瞳を開くとそこはかつてオルガ・イツカと喧嘩したあの海岸であった。大きな岩の上で眠っていた理由はよく分からないが、周囲を見回して確認を取ると、時間帯は夜、場所は海岸。それ以外には何も分からないっと思っていたが一人海に足を浸かっているのが分かる。
銀髪の髪に特徴的な前髪に褐色肌の男だった。
オルガ・イツカ。
そう思って駆け出しオルガの元へと急ぐ。
「オルガ!」
「よう……ビスケット。久しぶりだな」
久しぶり?そんなに経つかな?よく分からないけど……。
ひとしきり悩んでしまうと、オルガはこっちにこいと手招きしてくる。俺はオルガの隣に移動する。
よく見るとオルガは見慣れないスーツ姿である。
「懐かしいよな。ここでお前を怒らせてしまったんだよな」
「あ、あれは……ごめん」
頭を下げ謝ってしまう。
「謝んないでくれ。そもそもお前の事情を知らないですぎたことを言ったのは俺だ……」
オルガが少しだけ申し訳なさそうにしながらどこか遠くを眺める。
なんで俺はこんなところで寝ていたんだろう?
「思い出してみろ。お前をいつだって大切に思っていたのは誰だ?」
「へ?」
誰だろう。いつだって大切に思っていたのは?
『おばあちゃんに迷惑をかけてどうするんだよ!』
そんな声が聞えて振り返るといきなり風景が変わり、今度は懐かしいドルトコロニーのスラム街である。
小さいころ、よく虐められていた時弟のサブレが助けに入ってくれた。しかし、サブレはその行為でやり過ぎた。
俺が廃墟の中で見た光景は俺にとって恐怖ですらなかった。少なくとも六歳以上年上の男子二十人にサブレはたった一人で血塗れの傷だらけにしてしまった。死体のように積み上げられた体の上に返り血で真っ赤に染まった体、睨むように俺の方を見ると表情は多少穏やかになった。
俺は無理矢理忘れたいとすら思ったんだ。
両親が死んだのはちょうどその直後の事だった。
だから無理矢理忘れ、つらいことから逃げた。サブレの気持ちもつらさも忘れ、逃げ出したんだ。おばあちゃん家へ逃げ延びた。
本当はサブレが俺を大事におもっていたことも、家族を守ろうとした結果だという事も分かっていた。
サブレと比べられるのが嫌だった。
サブレが手を差し伸べる。その姿は昔のサブレではなく、見たことない緑色の制服を着ている。
「いつだって見てくれていただろ?」
俺はサブレの手を握ろうと右手を伸ばすとオルガは小さな声で俺に向かってつぶやいた。
「サブレに……ありがとって伝えてくれ」
俺は振り返ろうとしたとき、サブレの手を握った瞬間に衝撃のようなものを受けて俺の意識を吹き飛ばした。
意識が戻っていくのを感じ取り、五感が目覚めていくのを感じ取った。ふかふかする感触、フローラルの香りが眠気を誘ってくる。明かりはついておらず、カーテンがなびく。そして……部屋中に所狭しと置かれている睡眠を促進するグッズの数々。
何だろう。ここの家の主は俺を眠らせようとしているのだろうか?
