機動戦士ガンダムE   作:グランクラン

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ウィー・ラブ・ユー編最終話になります。


ウィー・ラブ・ユーⅩ《赤い大地は緑の大地へ、憎しみは癒しに》

16

 

 白をメインカラーにしているエデンと黒をメインカラーにしているエデンがぶつかり合う姿をビスケット・グリフォンは見上げる事しかできなかった。この状況下においてサブレに全てを委ねなければならない状況に歯痒さを感じていた。

 クリュセで起きている戦いや事件のすべてはサブレにしか解決できず、背負ってあげる事すらできない。

 苦しみより、怒りより、自身への力の無さへの無力さが襲っていた。

「いや……違う!そんなことを考えているから俺はサブレに背負わせてしまったんじゃないか!あんな後悔だけはしてはいけないんだ!」

 そう思った時、ビスケットは自分のスマフォが振動で小さく揺れているのが感覚で分かった。ポケットを探り出し、スマフォをスリープ状態から起動するとそこには上層部からの端的なメッセージが書かれていた。

『上層部より指令。クーデリア・藍那・バーンスタインの保護と太陽系議会の議長への推薦を報告せよ。そして、火星連合の即時解体に同意せよ』

 それは指令というよりどちらかと言えばクーデリアへの命令に見えた。クーデリアの性格を考えれば火星連合の解体に賛成するわけが無い。そんなことは誰だって分かっている事である。

 それでも、ビスケットはクーデリアの元へと急ぐことにした。三日月は黙ってビスケットと共にクーデリアがいたであろう二階中央フロアに辿り着くが、そこには既に誰もおらず、クーデリア達の道のりを探すため。ロビーを目指した。すると、三階ロビーから外へ出れるドアをシノとマークが警戒しているのが見えた。

「外へ呼びかけているのかな?」

『多分、戦いをやめるようにと呼び掛けているんじゃないかな。クーデリアならやりかねないし……でも』

 三日月が言いたいことはビスケットにはよく分かる。この戦いは覚醒者にはよく分かるが、上で戦っている黒いエデンが憎しみを増幅させ、増幅された憎しみは疑心に変わって、新しい憎しみに変わっていく。終わる事の無いエンドレスな状況の中、サブレは憎しみをほかの『何か』に変えるための戦いをしている。

 憎しみを癒しに変えることが出来るだろうか?

 戦いを終わらせるのはきっとクーデリアの役目なのかもしれない。でも、そんなクーデリアに告げることが出来なかった。火星連合を解体してほしいっと。

『いうべきだよ。この戦いの中心は火星連合の支配権という面が存在しているから。ようするに、今まで火星は誰が支配者なのか分からない状況が続いていた。ある意味、地球が支配者だったのかもしれない。だけど、それもクーデリアのお陰で終わりを迎えた。それは唐突過ぎたんだと思う。突貫工事感は否めない。それは新しい格差につながっていった。勿論、クーデリアはそれをどうにかしようとはしていた。でも、敵は……木星帝国はそこを突いた』

 突貫工事で作り上げられた火星連合は隙だらけだった。今まではそれでもよかった。だが、この戦争においてはそれは通用しなかった。

『誰かが言うべきなんだと思う。一度壊して作り変える。それにそもそもここまでこじれてしまったら壊すしかないよ』

 こじれすぎてしまった。修復が不可能なレベルまで。この状況を続ければ、もしかしたらいつか修復できる日があるのかもしれないが、それまでに一体どれだけの人間が苦しみ、どれだけの人が死んでいくのだろうか。

 選択肢はたった二つ。『壊れるか、修復できるまで続けていく』道と、『一度全部リセットして一からやり直す』道の二つである。

 クーデリアがどちらを選ぶのかは分からない。それでも、多くの人が紡ぎ、繋いできた思いは決して無くなったりはしない。簡単には無くならないし、作り替えることだってできるはずなのだ。

「行ってみよう」

 クーデリアの元へと急ぎ、三階に上ってシノとマークがボロボロのビスケットに気が付き声を掛けようとするが、覚悟を決めたような表情をするビスケットは黙ってしまった二人の間を通り抜け、外へと出ていく。三階は下へと降りることはできないようになっているが、その代わりに多くの人が休憩したり、記者などが利用する為に広めになっている。

「皆さん!戦いをやめてください」

 そんなクーデリアの言葉はまるで心に響かず、多くの人が戦いを継続させていた。後ろからビスケットが声を掛けようとするが、あと一歩の勇気が出てこない。そんな時、三日月はビスケットの背中を強めに叩く。

