機動戦士ガンダムE   作:グランクラン

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小惑星戦ラストになります。今年最後の更新です!


スターダスト・インパクトⅤ

32

 

 小惑星デルタが地球降下までおおよその時間で約一時間が過ぎようとしていた。

 眼前に通り過ぎていく、そんな姿をジッと眺めていられるほど俺達ファントムブラッド隊に猶予はありはしない。実際こうしている間も小惑星デルタは地球に近づいているわけだし、考えている時間すら惜しい。

 俺はバルバトスの強化外装であるトールの出力を最大まで上げ、そのまま正面ゲートへと向かおうとする。

「サブレ!正面ゲートはだめだ!青いバエルと明楽の戦闘が激しすぎて……!作戦変更しよう!」

「……チッ!分かった。プランBで行く」

 プランB……本来正面ゲートからバルバトスが壊れた穴からフラウロスが侵入する手筈になっている所をバルバトスは裏ゲートから強引に突破する。それがプランB。

 トールが向かう方向を裏ゲートの方へと変更する。裏ゲートに近づくにつれ木星製のモビルスーツが数機ほど襲い掛かってくる。爆弾入りワイヤーを展開し、5機ほどの機体をまとめて吹き飛ばしていく。

「サブレ!こっちは突入準備ができたぜ!そっとはどうだ?」

 シノからそんな声が聞こえてくるのを俺は「あと少し……5分ほど」と簡単に答えつつ高出力ビーム砲がさらに二機のモビルスーツを焼き殺していく。空いたモビルスーツの隙間をさらに強引に通り過ぎる。

 正面に二機のキマリスと緑色のバエルが戦っているのが見えてきたが、俺はそんなことは知ったことからと、武器コンテナのミサイルのカードリッジをスモックミサイルとナノラミネートチャフ搭載型ミサイルに変更した。後ろから追いかけてくる三機のモビルスーツを武器コンテナの一つを分離して目くらまし代わりにする。

「トール最後の仕事だ。盛大に決めよう」

 武器コンテナの中のミサイルを全て射出していく。裏ゲートの周辺に白い煙とチャフをまき散らしていく。視界と同時にレーザーがまとめて不能状態に陥ってしまう。

 高出力ビーム砲を裏ゲートに向けて放ち、かすかに貫かれた裏ゲートにそのままトール事突っ込んでいく。爆散したトールからバルバトスの体を守るための守護コンテナが裏ゲートの中へと強引に入っていく。

「シノ!作戦開始!」

「おうよ!」

 同時に壊れた穴からフラウロスが強引に入っていく。

 バルバトスとフラウロスの作戦が同時に始まろうとしていた。

 

33

 

 三機のガンダムフレームの姿を確認したユージンの狼狽は桜の家にいる誰よりも強かった。

「なんだよ!バルバトスもグシオンもフラウロスも……大破したんじゃなかったのかよ!?」

 落ち着かないユージンの肩を黒い肌をしたチャドの手が置かれ、首を左右に振る。一旦落ち着いたユージンはソファに座って靴を何度も何度も床に叩いていく。

 代わりに調べ物を頼んでいたクーデリアが電話を切るところだった。

「ククビータさんとデクスターさんが代わりに調べてくれました。バルバトスとグシオン、フラウロスは掃討作戦の前後に経済防衛機構という組織がギャラルホルンから強奪したそうです」

「ご、強奪ですか?」

 チャドが驚きと共に立ち上がり、周囲にいる人物も桜を除いて驚きが大半を占めている。あのギャラルホルンから強奪するという蛮行と言ってもいい行いをどうしてギャラルホルンは黙認したのだろうか?そういう疑問を声に出したのは薄い茶髪の大人の女性であるアトラだった。