不安を駆り立てられる。
体を起こそうとする瞬間に体に痛みが走る。そこでようやく自分の体を見ると、過去に見たことも無いぐらいに妬け細っている。っといっても標準的な体型に落ち着いているぐらいだが。
少なくとも筋肉は落ちてしまっており、体を動かすことがつらく感じる。しかし、動かせないほどではなく、体を必死に動かしながら廊下に出ていく。一歩一歩歩くごとに体中が軋む音が聞こえてきそうだった。
広いリビングに辿り着く。キッチンには朝食を作っていた最中に抜け出したのか、散らかっている。そして、自然と視線はそのままリビングのテーブルの上に置かれているタブレットに視線を移す。
そっと手を伸ばし、タブレットをスリープ状態から解除すると、目の前に表示された文字にくぎ付けになってしまった。
『鉄華団壊滅』
息苦しくなり、焦点が合わなくなってくる。過呼吸になったような感覚に落ち込んでしまい、俺はフラフラした足取りで後退してしまう。
すると、部屋に入ってくる人間と視点があってしまう。
俺より五センチほど高いが、俺と同じ茶髪の男。昔、から変わらない釣り目が目に入った。
「あ、あ……ああぁ!!!」
俺は体がきしむ痛みすら忘れて駆け出していき、寝ていた部屋に戻っていく。ベットに顔を預け、涙でベットが濡れていく。
オルガの顔が、三日月の顔が、みんなの顔が次々とあふれ出てくる。思い出せば思い出すほど胸が苦しくなってくる。
『なぁ、ビスケット』っとオルガが呼ぶことも無いのだろう。
「オルガが……言ったんじゃないか。島を……出たら、話をしようって……!?」
胸が苦しくなり、何度も意識が消えそうになる。それを怖いと感じていた。眠ればオルガ達の事を思い出しそうになる。
しかし、それからの数日間はひどく、食事をまともに取ろうともせず、サブレが入ろうとすれば物を投げるなどの抵抗をつづけた。
あれから数日、まともに食事をとろうとしない兄に対してどうすればいいのか分からず、結果として放っていた。
兄自身はいい加減自分で決めて歩くべき時なのだ。俺ができることは無い、そう思っていると、サラが隣に歩いてきた。
「いいんですか?あのまま放っておいて」
「別にいいさ。兄さんが逃げたいというのならそれでもいいし、立ち向かいたいっと願うのならそれでもいい。兄さんが決めることだ」
それでいいんだ。強引なやり方をした結果、俺は兄さんの説得に失敗してしまった。だから今度はこれでいいんだ。そう思っているとサラはさらに近づいてきてはっきり告げる。
「先輩らしくありませんよ。いつもだったら自分が思ったことにまっすぐ突き進む。それがサブレ・グリフォンでしょ?」
サラは微笑みながらこちらを見てきた。俺ってそんな奴だっけ?それはそれで反省するが……。
少しだけ考え込む。
確かに、オルガの事だって俺がもう少し突っ込んだ行動をしていれば阻止できたかもしれない。
そう考えたとき、どっちが正解なのか疑問を抱いてしまう。
きっと正解は無いのだろう。だったら……俺は。
そう思って立ち上がるとそのまま仕事部屋から出ていく。
ベットの上で泣きじゃくっていたら、俺を引っ張る力で強引に立ち上がると、右頬に鋭い痛みと共に俺の体は強引にベットへと戻された。そこまで来てようやく自分がたたかれたという事に気が付いた。
「な、なにを……!?」
俺の襟首をつかみ顔に近づけたのは弟のサブレだった。
「いい加減にしろよ。ふてくされて、辛そうな表情で、死にそうな面しながら何もしないことが今兄さんがするべきことなのか?」
そんなサブレの言葉に憤りを覚えた俺はサブレを押し倒して、殴り飛ばそうと右腕を上げる。
「なんだよ!?サブレに何が分かるの!?オルガを!三日月を!昭弘を!みんなを失った俺の気持ちがサブレに分かるの!?分かるんだったら言ってみろよ!」
涙を流しながら情けない表情をしている俺にサブレは一瞬だけ間を開ける。その時のサブレの表情は何とも言えない悲しげな表情をしていた。
サブレは俺の額に自分の額をぶつけてくる。
