機動戦士ガンダムE   作:グランクラン

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ラブ・イズ・フォーエバー編最終話になります。このまま後編へと話が続くことになります。


ラブ・イズ・フォーエバーⅣ《永遠の愛を君に》

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 揺るがない意思と迷いのない決断力。いつだって俺が周囲に言い続けてきたこと―――――、「自分の道と意思は自分で決めろ」それは俺自身の正義でもある。

 迷う事はそれだけ時間の無駄になってしまう。そんな時間があるのなら俺は『トライ&エラー』を繰り返すだけだ。

 何度だって挑戦し、失敗するたびに反省を繰り返すだけ。

 何度だって挑戦する。その大切さを教えてくれたのは………オルガ、お前だった。

 お前のその姿勢が俺のすべてを変えたといっても決して過言ではない、今までの俺は完璧であろうとしている分、どこか人間らしさを見失いかけていた。

 そんな完璧さとは真逆のオルガは俺にとって憧れの人物と言ってもいいのかもしれない。

 お前の濁っている生き方、みんなと汚れて、みんなと一緒に生きていきたい―――――、そんなオルガを羨ましいと思うようになった。

 サイガの事も―――――、オルガの事も―――――、羨ましいと思うようになった。

 俺の持っていないモノを持っている二人を羨ましいと思うようになった。いや―――――、憧れるようになったの間違いだろう。

 まあ、そんな事を言えばオルガやサイガはきっとこういう―――――、「俺の方こそお前に憧れているんだぞ」っと。

 結局俺達は互いに憧れ合っているのかもしれない。

 人間というのはお互いに似た人間に好意を持ちがちだが、逆にお互いに違うところを持っている人間に憧れを抱くものなのかもしれない。

 でも―――――、オルガと出会い、サイガと出会う事で己の中に存在する『闇』を知ってしまった。

 その『闇』の正体と誕生の経過を俺はこの悲恋の先に知ることになった。

 嫌、俺は知っているべきだったんだ。

 おかしいと気づくべきだったんだ。

 この『クリュセ事変』と呼ばれる一連の騒動がたった一人が起こしていた事だったなんて、だって―――――、そいつを俺や兄さんは知っていたはずなんだから。

 『黒』という名前の『どす黒い闇』は―――――、グリフォン家の家庭環境が生み出した『闇』だからだ。

 だから俺は許せないんだ。その『闇』がオルガやサイガを殺したという事実を俺は否定できず、逃げることはできない。

 そして、その『闇』が今度はクリュセに生きるすべての人を利用する形で俺を追い詰めようとしていることを俺は否定できない。

 だって―――――、その『闇』の存在理由は俺と兄さんを追い詰めることなのだから。追い詰めて、問いかける。

 逃げていないか?誤魔化しているんじゃないのか?なあなあで済ませていないか?それでいいのか?お前は………お前達は最低で最悪の人間じゃないのか?

 そういう風に問いかけている存在でもある。

 そいつが、エガーとイオリの悲恋を引き起こしたのだから、俺はイオリに合わせる顔が無い。

 

16

 

 街中を駆けていく中、クレアの事を、レレの事を、アスナの事を想う。思い出す。

 俺は最低の男だと思う。誰か一人を選ぶことが、他の大勢を傷つける行為だと理解し、その結果逃げる事を選んでしまった。

 しかし、またその行為も彼女たちを傷つける行為だと知ってしまった。

 知ったのなら見て見ぬふりはできない。決めなくてはいけない時が来たのだ。

 だが、その前に俺は救わなくてはいけない。仲間を、イオリを―――――、たとえイオリに嫌われることになったのだとしても、イオリに憎まれる結果になっても、それぐらいは背負う。

 それに、俺を嫌う事で、俺を憎むことでイオリが前を向くことができるのなら。俺はその憎しみを背負う。

 走り去り、大通りに出たところでクリュセの端の方で大きな地響きと揺れと共に地面から赤い大きなモビルアーマーが姿を現した。

「俺が……!?イオリ、無事でいてくれ!!」

 ダメだ!このまま走っていたんじゃ間に合わない。

 そう思った時、俺は大きな声を上げた。

「来い!!エデン!!」

 周囲の人間たちはモビルアーマーから、議会の方から逃げていく。そんな中、エデンはまるで俺の声が聞えていたように姿を現した。上空から飛来し、俺を右手で回収する。

 俺はそのままエデンのコックピットの中に飛び入るが、中には誰もいない。

 どうやってここまで来たのかは考える暇がなかった。

 俺の意識を組み、自動で動いたようであり、俺は操縦桿を強く握りしめそのままモビルアーマーの元へと向かう。

 モビルアーマーの様子を上空から確認しつつ、イオリ達の姿を探す。

 