「そ、そんなことをしてギャラルホルンが黙っていないでしょう?」

「その通りです。そして、それこそが経済防衛機構代表であるマハラジャ・ダースリンの狙いだったんです」

 クーデリアの口運びは重く、視線を桜・プレッツェルの方へと向け意味深な微笑みを浮かべる桜を複雑な表情に向ける。

 クーデリアは知る限りの情報を開示した。

「経済防衛機構は一度だけギャラルホルンから攻撃を受けたことがあります。しかし、経済防衛機構はこれを退け、ギャラルホルンは最終的に当時のクジャン家当主が命を落としたことでこれ以上の戦いは不毛な争いになると和平条約を極秘裏に結びました。しかし、その内容を簡単に言えば『互いに戦闘はしない』と『戦闘仕掛けた方が悪い』という内容です。これは簡単にまとめただけですが、本当に簡単に言えばそんな内容です」

 そんな言葉に反応したのはやはりユージンだった。

「だったら……!」

 しかし、クーデリアが言葉を続ける前にグリフォン姉妹の一人であるクラッカが何かに気づいたように小声でつぶやいた。

「戦うことを禁止しているけど盗むことを禁止はしていない」

 小声が聞こえてきた周囲もようやくマハラジャという見たことも無い人物の狙いが分かってしまったようで、「ハッ!」と意識し始めた。

「そうです。条約には盗難に関する項目は存在しません」

「で、でも……普通」

 再びチャドが納得できないという風に食いつくが、それにクーデリアは毅然と返す。

「では、バルバトスたちはギャラルホルンの所有物でしょうか?違うはずです。鉄華団の所有物をほとんど強奪に近い形で奪ったのはギャラルホルンです。フラウロスに関してはギャラルホルンが回収する前に経済防衛機構が回収しました。彼らはギャラルホルンが所有権を主張する前に盗んだだけで争いごとは起こしていないのです。しかし、当時はそんなことは知りもしない。だからこそそこに経済防衛機構は罠を張りました。『災いの地』と呼ばれる地にラスタルは罠を張り、強奪犯を襲いました。先に仕掛けたのはアリアンロッド艦隊の方でした。それを口実に前後はさむように艦隊を配置し、同時にラスタルの腹心の二人を拘束し、ラスタルは状況的に降伏するしか無かったのです」

 重い口を閉じ、周囲にいる者達は口を閉ざしたまま頭の中で思考を巡らせる。しかし、その話にクーデリアが口を開くことを躊躇する理由にはならない。全員はその話に続きがあると理解した。クーデリアの口が重たくさせる、そんな理由が。

「クーデリア……?」

「……ラスタルに提示された条件は互いの仕事をきっちり分けるということです。経済防衛機構がコロニーなどの宇宙の自治権を、ギャラルホルンは地球と火星の自治権を分けようという話。そして……今後鉄華団残党への掃討を含めた作戦や攻撃の全面禁止でした」

 ユージンは力強く机をたたいて唖然としていった。ユージンにはあの作戦の後、ギャラルホルンが自分達に掃討作戦の為に部隊を動かさなかったのは単純に必要がないと判断したと勝手に決めていった。しかし、真実はEDMが裏取引でそういう風に決めた結果だということが分かってしまった。

 しかし、同時にどうしてそんなことをEDMが取引に入れたのかが疑問だ。ユージンだけでなく、他のメンバーも同じような意見に辿り着いたらしい。実際チャドが聞こうと前のめりになるが、それを遮る様にクーデリアは桜・プレッツェルの方へと向く。

 あくまでも桜・プレッツェルは微笑んで返すだけ。

「桜さん。あなたは知っていたんですね?」

 全員は首を傾げ視線をそれぞれに向ける。桜が答えようとしない代わりにとクーデリアが口を開いた。

「ビスケット・グリフォンさんには双子の弟さんがいらっしゃいます。サブレ・グリフォンさん。経済防衛機構の幹部クラスの人だそうです。そして……多分、団長さんと接点があったのだと思います。実際……ビスケットさんは現在EDMの幹部クラスに名前が載っているそうです」

