機動戦士ガンダムE   作:グランクラン

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いよいよラブ・イズ・フォーエバーも後半です。次回でラブ・イズ・フォーエバー編も終わりになります。今回から話が大きく動くことになります。


ラブ・イズ・フォーエバーⅢ《覚悟の聖女》

11

 

 テラは窓の外をのぞき込み、議会の周辺に設置している柵の向こう側で多くの人だかりができているのが確認できた。

 この状況を作ったのがククナであることをテラはなんとなく把握していた。

 ククナがテラの身動きを封じるための作戦だろうという事は把握できていて、これがクーデリアを奪取する作戦だと想像していた。

 それをまずいという事は思っていない。

 彼からすればクーデリアをこの地に呼べた時点で作戦は半分ぐらいは成功したと思っている。

 問題は誰かがクーデリアを匿っているせいで正確な居場所をつかめていないというコットだった。

 しかし、それがもしかしたらEDMがかかわっているかもしれないっと思っていた。

 この期に及んでこの地へと姿を現さないという理由、大切な人たちを脅しの理由に使われたにもかかわらず、それでもこの場所に近づかない理由。

 それが誰かがクーデリアを押さえているという事だろう。

 彼女が町中に一旦は言ったことまで木星帝国は把握できていた。そして、ここ数日内にククナが捜索隊らしい人物をスラム街に居るところを目撃している。

「はてはて……どうしたものか……」

 この場所まで連れてくる必要があると思い、レジスタンスと呼ばれている反政府運動家たちへの接点を今日まで続けてきた。

 そして、今日は彼らを分断する算段をたて、同時にこの地までクーデリアを連れてくる計画を立てることした。

 それでも、ククナはそれを最低限で理解されていると把握したうえで作戦を動かすことが重要であった。

 そんな中、サブレ・グリフォンがスラム街に姿を現したというホームレスの男からの証言で判明した。

 テラはレジスタンスのメンバーに連絡を飛ばした。

『クーデリア・藍那・バーンスタイン発見。スラム街に居ると思われる』

「これでレジスタンスはクーデリアを連れてこの地まで来てくれるだろう。あとはサブレ・グリフォンが付いてきてくれればそれでいい。ついてこない場合の手を打っておく必要があるだろう」

 そう思い、ある情報をネット回線に流す。

『クーデリアが大量虐殺兵器を使う為のカギを持っているらしい』

「さあ、どう動くサブレ・グリフォン」

 

 ククナは四日前の段階で舌打ちをしてしまった。

 天候兵器をフォルテッシモに搭載しクリュセの地下に潜ませることでクリュセを周囲から孤立させることに成功した。

 同時に電波妨害波をクリュセを中心に起こさせることで完全孤立状態にすることに成功した。

 しかし、エガーが脱走した結果でフォルテッシモの機能も停止してしまった。

 それにテラがなんとなく関与していることは把握していた。テラからすれば周辺の部隊の情報が入らないこの孤立状態は面白くないことだろう。

 そんな状況に際し、アインはすぐにクリュセ市内に入り込んだ。

 しかし、そんなアインはすぐにエガーを見つけ出したが、同時にもう二人を発見することにした。

 クレアとサブレである。

 それ故にすぐには手を出さず、状況を静観することになった。しかし、この時のアインにミスがあるとすれば、クーデリアを発見できなかったという事である。

 ククナはクレアがいることを把握したとき、エガーを利用するという案ででた。

 問題があるとすれば、ククナが動いた場合、テラが手を打つことがあるという事である。

 その為にククナはククナで元ギャラルホルンのメンバーに連絡を入れた。同時にレジスタンスの反クーデリアメンバーの方に連絡を討ち、クーデリアが議会内に姿を現す可能性があると連絡した。

 こうすることでテラへと手を打つことにした。

 この策がどういう結果になるのか誰にもわからない。

 

12

 

 クーデリアが焦っている理由をなんとなく俺には理解できていた。出来たうえで俺は無視することにしていた。

 て言うか、彼女の性格と性質上俺とかかわることが化学反応の結果空中分解を起こしかねない。

「まるで薬品のように言うね」

「ツッコミが平凡」

「だったらもっと分かりやすいボケをしたらどう?」

 ブロンズヘアーの美人であるところのアスナにきつめのツッコミを入れられてしまう。ふむ、分かりにくかったかな?