 モビルアーマーは全身を赤で統一されており、背中にはプロペラが付いているドローンが収納されているのが上空からはよく分かる。左右に伸びている大きな羽のようなアーマーには片方に三個もの拡散ビーム砲が付いており、合計で六個存在する。前と後ろに大きな実体のクローが二個ずつ付いている。

 

 そして、そのモビルアーマーの目の前でイオリとメアリーを発見した。

 イオリと連れて逃げようとしているメアリーと、抵抗しているイオリの姿を見える。

 そんな時、イオリがどうしてそこまでしてあそこにとどまるのかよく分からなかった。だが、ここで見捨ててはおけない。俺は急いでイオリとメアリーの前に降り立った。

「ここから離脱するぞ!」

 俺の怒鳴り声に近い声を聴いてメアリーは「お願い!」っと返すのに対し、イオリだけは「エガー!」っと誰かの声を叫び続けている。しかし、その『エガー』がおそらくモビルアーマーのパイロットだろうということぐらいは俺にも分かった。

 逃げようとしたとき、モビルアーマーはコンテナからドローンを広範囲に展開させる。

 嫌な予感を感じさせつつ、拡散ビーム砲が六個全部攻撃態勢を作る。しかし、その攻撃は予想もつかない形で周囲から襲い掛かってきた。

 放たれた拡散ビーム砲の攻撃はドローンに向かい、ドローンはその攻撃を屈曲させて地面にあられのように降り注ぐ。

 咄嗟にリングファンネルを防御モードで展開させ、両手でイオリとメアリーを守る様に包み込む。

 一旦攻撃が止んだ瞬間に俺は二人を落とさないように、急いでモビルアーマーから距離を取る。モビルアーマーは移動速度がほとんど存在しないのだろう。実際、エデンが移動していても追いかけようとはしない。俺はある程度距離を開けたところで二人を下ろしてそのままモビルアーマーの元へと向かった。

 

17

 

 初めて出会た時、私―――――、イオリはエガーに怪しいと思ったことは無い。純粋で優しそうな表情をしたエガーに心を惹かれた。

 二日目、同じ場所で私を待っていたエガーと一緒に商店街を見て回り、猫と戯れながら遊んでいた。

 三日目、先に行って待っていようと朝日が上がる前に待ち合わせの公園に向かった。しかし、エガーはそんな私より早く待っていた。

 彼曰く―――――、「僕には帰る場所が無いんだ。帰りたい場所もない。君と同じ場所に居たい」っと言ってくれたことがとてもうれしかった。

 四日目、私はエガーの秘密を知ってしまった。

 彼が知られたくない秘密だった。なのに、私は彼を救ってあげることすらできなかった。

 彼が苦しみ、殺してほしいと懇願したところで私はようやく彼に恋をしていたのだと思い知った。

 もっと早くに彼の苦しみを知っていれば、もっと早くに私が誰かに相談していればよかったのかもしれない。

 何が正解で、何が良かったのかすら分からない。

 いっそのこと出会わなければこんなに苦しい思いをしなくても済んだのかもしれない。

 でも、私は―――――、エガーに出会えてよかった。それだけは言える。

 

 僕は試験管の中で生まれた。知らない人間のDNAで作られた人工人間。生まれたときから自分が何の為に生きているのかが分からなかった。

 自分は生きている意味があるのか分からない。

 でも、イオリと出会い、その意味を知りかけた。

 楽しかったんだ。待っている間ですら楽しかった。

 次の日の事を想うだけで心がポカポカと温かくなる。あそこに行きたい、知らない所に行ってみたい、これからも………でも、それもこれで最後だよ。

 君を傷つけるくらいなら僕は死んだほうがましなんだ。

 君を愛しているとわかった。

 僕は君への永遠の愛を誓う。だから………泣かないでほしい。

 

18

 