 ショックでクッキーは涙をぽろぽろ流し、ユージン達は「ありえねぇよ……」と事実を受け止めきれずにいた。クラッカは帽子を抱きしめ二度と会えないと思っていた兄の名前をつぶやく。

「お兄……会いたいよ………」

 

34

 

 俺の予想では多分弟であるサブレはオルガと接点があると予想している。理由としては、EDMが革命軍や鉄華団掃討作戦を利用してアルンを手に入れる作戦には革命軍の情報が必要だと思う。実際革命が起きてから災いの地での罠を張るまで時間を考えても革命が始まってから準備をしたのでは足りないような気がする。実際、フラウロスを回収した手際は見事といってもいい。戦いから追撃作戦に移るまでのほんの一時間に満たない時間で回収後、ばれないように離脱している。それだけでも革命軍や鉄華団からの情報提供があったと確信していた。

 サブレは語ろうとしないし、問いただしても絶対に答えないだろうことは明白だ。

 でも、オルガに聞くことはできないし、シノも何も知らなかった。

 一度だけサブレの通信履歴を調べたことがある。不明な通信履歴が二件。シノとの話で聞いた鉄華団の行動と合わせた結果、名瀬さんがギャラルホルンから追われ始めたときと、ジャスレイ討伐後革命開始前の時間に一度ずつ同じ人物と連絡を取っている。

 オルガだという確信する理由は特にない。

 オルガがいつの時点でサブレと接点を持ったのか、同時に何があったのかは想像できる。多分島での戦いの後だろうと想像できる。あの時だけはサブレが自ら鉄華団のそばまで近づいていた。

 俺の遺体という謎の言葉にはこの際突っ込まないようにするが、俺の遺体をめぐってサブレとオルガの間に何かがあり、互いに連絡先を交換したと予想する。そして、オルガは革命前にサブレに連絡がいった。その結果、EDMはギャラルホルンの裏をかくことができたと予想した。

 いつの日かその辺の話を聞きたいと思っている。

 

35

 

 バスタースタイルを装備したバルバトスで小惑星内の通路を進んで行く。四つに分かれた区画の一つの機密区画の奥へ奥へと突き進んでいく。

 兄の作戦の一つはシノがフラウロスで四つに分かれた区画を破壊し、小惑星を分割する作戦を行う傍らで俺はスラスターを破壊して地球降下までの時間を稼ぐ。

 その為に小惑星のスラスターのある区画のドアが開き、大きな空間に出る。艦船三隻分はあろうかというほどの大きな空間。球体の空間に反対側に赤とピンクのキマリスが待ち構えていた。

「兄さんの作戦がばれていたというわけか……」

「ここまで来るとは思いませんでしたが、PN01はこれを予想していたわけですね……。初めまして、アルミリア・ファリドです」

「ファリド?じゃあ……君はマクギリス・ファリドの……」

 互いににらみ合うような状況になっているが、このままジッとしていることはできない。今、こうしている間にも小惑星は地球へと落ちていく。

 背中のミサイルポットから六個のミサイルをまとめて放つ、キマリスレッドクイーンはフルドレスからの拡散ビームがミサイルをまとめて叩き落す。バルバトスはその隙に近づき、背中のバスターライフルでキマリスに攻撃を加えようとするが、キマリスはフルドレスを展開し、ビームシールドで攻撃を受け止める。

「何じゃそりゃ……」

 ついおじさん言葉を放ってしまうが、実際それ位の衝撃を受けた。

「あくまでも足止めですが、死んでしまっても恨まないでくださいね」

「じゃあ、俺が殺しても恨まないわけだ」

「無理です」

「じゃあ、そんなことを言うんじゃねぇよ!」

 フルドレスはバルバトスの周囲から一斉に同時に攻撃を仕掛けてきた。連続で繰り出される攻撃をかいくぐり、まるで踊る様に移動しながら腰に追加装備していたライフルで反撃する。

 ドレスの一つは爆発しながら破片を周囲にまき散らしていく。予想通りの結果ではある。攻撃をしているときは防御が出来ず、防御をしているときは攻撃ができない。なら、攻撃を確実に回避しつつドレスを落としていくしかない。