『しっかり。あの頃とは違うんでしょ?』

 昔とは違う。オルガ・イツカのいう事に『はい』としか得なかった。止めることが出来なかった。間違っているんじゃないのか?違う道がきっとあると言えなかった。それは今でも後悔だ。そんな気持ちの積み重ねと兄であるサヴァランの死がビスケットにとってオルガへの最後の反発へとつながった。他人まかせにしてはいけない。そんな思いが最後の一歩へと踏み出した。

 「クーデリアさん」っという言葉にクーデリア自身は振り返り反応し、無事でいてくれたという安堵と同時に戦いが終わらないという不安が表情に現れており、ビスケットは真剣な面持ちで語り掛ける。

「EDMは先ほど地球圏の経済圏が解体され太陽系共和国として再編成されました。それに伴い各議会も地球議会として再編成、各惑星代表者を募った太陽系議会の設立へと移行するとのことです。それに伴い火星連合も解体し太陽系議会に参加せよとのことです。そして、クーデリアさんに太陽系議会の議長を務めてほしいとのことです」

 シノは何か言いたげにしていると三日月の手がそれを遮る。

「そ………それは。そんなことはできません。きっと何とかなる手段があるはずです」

「それはいつなら可能なんですか?今の戦いが終わったら何とか出来るんですか?それに火星連合が太陽系共和国を相手にできますか?」

 その言葉を言うたびにビスケットの心に痛みが走る。同時にこんな言葉でいいのかという想いが心を動かした。そして、それはクレアに届く。

「そんな言葉ではいけません。だってそれはあなたの本心ではないのですから。口に出してください。後悔と本心を」

 あの日、オルガに言えなかった事、居場所とは組織ではないのだと。別々の道を歩いてもきっと生きている限り何度だって……家族とだっていずれは離れていくものだ。分かれていても思いは一緒なのだから。

「オルガに言いたかった。家族って離れていても思いが一緒なら大丈夫なんだよって。俺は言うべきだったのかもしれない。ううん。言いたかった、「鉄華団を解散させよう」って。離れていても俺達は鉄華団なんだって言えなかった。俺がオルガを止めていればって今でも思うんです。クーデリアさん……居場所が大切なんじゃないんです。一番大切な者は心なんだと思います。ユージンは違う道を歩き始めました。俺達は離れていてもクーデリアさんの味方ですから」

「そ……それでも」

 踏ん切りがつかないクーデリアに対してアスナが反応した。

「私……は、解散させるべきだと思います。それが一番いい解決法だというわけじゃありません。ただ、居場所を大切にするあまり、一番大切にしなければならないモノを見失ってはいませんか?彼が言っていることはそこにあると思うんです。誰かに利用されるとかそういう意味ではありません。彼がいいたことは………きっと大切なモノを見失ってはいけないってことではありませんか?今のクーデリア様は大切なモノを見失ってはいませんか?ここにいる人たちの事を、あなたを大切に思っている人たちが見えていますか?」

 そして、ビスケットも言う。それを知る人の一人として。

「あなたはフミタンさんの事をちゃんと見えていますか?」

 クーデリアは表情を凍り付かせ俯いてしまう。

 フミタン・アドモス。かつてクーデリアに仕えていたメイドであり、ノブリス・ゴルドンの命令で入り込んでいたスパイであった。彼女はクーデリアを庇って命を落とし、彼女の死はクーデリアの革命に大きな力になった。

「今のあなたは居場所を守ろうとするあまり、フミタンさんの事が見えていないんじゃないですか?居場所に固執すれば人を失うんです。オルガがかつてそうなってしまったように。オルガは鉄華団に固執した。それを失敗だったとは言えない。でも、あなたはオルガの死やフミタンの死を受け止めていますか?あの二人が守ろうとした『何か』をちゃんと見ていますか?」

 ビスケットはふと上を見上げ、サブレの戦いを見上げる。エデンとエデンはぶつかり合いながら戦いを終局へと導いていく。

 

 エデンは黒いエデンにぶつかり合いビームサーベルとビームサーベルが火花を散らしていく、黒いエデンは憎しみを呪いという形で増幅しており、それはエデンに搭載されているサイコ・フレームを通じて共振状態へとたどり着こうとしていたが、それをサブレは必死になって押さえていた。

