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高重力作業施設への道のりは単純で高い壁のような渓谷をまっすぐに突き進めばそれは存在する。赤い壁のような渓谷はごつごつした道のりで、上を通っても下を通っても立ちふさがるのはモビルアーマーの『フォルティシモ』がビーム屈曲ドローンを広範囲に展開し、近づけば近づくほどに周囲から襲い掛かってくるフォルティシモにサブレ達は攻略出来ずにいた。これに対してサブレが取ろうとしている作戦は明楽に対ビームシールドを三つ装備させ、強引に真正面から攻め立てるギリギリ作戦ととれる作戦だった。
「君は本気であれで突破できると?」
モンタークはカッパを羽織った状態でサブレに語り掛けてきた。雨がカッパを濡らし、地面を湿らせていく。赤い大地は初めての雨に乾ききった大地を染み渡らせたいらしく、少しづつ粘土のような感触を靴裏を通して嫌なふみ心地を与えてくる。
「無理だと思うけど」
「だとしたら……」
サブレの言葉にモンタークは疑問の言葉を投げかける。サブレにはこの作戦が成功するとは思っていなかった。
「あいつが目を引き付けてくれるならその隙にこちらは別の手を打つことが出来ると考えただけだ。その隙に誰かがフォルティシモを攻撃できればいい」
「俺は囮だと?」
「あいつならそれぐらいはできる。俺は出来ると信じている奴にしかそれは任せない。俺があいつを殺させない。俺の前の前で俺の仲間は見殺しにはさせない」
すると後ろから死にそうな表情でフラフラしながら雨に濡れる明楽が現れた。おぼつかない足取りでサブレに近づいてき抱き着こうとするがサブレはそれを紙一重でよける。
濡れる地面に両手をついて盛大なため息を吐き出して死にかけのような目でサブレの方を見るが、サブレから明楽の方に視線を向ける。
「俺がお前を見殺しにする作戦をとると思うか?」
心底不思議そうな表情を明楽の方へと向けつつ尋ねると明楽は真剣そのものの表情で黙ってうなずいた。サブレの怒りメーターを少しだけ上がってしまうとサブレは菩薩のような微笑みを浮かべる。その姿を見た途端慣れたシノは自然とメテオの方へと逃げていき、慣れていない三日月とモンタークは首をかしげながら成り行きを見守った。
「お前には俺がお前を見殺しにする奴に見えるってわけだ」
「はい!先輩ならそうすると思います」
「最後に………訂正するチャンスを与えてやってもいいが?」
「………すいませんでした。冗談ですので許してもらえませんでしょうか?」
明楽はふざけ過ぎたと自覚したのか、菩薩のような笑顔の奥にある般若のような表情とメーターを振り切れそうなほどの怒りを知ったのかもしれない。最後の抵抗とばかりにからかって見せたことを完全に見抜き、黙ってみていれば調子に乗った明楽。しかし、謝るのはワンテンポ遅く、サブレの右こぶしは黙って握りしめられ、明楽はこれから自分に起こるでろう出来事を予想して目を瞑った。
「どうか………一思いに!」
「いい覚悟だ。歯を食いしばれ!!」
「はい……っ!?目がぁ!?歯を食いしばれってフェイク!?」
明楽は唐突に襲い掛かってきた両目の刺激に両目を押さえながら地面をゴロゴロと転がってのたうち回る。しかし、それだけでは終わらなかった。マウントポジションをとると明楽の両頬に数発ほど拳を叩き込む。
「ちょ……!せんぱ……!勘べ………!!」
その光景に三日月とモンタークがドン引きしていると後方では準備を終えたメテオが起動させながら立ち上がっていた。
「調整終わったってさ。そろそろ動こうぜ!」
サブレは立ち上がってそのまま新装備のエデンの元へと歩いていく。
