機動戦士ガンダムE   作:グランクラン

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二回目のギャラルホルン戦になります。


アース・ガイドⅣ

<26>

 

「絶対嫌です!」

 ジュリエッタが目を釣り上げ周囲を睨みつけていると、ガエリオが頭を掻きながら説得するための言葉を何とか探し出す。

 ジュリエッタが嫌がっているのは彼女の搭乗機としてカスタマイズされたガンダムバエルだった。

 全体を染め上げる濃いめの緑色と白のコントラストが迷彩カラーに見える。腰にはビームガンソードこと『バエルガンソード』が二丁装備しており、背中には空中戦ができるようにと大出力のスラスターと翼が付いている。

「どうして私がこんな機体に乗らなければならないのですか!?」

 ジュリエッタの不満はガンダムバエルに乗りたくないという一点だけだった。それだけの為に出撃を数分送らせていた。

 エヴォ・エクスは自身の乗機である先ほどジュリエッタが皮肉を述べた機体である真っ赤なガンダムフレーム『ガンダムフェニックス』のコックピットの右隣で待機している。

 ガエリオは困り顔で説得するためのセリフを絞り出す。

「だから、先ほど言っただろう。レギンレイズフレームではパーティクルドライブとの連結が難しく、高出力機ができないと、お前のレベルに合わせるにはガンダムフレームが一番なんだ」

「納得いきません!だったらあそこの真っ赤なガンダムでもいいでしょう!」

 ジュリエッタはガンダムフェニックスをまっすぐ指さしエクスは肩をすくめる。ガエリオはやれやれと首を左右に振る。

「あれはエヴォ・エクス准将の乗機だと言っただろう?今お前の為に使える機体はバエルだけなんだ」

 ジュリエッタはガエリオの乗機である紫と白でカラーリングされたガンダムフレーム『ガンダムキマリスドミネーション』を重視する。濃いめの紫色の楕円形の大型耐熱性シールドを左手に、右手にはビームライフルの機能と、ビームランスとしての機能を持っている『キマリスガンランス』を装備している。背中には大型のブースターとパーティクルドライブが装備されており、腰にはビームサーベルが装備されている。

 どこか納得のいかないジュリエッタは仕方なしにバエルの方へと進んで行く。

「どうして私がこんな機体に……」

 行き場のない憤りを小さな声で吐き出す。

 そんな気持ちも首を振って誤魔化そうとする。首を振る度に彼女の金髪が綺麗な輝きを放っていた。

 

<27>

 

 ファントムブラット隊がリリアンを出てすでに一時間が経過していた。

 ビスケットは既にブリッジの艦長席に座りながらリリアンで買ってきたアップルジュースをぐい飲みし、その傍らで操縦席に座るメイデンはアップルパイを右手で持ちながらほうばり、左手で器用に操縦している。

 そんな姿を後ろで見ていたメアリーは二人に向けて毒づく。

「リリアンで買ってきたアップルジュースとアップルパイを飲み食いしながら仕事するのやめない?汚いわよ。大体、リリアンってリンゴが名産だったけ?」

 そんなメアリーの疑問に今度は同じCIC席に座るイオリが話題を切り替える為に代わりに答える。

「リリアンコロニー4,5はリンゴの果樹園があるはずだよ。他にもブドウや梨みたいな果物の栽培と販売をしているコロニーだからね。他にも野菜何かも栽培してるみたいだよ。一度は果樹園をのぞいてみたいよね」

 メアリーはめんどくさそうな表情を作りつつ「私は嫌」と強く拒絶するが、ビスケットは少しだけ思案顔で考えるとくるっと後ろを向き、

「それもいいね。メイデンはリンゴ好きだし、今度ファントムブラット隊のみんなで果樹園に行こうか」

 メアリーは「ええ~」と心底嫌そうな声を出し、そっと聞き耳を立てていたメイデンはどこかやる気に満ち溢れており、ビスケットは微笑みながらアップルジュースを飲み干す。

 そんな時サブレと明楽はユグドラシル級に備え付けられた娯楽室のボードゲームで遊んでいた。EDM所属のパイロットや整備班が中心となり抗議文を本気で代表に叩きだしたことでかなったこの部屋は様々なボードゲームと飲み物の販売機が並んでいる。それ以外にもソファなども備えつけられている。

 サブレが騎士姿の駒を二歩前に進ませて、明楽の魔法使いの駒を破壊する。明楽も負けじと駒を動かすがサブレはことごとく裏を読み続け、開始して十分も持たずに完敗を喫した。