「押さえろエデン。お前がただの兵器じゃないのなら………お前が人と人を繋ぐ存在なのならそれを証明して見せろ!!」

 エデンはギギィという不気味な音をたてながら首を左右に振る。サイコ・フレームは共振させようとさせ、サブレはそれを押さえつける。

 コックピット内はサイコ・フレームから漏れ出した虹色の粒子で満たされており、サブレの目も虹色に輝きながらそれを食い止めようと悪戦苦闘していた。

 同時に黒衣の騎士もまた呪いを吸収していきながら覚醒者としての能力を疑似的に再現し、サブレと同じステージまで引き出していた。黒衣の騎士は能力を増幅させサブレの体を乗っ取ろうとしていた。

「所詮は兵器、所詮人は動物なんだよ。憎しみを与えてやれば簡単に飲まれて力を増幅させてやれば簡単に力を増やしてくれた。お前も同じなんだよぉ!!所詮お前たち人間はここまでしか行けないのさ。ここがお前達人間のゴールなんだよぁ」

「違う……人間は人間のままで進化していくことが出来るはずなんだよ」

「そんな道があるのならお前達はとっくに進化しているはずだ。憎しみに突き動かされるただの人形なんだよ!所詮人間は地球という重力の井戸の底で小さな世界しか知ろうとしないカエルなんだよ」

「戦いって………ただ憎しみをばら撒くだけではない。お互いの気持ちを伝え合うことだってできる。殺し合うだけが手段じゃない……はずだ」

「笑わせるんじゃない!!憎しみこそが人間の本質で!怒りこそが人間の行動原理だ!お子様みたいな考え方で世界の闇をどうにかできると思っているのかぁ!?」

「それでも………それでもぉ!!」

 ビームサーベルのつば競り合いが一旦終わり、サブレはエデンのリングファンネルが黒いエデンの周りを飛び始める。

「エデンに搭載されているリングファンネルには周囲の物体の動きを阻害する機能がある。どうやら、お前のエデンはあくまでも複製品という事だ。切り札は隠しているものだな。お前は大したものだな、でも……所詮は俺の……俺達の複製品だ。その複製品が……人間を語るのか?」

「貴様なんて………呪いと人間という業の方向をコントロールするだけの存在だ。呪いそのものをどうにかする術なんてないんだよ」

「お前は……何を知っているんだ?」

「教えてやらねぇよ!俺を殺しても……呪いが消えることは無い。一生かけて呪いに苛まれながら苦しんで……死ね!」

「なら……聞かない。自分で知って…自分で呪いを消してみせるさ」

 サブレはビームサーベルを黒いエデンに向け、黒いエデンに突き刺そうとするが、最後に黒いエデンは微かに右に動いて回避しようとする。エデン左のリアクターにあたるが、それ以上に衝撃だったのは、黒いエデンの反対側から右側のリアクターを貫いているビームサーベルが存在したからだ。背中から突き刺している人物がいる。

(どうして……っと考えなかった。そうだ、呪いそのものと言ってもいい存在が黒衣の騎士だ。だったらどうして……どうして………アインが黒衣の騎士の存在を無視していたのか。そうだ。アインは呪いを振りまいた存在そのものだ。そんなアインが気が付かないはずがない)

 コックピット内にアインの声が響く。

「何、どっちに転んでも利用する価値があると思ったのさ。黒衣の騎士がお前の体を乗っ取ろうと、失敗しのうとどっちにしても利用する価値がある。こいつがお前の体を乗っ取るつもりならお前と同じステージに上る必要がある。その時点で進化の過程をいくつか登ることになる。成功してもお前の力毎奪い取り、失敗した場合もその時点での力を奪い取る。問題はどっちに転ぶのかという事だった。まあ、失敗したわけだが、問題ない。その時点での力を奪うだけだ。要するにこいつは用済みってわけだな。俺が進化する上でこいつの存在は実に都合がよかった。おかげで、問題なく俺も進化できる」

 アインの瞳は黒と赤が混じったような色に炎をイメージした何かが映っていた。それはサブレの瞳のイメージとは反対のようにも思える。サブレとアインはモビルスーツを挟んで睨み合う状態が数秒だけ続くと二人のコックピット内が聞いたことも無いアラートが鳴り響き、正面の画面に映る黒いエデンを多数のマーカーが『警戒:結晶化』と書かれた文面が赤い文字で書かれており、サブレとアインはその文字の意味を図りかねた。すると、サブレにはソニアが、アインはククナが語り掛けてきた。その表情が二人を真剣にさせた。