 モビルアーマーの右肩に『フォルテッシモ』と英語で描かれており、そこでようやくモビルアーマーの名前を知ることになる。

 拡散ビーム砲はドローンを経由してエデンの下の方から襲い掛かってくる。右へと大きく移動していき、俺がいたところをビームが通り過ぎていく。

 よく考えればビームのメリットを最大限生かした戦法だと思う。常に拡散ビーム砲が襲い掛かってきて、俺はビームサーベルを二本抜きビーム砲の連続攻撃を回避しつつフォルテッシモに近づいていく。しかし、近くなればなるほど三百六十度全方位から常に攻撃を浴びせるという不本意な状況になる。

 再び距離を取る。

 しかし、今度はフォルテッシモは周囲に逃げまどっている人々へと攻撃の矛先を向け始める。地面にミミズ腫のような痕跡が刻まれている。

 やばいという気持ちが先行しフォルテッシモに近づいていく。まるでそれを待っていたように後ろから屈曲したビームが五本襲い掛かってきた。俺はとっさに防御モードへとリングファンネルを展開して攻撃を受け止める。

 一点に収束された五本のビームはエデンを近くのビルにぶち蹴るほどの衝撃を与えた。

「ぐうぅ!」

 コックピット内にも衝撃が伝わってきて大きく揺れる。すると、正面のモニターにビームのまばゆい光が見えた。正面に防御モードで展開したリングファンネルが少しづつ限界に近づいていく。

『防御モード限界まであと30秒』

 そんな無慈悲な言葉に俺は舌打ちをするしかない。

 ダメか?そんな風に覚悟を決めていると、イオリの声が聞えた気がした。そんな瞬間にフォルテッシモの攻撃が一旦止み、俺の視界が開けた途端、視界の端にイオリが見えた。

「逃げろ!!」

 そんな俺の声など届くはずもなく、イオリは声を上げながら走っていく。

「エガー!出てきて!私を一人にしないで!」

 機体をビルの中から起こし、フォルテッシモは攻撃態勢をイオリへと向ける。そんな時、ある男の声が聞えた。サイコフレームが届けてくれた言葉は俺に躊躇を取り払った。

『僕を………僕を殺してくれ。彼女を殺したくないんだ!!』

 エデンのビームサーベルが二本を引き抜き、そのままフォルテッシモのほうへと走っていく、拡散ビーム砲にビームサーベルを差し込み、そのままイオリの方へと駆け付けていく。大きな爆音と地響き、空気が振動するような感覚を周囲に与えていく。そんな中、イオリの悲鳴が俺の心に傷を与える。

「エ、エガー!!嫌ぁぁ!!!」

 涙を流してただ手を伸ばすイオリを守ってやることしか出来なかった。

 俺は………無力だ。

 

19

 

 イオリは「エガー」っとつぶやきながら、涙を流しながら必死になって探していた。フォルテッシモの残骸の中からコックピットを、エガーと呼ばれている人間を探そうとする。

 何度も、何度でもつぶやき続けながら。

 俺はコックピットの中からそれを見守ることしかできなかった。

 メアリーもようやく追いつき、イオリの元へと行こうとする。しかし、俺はメアリーの前にエデンの手を置いていく道を遮る。

 一人にするべきだ。

 そして、ようやく見つけたコックピットからは機械の破片を体中に突き刺さっているエガーと呼ばれている若者の姿だった。

 まだ、体の形が残っているだけましというものだろう。

 イオリはゆっくりと抱き上げ、何度も彼の名前を叫び、何度も涙を流す。

 エガーはゆっくりと目を開き、イオリの涙を右手で痛々しい腕をさらしながら拭き取った。

「な、なか………ないで。君が……生きてい…るだけで……うれ………しい」

「どうして……?私を置いていかないでよぉ」

 強く抱きしめ、エガーは嬉しそうに微笑んだ。

「君は……僕の……太陽…だから」

「私も……あなたは太陽だった。だから……!」

 生きていてほしかった。それがイオリの本心なのだろう。

 しかし、エガーは彼女に自分の思いを告げる。

「忘れ…ないで……いて………、きっと……僕な…んかより……いい人…が…見つかるよ。新……しい…恋…をして……幸せ…になって」

 最後の力を振り絞り、自分の思いを告げる。

「そして……その…人……としあ……わせになって。僕……は、君……が幸せ…に……」

 そこで力尽き腕は地面へと落ちていき、エガーがその先を言うことは無かった。

 イオリの悲鳴のような声が周囲に響かせ、議会から聞こえてくる銃撃音が俺の怒りを増幅させるには十分だった。

 