「サブレ!まだなの?」

「兄さんの作戦がばれてたみたいだけど……悪いけど、スラスターの破壊は不可能みたいだ。俺も生き残るのに忙しから後はシノの作戦が成功するように祈っておいてくれ!」

 そういうと俺は兄からの連絡を切り、戦うことに集中する。

 ドレスはアルミリアの周りに漂い、こちらに向けて銃砲を向ける。

 俺はバスターライフルをキマリスの方に向け睨み合いが続き、フルドレスとバスターライフルが同時に火を噴いた。

 

36

 

 サブレの行く先が分かり、その行く先にキマリスレッドクイーンを先回りさせたというわけだ。そんな敵の存在に焦り、再び作戦の為に思考を始める。

「シノ!サブレの方は作戦失敗だ!早く破壊して!」

「そんなことを言ってもよぉ!敵の数が多すぎて……こっちも無理だ!」

 EDMのほとんどの部隊が撤退を始めていて、ギャラルホルンですら後退をし始めている。小惑星の軌道は大きく逸れたとは言っても地球に劣ることが変更したわけじゃない。

 俺は覚悟を決め、作戦をファントムブラッド隊に向ける。

「これよりファントムブラッド隊は地球降下作戦を同時並行しながら小惑星への最後の攻撃に入る。敵は小惑星が地球降下時には戦力が低下すると考えられる。本部へ報告後、降下準備に入る。ソニアさんとゼムさんにサブフライトシステム機を射出後大気圏突破モードに移行する!」

「「「了解!!」」」

 各員から連絡が入り、俺はもう一度目の前の敵に集中する。

 

37

 

 PN01は指令室に存在する自身の椅子から立ち上がり周囲に聞こえるぐらいの声を発する。

「これより作戦の成功を告げる。各員作戦通りに撤退し以後、各隊長クラスの指示に従う事。ご苦労だった」

 オペレーターを含めた男女は右腕を額の上に乗せる敬礼を行うと、そのまま全員が部屋から出ていく。PN01も指令室が空になったことを確認した後部屋を退室していく。

 人がいなくなった小惑星を地球に落とすという意味を彼は理解していない。そもそも理解するつもりは彼には無かった。

 PN01『personal network』の略称であり、あくまでも自分はある人物の観察が自身の主だった仕事であり、それ以上に興味はない。

 観察し、それを本体に報告するだけ。その為に木星帝国はあくまでも彼自身の依り代でしかない。さらに言えば、EDMに観察対象がいればEDMに入っていただろう。それぐらい、彼にとって組織とは単純な依り代でしかない。

 もしっと考えてしまう。EDMに観察対象がいれば彼はEDMに入っていただろう。

 歩いてシャトルに辿り着く。目の前に立つ木星帝国の士官ですら興味はない。

「今後我々は旧ヨーロッパ地区に降り立つ。以降一週間以内にヨーロッパ地区を占拠する。外にいる部隊も指示通りに動くよう伝えてくれ。私達も降下するぞ」

「はっ!アルミリア様とジャック様にも同様に伝えます」

 彼らもPN01からすれば観察対象の代わりでしかない。

 しかし、今回の戦闘データで気になるデータが存在することに気が付く。バルバトスの脳波が前回からかなり上がっていることに気が付いた。

『アカシックレコードにアクセス開始。データを転送。最優先観察対象『エヴォ・エクス』は変更なし、第二候補に『サブレ・グリフォン』に変更』

 彼はアカシックレコードにデータを転送し、地球へと降下準備に入る。

 床ハッチが開き、シャトルはゆっくりと降下を始める。シャトルの視界の先に青い地球が見えてきた。

 

38

 

 アルミリアのドレスの連撃とバルバトスのバスターライフルが外壁を砕いていく。いよいよ時間が無くなって来た。

 アルミリアのキマリスは俺が侵入した隔壁から脱出するため、バルバトスに向けてフルドレスの弾幕を張り視界を2,3秒だけ塞いでしまう。できた隙を見逃す敵ではなく。走ってその場から離脱していくアルミリア。