「「そこから離れなさい」」

 エデンとエンペラーは急いでビームサーベルを抜こうとするがビームサーベルから発している熱線が結晶化し始めた。急いでビームサーベルを離して一気に距離をとる。

「エイハブ粒子は結晶化することが何年も前の研究ではっきりしていた。この結晶を『エイハブ結晶』と名付けるならこの結晶は死んだ大地を復活させることもできる。でも、同時にこの結晶は爆弾でもあるの………モビルスーツの大きさなら最悪クリュセを巻き込んだ大きな爆発になるかもしれない。いや………クリュセなんて簡単に破壊することになるわ」

 サブレは下を、アインは飛行機を見る。この距離ならクリュセはもちろんの事、飛行機すら巻き込まれる可能性すらある。そう考えた二人はビームライフルとファンネルを使ったフルバスターモードへと切り替えた。

「「だったらここであいつ事破壊してやる!」」

 二人は互いに引き金を引く。

「アイン!!」「サブレ!!」

 お互いの最大攻撃が結晶化している黒いエデンへと向けられ、ぶつかり合った瞬間結晶は大きく光っていくのが分かった。

((破壊する!あいつを守る為に!!))

 結晶は大きくひび割れ、まるで………まるで戦いは終わったんだよって言っているように四方にバラバラに散らばっていった。

 その瞬間だった。人々は大きな衝撃と共に砕け散る結晶から響く高い音が呪いに突き動かされていた人々の動きを完全に止め、憎しみを癒していく。エデンから発せられている波長が人々の心を癒していき、アインは呪いを自分の元へと集めていく。奇しくも二人はこのクリュセに落ち着きを与えた。

 不安を感じるクーデリアの手を取り、アスナは一緒に立ち上がり声をそろえて呼びかける。

「「戦いをやめてください!!」」

 人々の視線が三階にいるクーデリアとアスナも元へと向けられ、落ち着きつつある人々に終わりを告げる。

「現時刻をもって火星連合はEDMに全面降伏し、火星連合を解体します。また………一から始めましょう。手を取り合って」

「みんなで助け合いながら」

「一歩ずつ歩いていきましょう」

「「だから…………だからもう……戦いをやめてください。これ以上血で血を洗うような戦いはやめてください」」

 一人が銃を落とす。まるで、それに影響を受けたようにまた一人、また一人と銃を落としていく。木星帝国のメンバーは次第に撤退していき、それ以外のメンバーは自分達がしていた戦い愕然としながら呆然としている。すると、クリュセの中にEDMのモビルアーマーなどが大量に侵入して、武装勢力に投降を呼びかける。

 戦いは終わった。

 多くの血を流してきた……復讐劇を静かに幕を下ろすことになった。

 

17

 

 今回のエピローグ

 クリュセで戦っていた人々はあっさりするほどEDMに投降することになった。木星帝国はテトラとテラの死によって撤退を選び。最寄りの大きな拠点へと引いていった。捕まったレジスタンスのメンバーと元ギャラルホルンによって彼らの拠点が明らかになり、説得を受けて全員がEDMに捕まることになった。クーデリアはアスナを火星議会の初代議長へと推薦し、レレがそのサポートをすることでEDMも納得した。クーデリアは太陽系議会の議長になることに同意し、その条件として火星に地球と同じ権利を求めることにし、地球議会もその条件に同意、火星連合とある意味調停に合意することとなった。この戦いは後に『クリュセ事変』と呼ばれることになった。

 あれから四日が経ち、クリュセはアスナとレレの指導の下最初の火星議会の仕事は片付けになりそうだった。いや、なったというのが実に正しく、アスナがスラム街出身というのと、元々外で活動することに抵抗が無いという事も理由に意外と周囲から親しまれている。

 黒いエデンがある意味変質した結晶は火星の大地に新しい可能性を生むことになった。大地から緑が生まれてきて、水があふれ出てくる。地下で固まっていた氷が結晶のお陰で水に変わっていき、化石になっていた植物の種が新しい緑を育てていく。いつの日か……火星と言われたこの大地にも緑であふれかえる日が来るのだろうか?いや、きっとくるのだろう。

 今日、この日はクーデリア・藍那・バーンスタインが地球に行く日である。わざわざユージンが迎えに来るという事で兄・ビスケットも上へと会いに行っていた。俺・サブレは鉄華団本部近くの慰霊碑の前に花束を添えながら桜農場の変わり果てた状況を眺めていた。

 桜農場は結晶の影響で砂嵐で死にかけていたトウモロコシ畑をトウモロコシの林へと変えてしまっていた。一面がすでに木のように成長し、その姿は新種のように見えた。っていうか、本気で新種じゃないのか?