 仕方ない、別のボケを考えてみよう。

「布団が吹っ飛んだ(棒)」

「もっと心を込めてよ~(棒)」

「アイ ラブ ミー」

「よく聞いたら自分が大切という究極の自己主張ね」

 そんな面白いのか面白くないのか分からないやり取りをここ数日続けていたりする。

 しかし、アスナはもっと面白いことを要求されているような目をしているような気がする(単純に批判的な目にも見えなくはない)。

「心を込めてアスナに言いたいことがある」

 アスナは俺のマジトーンに驚きを隠せずにおり、なぜか頬をほのかに赤く染めてしまう。俺はアスナの右手をさしく握りまるで手の甲にキスをするのではないかというほどに上にあげる。

「な、何?へ?ちょっと待って……!私……」

 俺はやめてほしいという彼女の願いを断る様に近づいていく。ついに俺と彼女の間の距離を最大限まで詰めたところでアスナは目を強く瞑る、まるでキスをするかのように唇を尖らせる。俺は彼女の耳もとまで移動して一言発する。

「さっきからスカートの端がめくれてるよ」

 素早いハリテが飛んできた。

 俺の左頬に赤い紅葉の模様が浮かんでいるが、これは自分自身の所為なので気にしないことにする。

 さすがにやり過ぎたと反省。

 閑話休題

 

 しかし、そんな楽しいやり取りをしている最中でアスナはまるで真面目そうな表情を浮かべている。

「真面目そうなんて言わないで」

「心を読まないでくれよ」

「顔に書いてある」

「地の文を読まないでくれよ~」

「この世界は小説だったの!?」

 面白いやり取りをしているほうがよさそうな気がする。なんていうか、真面目なレレと若干感性がずれているクレアではこんなに面白いやり取りができないからな。

 まあ、レレをからかっていると面白いんだけど。

 しかし、今回の場合はしつこすぎてアスナに怒られてしまった。というか土下座させられた。見下しながら怒られた。

「真面目に話すつもりは無いという事?」

「まさか……」

 そんなつもりは無い、ていうか真面目に付き合ってくれる方がいけないと思うけど。

「……それより、どうしてクーデリア様とあんな感じの距離の取り方をしているのですか?」

 それをいつか聞かれるとこの四日間覚悟していたつもりだった。仕方ない、こう真正面から聞かれた以上は返すしかない。

「バーンスタインの魅力というか長所は何だと思う?」

 本来なら質問に質問で返すなんてことをしたら突っ込まれるかもしれないが、流石に真面目な表情の人間にツッコミを入れるほどアスナも無粋ではない。

「……カリスマ性みたいなものでしょうか?なんというか綺麗というか……人を導く指導力があるというか………あ、後運がいいと思う」

 まあ、一般的な視点から見たらそういう反応になるよな。

「それはあくまでも上辺のだけのものだ。俺やEDMの代表であるマハラジャみたいな人間からすれば彼女の最大の魅力であり長所は………『騙しやすさ』や『利用しやすさ』なんだよ」

「利用しやすさ………」

 同じ言葉を復唱する彼女がそれを受け入れたくないという気持ちは分からないでもない。しかし、きっと俺の意見は『ラスタル』や『マクマード』だって理解しているだろう。だって、彼らも彼女を『利用した』側の人間なのだから。

「そもそも、バーンスタインが世間に出てきたノアキスの七月会議の成功だってアリウムの後押しがあったからだ。アーブラウやドルトの一件も蒔苗やマクマードやノブリスの後押しがあったからだ。勿論『運』のようなものがあったというのは否定できない。しかし、問題なのは彼女の内にあるカリスマ性は他人が利用してくれないと発揮できないという事だ」

 それが彼女の失脚劇にそのままつながったといえる。少なくともマハラジャはそう呼んだ。マクマードがいなくなり、ラスタルが亡くなって以降彼女の支持率は落ち込んでいた。これは周囲から利用される環境が木星帝国が揺るがしたためでもある。いや………木星帝国の狙いはそこにあったのかもしれない。

「だからだろう、木星帝国の火星侵攻の素早さの裏にはそういう理屈がある。そう思えば逆になんとなく納得できる部分はあるだろう?逆に俺が彼女に必要以上に仲良くしたくないのは、俺の持つ影響力が彼女にどういう悪影響を与えるのか分からないからだ。最悪この街が滅びる級の影響だった場合逃げるしかなくなるしか」

