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「これによりアルン議会の全日程を終了いたします。皆さん最後までお付き合いありがとうございます」
マックが深く頭を下げると温かい拍手と共に多くの人の小さな声ではあるが声援がマックの身に染みる。十分後に解散された議会から去っていくマックをタカキは待っていた。
「お疲れ様です。四つの経済圏の解散要求と太陽系議会の設立お疲れさまでした」
「ううん。タカキ君もよくついてきてくれましたね。あなたなら新設される地球議会においてもいずれ議長に選ばれるでしょうね。楽しみにしているわ。最も、太陽系議長に選ばれる予定の人物が無事ならという前提ではあるけれど」
「大丈夫です。ビスケットさんや鉄華団のメンバーなら絶対に守ってくれますよ」
胸を張って答えるタカキの発言は自身に満ち溢れており、それだけでマックは安心させてくれた。
正直な話、この半年間の間マックは彼の呑み込みの早さと柔軟性には驚いていた。前にアーブラウの議長が次期議長にもなれる人材だと太鼓判を押した意味を知ることになった。
太陽系議会の設立はEDMが元々考えていた惑星間の政治体制を一つにまとめつつ、惑星ごとの政治を試みるという新しい試験的な運動でもあった。戦後の状況を考えて惑星間ごとにちゃんとした政治体制を作りつつ人間として一人一人が政治に参加することができる環境を作る。
その中でも細かい惑星間の法律作りにここ数日議会は荒れており、タカキの協力が無ければきっとこんなに早く解決はしなかっただろうとマックは想像していた。
そんなタカキの自信の満ち溢れた言論を聞くと自然とマックもそうなのではないかという気がしてくる。
「そうね。彼らを信じてみましょうか」
そう微笑みつつ議会のロビーを通り過ぎ、大通りに出ると夕方の帰宅ラッシュで車が右に左に移動しているさまを見ながら二人は近づいてくる三人の人影を見付けた。
それはタカキの妹であるフウカとビスケットの双子の姉妹であるクッキーとクラッカであった。
「ちょうどクラッカちゃんとクッキーちゃんと大学を終えた後でね、お兄ちゃんを迎えに来たんだ」
そういいながらフウカは上下ともに白色を基本色とした服を着こんでおり、クッキーとクラッカは緑を基本色とした厚手の服を着こんでいた。
タカキとマックも三人に近づいていくと、クラッカはポケットの中からある密封された試験管のような物に閉じ込められている緑色の結晶が入っていた。
タカキは緑色の結晶をまじまじと見つめ、マックは心当たりがあるのか顎を右手で触れつつ記憶の引き出しを探り出す。
「これどうしたの?」そんなタカキの言葉を聞きながらクラッカがどこか得意げに答えようとしたところでマックが人呟いた。
「それってエイハブ粒子を結晶化したものかしら?」
するとクラッカは一瞬で面白くなさそうな表情をしてしまい、代わりにクッキーが結晶の正体を口にする。
「これはパーティクルドライブによって濃度を増したエイハブ粒子を高温と共に圧縮したエネルギ結晶体なんですよ。実は今、開発局と共同で不毛の大地と呼ばれている火星の復興計画の為にこのエネルギー結晶体が注目されているんです」
フウカが結晶を指さしながら説明をクッキーから引き継いだ。
「このエネルギーは氷を溶かして水に変え、大地に活力を与えることで植物をすごい速度で成長させることができるんです。だけどこれも半年かけて完成したらしくて、半年かけてこれだけなんです」
結晶のサイズをはっきり言ってしまえば小指程度しかなく、とてもではないがこんな大きさでは火星の復興など夢のまた夢のように思える。
「これってモビルスーツの搭載サイズでやればもっと大きな結晶が作れないの?」
タカキのふとした疑問にクラッカが首を横に振りながら答える。
「無理なんだって、この結晶を作るのに特別性の小型エイハブ粒子を試験管の中に貯蓄して、それをパーティクルドライブの力で少しずつ高濃度化させながら高温で結晶化していくんだから。でも、これがモビルスーツクラスの大きさになると最悪周囲の物体や生命すら飲み込んで全部を結晶に変えることもあるらしいから。それに、エネルギー結晶というだけあって最悪爆弾になる可能性もあるの。モビルスーツクラスのエイハブリアクターなんてアルンの都市を丸々吹っ飛ばせるんだよ。機材だってただじゃないんだし」
「でもね。クラッカはこういっているけど、これを作り続けていけばいずれはって考えているの、でも……この基礎理論を考え付いたのは二人いるらしいんだよね」
クッキーの小さな声にタカキは「誰の事?」と尋ねるだけだったが、それに答えたのはフウカだった。