 ボードに顔を付けうめき声をあげる明楽にサブレは勝ち誇った表情を浮かべながら手元に置いていたジュースに口を付ける。

 明楽はボード上に映し出された完敗の惨状を直視しないようにとゲームの電源を落とす。ほっぺを膨らませながらサブレを睨みつけ、サブレはそれを涼しそうな顔で受け流す。

「なんで……なんで!?」

「お前が弱いからだろ?」

 明楽の叫び声にサブレはさも当然という風に返す。

 目がしらに涙を浮かべ冷たいサブレに何かを訴えるようにジーっと見つめると、サブレは明楽を見ないようにしながら席を立つ。

 席を立ったその瞬間に艦が大きく揺れる。

「なんだ?どうした?」

 サブレはドアの右隣の小さな画面を通じてブリッジへと通信する。繋げた瞬間にブリッジの声がすぐさまに入ってくる。

「現在ヴァルハラの周囲にワイヤーが絡まっています!こんなところにワイヤーがあるなんて……!?」

 イオリが珍しく声を荒げてしゃべっており、メイデンが操縦桿を動かすたびに艦が揺れる。その姿をサブレが確認したその瞬間にはサブレと明楽は娯楽室からパイロットルームへと移動する。

 その間にブリッジではビスケットの指示が受話器型の通信機を通して各所へ飛ぶ。

「モビルスーツ隊は出撃、ワイヤーを斬りながら敵を対処。イオリは敵の索敵に集中。この状況を敵が利用しない手はない。メイデンはアンチビームチャフを展開して、メアリーはモビルスーツ隊との連携を」

 ヴァルハラからミサイル型のアンチビームチャフを周囲に巻いていく。薄緑色の粒子が薄い膜のように艦の周囲に散布されていく。そしてすぐに遠くからの攻撃にアンチビームチャフが反応するが、チャフによって威力を著しく減少させられても直撃した瞬間に艦が大きく揺れる。

 イオリとメアリーは小さく悲鳴を上げ、ビスケットは艦長席の肘当てに両手を付けて自身の体を支える。

 格納庫ではサブレ達が各モビルスーツへと乗り込んでいく。

 サブレがバルバトスのコックピットに辿り着くと、バルバトスが動き出す。同時に明楽が乗り込んだグシオンも同じように動き出し、バルバトスは右側カタパルトに足場を固定し、グシオンは左側カタパルトに固定される。

 明楽が起動画面を動かしていると、左端にイオリが姿を現す。

「現在グレイズが10機、レギンレイズが2機、ガンダムフレームが2機近づいています。各モビルスーツは敵機を撃破しながらワイヤーを破壊してください。サブレさん、バックパックはどうしますか?」

「ソードで頼む」

 バルバトスの背中から真っ赤なスラスターに対艦刀を一つとビームブーメランを一つ備え付けられており、左右の腕に小型のシザーアンカー付きのシールドを付けられると、バルバトスは腰を屈めて勢いよく射出されていく。

 グシオンも同じように腰を屈めて射出されていく、同時にギャラルホルンの方からモビルスーツ隊の姿が視界に映る。

 グレイズが五機とレギンレイズが一機で中隊となっており、ガンダムキマリスとガンダムバエルがさらに後方からヴァルハラに近づいてくる。

「ジム部隊はチャフの外から艦の護衛と援護射撃を頼む。明楽は先にレギンレイズを頼む、赤いレギンレイズはこの間のグレイズのパイロットだろう。俺はグレイズ相手をしながら着実に数を減らしていく。ガンダムフレームが来たら俺はそっちにあたる。明楽はレギンレイズを片付けてこっちにこい!」

 サブレは各機に指示を出すと最初の一撃はジムとグレイズの一斉射撃だった。

 ビームライフルからの攻撃がデブリやシールドに当る瞬間にまばゆい光となって戦場を明るく照らす。

 サブレは背中の対艦刀『政宗』をグレイズめがけて振り回そうとする、グレイズのパイロットはそれをビームアックスで受け止めようとするが、それをガエリオが何とか制止する。

「かわすんだ!対艦刀の斬撃の重さはビームサーベル一つでも厳しいんだ!斧なんて相手にすらならない!」

 しかし、今更アックスの攻撃をやめることができるわけがなく、アックスは政宗の一撃であっという間に弾かれてしまい、そのままコックピットを切り裂きながら機体を左に引き飛ばす。

 グシオンはバスターライフルでレギンレイズへの牽制に入るとレギンレイズはグレイズを囲むように左右に分かれた。

 イヴァンは歯ぎしりしながら相方のレギンレイズの攻撃に合わせて後ろから攻撃を仕掛けようとするが、グシオンは前のレギンレイズをハルバートで受け止めつつ、イヴァンのレギンレイズの攻撃をサブアームのビームサーベルで受け止めた。

