機動戦士ガンダムE   作:グランクラン

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暁の空の向こう側へ編第二話になります。辛い話が後に控えています。


暁の空の向こう側へⅡ《誇り高き子供達へ》

 

 メリビット達が収容されている施設は大きく分けて三つの区画に分けられている。まずは迷宮区画。天然の入り組んだ岸壁と重火器の罠を配置してある。二つ目は防衛区画で広い整備されており、多数のモビルスーツが配備されている。それ以外にも防衛装備を多数そろえている。最後が収容区画である。

 この施設を突破するためには迷宮区画を超えなければならない。先日それが無事終わり、いよいよ防衛区画への攻略へ移ろうとしていたが、ビスケット達は木星帝国の新しい罠の存在に気が付かなかった。

「こちらA班。配置につきました」「同じくB班。配置につきました」「では、各種防衛装置を起動させファントムブラッド隊を迎撃する!ここは我々にとって火星の本拠地への防衛戦になっているんだ。何としてもここを防衛するぞ」

 木星帝国のモビルスーツ隊は各配置場所のボタンを押すと、金属製のドアが下から道を塞ぐように姿を現した。勿論すべての道を塞いだ訳では無い。しかし、進むことが出来る道をある程度絞らせること、そのうえで最新のモビルスーツの実戦テストを行う。防衛区画から通路ギリギリの巨体が壁を削るのではないかと心配になるレベルのモビルスーツが通路を通っていく。

「あれって……モビルスーツなのか?」

 落ち着いた木星帝国の整備士は通っていった大型モビルスーツを心配になりながら見送っていた。すると、後ろから年季の入ったツナギをきた上司が髭を触りながら現れた。

「そうだ。最も通常のモビルスーツが一人で運用できるのに対し、あいつは三人で運用するんだよ」

「三人っすか!?え……っとあれって確か……『シュピーゲル』でしたっけ?」

「バカ野郎!そりゃあ開発中の機体だ!あれは『グレート・ウォール』だ」

 コックピットがでかすぎる所為か前に大きく出ており、それを支えるように体が全体的に前と横にのびている。右腕がビームガトリングとワイヤーで伸ばしたりできるクローアームで、両肩にバスターライフルを装備している。

 ガリガリと壁を破壊していく光景を見ながら二人の整備士は本気で心配になっていた。

「大丈夫なんっすよね?」

「多分な……最悪ここから逃げる準備をしておくか」

「え?」

「アレはエンジン部が人一倍大きいからな妙な衝撃を受けると……最悪大爆発しちまう。それだけならいいが、防衛施設まで届くような爆発はしないだろうが……あれを配置するからって本拠地にモビルスーツをいくつか返却しているからな。あれが虎の子の兵器ってやつだ……」

 心底不安になる若い整備士は内心「荷物をまとめとこうかな……」っと本気で考え始めていた。

 

 迷宮区画の突入口は一つしか存在せず、そこからいくつかの道に分かれていて、最短ルートで突破する。それが作戦だった。しかし、侵入して直後行く手を遮っていたのは金属製の壁であった。サラは警戒しながら壁を探っていく。

「駄目ですね。マークの一撃なら破壊できそうですが……その際に敵が何もしていないとは思えませんけれど」

 ビスケットは首を横に振って作戦の変更を指示した。

「作戦変更だ。これだけ大掛かりの仕掛けならさすがに侵入するという事はばれているはずだ。きっとこの前まで存在していった罠が敵がどこまで侵入しているかを見分けていたんだな。してやられたよ」

 二つに分けられた部隊の内サラの部隊は右に伸びている道を進み始めた。渉とジョシュアが前方に後方にマークとサラの配置で突き進むと渉は一歩後ろから歩いてるジョシュアに恐怖を抱き時折「ひぃぃ」っと言いながら走り出そうとしている。そのたびにサラはジョシュアを諫めながら釘をさす。サラは頭が痛くなる思いを抱えながらほぼ一本道になっている岸壁を突き進む。雨が降っていて濡れているせいか時折ジョシュアと渉が滑りそうになっている。

「あなた達。いくら雨対策をしているからってはしゃいでいると滑るわよ」

「だったら……助けてくださいぃ~」

 渉の情けない声とジョシュアの奇声が入り混じったような音がサラの苛立ちを最大限上昇させようとしていた。何かを言うべきかっと思っているとマークが一番先に気が付いた。壁にガリガリと当たっている音と同時に何かの駆動音。相当負担になるような重たい者でも背負っているかのような響く音と共にこちらに近づいてくる。