「一人は開発局長のソニアさん。で、もう一人が………クレアさんのお母さんのフレアさんという人らしいの。フレアさんが亡くなる直前まで開発していたのがこの結晶化現象だった。そして、それをクレアさんを通してソニアさんが改良したというのが実態。でも、ソニアさんも元々結晶化自体は知っていたらしいけど、フレアさんほど進んた所までは知らなかったらしいんだよね」
「フレア……ね」
小さなタカキ達に聞こえないような小声でつぶやいたのはマックだった。
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ガタガタ道を突き進み、正面には既にクリュセが見えてきた。飛ばしてやって来たとは言っても、戦闘が始まってそれなりに経っているのでビスケットは心配で仕方なかった。
それでも、やっておくべきことは事前にやっておきたいという気持ちを胸に右腰についているホルスターの中に納まっているハンドガンの残弾数がマックスであると把握しもう一度ホルスターに収める。
ふと三日月は気になったことを尋ねてみた。
『ビスケットって戦えるの?鉄華団時代だってまともに訓練はしてなかったよね?CGS(クリュセ・ガード・セキュリティ)でも訓練は最低限であまりしてない印象だったけど』
「EDMに入って際にシノに教えてもらおうとしたんだけど、シノは嫌そうな顔して……」
『まあ、分かるけどね。ビスケットって戦いに向いているとは思わないし、イメージ的に良くないし。じゃあ、結局どうしたの?』
「サブレに教えてもらったよ。色々と試してみたけど、俺はこれだったかな」
ビスケットが胸ポケットやポーチの中から取り出したのは試験管のような筒の中に小さな円盤が多数入っているのと、拳銃に見える『何か』である。三日月にはそれの正体がよく分からなかったが、あえて尋ねずにいると、ビスケットはライドが持っていた元々は三日月の拳銃を左胸に隠すように入れてしまう。
サブレもまたクリュセに近づいていた。
空からだとそれなりに近づいて見え、サブレは内心「あと十分ぐらいか?」っと考えつつ、自動操縦モードに切り替える。
ハンドガンとマガジンの数を確認し、ナイフ、小型爆弾など多数の武装を確認しつつ、後ろからついてきていたウイングソードを目視で確認していると、モンタークも武装の確認を念入りにしている最中だった。
「先輩、ウイングソードでクリュセにある議会には近づきますけど、それ以上は無理ですよ。俺はこの人を下ろしたら一旦ソニアさんの元へと戻ります」
「ああ、それでいい。ソニアの元でいざとなった時の警戒に当たってくれ」
モンタークが武装確認を終えたタイミングでサブレに対して切り出した。
「君は確かテラという男とはやりあったことがあると聞いたことがあるが?」
その言葉に詰まってしまうが、サブレからすればあれを殺し合ったとは言い難いモノがあった。
「あれを殺し合うとは言えないと思うがな、正直な話あいつと戦ったとはいえない。あいつが突っ込んできて俺が返り討ちにしただけだったし、それに……」
そういいながら思い出す。
あれはまだサブレがビスケットと再会する、オルガ達鉄華団と出会う前の話である。
サブレ達は海賊が奪ったとある極秘データを抹消するという目的を持って行動しており、そのデータの中身を簡潔に話してしまえば『アーブラウとSAUの水面下の機密兵器輸出入の記録』であり、一部の議員が違法兵器を議長に相談せず行っていたとし、このデータをアフリカンユニオンに売り渡そうとしていたと言う者だった。
当時アフリカンユニオンはドルトの問題を抱えており、このデータを使ってギャラルホルンの士官を買収しようとしており、その結果ドルトの貧民層に居る反乱分子の一掃を合法的に行おうとしていた。
元々アーブラウは全ての経済圏と接点を持っている分問題をいくつか抱えており、特にアフリカンユニオンとオセアニア連邦とアーブラウの三つの経済圏の経済ラインは特にピリピリしており、アフリカユニオンは中東の地下資源を求めてアーブラウを貶めようとしていた。
それを知った亡命前の蒔苗はEDMにデータの消去を依頼し、EDMはそれを了承することで作戦が始まろうとしていた。
数回に及ぶ奇襲を仕掛け、海賊の進路を変えていきながら特定の作戦ポイントまで誘導することまでは成功したが、EDMは侵入した敵大型戦艦内にて予想外の反撃にあうことになった。
当時訓練生を含めたメンバーであったが、数ではEDMが勝っていたにも関わらず、負けてしまった。
