を混ぜつつ伝えた。まさか、そのゲームをやろうとしてた、なんて凛たちには口が裂けても言えないし、その事で余計な心配を掛けたくはない。

 

「それならいいんだが……さて、と。お二人さんは、注文はどうする?」

 

 マスターが申し訳なさそうにしつつも話を変えてくれたことにほっとしつつ、あたしは飲み物を口にする。冬とはいえのどは乾いていたせいもあり、炭酸の刺激が心地よかった。二人もあたしの座ってるところの近くの椅子に荷物を置きながらコートを脱いでいぎ、マスターからメニューを受け取ると、それを眺めつつどちらも席に座ってからそれぞれのテンポで注文していった。

 

「うーん……じゃ、アタシはアップルパイ一つとコーラで」

 

「私もそれを一つと、飲み物はアイスカフェオレにしようかな」

 

「アップルパイを一つづつに、コーラとアイスカフェオレだな。よし、少し待っててくれ」

 

暖房が効いてるのもあってなのか、二人も冷たい飲み物を頼んでいった。それを聞いてマスターは“にかっ”と笑みをうかべながらそう言うと、飲み物を作り始める。……よし、この際だからちょっと聞いてみよう。

 

「なぁ加蓮、この店ってどうやって知ったんだ?」

 

「えっとね……アタシ、取材でいくつかの有名店のアップルパイを食べてから、それにはまっちゃったんだよね。だからさ、隠れ家みたいなところでおいしい店を知ってるかなって思ってかな子に聞いてみたら、ここをお勧めされたんだー」

 

 そう嬉しそうに話す加蓮の様子を眺めながら、プロジェクトこそ違うもののそれなりに話す彼女の事を思い出す。かな子って、自分で作るだけじゃなくてこういう店を巡ったりしてるのかな。今度あたしも聞いてみよう。そういえば、取材に行って来てからそんなことを言ってたな……

 

「はいよ、お待ちどおさま。アイスカフェオレとコーラ、それとアップルパイだな」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「ありがとっ、マスター」

 

 すぐに飲み物が出来上がって、お礼を言う二人の前にそれぞれが注文したものが置かれた。ってあれ、そういえば……

 

「マスター、アップルパイは残しておかなくて大丈夫なのか? 確か、何人かそれを食べに来るって言ってたけど……」

 

「あぁ、さっき遅れるって連絡が来たから大丈夫だ。人も一人増えるらしいから、どのみち後で焼くことにはなってたさ」

 

「そっか、ならよかった。あたしが来てからちょっと時間が経ってるし、どうしたのかなって気になったからさ……」

 

「そうだな、えっと……確か十五分くらい経ってるのか」

 

 マスターがちら、と外枠が木で作られている少し年季の時計を確認しつつそう告げた。それを聞いてから店内を改めて見渡してみると、内装は全体的に昔からあるようなつくりのおかげもあるのか、リラックスしやすい空間だな……なんて思えるように統一してある。アップルパイもそうだけど、こういう雰囲気が人気の一つなんだろうか……なんて考えていると、凛が質問を投げかけてきた。

 

「あれ、そうえば奈緒って秋葉原で買い物するって言ってたよね? その友達ってどうしたの?」

 

「あ、えっと……みんな予定が合わなかったみたいだから、結局一人で来てたんだ。それが終わった後に気分でこっち方面に来てみたら、偶然ここを見つけたんだ」

 

「そうだったの⁉ いやぁ、そんな偶然ってあるんだね! アタシ、今日この三人で話せるとは思わなかったよ」

 

 にこっ、と加蓮が本当に嬉しそうに微笑む。あたしはなぜかその笑顔に思わず恥ずかしくなり、目線を若干そらしつつマスターを見ると手際よくアップルパイを作っている。やはり手慣れているのか、どんどんと焼く前の形へと近づいていく。

 

「でもさ、ちょっと意外だよね。私はよく手作りのお菓子を貰ってたから、かな子がこういうお店を知ってるとは思わなかったな」

 

 そう凛がつぶやくと、あたしは目線を二人の方へと戻す。そういえば、かな子って手作りのお菓子をよく持ってきてるって話を聞いたことがあるけど、こういうお店も知ってるんだな……

 

「そういえば、凛ってかな子と同じプロジェクトにも所属してるよね。アタシはまだ手作りのお菓子を貰ったことがないんだけど、どんな感じなの?」

 

「そうそう! 未央とかからはよく美味しいって聞くんだよな」

 

「うん、本当に美味しいよ。私は表現するのがうまくないから伝わりづらいけど……かな子ってよくクッキーを持ってきてるんだ。甘さは丁度いいくらいに控えめでサクッとしてるから、いくらでも食べられるなって思う。ドーナッツも一度貰ったことがあるけど、生地がふんわりとしててびっくりしちゃったよ」