「昔……こうやって母さんに額をぶつけられたことがあったな。その時の言葉を覚えてるか?「私達やサヴァランや大切な友達がいなくなった時……自分の隣に兄弟がいることを忘れないでね。あなた達は二人で一つなのだから。もし、何かを見失いそうになった時、何かを失った時、ビスケットはサブレを、サブレはビスケットを頼りなさい。あなた達は双子の兄弟なのだから」って」
俺はそれを覚えている。母さんが事故で無くなる一週間前の事だった。
忘れていたかった。辛かったから、思い出せば楽しい思い出と共につらいことも思い出してしまうから。サブレの時と一緒だ。
つらいから、怖いから、それから目を背ける。見ないふりをする。
だからサブレの事も見ないふりをした。でも、サブレはそんな俺から目を背けずにいてくれた。こうした今も俺と見向き合い、語り掛けてくれる。
今こそ母さんの言葉が生きる時だ。何のために生き、何と共に生きるのか。俺は今からそれと向き合う事が大切なのだろう。みんなと、サブレと、これからの仲間たちと向き合って生きていく。
みんなからふざけるなと言われないようにしながら。
やっと笑顔になれる気がする。
目を覚まして二週間が経ち、体型もすっかり元通りに戻った。
医者からは「よく食べ、よく動き、よく寝なさい」っと言われてしまっており、しかし、そうはいってもこれからの自分の進路も見えていない身であり、どうしたらいい者かどうか悩んでいた。
その日もサブレは時間通りに玄関から出ていく、しかし、その時だけはサブレはこちらを見ると一言だけ告げて出ていった。
「その涙は誰の為の涙?」
「?どういう意味?」
サブレは俺の疑問に答えることも無く、そのまま家から出ていった。
「俺も……どこかに行こうかな」
サブレから一通りの服と資金は得ているので、どこに行こうともできる。しかし、妹たちへの連絡は俺の進路次第だといわれてしまった。
なんでも、妹たちの元へ帰るのならIDを書き換えてから連絡を許可する。しかし、こちらに残るのならEDMに入り、妹たちへの連絡は一切禁止するっと言われた。
どちらを選択するにせを、まず行動するべきだろう。
そう思い靴を履き、家を出たところで俺はシノの元に行こうと決める。
歩いてバス停まで移動し、そこからバスで中心地まで移動する。
「確か……EDM本社ビル前を通って……」
っと一人呟きながら本社ビル前を横切る前と本社ビル前の小さな広場に集まっている人だかりを眺めてしまう。すると、制服を来た女性が俺とばっちり視線が合う。
「あなたも見学志願者ですか?もう少しで入場です」
といわれながら強引に人だかりの中へと入れられてしまう。
そんなつもりじゃなかったんだけどな~。まあ、サブレの仕事を知るいい機会ではあるけど。
そう思うと、俺は入場者と一緒にEDM本社ビル内に入っていく。
本社ビル内の案内員は社員が担当することになっている。先ほどビスケットを本社ビル内に居れようとしたのは……サラだった。
興奮した様子のサラはそのまま他の案内員の元に急ぐ。レオはマークがゲームしたままで仕事をしようとしないことを咎め、明楽はお菓子を食べていてをするつもりがなさそうである。
「来たわよ……」
「誰が?」
レオとマークがそれぞれ忙しそうにしているので仕方なさそうに明楽が答えた。その態度に納得できないような表情を浮かべつつ諦めて答える。
「サブレさんのお兄さんよ!先ほど中に入っていったわ」
「へーそうなんだ」
「興味ないのね」
明楽はお菓子を喰いながら黙ってうなずく。
今日本日の業務内容にサブレは入っていない。だからだろうが、サブレチルドレンのメンバーは自由気ままに行動していた。
今日もきっとサブレの元に報告がいくだろうっという事だけはサラにはわかっていた。
(まあ、私はまじめに仕事するけどね)
そう思い、そそくさと仕事に戻っていく。
大まかに分けてみて回ったフロアは事務フロア、射撃訓練やモビルスーツ、モビルアーマーの操縦訓練用のシュミレーションマシーンフロアの順に見てまわる。その後、昼食は社員食堂でカレーライスを食べる。その後は、地下列車を通って港一帯にある格納庫フロアを見学していた。