エデンは新たな装備を身にまとっており、背中につけた羽は小さくなっていて、リングファンネルは小型したうえで両腕に装着されている。そして、今回からお披露目になる新装備は今までリングファンネルが付いていた背中に装着されていた。二枚一対になっている高出力ビーム砲になっていて、二枚の板の間でビームを発生させそれを前方に射出するシステムだが、この装備は高出力は実現する為に装備が大型になってしまい、ファンネルとしての機能が地上では運用できないという点だった。それを改善する為にバルバトスルプスレプスが装備していたテイルブレードに着目、地上での運用時では特殊ワイヤーを使った有線兵器に、宇宙で運用するためには無線兵器に変更可能という一点である。子の装備は元々新装備として初期のころから構想があり、偶然にも黒いエデンが造ってしまったエイハブ結晶が高出力砲台の開発めどを立て、同時に旧鉄華団本部地下に隠してあったバルバトスの改造した際の設計書が最後の一押しになった。
こうやってエデン新装備通称『ネオ・ファンネル』であった。
ソニアはこの装備にかかりっきりで整備の仕事をほぼ投げ出していた。しかし、それだけに今回の作戦にギリギリの形で間に合い二つを装備している。
エデンが後方でネオ・ファンネルの調整をしている間にシノたちはポジションに付こうとしていた。上空ではモンタークが、明楽が渓谷の一番下の一本道、渓谷の上にそれぞれ左側がシノ、右側が三日月が待機に入っていた。その彼らの視界の先に多数のドローンと一本道の後ろで居座っているフォルティシモが良く見える。
作戦開始の合図と同時に四機が動き始め、サブレはファンネルの動きを脳波で捉えつつ明楽達の方を見た。
まっすぐに突き進む明楽達がドローンの行動範囲に入ると同時にフォルティシモからの拡散ビーム砲が多くの屈曲ドローンを経由して全方位から襲い掛かってくる、同時に中央からの一番大きな攻撃が屈曲ドローンを経由しながら広範囲に攻撃を仕掛けつつ猛威を振るう。三日月とシノは左右に大きく動きながら辛うじて回避していくが、モンターク自体は特に苦労することも無く、下からやってくる攻撃をよけながら確実に前へと進んで行く。すると明楽がある程度進んだところでフォルティシモはサブレとの戦いでは見せなかった新装備を背中から射出する。拡散ビーム砲よりよっぽど脅威度の高い攻撃が降りかかる。先ほどまでは辛うじて避けていた明楽もシールドが発生させるIフィールドが少しづつ削られていく。
ここまでは今まで通りだった。今までだったらここで撤退するところであるが、今回は秘策が存在する。エデンのネオ・ファンネルをワイヤーで動かしながら両肩の少し上で両方共を待機させるる両腕についている六枚のリングファンネルが三つで一つになって前方に展開する。
明楽が近づいていくたびに明楽への攻撃が過激を増していき、なるべくシノや三日月やモンタークが自分達の方へと標的を移そうとするが、無理ができない三人ではこれ以上近づくことが出来ずにいた。そして、フォルティシモは明楽を全力で迎撃する為にIフィールドを解いてしまった。その瞬間を待っていたかのようにサブレはネオ・ファンネルの須臾力を最大まで上げてリングファンネルを通過することで今まででは出せなかった出力がフォルテッシモを襲い掛かる。フォルテッシモの体の半分以上を吹き飛ばしてその場で大きな爆発と共に道が開いた。幸い、施設には攻撃が届いておらず一本道は確保された。そして、明楽は吹き飛んでいったフォルテッシモと吹き飛ばしたエデンを交互に見ながら叫んだ。
「何するんすか!?俺まで吹き飛んだらどうするつもりなんですか?」
「ちゃんと当たらないようにしただろ?」
さも当たり前かのようにその場でやり取りを進めるサブレと明楽をしり目にシノは先に施設の方へと急ぐ、施設からは車が何台も逃げていくのが分かり、施設を放棄するつもりだと判断できる。シノはそのまま施設前までやってくると、後ろから三日月やモンタークも追いつく、サブレと明楽も遅れながら追いつき、さらにその後ろからEDMの制圧用のモビルワーカーが施設を囲み、中に入っていく。
サブレが何かを感じ取り始める。
(何なんだ?この背中がチリチリする嫌な気配)
サブレは施設の中に入っていった兵士達を待っていると、兵士の一人が駆け足でサブレに近づいていく。
「サブレ様!保護対象を確保しました………が、雪之丞と呼ばれている男性は別の施設に移送されたようでして」
「どこだ!?どこに移された」
(嫌な気配の正体はそれだったか。テトラ・ギュウジャンめ!そこまでして鉄華団への復讐が大事なのか?)