「なんという腕前だ。サブアームを手動で動かすだけでも難しいだろうに」

 ハルバートで前のレギンレイズを弾いてイヴァンは後ろに大きく飛ぶと、できた隙にバスターライフルでレギンレイズの上半身を吹き飛ばした。

 イヴァンはサーベルを左右で装備して、ダメージを受けることを覚悟で突っ込んでいく。右腕のサーベルを素早く振り下ろし、グシオンはそれを後ろに飛ぶ事で紙一重の回避をするが、今度は左腕のサーベルを左から右へと振ろうとするのをグシオンは両腕でレギンレイズの両腕をつかんで止めたのちに、サブアームはビームサーベルを抜いてレギンレイズのコックピットに叩きつけた。

 イヴァンの視界いっぱいに映るまばゆいピンク色の光が彼の最後の光景になった。

 

<28>

 

 俺が対艦刀でキマリスのランス攻撃を受け止めると、背後から迫るバエルのガンソードのライフル攻撃をシールドで受け止める。バルバトスでキマリスを蹴り飛ばすと、背中のブーメランをバエルめがけて投げつける。バエルはそれを余裕で回避するが、後ろから戻って来たブーメランの攻撃で左足を切り離した。

 ブーメランを受け止めながらもう一度対艦刀を両方の機体に向ける。

「しかし、さすがに二対一ではこちらに分が悪いな。イマイチ決定打に欠けるな……先に倒すならバエルの方しかないが……、キマリスが妨害に入ってくるしな」

 キマリスは先ほどからバエルをカバーしながら戦っており、ここぞって時には積極的に前に出てくる。

 絶妙なコンビネーションで攻めてくる両機にバルバトスは押していたが、決定打を撃てずに終わっていた。

「バエルに攻撃すればキマリスが前に出てきて、キマリスに攻撃すればバエルが援護に入る。前にコテンパンに叩いているから警戒しているな。どうしたものか……」

 悩んでいると、レギンレイズを片付けたグシオンがバスターライフルで援護しながら突っ込んでくる。

「明楽、お前はバエルを頼む。俺はキマリスを直接叩く」

「了解です!」

 明楽はバエルめがけて突っ込んでいき、ハルバートを振り下ろしバエルはガンソードで受け止めた。押し負けるバエルの腰をグシオンは左側から蹴り上げる。蹴った瞬間に接触通信からジュリエッタの悲鳴が聞こえてくる。

 キマリスがバエルの援護に入ろうとするが、それをバルバトスが妨害するために正面に構える。キマリスはランスでバルバトスを突き飛ばそうとするが、対艦刀で攻撃を捌いて見せる。同じように接触通信越しにガエリオのイラついた声が聞こえてくる。

「邪魔をするな!」

「こっちの邪魔をしているあんた達がそれを言うのか!?」

 互いが互いにイラついた声を発しながら叫んでいると、ジュリエッタと明楽の戦いが変わっていく。追い詰められていくジュリエッタのバエルは既に四肢の半分が取れており、背中の翼がもぎ取られようとする姿がガエリオに一瞬の隙を生じさせる。

 今だ!

 そう感じた瞬間にバルバトスの対艦刀はキマリスのランスを真っ二つに切り裂いた。キマリスは腰のビームサーベルを抜こうとするが、ブーメランを投げてキマリスの右腕を切り裂き、帰って来たブーメランをシールドで弾くと俺はそれをシザーアンカーで回収する。

 あきらめろと言おうと思ったその瞬間に艦に近づく奇妙な感覚を覚えた。

 殺気というのだろうか?そんな誰かの感覚が確かに感じ取れたその瞬間には俺はバルバトスの向きを艦上方に向けていた。

「明楽!ここは任せる」

 明楽はいきなりの事で一瞬だけ戸惑っていた。

 多分もう、こいつ一人でも大丈夫だろうという俺からの期待を受け取った明楽は珍しいぐらいの引き締まった良い表情を浮かべて力強く答えた。

「ここは任せてください!」

 俺は黙ってうなずくとそのまま艦へと戻っていく。

 

<29>

 

 戦闘が始まってすぐにバルバトスとグシオンの戦いをブリッジからビスケットは胃をキリキリさせながら見ている。ジムも艦に近づけさせないようにと戦っており、ジム隊に限っては完全に押されている。

 すると、ブリッジとの出入り口からクレアが姿を現した。

 ビスケットは驚きながら振り返ってクレアを出ていかせようとする。

「何をしているんですか!?ここは危険ですから住居区画まで避難していてください!」

 しかし、一歩も引かないクレアは首を左右に振り、真剣な面持ちで力強く答える。

「どこにいても同じでしょう。私は戦っている皆さんの姿をこの目に収めておきたいのです!」

 クレアの綺麗なブルーの瞳をジッと見つめるビスケットは大きなため息をついてあきらめた。

 間髪入れずに今度はソニアが部屋の中に入ってくる。腕を組み、大きな胸を強調するように彼女はビスケットの前へと出ていく。ビスケットは二人目の侵入者に口をとがらせると、早口になりながら文句を突きつける。