「ストップ!何かが近づいてくる」

 そこまで言われてようやくジョシュアと渉が気が付いてストップ。サラは先に気が付いて周囲の索敵を開始した。しかし、敵は予想外の所から姿を現した。

 若干駆け足で進んでいた渉とジョシュア、後方から追いかけるように進むサラとマークでは間に距離があったのは確かだが、その間には金属の壁が右側に存在し、金属の壁がゆっくり下へと降りていくとサラ達の目の前にそれは現れた。

 壁ギリギリの幅に高さはモビルスーツのざっと二倍。薄目の茶色で装飾しており、武装の厚さとは別に両肩や両腕、腹回りなどにも様々な武装がてんこ盛りの明らかに周囲の環境を想えばあまりにも場違いにも見える。本来であれば何もないただっぴろ空間に配置するような兵器であるはずだが、しかし、こいつがサラ達の前の前に配置することは無いだろうというのがサラの読みであった。

 サラとマークが武器を構えて攻撃するのにかかる時間はざっと一分だったはずだが、敵の肩にあったランチャーはそれよりさらに早い速度で攻撃を繰り出して見せた。両肩についていたバスターライフルは壁を粉々にぶち壊しながら周囲を壊しながら壁という壁を破壊して迷宮を一瞬で平らに変えていく。

 サラ達はしゃがみ込んで攻撃を回避するが、起き上がった瞬間に周囲の光景に驚いた。ある程度自分達が進んでいたとはいえ、ほぼど真ん中から中心にほぼ端の方まで完全に破壊されていた。周囲が壁に囲まれた広いコロシアムのような環境が出来ていた。

 どうやら迷宮もすべてを破壊できたわけでは無いが、サラは内心レオ達がやられていないことを祈るしかなかった。本来のルートでいけばレオ部隊は中心から突き進んでいたはずだが、おそらく外周を回り込むルートで進んでいるだろうと予想されるが、実際どこまで進んでいるのかここで確認をする前に目の前に立ちふさがる敵を撃つ必要があるだろう。そう思い、気を引き締めて渉とジョシュア、サラとマークは目の前の敵に集中することにした。

 

 大きな破壊音と共に衝撃が確かにレオの元へと届いた。何かが起きた。幸いというべきか、本体の方であるレオの方には被害は無かった。レオ部隊の少し後方からついてきている侵入部隊に集中する必要があるだろう。

 サラ部隊を信用し、そのまま進むべきだろうと考えていた矢先、目の前から敵モビルスーツ隊とぶつかってしまう。ジャニーが真っ先に反応しビームライフルで敵モビルスーツの足を吹き飛ばしつつ後方に控えている侵入部隊に物陰に隠れるようにと指示を出す。レオは対艦刀を構えながらブースターを使って速度を最大まで加速させる。敵から襲い掛かってくるライフル攻撃を紙一重で回避しつつ横なぎに切りかかり、敵モビルスーツを真っ二つにしてしまう。ノインはレオが敵モビルスーツをひきつけている間にジャニーとモビルスーツを一体化させる。大型になったガンダム・スニーは両手の指一本一本に搭載されているビーム砲が合計十本になって木星帝国モビルスーツを襲い掛かっていく。

 レオはその隙に前へと突き進み、対艦刀で後方に控えていた敵モビルスーツ隊の待機組である二機のモビルスーツを真っ二つに切り裂く。スニーが最後のモビルスーツを撃破するとレオは作戦変更を告げた。

「作戦変更だ!このまま素早く駆け抜けるぞ!」

 そう言ってレオの乗るシステマは最大出力で迷宮を駆け抜けていった。

 

 サラはシールドを正面に展開ししゃがみ込んでシールドの間から大型スナイパービームライフルをはさむ形で設置して照準を大型モビルスーツへと向ける。その後方でマークのカノンが四つの砲台を向けつつ、前方ではジョシュアと渉が大型モビルスーツをかく乱する。しかし、大型モビルスーツはサラ達に牽制しながらジョシュアたちを捕まえようと粘っている。しかし、彼らは全員があることを懸念していた。ビスケット達と連絡が取れなくなっていると。