「先にスラスターを破壊していくか……」

 アルミリアが頑なに通そうとしなかった隔壁を破壊して先に進んで行く、すると正面の空間には巨大エンジンが複数にわたって並列動作しており、俺はバルバトスのミサイルを全弾使用するつもりで破壊した。

「あいつを追いかけた方がよさそうだな」

 バルバトスのスラスターを全力にして分割区画に現れると、フラウロスが十機近くのモビルスーツ相手に苦戦しているところだった。俺はバスターライフルで二機のモビルスーツを落とし、シノのそばまで近づく。

「シノ、撤退するぞ」

「待ってくれ。あと少しで半分にできそうなんだ」

「ここまで降下すれば半分にしたところで破壊できない。むしろ被害が増えるだけだ。それにそろそろ離脱しないと重力に引きずり込まれて終わるぞ」

 シノは悔しそうに表情を歪ませる姿を確認する前に小惑星の外へと出ていく。シノも続いて逃げ出していき、二人で明楽の援護に向かうが、その前にサブフライトシステム機である通称『ハヤブサ』が姿を現した。

 黄色に近い茶色をしており、平べったい姿は人の操作する区画が見当たらない。フラウロスとバルバトスはハヤブサに乗り込むと正面ゲートで戦っている明楽の元まで一気に進んで行く。

 数分で正面ゲートに辿り着くと、明楽もハヤブサに乗り込んで戦っている。俺の予想通りにアルミリアの乗り込むキマリスも明楽をバエルと共同で囲むように戦っており、俺はアルミリアの乗るキマリスに向けてバスターライフルで攻撃を仕掛ける。シノは背中のツインバスターライフルの連射攻撃をバエルブルーレイに向けて放ち、バエルブルーレイは背中の翼でこれを受け止め距離を取る。

「死ぬかと思いましたよぉ!!助けに来るの遅くないっすか!?」

「何だったらここで死んでいてもいいんだぞ?機体はちゃんと回収してやるよ」

 明楽の心の叫びを俺は冷たく引き離す。シノが代わりに通信に割って入る。

「助けに来たんだからいいじゃねぇかよ」

「そういう問題じゃないでしょ!!こいつらめっちゃ強いんっすよ!」

「多分敵の主力だろうなぁ」

 ミサイルでキマリスをかく乱させつつバスターライフルで攻撃するがフルドレスのシールド機能が完全に攻撃を防ぐ。

 バエルのツインビームサーベルがキマリスとフラウロスに同時に襲い掛かる。

「いい加減死ねよ!!」

 バエルブルーレイの荒れ具合は少々異常に見える。どういう戦闘を繰り返せばあんなに荒れることができるんだ。

「どういう戦闘を繰り返せば相手を荒らさせることができるんだお前は」

「知らないっすよぉ!!俺だってこいつを殺せないでストレス何っすから!!」

 もはや狂気と言ってもいい戦闘方法で突っ込んでくる。今のバエルブルーレイはバーサーカー状態と言っても過言ではないだろう。うってかわりアルミリア・ファリドの方は落ち着いて戦っている。