 

 そう言いながら凛の表情が少しだけ緩んでいるのを見ると、それらはそれだけ美味しいんだ、ってことが伝わってきて、あたしも食べたくなってくるくらいだ。

 

「えっ、ドーナッツも作れるの⁉ うらやましいなぁ、アタシも今度食べさせてもらいたいな」

 

「いいなぁ、凛は。あたしも今度お願いして食べさせてもらおうかなー……?」

 

 なんて言いながら、アップルパイを口に運ぶ。少し時間が経ってて冷めてはいるけど、やっぱりこの美味しさは病みつきになるな……なんて思いながら食べていると、二人とも思い出したような表情をする。

 

「あ、そうだ。そろそろこれも食べないとね。頂きます」

 

「そうだね、話に夢中で忘れちゃってたよ。頂きます」

 

 そんなことを言いながらようやく凛がアップルパイに手をつけ始めると、手を合わせる彼女につられたのか、加蓮も律儀にそう言葉にしてから食べ始める。……もう遅いけど、あたしも言った方がよかったかな。

 

「んっ、美味しい……! これは有名店顔負けかもしれないね」

 

「うん、これは確かにかな子が気に入るのも分かるな」

 

「だよなっ! あたし、秋葉原に来たらぜひここに寄らせて貰いたいな」

 

 三人してアップルパイを食べていきながら、声を弾ませてそう話していく。

 

「そう言って貰えると、俺としてはありがたいな。それで、かな子っていうのは少しふくよかな人で合ってたか?」

 

 そうすると、マスターも嬉しそうに自然と会話に入ってくる。けれど、彼の口からかな子の事が出てくると、あたしも含めた三人とも少し驚いてしまった。

 

「えっと……マスターは、かな子の事を知ってるの……?」

 

 一足先に気持ちを切り替えた凛が、マスターに向かってそう問いかけていく。でもやっぱり、その表情にはまだ驚きも含まれているのは仕方ないと思ってしまう。

 

「あぁ、この店に何度か足を運んでもらってるからな。だから、彼女がアイドルになったってニュースで知った時は驚いたもんだな」

 

 マスターはどこか嬉しそうにほおを緩めつつ、言い終わる直前に軽く肩を竦めた。あたしはかな子の事を知らないけれど、確かにお店の顔なじみの人がアイドルとしてデビューしたと知ったら驚くのかもしれないな……あたしも今はやっててよかったと思えるし、身近の多くの人から応援されてるけれど、最初は仲良くなったとあるお店の店員さんにも驚かれたなぁ。

 

「かな子って、そんなに前からここに通ってたんだ……今日もここに来るのかなぁ。ねぇねぇ凛、今日ってオフになってるか知ってる?」

 

「えっと……どこでやるかは分からないけど、今日はユニットで撮影の仕事があるっていってたかな。だから、流石に今日は来れないんじゃない?」

 

「なぁ加蓮、さすがにそんな偶然はないんじゃないか……?」

 

 加蓮のその問いに、思わずあきれてしまいながらあたしはそう問いかけてみた。ちら、と横目で凛のことを見てみると、少し苦笑いしてるのが見て取れた。やっぱり、考えることは大体同じか……なんて思っていると、加蓮が不満そうに言った。

 

「えー……でもさ、アタシたちは偶然とはいえこうやって会えたわけだからさ、案外ここに来るんじゃいかって思うんだけどな」

 

「そりゃまぁ、そうだけどさ……あのユニットだから、近くで撮影してても来ないんじゃないか?」

 

 かな子のユニットメンバーを思い出しつつそう返していくと、あたしはアップルパイをほうばった。それを味わいながらどこで撮影しているかを想像してみると、丁度新しく作っていたパイが焼きあがったのか“チンッ”とレンジのタイマーが鳴る。そして、それに呼ばれたかのように私たちの後ろから喫茶店の入り口の扉が開く音が聞こえ、新たな複数の訪問者が雑談をしながら店内へと入って来たのであった。

 

 




 ここまで読んでいただいて、ありがとうございます。

 入店した人物の答えは、渋谷凛、北条加蓮の両名でした。
 意外な人物が……という思いの方も、ある程度はいらっしゃるかと思います。次の話では、皆様が思っていたキャラの中の誰かは次の話では出てくるのではないか?と思います。

 この作品は2016年6月中旬辺りに執筆・投稿させていただきました。なのでこちらも、もう本日(2017年10月31日)から1年以上経ってるのですね……驚きです。
 ちなみに、次の第3話ですが、いまだに執筆が終わっていないため、次話の投稿がいつになるかは断言ができない状況となっております、申し訳ありません(汗)

 では、次回の話はできるだけ早くに投稿できるよう頑張りますので、どうかよろしくお願いいたします!
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