格納庫フロアには小規模だがモビルスーツの整備をしていた。そのモビルスーツの一つは自分がよく知る機体だった。
「こんなところにあったんだ……バルバトス」
二年ぶりに見たその機体は懐かしくあった。ゆっくり見て回ると、奥の扉からサブレが姿を現した。
周囲にいる人達は小声でこそこそと話し始める。
「あれってサブレ・グリフォン?」
「まじで?あの鬼神とか言われている?」
「うわぁ~!俺初めて見たぜ」
サブレって人気なんだ。そう思うと同時にこれがサブレと自分が歩いた時間の違いだと認識した。
俺はどんな数年間を歩いてきたのだろう。マハラジャという人が怖くて逃げだし、おばあちゃんにすら迷惑をかけた。
そうだ、今までのままじゃダメなんだ。
そう思った時、俺は自分の歩くべき道が見えた気がした。
シノが入院している病院に辿り着いたのは既に夕方になってからだった。五階の入院している部屋の前に辿り着くと、俺は部屋のドアをノックする。しかし、返事が返ってくることは無く、俺は恐る恐る部屋のドアを開ける。
部屋の中にはシノがベットの上で横になっていた。上半身だけを起こし、体中は包帯で身を包み、目は死にそうな虚ろで、一瞬だけ俺の方を見ると、もう一度俯いてしまう。
「ひ、久しぶり……シノ」
やはり反応が無い。俺は近くの椅子に座る。無言の間が長らく続くとシノの方から言葉を発した。
「動けるようになったんだな。お前が生きている聞いてから正直心配していたんだ」
「シノの方は大丈夫?再生治療器を使った治療を嫌がっているって聞いたけど」
シノは苦笑いのような微笑みに変わる。
「もういい。辛いことも……火星に変えるよ。ヤマギ達と一緒に平和に暮らしたい。ビスケットだって帰るだろ?」
きっと今のシノが、少し前までの俺なのだろう。俺は覚悟を決め、自分の進路をきっちり告げる。
「俺は……こっちに残るよ。帰ってもチビ達に気を使いながら生きるだけだし、それにいい加減俺自身の意思で歩きたいんだ。辛いからこそ、その辛いを楽しいに変えたいんだ」
俺は笑顔を作る。シノは少しだけ驚きながらこちらを見る。しかし、それは一瞬だけで、また俯いてしまう。
「でも……俺は」
「いいんだ、シノの道もある意味いいとは思うし。でも、俺は……サブレと一緒に歩いていきたいんだ。俺はもう……逃げない」
俺は立ち上がりそのまま部屋のドアに手を掛ける。もう一度シノの方を見る。
「じゃあ、またね」
そう告げて、部屋から出ていく。
エレベーターに乗ろうとしたとき、サブレみたいな人がシノの病室に入っていく姿を見た。
サブレは仕事中だろうし……気のせいだね。
そのままエレベーターに乗り込んでいく。
家の前まで来ると、サブレからメッセージが送られてきた。
『今日は忙しいから近くにいる絵里さんのレストランで食事を済ませてくれ。追伸:明楽はサボった罰で夜勤で帰らないと伝えてくれ』
仕方なしに俺はメッセージに書いてあった地図の通りにすすみ、目的地へとたどり着いた。
木でできた古さを醸し出すレストラン、丸太を積んでできたような家で、ほのかに匂う気のいい匂いが漂ってくる。
俺はそのままレストランの中に入ると、一人の女性が「いらっしゃい」っとこちらに向く。人はそこそこ集まっていて、俺は絵里さんという人を探すため、店内をきょろきょろと眺める。
すると、厨房の方から40代に見える黒髪の女性がこちらにやってきた。
「あんたがビスケットだね?サブレから聞いてるよ。心配な兄貴だってね」
「あ。今日はよろしくお願いします。あと……明楽君はサボった罰で今日は帰らないそうです」
「まったく、あの子は……誰に似たんだろうね。まあ、あの子への罰は帰ってきてから済ませるとして、アンタは食事をすませてしまいな」
そういって、絵里さんは厨房の奥に入り、人の顔ほどはありそうなほどの大盛オムライスにサラダが出てきた。
おいしそうだな。ついよだれが出てしまい。