 距離が近いせいか相手の話声が聞こえてくる。

「ジャック。少し落ち着いて戦いなさい」

「うるさい!こいつ中々落ちないんだよ!」

「それはこちらも同じことです。それにこれ以上ここで戦う意味もあまりませんよ。すでに小惑星の完全な降下は既に始まってしまっています。今離脱しないと危ないです」

 それはこちらにも言えることだ。ジャックという名のパイロットは忌々しそうな声を発して捨てセリフを放って逃げる。

「次は絶対に殺す!」

 ヴァルハラも攻撃を加えながら少しづつ降下していく。今離脱しないと手遅れになるか……。

「サブレ!シノ!明楽!早く離脱を!」

「了解!シノ、明楽離脱するぞ」

「「了解」」

 三機で小惑星を少しづつ削りながら下がっていく。

 削る行為に意味はないと分かっていても多少は被害を少なくできるのではないかと、ありもしない期待してしまっている自分がある。

 小惑星を分離することは危険以上に被害をひどくするだけだとわかっていても、それだとしても俺は……。

「イオリ、降下ポイントは?」

「効果ポイントは……地中海です!」

 ハヤブサが俺たちの機体を守りながら降下していっているので俺達の機体も問題ない。しかし、そろそろヴァルハラは降下シークエンスに入らなければ遅くなるだろ。兄もそろそろ限界だと判断したのだろう。大きな声で降下シークエンスを始めた。

「降下シークエンスを開始!両翼とブリッジを格納。艦底に耐熱特殊装甲展開!降下開始」

 両翼が畳まれブリッジがヴァルハラの中へと格納されていく。艦底にクリアブルーのシールドのようなものが展開され、真っ赤な摩擦熱がヴァルハラを傷つけることは無い。

 離脱していき燃え盛る炎は小惑星を削りながら地表へと落ちていく。

 

39

 

 エドモントンの議会から降りてきたのは金髪の細身の男性だった。全体的にすらっとした体格に整った顔立ちを含めてもなかなかの人気がありそうだ。エドモントンで議長の秘書をしているタカキ・ウノは議会前の階段を降りると妹のフウカ・ウノが学生服でタカキを迎えに来ていた。兄と同じ金髪はタカキと同じく肩に付くぐらいの短さ。顔立ちもとても兄と似ている。

 タカキはどこか嬉しそうに階段を下りていくと、フウカの側に近づく。

「今日は早かったんだね」

「うん。何か変わったことは無かった?」

 二人はたわいもない会話で盛り上がっていくと、フウカはふと空を眺めて驚きの表情を浮かべる。

「お兄ちゃん……落ちてくる」

 タカキも同じように空を眺め、同時に驚きに表情を変えてしまう。

「空が落ちてくる」

 そんな表現がしっくりくるぐらいタカキ達の前に映っている光景は異様なものだった。ゆっくりと視界の端から端へと動いていく小惑星はそのうち視界の端へと消えていった。

「お兄ちゃん」

「大丈夫だよ……きっと」

 不安がるフウカを抱きしめ、二人で帰路につく。

 

40

 

 世界は変わる。

 それがどんなきっかけでも変わらなければいけないのだろう。

 星屑事件と呼ばれる戦いはこうして幕を下ろした。木星帝国は降下部隊を旧ヨーロッパ地区に展開させた。

 ファントムブラッド隊はアフリカ大陸へと降下をはじめ、視界の先では小惑星デルタが大きな衝突音と共に大きな水しぶきと砂煙を立ち上がらせ、衝突した。

 小惑星の衝突と共に地中海の水は完全に干上がってしまい。砂煙は空を覆い、地中海沿岸部の都市は壊滅的な打撃を受けてしまった。

 空に舞った砂埃は周囲に一時的な核の冬をもたらした。

 多くの人が命を落とした。

 クレアは死者の思い出を受け取りながら一人涙を流す。

 エヴォ・エクスはギャラルホルン本部で事の経過を確認したのちに地中海へ向けて移動を始める。

 アフリカの地へと戦力が集まっていく。

 P.D.333年1月1日0:01……小惑星デルタ地中海に衝突。アフリカ戦線へと戦いは引き継がれていく。

 

 

《スターダスト・インパクト編終わり  次回アフリカ・サバイバー編開始》




どうだってでしょうか?面白かったと言っていただけたら幸いです。今年の更新はこれが最後です。次回は少し間を開けようと思います。多分一月九日になると思います。できるだけ早めの投稿を目指します。次回から感想で告知していた通りアフリカ編を開始します。
 次回のタイトルは『アフリカ・サバイバーⅠ』です!お楽しみに!そしてよいお年を!!
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