「そういう問題?」

 白々しい目で見られてしまうが、決して冗談だけで話をしているわけでは無い。俺とバーンスタインはそれだけ相性が悪い。仲が悪いというわけでは無く―――――

「仲良くなれば逆に経済的な影響が大きいという事だ。バーンスタインは経済的な影響力を既に持っている。そういう意味で化学反応という言い方をした」

 まあ、最悪という考え方ではある。

 そんなことにはならないだろうという考え方が俺の思考内にはある。

 そう考えたところで俺はふと後ろからの視線に気が付いた。振り返り見回しても既に視線の主はいない。

 ここ数日外で過ごしている理由の大半はこの視線が理由だったりする。この視界に嫌な予感がしていた。なるべくクーデリアの居場所を教えるわけにはいかなかった。

 なんとなく……この視線がアインのモノのように感じたからだ。

 

13

 

 エガーはスラム街と中心街の境にある商店街のような場所におり、イオリと共に火星ヤシで作られたジュースを飲んでいた。

 しかし、飲んだ矢先にエガーはまずさに吐き出しそうになる。すると、販売していたおばあちゃんが笑いながら説明してくれた。

「おお、はずれを引いちまったね。火星ヤシは不味い外れあるのさ。このジュースは何回か飲んでいると時折不味い時がある。まあ、ちょっとしたギャンブル感覚だと思いな」

 ケタケタと笑うおばあちゃんをしり目にエガーはオドオドした動作でもう一度口にジュースを運ぶ。その間にイオリは心配そうな表情で見守っていた。

 しかし、今回はまずくなかったようで飲んだ瞬間に笑顔になるエガーを見てイオリも得外になってしまう。

「おいしい。最初呑んだ時はまずくて吐き出しそうになったよ」

「ふふふ」

 イオリはつい微笑みながらジュースを飲み込む。すると、イオリもはずれを引いてしまったようで今度は吐き出してしまう。

 エガーは笑いながらティッシュを取り出してイオリの口周りを丁寧に拭き取る。

「あはは。はずれを引いちゃったね」

「笑い事じゃ……」

 恥ずかしそうにしているイオリにエガーは笑顔で返す。

 ここ最近はイオリはメアリーに内緒でエガーと会っていた。しかし、メアリーは心配になっていた。イオリが自分に何も告げずに勝手に出ていくことに不安を覚えた。

 双子として一緒に育ってきたメアリーからすればイオリが自分に何も告げないことは今まで存在しなかった。

 いつだって自分に相談していたイオリに秘密ができたことをうれしく思う反面不安にも思う。

 だから今回はこっそりとついていこうと考えクレアの反対を押し切ってついてきていた。

 クレアはエガーを見ようとせずどこか気持ち悪そうにしている。

 そんなクレアに不安に思ったメアリーは心配そうにしながら話しかける。

「大丈夫?なんかさっきから気持ち悪そうだけど」

「いえ……何かあの男の人………気持ちが悪い」

 なんとなく、あれが自分に近い存在だとクレアにはわかっていたのかもしれない。同時にエガーもまた近くに何かがいるとわかっていた。

 そんな風景をアインはずっと見ていた。

「ちょうどいい。作戦を実行に移すか」

 そう思い彼は物陰から出ていき、エガーの元へと歩いていく。エガーに近づく人影をメアリーははっきりとみており、それがサブレから報告にあったアインだとすぐに判断できた。しかし、先にそれを把握し言葉にしたのはクレアだった。

「アイン!?」

「やっぱり。クレアさんはここに居て!」

 そう言ってクレアを物陰に隠したままで出ていく。同時にエガーはアインの姿を見た瞬間青ざめていく。

「探したぞエガー」

 これは嘘である。とっくに見つけていたにもかかわらず、今日まで放置していたのは利用価値が最大まで高まるのを待っていたからである。

 イオリもまたサブレから聞いていて為にアインの正体に気が付いた。

「あなたは……アイン・ダルトン」

「ほう……そうか、サブレ・グリフォンから聞いていたのか、だったら自己紹介をする必要性が無いな」

「大丈夫!?イオリ」

「お姉ちゃん!?」

 メアリーは一人でアインとイオリの前に立ち尽くし、アインに警戒心を丸出しにする。

 アインは残酷な表情を浮かべながら言葉に力を載せる。

「『強制命令:滅ぼせ。すべてを』」

 エガーは頭を抱え苦しみ始める。イオリは心配そうな表情を浮かべながら抱きしめ声をかける。メアリーはアインを睨みつけ怒鳴りつける。

「何をしたの!?」

「この男はクレア様のDNAで作った人工人間だ。最も、人工人間の中でも成功作であり失敗作でもある。言う事を聞かないからこそ、強制的に言うことを利かせる力が必要だという事だ」