「ソニアさん、入ってくるなら先に説明してくれませんか?大体あなた、今の今までどこで何をしていたんですか?全く見ませんでしたけど」

 ソニアは顔だけをビスケットの方へ向き、体をひねる。再び胸の谷間がビスケットの視界に入ると、先ほどからそれを見ないようにしていたメアリーが自身の胸と比較して周囲を見回す。

 イオリも大きく、クレアもそこそこの大きさ、ソニアは言うまでもない。

 自分の貧相な胸をポンポンと叩き、考えないようにしながらCICに集中する。

 ソニアもいつものようないい人を演じるような笑顔を向けると言いくるめようとする。

「別にいいでしょ?私はあくまでも開発局の局長であって、ファントムブラット隊の所属じゃないから暇なのよ。それに、相手のモビルスーツを見ることも重要な仕事だと思わない?例えば……バエルの装備とかね。しかし、さすがにバルバトスやグシオン相手に苦戦しているようじゃ相手もまだまだね。さすが私が作った機体ね!」

 自画自賛で自らを最大限に褒め称えつつ、居座ろうとするソニアを追い出すことをあきらめたビスケットは再び前へと視線を移す。

 気が付けばバルバトスとグシオンが相手を追い詰めている。

 その瞬間にビスケットとクレアは視線を上へと向ける。

「「何かが上からやって来る!」」

 ビスケットとクレアの声が完全に一致すると、イオリは慌てながら上へと索敵範囲を広げていく。しかし、デブリの中に存在するエイハブリアクターが索敵の妨害になっており、敵が来ているという確信が持てない。しかし、クレアはそれでも力強く立ち上がる。

「敵が来ます!この艦めがけて!」

「メイデン!回避!」

 メイデンが艦を動かそうとするが、まだ少しだけワイヤーが絡まっているせいか、動けない。モビルスーツ隊も敵機相手に苦戦を強いられており、誰一人援護に入れない。そう考えるとバルバトスがすさまじい速度でこちらに帰ってくる。

 イオリは帰ってくるバルバトスが上の方に向かっていることに気が付いた。

「まさか、サブレさんも気が付いたんじゃ……」

 バルバトスはチャフのかすかに上に出ると、何かに向かって対艦刀を振り下ろそうとする、その姿を目の前のモニターでは確認できなかった。

 

<30>

 

 何かが近づいているという感覚が襲った時にはすでにバルバトスを走らせていたし、いまだにそれが近づいていることは分かっていた。すでに視界には真っ赤な鳥のような機体が近づいてくる。

 バルバトスの小型モニターが視界に映った機体に反応を見せると、正面のモニターが緑色のサークルで赤い機体を囲み、機体内のデータが機体名を調べだした。

『ガンダムフェニックス』と書かれていた。

 フェニックス……不死鳥の悪魔。

 赤い体に鳥のような外見は確かに不死鳥を連想させるが、それ以上にあの機体から発せられている殺気のような波動とでもいうのだろうか、そんな言葉にしにくい感覚が確かに俺には感じ取れた。

 あの機体のパイロットはやばいような気がする。そんな気がするという感覚だけで俺は自ら隊列や指示を無視していた。

「間に合え!」

 さらに足元のペダルを強めに踏むと、さらに速度を増していく。バルバトスの対艦刀を構え、速度に任せて振り回そうとすると、フェニックスガンダムは変形していき、ガンダム特有のツインアイが頭部から現れる。腕や足も変形していくと、翼が背中に戻っていく。フェニックスガンダムは腰につけていたビームサーベルを二つ取り出し、対艦刀の攻撃を受け止めようとする。

 対艦刀の薙ぎ払いをサーベル二本で受け止めると、バルバトスとフェニックスの頭部が思いっきりぶつかってしまう。

 バルバトスとフェニックスのツインアイとツインアイの視線がぶつかり、その瞬間に俺の耳に聞いたことのない聞き取りずらい声が耳に入る。

「私が君達の存在を感知できるように、君も私の存在を感知できると言う事かな?皮肉なものだな」

 俺は威嚇するような声を発する。

「なんでお前は俺を……!?」

 笑っているような気がする。なぜこの段階で笑うことができるのか分からないが、それでもこのパイロットがなぜ笑っているのかも俺自身が理解できていない。

 狩人の悪魔と不死鳥の悪魔がぶつかり合い、にらみ合う中戦いは次の局面に向かおうとしていた。




どうだったでしょうか?面白かったと言っていただけたら幸いです。次回は戦闘の続きとアース・ガイド編の終わりになります。
次回は『アース・ガイドⅤ』です!次回もよろしくお願いします!
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