20

 

今回のエピローグ

 

 イオリとメアリーを連れてサブレはソニアの元へと連れていき、そのまま去っていった。

 イオリは終始エガーの遺体を抱きしめていたが、ソニアは「そろそろ埋めてやりな」っという言葉に最終的には納得してソニアと共に埋めてあげた。

 その後はイオリは座り込み涙を流し続けていた。

 そんな時、シムカスとメテオが合流した。

 シノはメテオから降りてきて、サブレからの伝言をソニアから聞くことになる。

「レオとマークが既に先行しているってさ。どうもレレちゃんが独断で議会の中に入り込もうとしているらしくて、レオ、マークとアスナとかいう女性と共に議会の中に入ってクーデリア・藍那・バーンスタインを救助してほしい」

 それがサブレからの伝言だった。

 それを聞くとシノはイオリの方へと近づいていき、「大丈夫か?」っと訪ねる。勿論、何があったのかはまるで分らなかったが、明楽と共にイオリのみに何かが起きたという事は姿を見れば明らかだった。

 イオリは涙目になりながらシノと明楽の方へとみると、シノの姿とエガーの姿が重なった気がした。一瞬だけ期待したのかもしれない。しかし、一瞬で現実に引き戻され、俯いてしまう。

 シノは片膝をつき、両手をイオリの肩に置く。

 シノは何も言えず、イオリは衝動的にシノに抱き着いて大きな声を上げながら涙を流す。シノは驚きを隠せず、どうしたらいいのか全く分からない。しかし、慌てふためくわけでも無く、ただ……抱きしめることしかできない。

 明楽はシノが抱きしめている間、黙っているメアリーの元へと行き尋ねることにした。

「止めなくていいの?」

「いいわよ。私にはあの子を助けることができなかった」

 『あの子』がイオリではない位は明楽にだってわかった。

 明楽は珍しく真面目な表情をしながらメアリーに背中を向ける。

「らしくないの……いつもだったら「何しているのよ!?」って蹴るところなのに」

 明楽は叩かれるぐらいは覚悟したが、メアリーは覇気の無い声で「そうかもね」っとつぶやいたのち、明楽の背中におでこを押し付ける。

 明楽は多少驚いたのち後ろを見ようとするが、そんな行為はメアリーの一言が制止する。

「今は………後ろを向かないで。少しでいいから」

 メアリーの鳴き声が聞こえてきた。

 メアリーが珍しく後悔している。イオリを助けられなかったことを、イオリが好きになった男を見殺しにしたせいでイオリが苦しむ羽目になったことを、誰よりも後悔しているのは彼女だった。

 いつだって妹を守るのは姉の役目であると自負してきたメアリーは、自分の選択肢がイオリを苦しめたことを激しく後悔していた。

 明楽は困った風に頭をかくことしかできなかった。

 

 ビスケットは先ほど来たソニアからの情報とコットン・アドモスからの情報をみんなと共有したところだった。

 ソニアから聞いたイオリとサブレ、クーデリアとレジスタンス、議会周辺で起きた戦闘もきっちりと耳に入っている。

 コットンからは木星帝国の研究施設の話を聞いた。その際に『黒衣の騎士』なる人物と接触したこと、その人物像がイオク・クジャンではないかと疑った話をした。

 しかし、ビスケットからすればイオクという人物にあったことが無いので、いまいちピンとこない。

 そんな中、ビスケットの前にポニーテイルのアトラが洗濯室から姿を現した。エプロンの端で手を拭きながらビスケットと視線が合う。

「あっビスケット。ちょうど話があったの」

 そういいながらポニーテイルをほどき、髪を左右に振る。

 ビスケットはアトラに三日月の事を離すべきかどうかで悩んでいた。しかし、三日月はアトラには話さないでほしいと言われている。

 しかし、アトラはビスケットが悩んでいる間に切り込んでくる。

「あのね、さっきの二人からの報告を聞いて思ったんだけど」

「あ、え?何の話?」

「いや、だから。さっきソニアさんとコットンさんの話を聞いて思ったの。なんか………偶然にしてはおかしいなって。だって、議会周辺で戦闘が始まったこと、同時刻にモビルアーマーが姿を現したこと、クーデリアさんが連れて行かれた事、こちらにもモビルアーマーが姿を現し……ライド君が命を落としたこと」