「じゃあ……こいつは」

「そう………敵だよ」

 アインは残酷そうな表情を浮かべていると、アインは少しづつ下がっていく。

「最後に一言だけ言っておくよ。そいつを殺すことを進める。そうでないと………みんな死んでしまうぞ」

 そう言って建物の陰に入ってしまう。

 メアリーはアインを追うか、それともイオリを助けるかで悩み、結果としてイオリを助ける道を選んだ。

 エガーに銃を向け引き金を引こうとする。しかし、それをイオリが身を盾にするように邪魔をする。

「どういてイオリ!そいつを生かしていたらこの街が滅びるのよ!」

「駄目……!何か…何か方法があるはず」

 エガーはイオリをメアリーの方へと押し出し、イオリに向けて無理矢理笑顔を向ける。

「エガー!?」

「き………君は……僕の」

 メアリーはイオリを押さえながら片手で銃を向ける。

「はや……く、僕……を!」

 苦しみながら銃の引き金を引こうとしたその瞬間に地震の揺れで銃の照準がずれ弾丸は遥か右端へとずれてしまう。

 メアリーはまずいを気配を感じ取り、そのままクレアの元へと撤退する。その間もイオリはエガーの名前を叫んでいた。

「エガー!!エガー!!!」

 しかし、探していた場所にクレアは既にいなかった。

 

14

 

 サブレは地震の揺れで体勢を崩しそうになる。同時にアスナも体勢を崩しそうになっているのをサブレは支えてやり、同時に雪之丞の会社まで引き返していた。

 しかし、中の様子がおかしいとアスナは真っ先に部屋の中に入っていき、事務所までの出入り口で倒れているエンビを発見した。

 アスナはエンビを抱きかかえ、彼に問いかける。

「どうしたのですか?」

 エンビは申し訳なさそうな表情で謝りながら一筋の涙を流す。

「すいません。クーデリアさんをみすみすレジスタンスの連中に……!」

 サブレはハッと意識を切り替え、会社の出入り口から走って出ていく。通りの前を念入りに調べていると、車が止まっていた跡を見付けた。

「子供達や俺を守る為にクーデリアさんはわざと奴らに……」

「してやられた」

 サブレはつぶやき、そのままエンビに近づいていく。

「エンビと言ったな。前に俺が言ったソニアという女が待機している拠点の場所を覚えているか?あそこまで子供達を連れて行け」

 エンビは悔しそうにしながら「分かりました」と言って子供達を連れながら移動していく。サブレはアスナにもついていくようにと促すが、アスナは力強い表情と瞳をしながらサブレに問いかける。

「私もついていきます。何もできないままの自分ではいられないです」

 俺はアスナを説得する言葉をあきらめ、道路側へと視線を向けたとき同時にアインが隠れていることに気が付いた。

「アイン!!こそこそしていないで出てきたらどうだ?」

「そう怒鳴りつけるな」

 そういいながら物陰から姿を現しアインはヘラヘラと笑いながら姿を現す。

「いいのか?仲間を助けに行かなくて」

 何を言っているのか全く分からなかったが、きっとクーデリア・藍那・バーンスタインの事だと理解しはっきり言ってやることにした。

「バーンスタインは別に仲間じゃない」

「バーンスタイン?そうか……ここにいたのか。しかし、ここにいないという事は………テラが連れて行ったのか」

 小声で何かをぶつぶつ呟き、確信したような表情を浮かべる。しかし、その後に続いて口にした言葉は予想外の言葉であった。

「そっちではない。イオリ……って言ったかな?助けに行かないと危険だぞ。もうじき彼女はこの街と一緒にモビルアーマーの餌食だ」

 なんて言った?イオリ?危険?何の話だ!?

 俺はとっさに駆け出そうとしたが、アインは面白がるように新しい事実を述べた。

「ああ、イオリとかいう女をあきらめてクレア様を助けに行くという手もあるな」

 クレアを助けに行く?