手元のタブレットで調べていると早口で言い出し始めた。
「確か………高重力労働施設と呼ばれている場所です!詳細はこちらに」
と手渡されたサブレは駆け足でエデンの元へと急ぐ、エデンの足元でデータの所得を急いでいたソニアに大きな声で指示を飛ばす。
「ソニア!ビームシールドと新ライフル!今すぐ出る!」
「いいけど………時間がかかるわよ」
「今すぐしてくれ!データの調べるのも後!」
そう言って急いでエデンに乗り込むサブレはシールドと新型のライフルを強引に受け取ってそのまま勢いよくスラスターをふかしながら高く舞い上がり、そのまま高度を上げていきながら高重力労働施設の方を確認する。
速度を上げていきながらまっすぐに進んで行く。
7
目の前に展開しているモビルスーツの数は三十を超えており、空中に浮かんでいるところをサブレ自身が確認すると、今まで確認できていなかった飛行ユニットを搭載した新型量産機を展開しており、砂漠地帯に部隊を配置していった。地面に展開しているモビルワーカーの装備もモビルスーツが搭載しているような簡易型ビーム兵器を搭載しているようで各方面からの防衛機能を最大にして待っていた。
目の前に展開するモビルスーツ隊を前にしてサブレは下唇を噛み締めながらひたすら大きく叫んだ。
「邪魔をするな!!」
背中についているネオ・ファンネルを動かし始める。ファンネルからの攻撃でモビルスーツを落としつつ、ライフルでモビルワーカー部隊を確実に落としていく。しかし、数が多く攻撃をよけながらシールドで攻撃を受け止めつつ三十を超えるモビルスーツを前にして一進一退の攻防を繰り広げる。
一旦地面に降りてホバーで素早い動きを見せながらまずはモビルワーカー隊を駆逐し始める。半分ほど減ったところでリングファンネルを展開させ、再び上空への攻撃に切り替える。体を空中に戻しつつリングファンネルを通してライフルの強力な一撃をモビルスーツ隊を引き裂くように放つ。
「しつこい!死ぬ覚悟のあるやつだけかかってこい!死ぬ覚悟の無い奴は引っ込んでいろ!俺の邪魔をする奴は何人たりとも許しはしない」
サブレの瞳が虹色の炎の輝きを放って怒りの表情を浮かべる。
(あの日のオルガとの約束を破るわけにはいかないんだよ!)
ファンネルをまるでブレードのように振り回してモビルスーツ隊を吹き飛ばす。空いた隙間を縫うようにまっすぐにモビルスーツ隊を突き抜けていく。前へと進んで行きながら後ろに展開している敵モビルスーツ隊に向けてファンネルによる攻撃を与えていく。ただひたすら前へ進んで行くために。
モビルスーツ隊を引き離して目の前に高重力労働施設が見えてくると、サブレは周辺の防衛施設をまずは破壊し始め、安全を確保した段階でエデンから降りて正面玄関を破壊して、中へと入っていった。
中はシンプルな構造になっており、管理フロアに入って各フロアのロックを解除しつつマスターキーを手に入れると、それを持った状態で一階の厳重な両開きの自動ドア横の機械にマスターキーを使用すると、ドアがゆっくりと開いていく。中では職員が逃げて興奮している者もいれば疲れ果てて座っているものまでがいた。そのほぼすべてがサブレの方に視線を向けて、サブレはそのすべてを無視しながら奥へと進んで行く。中に居た囚人たちは喜び余り外へと駆け出していく。
「どこだ?どこに居る!?」
サブレは逃げようとしている囚人の男性を捕まえて早口で尋ねた。
「この場所に褐色肌の大柄の男性がいたはずだ」
「知らねぇよ……そんな人物いっぱいいるぞ」
サブレはポケットの中から一枚の写真を取り出しそれを男性に見せると男性は一旦思考した後にゆっくり奥を指さした。
「でも……あの男は」
そこまで深刻そうな表情を浮かべたことにサブレは嫌な予感を最大限まで高めて表情を曇らせ走り出す。最後の扉を開けると誰もいない閑散とした空間に、太いパイプや機械があちらこちらに配置されていて、高重力状態が解かれているとはいえ、重苦しい空気すら感じ取れる。しかし、そんな空気の中ですらサブレはまっすぐにそれを見つけ出した。
うつ伏せに倒れている褐色肌の男。やせ細っていてミミズ腫が行き過ぎて切り傷にすら見える体は写真とはまるで別人に見える。サブレはゆっくりと歩き出し、体を仰向けに変えて手首の脈を図るとまるで動いていないのが確認できた。
サブレは何度も何度も心臓を強引に動かそうとするがまるで動く気配がしない。
「頼む………頼む!オルガとの約束を………これ以上破るわけにはいかないんだ!」
力いっぱい左胸を叩くがそれでも動かない雪之丞の体を通じてサブレは確かな声を聴いた。
(あいつらによろしくな。あとは………任せたぞ)
サブレは地面を強く叩きつけながら小さくつぶやいた。
「また………救えなかった。俺は……何も変わっていないじゃないか」
また……一つ思いを背負い進んで行く。それが苦しい道だと理解しながらそれでも進む覚悟を固める。
ゆっくり立ち上がって彼の体を両手で抱き上げて外へと連れだしていく。外から差し込む光に向かって歩き出していった。
どうだったでしょうか?次からはゲイナーが登場して火星編の締めくくりになると思いますので楽しみにしていてください。次回の更新は一月の六日か七日になると思います。
次回のタイトルは『暁の空の向こう側へⅣ《真実を追い求めて》』になります。それではみなさん良いお年を!