 そのことに一番早く気が付いたのはビスケットであった。異変にいち早く気が付き、行動を始めた。

「戦場一帯で通信妨害がされているんだよね?」

 ビスケットの確認にメアリーが反応し「はい」っとだけ答えモニターで周辺の地図を展開させる。地図の中に描かれた迷宮区画と防衛施設区画、収容施設区画が描かれているが、収容施設を除くそれ以外の区画が赤く塗られている。どうやら赤く塗られている区画が通信妨害されているという事である。

「迷宮区画を中心に通信妨害されているってこと?ならサラ達がその原因と対峙しているってことだね」

「はい。おそらくですが……敵モビルスーツが妨害装置を搭載しているものと推測できます。サラ部隊かレオ部隊かはわかりませんが」

「だったらこっちはプランDで行こう」

 ヴァルハラは急激に動き始める。少しづつ機体を浮かせ始め方向を少しづつ変更し始めるね。ビスケットは艦内通信に切り替えつつ全員に指示を飛ばす。

「これよりヴァルハラは敵施設へと直接攻撃を開始します。プランD発動。プランDに参加するメンバーは所定の位置で作戦準備に入ってください」

 ヴァルハラは作戦宙域を回り込む形で突き進む収容施設へと急ぐ。

 収容施設では迷宮区画一帯での戦闘に向けてモビルスーツを大量に送り込んでいた。実際レオ達が順調に突き進んでいた。

「早く送り込め!敵モビルスーツがすぐそこまで来ているんだぞ!」

 敵士官が最後のモビルスーツ隊を送り込んだところから約十分が経つとさらに戦闘音が激化した。そんな時、収容施設の方から盛大な警報音が鳴り響いた。通信妨害をしていることが今回は完全に裏目に出てしまい、防衛施設から連絡を入れることが出来ない。この警報は通信が使えない間の最後の連絡手段であることが分かった。

「迷宮区画への防衛部隊を収容施設防衛にむけろ!……なぜだ?どうやって収容施設に攻撃を仕掛けたんだ?」

 そこまで言った所でようやく気が付いた。現在周辺ではEDMと木星帝国間で戦闘が行われている。それはすなわち戦力を各戦場が必要としているという事である。もちろん、この施設から戦力を送るわけにはいかない。この場合、一番近い後方基地から送られてくる。だからだろう、回り込むことさえできれば収容施設へと直接攻撃できるというわけだ。勿論これは防衛施設や迷宮区画への攻撃が行われることで施設の戦力が低下していることが前提の作戦である。しかし、現在迷宮区画への攻撃で戦力は低下、しかも周辺の戦闘で戦力を回す余裕はない。その上自分達で通信を外部への通信を妨害している。この通信妨害は妨害範囲内であれば可能であるが、その外への通信は妨害されてしまう。

 自分達の策で自分達が苦しめられている。施設の方からどんどん職員がこちらの方へと逃げ込んでくる。同時にモビルワーカーがあっという間に防衛施設に辿り着いた。同じころ迷宮施設を突破したレオの部隊が無事モビルワーカー隊を送り込んでいたところでヴァルハラがやってきているとわかった。

「どうゆう事だ?作戦変更なんて……っあ!通信妨害されている?でもモビルスーツ同士は通信できるし……外との連絡ができないという事か?作戦プランがDに変更されたという事か……よし!モビルワーカー隊はそのまま防衛施設占拠!俺達はサラの援護に向かう!」

 

 クローアームは渉を豪快につかんで壁に拘束するがそれをサラの一撃をもって解放されるが、両肩のバスターライフルが同時にサラ方へと向けられる。二つのシールドでは受け止めきれないと踏み、立ち上がってそのまま距離をとろうとするが、腰につけたミサイルポットから放たれたミサイルが行く道を塞ぐ。腰につけられたビーム砲が腰の素早い動きと連動してマークの動きを封じにかかってくると、サラへと容赦ない攻撃はレオの対艦等の一撃で封じられてしまった。バスターライフルは真っ二つに切れてしまう。