 ライドの所で一瞬言葉を詰まってしまう。アトラなりに覚悟を決めて聞いた話である。

 しかし、真剣な面持ちでビスケットの方を向く。

「これが……これが全部この数時間の間に起きたことだよ?不思議だと思わない?それに、コットンさんが忍び込むときにはエガーっていう人はいなかったんだよね?多分時間的に直前だったんじゃないかな?そのほとんどがサブレさんとビスケットを中心にしているんだよ。おかしいと思わない?」

 そういわれてしまうとビスケットはおかしいと思い、ふと考え込んでしまう。

 クリュセ一帯で起きたこと、そのすべてがサブレを中心で起きている。今回の分断とその間に起きた出来事。

「砂嵐を使った分断、クリュセ内で起きた戦闘、木星帝国内のごたごた、それを引き起こした人物がいる?どんな目的で?クレアさんが、レレさんが、アスナという人が……サブレに好意を持っているかもしれない人を意図的に集めて何をしたいの?」

 そんな時、黒衣の騎士の存在を思い出し、サブレとオルガとサイガの関係性。ビスケットは疑っていた。オルガとサブレの関係性。

『何かを手に入れる代わりに何かを失う』

 そんな呪いみたいな体質をサブレは長らく苦しめられてきたとビスケットは知っている。

 しかし、その体質もアフリカ戦の後からは見られなくなった。

 そう考えたところで、ビスケットは全てを繋げてしまえた。

 火星で起きた事件、サブレの体質の話や、オルガとの関係性、そのすべてが一本の答えへとつながっているのが分かった。

 そんな時、ビスケットは涙を流した。

『俺は見逃してきた。サヴァラン兄さんの事も、サブレの事も見逃し続けてきた。小さいころの二人はもう薄くなっている』

 ビスケットは気づいてしまった正体に、見逃していた真実に涙を流した。

 同じ過ちをビスケットは繰り返してしまったと後悔した。

『サヴァラン兄さんと同じ過ちを俺はまた繰り返そうとしているんだ……おれは……!』

 そう思った時、ビスケットの両頬にジンジンという痛みと共に意識がアトラの方に向く。アトラは真剣な面持ちと共に微かに感じる怒りの感情をにじませる。

「そうやって……うじうじすることがビスケットにできることなの?また、同じ過ちを繰り返すの?ビスケットはサヴァランさんの時の事を後悔していたよね?あの時と同じ後悔を繰り返すの?違うよね?何?今、ビスケットしなくちゃいけないこと」

 ビスケットは涙を拭いて……まっすぐアトラの方を向く。

「サブレを助けに行くこと」

「だね。行ってきなよ」

 アトラに一言お礼を言って駆け出していくビスケット。

『サブレの正義。それがサブレの道になっているのは確かだ。だからこそ、真の敵はその正義を利用したんだ。即決即断のような正義、それは裏を返せば解決する速度の速さは連続で問題が起きた際に連続で解決できるという事だ。だから連続では起こさず、同時に全く同じ時間帯に事件を起こしたんだ。サブレの正義を逆手に取り、全員を人質にしたんだ。まるで………まるで試しているように。選べっと言っているように。いや、言っているのだろう。いや、違う……サブレに文句を言っているのだ、斬り捨てろと、お前に必要無いだろうっと………完璧である為にお前は斬り捨てるべきなんだっと。それがお前の目的なんだろ?っと今更自分を斬り捨てるなよっと言っているんだ………『闇』は』

 

 

 

《ラブ・イズ・フォーエバー編終わり ウィー・ラブ・ユー編に続く》




どうだったでしょうか?今回は悲しい話だったと思います。次の章は今までで一番長い話になります。主人公が四人出てくるのが特徴です。サブレ、ビスケット、三日月、モンタークの四人が木星帝国幹部のテラ、テトラ、F、とペペロと対峙することになり、次の章からサブレの闇や火星連合の行方なども分かってきます。
次回のタイトルは『ウィー・ラブ・ユー《償いと闇》』になります。次回もお楽しみに。
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