格納庫と荷物の出入り口の二か所からの侵入、居住区まで進撃したところで、敵からの逆奇襲を受けることになった。撤退は即座に決まり、正規部隊が殿を務めている間に訓練生が先に撤退することになる。しかし、食堂を経由したところで敵に追いつかれてしまい、訓練生たちが死を覚悟した瞬間にサブレが追いついたという話だった。
たった一人からの逆襲に敵は困惑し、連絡を入れたのがテラだった。
テラが追いついたときには敵部隊は全滅、サブレがたった一人で立ちふさがるという状況だったが、テラは足元の遺体を見て冷静を失ったのか、彼はナイフを振りかざして襲い掛かって来たが、その時サブレの背中から微かに電流が走ったように見えたはずだ。
サブレは当時反則技をしようしていた。
背中についているオプションを使って電流を使った肉体と神経の一時的な強化を使用していた。
これにはデメリットが強く、体の動かし方を間違えると神経の断裂しかねないからこそサブレはテストの為にやってきていた。
だからこそだろう、サブレはテラがナイフを振り下ろしハンドガンの引き金を引く前にテラの右目を斬りつけた。
その動きがまるで把握できず、テラからすればサブレがいつの間にか消えて自分の目が斬られたぐらいの結果でしかなかった。
テラはそれでも戦おうとしたとき、死体の山の中から一人の若い男が立ち上がり、テラに向かって「逃げてください」っと言い出した。サブレは男に向かって走っていき、傷だらけの男の体を左下から右上にかけて斜めに斬り上げた。
しかし、男も負けじとサブレに抱き着いて時間を稼ごうとしていた。
テラは複雑な表情を浮かべながら逃げ出していった。
サブレが一通り話してしまう。
「まあ、今考えれば最後に立ち上がってきた男とテラが木星帝国からの刺客だったんだろうな。年齢を考えるとテラの部下としてやってきたと考えるべきか?」
そう考察を述べるとモンタークが口を開いた。
「そんな簡単な関係かな?」
モンタークはクレアに「どうなんだ?」っと訪ねるが、クレアが脳内の引き出しを探り出してもテラに親しい人間や親族がいたという話を聞いたことは無かった。
「そもそもテラってどういう人間なんだ?」
「テラは……いえ、木星帝国の幹部のメンバーのほとんどはそもそも木星出身者ではありません。アインやテトラは火星出身者ですし、ペペロやFは出身地不明のはずです。本当の意味で木星出身者はオズボーンとお姉様だけのはずです」
「?じゃあテラはどうなるんだ?」というサブレの些細な疑問はモンタークや渉にとっても同じことだった。クレアはふと考え込んでしまい、言葉の最初に「確か……」っとつけて語り始めた。
「テラは地球出身者だったはずです。コロニー圏のどこかのスラム街だと聞いたことがありますね……いえ、地球じゃなかったでしょうか?」
「?地球以外にコロニーってあるんですか?」という渉の疑問はモンタークにとっても同じことであったが、サブレだけはこの情報を知っていた。
「ああ、地球以外にもコロニーは存在する。そもそもテイワズの拠点である歳星自体が移動型のコロニーだしな。アステロイドベルトや色んなデブリ帯などでひっそりと暮らしているコロニーはある」
「ええ、小さな辺境のコロニー出身者だったと思います。あくまでもそういう話を聞いたというだけですが……正直テラの話はその辺しか知らないんです」
あまり知らないという言葉がテラの謎を加速的に増やしていき、不気味さを増やしていく、するといよいよクリュセまであと五分という段階でクリュセの中央メインストリートに一台の車が蹂躙していく姿が見えた。その車の助手席にはビスケットが乗っており、車が議会の方に向けてモビルワーカーの動きを回避しながらまっすぐに進んで行く。
「私はペペロをやりたい」
モンタークは戦場に突入する前にそうつぶやいた、サブレは「分かった」っと答えまっすぐに議会へと突き進み議会に向けて拳を振り上げた。
ビスケット達は視界の端で二つのガンダムフレームが議会へと進んでいる姿を確認できた。
「サブレ達だ……という事はクレアさんを救出できたんだね」
三日月は同時に思念をビスケットに飛ばす。
『うん、そして俺達と同じことを考えているんだと思うよ。だったら、ビスケットが捕まって彼等より遅れるわけにはいかない。多分俺達が速すぎてもだめだと思うけど、遅すぎてもだめだ。今計算してみたけど……多分俺達の方が遅い』
「うん………でもどうするつもりなの?議会の周りは戦闘で出入り口は両方とも………ってまさか!?」
ビスケットは表情を青くし嫌な予想を駆り立てながら速度を増していく車の進路を不安に思う。
首を小さく横に振り三日月がやろうとしていることに対する確信に変わっていく状況を否定しようとする。