 すると、俺の隣にクーデリアが片膝をついて花束を添える。おそらくは火星を離れるにあたって最後の挨拶と言った所だろう。彼女は最後にこちらの方にも小さく頭を下げるとそのまま去っていった。

 その後、クレアが花束を持ってくると俺の隣に立つ。

「鉄華団に?」

「いいえ、テラへと……」

 花束を添え彼女はまるで祈る様に両手を合わせる。一体どんな思いを言葉にしてテラに送っているのだろう。

「テラは………私に地球の文化や生活を教えてくれました。それだけじゃなく、テラは私にお母様の事を教えてくれました。きっと、禁止していたのにも関わらず。なのに………なんのお返しもできなかった。私は……」

 俺はクレアの頭を撫でてやることしかできなかった。

 

 クーデリアさんを待つこと二時間ほどユージンと歓談をしていると、イサリビ改とは反対方向からクーデリアさんが現れた。

「お待たせしました。ユージンさん地球までよろしくお願いします」

「ま、任せてくださいよ」

 緊張で体中に変な汗の掻き方をしており、体がどこかカクカクしているように見える。緊張のあまり焦点が合っていない。どうやらEDMから依頼されたクーデリアさんの移動任務と会社立ち上げ依頼初めての重要な任務で思考がフリーズしている。俺は後ろからそっと耳打ちした。

「緊張のあまり失礼な行動をとらないようにね」

「いらねぇ心配だよ!!」

 ユージンが肘を俺の鳩尾に充ててくると、襲い来る吐き気を我慢して俺はユージン背中に張りてを勢いよく決める。お互いに苦しみながら距離をとるとなぜかクーデリアさんがクスクスと笑い始める。

「仲が良いんですね」

「「良くありません!!」」

 二人そろってハモる姿を見ていると良いように見えてくるから不思議だ。まあ、昔からあまりいい方じゃないのは事実なんだけど。

 俺はユージンの方へと近づいて耳打ちで「ライドの事をタカキにうまく伝えてね。それと……」っと言いながら血で濡れた写真をわたす。ユージンも「分かってる」と言いながら写真を受け取ると、後ろからクーデリアさんがのぞき込んできた。俺とユージンは慌てたように写真を隠すが、運命のいたずらは時に神からの啓示を運んでくる。「その写真を見せるのです」っと言っているような気がする。ユージンはさっきとは違う種類の汗をかき始める。俺の顔面にも汗がにじみ出はじめ、内心どうしよう。

「そういう……ことですか」

「あ……っと、その………」

 クーデリアさんは表情を暗くさせながら顔を上げて俺達に向けてゆっくりと口を開いた。

「タカキ君へのメッセージは私に任せてくれませんか?」

「え?でも……」

「お願いします」

 俺とユージンはお互いに視線で会話をした結果クーデリアさんに任せようという結果になった。

 クーデリアさんに改めて「ライドが亡くなったことを伝えてほしい。そして、墓を作ってあげてくれないか」と伝え、俺は二人を見送った。

 

 クーデリアは見た事もない光景に圧倒されながら胸元に掛けられているペンダントを握りしめる。旧アルン議会、太陽系議会へと足を踏み入れるとロビーにはタカキが待っており、クーデリアを招き入れる。

「クーデリアさん。奥でマックさんがお待ちです。マックさんとの引継ぎが終わり次第、仕事をしていただきます。俺は案内できませんが、こちらの男性が案内いたしますので」

 とタカキが案内した男性は中年の中肉中背の普通の男であった。男は小さくお辞儀すると奥に案内しようとする。しかし、その前にクーデリアはどうしてもしなければならないことがあった。血の付いた写真をタカキに手渡し、タカキに残酷な真実を告げる。

「タカキ君。ライド君が亡くなったとビスケットさんから伝言が」

 タカキをふるえる手で写真を受け取る。その写真は鉄華団結成時にヤマギとライドとタカキの三人で取った写真で、血はライドとヤマギに重なっており、乾ききってて黒くなり始めていた。

「あ、ありがとうございます」

「ビスケットさんからお墓を作ってあげてほしいっと……」

「分かりました」

 クーデリアは男性の案内で奥へと消えていくと、タカキは下唇噛み一筋の涙を流しながら震えるような声で一人の名前をこぼす。

「………………ライド」




どうだったでしょうか?面白かったと言っていただけたら幸いです。次回は一か月ほどたっており、本格的に火星攻略の傍らで木星編開始までの話を繋げるものになると思います。
次回のタイトルは『暁の空の向こう側へⅠ《二拠点攻略作戦》』になります。お楽しみに!
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