「クレア様は今頃ククナ様の手の者が回収しているところだからな」

「なんで!?イオリやクレアがこの街に居るんだ!?」

 そっちの事実に驚きを隠せない。

 俺が動揺していると、さらに事実をさらけ出す。

「それともレレとかいう女を助けに行くか?」

「お前!!レレにも何かを言ったのか!?」

「ああ、EDMの地上部隊に『クーデリア・藍那・バーンスタインはこちらが確保した』と告げておいた。今頃ククナ様の手の者が襲撃している頃だしな、おそらくレレという女が単身この地に近づいているとも思うまい」

 クソ!こいつ。完全に楽しんでいる。この状況を!!

「その表情だ!その表情が見たかった。お前のスタンス、強欲とも見れる誰でも大切にするその姿勢は逆に言うと、全てを大切にする半面一人を決めることができないという事だ。お前は一人を選べば、ほかの誰かを傷つけてしまう事を理解しているからだ」

 アインの前に一台の軍用車が彼を庇うような形で停止する。

「お前の選択肢は全部で四つだ。一つ目『イオリとかいう女を助ける』、二つ目『クレア様を助ける』、三つ目『レレとかいう女を助ける』、四つ目『クーデリア・藍那・バーンスタインを助ける』だ。悩み、苦しみ、くじけてしまえ」

 まるでその言葉は呪いの言葉のように聞こえた。

 足元がふらつきそうになってしまう。

「では……さらばだ」

 そう告げてアインはその場から立ち去ってしまう。

 どうする?どうすればいい!?俺は誰を助けに行けばいい!!??

 そんな、悩む俺にアスナは覚悟を決めた瞳で言葉を放つ。

「私はクーデリア様を追いかけます。あなたはイオリという方を助けに行ってください。クレアさんという方はイオリさんの後でいいと思います。あの人は連れ去ったという言い方をしました。という事はクレアさんに利用価値があるからだと思います。すぐにどうこうするとは思えません。だったら、助けに行くべきは命の危機に瀕しているイオリという方だと思います」

 はっきりそう告げる瞳は覚悟をはらんでいた。しかし、そんな言葉を鵜呑みにすることはできない。

「お前がバーンスタインを追いかけてどうする?お前が議会の前にいるころには彼女は中だぞ!?」

「でも、この場所でおとなしくなんてできない!もう、我慢しないことにした。自分にできることをただ貫くだけだから」

 そして……アスナは俺に思いを告げる。

「私は……あなたが大好きです!愛しています。そういえます。でも、その気持ちを言わなかったのはあなたが一人を決めることを恐れていると分かったからです。きっと、クレアさんもレレさんも同じ気持ちだと思う。だから、あえて自分の気持ちを告げなかったんです。でも………私はそうしません。私はずるいと思う」

 アスナは「それでも」っと言い、俺に一気に近づきキスをする。そして、驚きを隠せずにいるとアスナは笑顔を見せる。

「私はあなたが大好きだから。他の人達に負けないぐらいに。だから、聞かせてください。みんなを助けた後で、私達に聞かせてください。あなたが悩んで出した答えを私は馬鹿にはしません」

 俺は卑怯だ。女にこんなに勇気を振り絞って告白して、そのうえで俺の答えを待つと言ってくれる。

 なのに、そんなに俺は臆病な俺にいまだに愛想尽かそうとせず、それでもはっきり待つといわれる。俺もいい加減覚悟を決める時が来たのだろう。

 逃げ続けてきた思いに、決着をつける。

 イオリを助ける。クレアも助ける。レレも助けて、アスナも助ける。そして、答えを出す。

「分かった。みんなを助けてお前とレレの元に行く。そして、答えを告げる。約束する」

 そう言うとアスナはそのまま駆け出していく。遠く離れていく彼女に俺は大きな声で告げる。

「レオをそっちに向かわせる!!まずはレオをそっちに向かわせる!!いいな!」

 アスナは笑顔で答えてくれた。

 俺は安心して駆け出していく。




どうだったでしょうか?次回はつらい話になると思います。今回は火星編の中でも前後編になっており、今回のラブ・イズ・フォーエバーはその前編になります。なので、ラブ・イズ・フォーエバーは四話、その次に話す『ウィー・ラブ・ユー』に続くことになります。
次回のタイトルは『ラブ・イズ・フォーエバーⅣ《永遠の愛を君に》』になります。

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