「駄目だよ………失敗する方が可能性としては高いって、やめようよぉ~………」
情けない表情をしながら迫りくるモビルワーカーの壁とその後ろに控える議会のロビーの出入り口へと走らせていく。
ビスケットは両腕を左右の椅子にガッチリつかんで衝撃に備える。嫌な予想は現実になり、車はモビルワーカーの攻撃をかいくぐり、壊れたモビルワーカーは地面にくっついており、三日月はモビルワーカーの銃口から登っていき、そのまま一気に空を飛ぶように吹っ飛ぶ。
モビルワーカーの頭上を越えてそのままロビーの中へと突っこんでいき、そのままスピンして柱にぶっつかってようやく止まった。
ビスケットはなかなか開かないドアを蹴飛ばすことで外に出ていき、三日月は最初っからまともに出るつもりが無く、ドアを蹴って開けると同時にドアが吹き飛んでしまう。三日月の方を睨みつけながらビスケットは怒鳴りつける。
「なんで昔っからそんな風に強引なんだよ!!そういうところを少しは反省しなさい!!」
『反省しないよ。一生の病気だから』
そう言って三日月は一階の中央廊下の方に出ると、ビスケットも後に続く、二人は耳を澄まして集中すると、二階のちょうど真ん中で戦闘をしているのが分かる。
二人は一番近い階段から二階に上がり、そのまま真ん中の部屋の近くまでやってくる。ビスケットが単身隣の部屋に入っていき、窓ガラスに向けてスモーク弾を投げる準備に入る。視線で合図を送り合い、上からの衝撃と同時にビスケット達も中に入っていく。
シノがテラに向かって足元に転がっていた瓦礫を投げつけ、テラは瓦礫を片手で弾きつつシノを蹴っ飛ばす、しかし後ろを完全に取った明楽が死角からハンドガンで攻撃するが、テラはそれを自然な動作で回避しつつまるで後ろを見ないで明楽を棒で殴りつける。
ペペロを何度も撃ってもペペロは立ち上がり、そのたびにヘラヘラをと笑って蹴りつけにかかってくる。
Fは人間にはできないような高速の動きでほぼ同時に封じにかかってきて、テトラはレレを撃ちながらクーデリアを追い詰めていく。
いよいよ逃げ場を失った全員が中心に集められる。そんな中テラは残酷なことを告げる。
「クーデリア以外は殺せ。クーデリア殺さない程度に痛めつけてやれ」
シノたちはクーデリアだけでも逃がせないかどうか悩んでいると、ペペロはふと上の方を見上げて呟いた。
「何かが落ちてきてるかな?」
テラも上を見た瞬間に天井をぶち壊し壊れた天井からワイヤーが落ちてきて、ペペロに向けてハンドガンを頭に一発心臓に一発腹に二発叩き込むが、まるで気にしないよにペペロは立ち上がる。しかし、足元に転がった爆弾に目をギョっとさせて慌てて後ろに飛ぶ。
「撃たれても平気なのに、爆弾はだめなんだな?その辺が君の正体を暴くことになるのかな?」
そういう言葉の端々に怒りをにじませており、初めてペペロも怒りをにじませるように笑顔が歪んでいた。
と、同時にテラは先にクーデリアを確保しようとするが、テトラとFの間にもスモーク弾が窓ガラスを割って入ってきて、テトラとFの姿を消してしまう。
クーデリアを確保する為に手を伸ばすが、その手をサブレがつかんでしまう。
「久しぶりだな」
「そうだね……君に会いたかった」
「俺は会いたくなかったよ」
テラはサブレの手を振りほどきナイフをサブレの腹目掛けて突き刺そうとするが、サブレはそれを素早い動きでよけてつつテラを蹴り飛ばす。テラもうまく受け身をとりつつお互いに距離をとる。
その時、三日月は勢いよく部屋の中へと入っていきFに向かって分銅鎖を思いっきり叩きつけ、Fはそれを回避しこねてしまい、額に微かに当たってしまう。三日月はそのままFに空中に蹴りかかり、Fは今度こそ受け止めるが、三日月は空中で体をひねってFの背中に移動する。
ビスケットもスモークが部屋中に満ちた瞬間にテトラに向けてハンドガンを数発撃つと偶然そのうちの一発がテトラのハンドガンを飛ばしてしまう。
ビスケットはその隙にテトラに組み付き殴りかかろうとするが、テトラはビスケットの持っているハンドガンを片手間で弾きつつ自分のハンドガンを取りに行く、ビスケットも自分のハンドガンをとり片膝をつきながら取ってお互いに構える。
同時にスモークと砂煙が晴れていき、クーデリアやシノたちを守る形でサブレ達は立ちふさがった。
サブレ対テラ
モンターク対ペペロ
三日月対F
ビスケット対テトラ
八人による議会戦が始まろうとしていた。
どうだったでしょうか?面白かったと言っていただけたら幸いです。今回の地球サイドの話はウィー・ラブ・ユー編の最後につながっていくことになります。お楽しみに!
次回のタイトルは『ウィー・ラブ・ユーⅥ《愛ゆえの憎しみ》』になります。お楽しみに!