「そんなにおいしそうな顔されたら作ったかいがあるね。さあ、冷める前に食べてしまいな」
俺は「いただきます」といったのち、オムライスを頬張る。ケチャップで味付けされたチキンライスの特徴的なべっちゃっとした感触に、卵のふわふわさがまろやかを与えている。とってもおいしい。
「あんたの事情はある程度サブレから聞いてるのさ」
俺は絵里さんから昭弘の親戚だという事を聞かされた。
「昭弘たちはどんな子達だった?」
そんな風に聞かれて、俺はありのままの事を教えた。昭弘はヒューマンデブリとしてであったという事、弟の事を気にしていながら死別してしまったこと。俺とは特に兄弟がらみで時折話したことなども話した。
そのうちに思い出していくと、俺達はいつの間にか涙を流していた。
つらいと思ったわけではない。でも……涙が止まらないでいると、絵里さんは頭を撫でてくれる。
そのやさしさにこらえきれない思いが大粒の涙に変わる。
「泣いてもいいんだよ。辛いことを涙に変えて出し切りなさい。そして立ち上がって歩き出しなさい。私は付き合ってあげるからさ」
俺は絵里さんの胸で泣き続けた。
今回のエピローグ
あれから半年が経ち、アルンか完成すると俺はアルンに新設されたEDM教習学校への入学することになった。
今日はその初日である。
本来はサブレの家に泊まらせてもらおうと思ったのだが、サブレは「嫌だ」とはっきり断られてしまったので、絵里さんのご厚意に甘えさせてもらうことにした。
絵里さんの家からバスで近くまで移動した後、おりて五分の所にある教習学校へ歩くと、校門前にサブレが待ち構えていた。
「あれ?仕事は?」
「今からいくさ。その前に兄さんの顔を一目見ておこうと思ってな」
サブレはまっすぐこちらを見ると微笑む。
「涙は晴れたか?」
そこまで言われえたところでサブレが半年前に絵里さんのレストランに俺を連れて行った本当の理由がよく分かった。
つらいことを無理矢理抱え込もうとしていたことにサブレは気が付いたからだと判断できた。絵里さんに合わせることで少しでもそれが晴れるようにという気づかいなのだろう。
「うん。もう晴れたよ」
サブレはそれだけ確認するとEDM本社ビルの方へと行こうと体を移動させる。俺は伝えるべきことを伝えよう。
「サブレ。俺はオルガ達の為に涙を流した。だから、これからはオルガ達の分まで笑って生きるよ。後悔しないように前を向いて笑う」
俺はできる限りのいい笑顔を浮かべた。
サブレはその答えを聞いて安心したのか、微笑みながら立ち去ろうとする。そこで俺は夢の事をかすかに思い出し、サブレに伝えるべきことを口にする。
「サブレ。オルガが夢で言っていたんだけど……「ありがと」って」
サブレは一瞬だけ間抜けな表情を浮かべて、そのまま立ち去ろうとする。
「知らない奴に「ありがとう」って言われてもな」
「そ、そうだよね。また放課後に」
そういって手を振ると、サブレは手を振って返してくれた。そのまま俺は校門を潜り、歩いて校舎の方に向かうと、後ろからタックルを決められ、俺の首に手が回る。
「何?何?」
「よう!久しぶりだなビスケット」
そこには元気になったシノの姿があった。
「シノ?火星に帰ったんじゃ?」
「いや、帰ったって暇だしな。それに、お前だけを置いていくわけにはいかないだろ?」
なんだろう。本心ではないことぐらいしか分からないが、しかし、知っている人が一緒に学校を通ってくれるとだいぶ違う。
俺は無性にうれしくなってしまう。
すると、校舎の方からチャイムが聞えてきた。
「しまった!急ぐぞ!ビスケット」
シノが先に駆け出していき、その後ろを俺が追いかける。
きっとこれからも涙を流すだろう。でも、きっとこれからは誰かを想って流せるはずだ。そして、同じように涙を流す人に俺はこう尋ねる。
『その涙は誰の為に流している?』
どうだったでしょうか?面白かったと言っていただけたら幸いです。次回からいよいよ、元の時間に戻り話は地球編と火星編をつなげるようにするつもりです。
次回のタイトルは『モンターク』となります。