「応援に来たぜ」

「作戦はどうしたのですか!?」

 サラは恐ろしい形相で睨みつけるようにレオの方を向くとレオも多少は気後れしてしまう。

「大丈夫だって。ビスケットさんがプランDにシフトさせたんだよ。あと、ちなみに通信はできないぜ。外部への通信だけ妨害されているんだよ」

 サラは今更になって気が付き舌打ちをしながらレオの方へと睨みつけるような視線を向ける。レオは居心地が悪くなり顔を敵大型モビルスーツの方にむけていると、大型モビルスーツにスニーが突撃し、大型モビルスーツが対抗しようとするが大型モビルスーツの腰辺りから大きな火花を散らし、腰辺りがまるで折れてしまったように前のめりに倒れてしまう。

 マークはあきれながらつぶやいた。

「まさか……試作品?」

「みたいだな」

 レオも同意しながらモビルスーツのコクピットを対艦刀で突き刺してとどめを刺すと戦いは終了の合図が施設の方から上がった。

 

 

 雪之丞が収容されている施設では焦りが確実に襲い掛かっていた。防衛の要だった施設がEDMの主力部隊によって壊滅しそうだという話だった。そんな話を囚人たちの前でしているのだから囚人たちからすれば自分達が助かる可能性が上がったのだからうれしくないわけがない。

「どうするんですか?テトラ様は亡くなって……テラ様までいない。ここは………」

「大変です所長!もう一つも攻略されてしまったそうで………そこから……情報が漏れてしまったかもしれません」

「くそ……!ここは撤退する!」

 そう言って囚人たちを逃がさないようにとドアを厳重にロックを掛けると、囚人たちは罵詈雑言で何とかここから出ようとするが、その傍らで雪之丞は彼らの言葉の意味を考えていた。

 ここを逃げる。という事は少なくともこの場所まで敵が攻め込もうとしているという事だっと考え、そして理解した。メリビット達が助かったのかもしれないっと。それは雪之丞の最後の生命線を切る思考に限りなく近かった。

 だからだろう雪之丞はまるで壊れた人形のように倒れ込んでしまう。雪之丞は少しづつ意識が遠のいていくのが体の感覚で分かってしまう。目を閉じれば愛する人の顔が……自分の子供が……鉄華団の子供たちの姿までハッキリと分かった。

(メリビット……子供たちを頼む…………お前…た……ち………頼んだぞ……………ほ…こり……高き………『子供達』………)

 その瞬間に雪之丞の命の灯は静かに消えてしまった。

 最後はまで『鉄華団の子供達』を誇りに思い、自分の子供たちを託して命を落とした。

 

 雪之丞はいつの間にか鉄華団の格納庫で座りこんでいることに気が付き左右にいっかいずつ小さく首を振って確認すると隣にオルガが表情を暗くさせながら立ち尽くしていると判断でき、同時に前後の記憶がはっきりしてくると自分が死んでしまったとはっきりと分かった。すると、オルガは苦しそうな表情で雪之丞へ向けて言葉を投げかける。

「済まない………おやっさん」

「なんでお前が謝んだよ……」

「だって……俺達の責任でおやっさんが」

 雪之丞は煙草を口にくわえて少しだけ微笑んで見せた。

「あっちはあいつらだけで大丈夫だろ。メリビットの奴も、子供達も俺の誇りである『あいつら』なら何とかするさ。お前だって………だから頼んだんじゃねぇのか?」

「どこまで……」

「おおよそだけだ。あの爺さんからある程度聞かされた程度だな」

 オルガは苦みを噛み締め、同じように死んでしまった雪之丞の方を見る事すらできない。

「お前があの時誰に何を頼んだのか知ってるつもりだ」

「あいつならって思ったんだ。あいつは他の誰にもない力があるって。それ以上に………あいつにはいろんなものを背負ってくれる強さがある………だから甘えちまったのかもしれない。あいつなら俺達の状況すら分かってしまうのかもしれない」

 雪之丞は内心安心してしまった。

 立ち上がってそのまま背中を強く。

「お前達を見捨てておけねぇからな」

 笑って死ねる。

(あとは……任せるぞ。誇り高き子供達よ)

 そう言って笑って見せる。笑って……死ねることへの喜びしかなかった。




どうだったでしょうか?今回のエピソードはビスケットサイドの攻略作戦が視点になります。次はサブレサイドのエピソードになります。雪之丞が死んでしまいましたね……正直に言えば書いていてつらかったです。
次回のタイトルは『暁の空の向こう側へⅢ《背負う者達》』になります。お楽しみに!
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