機動戦士ガンダムE   作:グランクラン

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そろそろ最終章を意識したストーリーになっていきます。


暁の空の向こう側へⅣ《真実を追い求めて》

 

 雨雲はある高重力労働施設一帯に太陽を隠してしまっており、昼間なのにまるで夜のように暗く落としていく。それはまるでその場にいる一部の人達の気持ちを代弁しているようでもあった。元鉄華団メンバーである『チャド』『ダンテ』は赤いテントの中に入っていくとテントの中に冷凍保存されている死体を前に涙を流したり、悔しそうな表情を浮かべたりしている。反対の白いテントでは赤いテントの方を見ながらビスケットは暗い室内で明かりもつけずある人物と通信での連絡を取っていた。

 通信先の人物は悲しそうでどこかそれを耐えようとしており、ビスケットは悲しみを噛み締めながら懺悔するようにつぶやいた。

「間に合わなかったよ。ユージン」

「お前はよくやった方だろ。それよりメリビットさんはどうなんだ?」

「落ち込んでるよ。おやっさんの遺体をどうするか決めなくちゃいけないんだけど……あの様子じゃまだ話が出来そうにないな」

「シノはどうしてるんだ?」

「……うん。やっぱりショックみたいで。ライドの時はまだ我慢していたみたいだけど……耐えられなかったみたいだね」

 するとユージンは気になったことを尋ねる。

「サブレの奴が見つけたんだろ?あいつはどうしたんだ?」

「?サブレなら……どこ行ったんだろ?」

「おいおい……お前が把握してないでどうするんだ?」

 ビスケットは顎下を触れながら思案顔で視界を動かす。すると視界の端に雨に濡れているガンダムエデンが見えたので少なくともここから長距離を移動はしていないだろうという事は分かる。

 ユージンに別れを告げてビスケットはカッパを纏いながら雨の中をテントとテントの間のでこぼこ道を歩きながら湿った赤い硬い粘土のような道をふと見ていると赤い大地から緑の草や木の芽が生え始めようとしていた。ビスケットはそれをよけながら歩いていると一番端でカッパを着て左右の確認をしながら外へと歩き出していく姿を確認しながらビスケットは早足で追いつこうとする。すると、エデンの両目が光り始めビスケットの姿を確認する様に視線を向けるが、肝心のビスケットはまるで気が付かない。エデンが目を光らせたことも、首を動かしていることも気が付かなかった

 ビスケットがふとサブレが立っている場所に立ってみて同じように左右を確認すると、特に何もなさそうに見える。ビスケットはサブレを探そうとその場に立って体をうごかして見つけようとしていると、エデンの陰からサブレが出てくるのを確認してから近づいていく。

 近づいていくとサブレはこっちの方を見て小さくため息を吐き出した。

「まったく、俺の後を追いかけていると思えば、明日からどうなるのか分からないというのに……こんなところで油を売っていていいのいいのか?」

「サブレの方こそこんなところで整備の手伝いをしていていいの?早めに休んだ方がいいと思うんだけど」

 ホッペを膨らませながら目を細めて怒ったような表情を浮かべる。サブレはエデンの背中にまわって蓋のような場所を開き、コードをいじっていると、口にペンチを銜えながら両手でコードを抜いては別につなげてみたりと作業を続けて、タブレットを通じて動作をデジタル内でテストしてみる。

「サブレって整備もできるんだね(整備もできるし、事務作業もできるし、パイロットもできるし、部隊指揮もできるし……隙が無い)」

 コードを繋ぎなおしていると最後にタブレットで確認すると、別の場所へと移動していく。しかし、あまり意味のある行動には見えない。結局整備なんて整備班がしてくれる上に実力も上であることは真実である。ふと、ビスケットは周囲を見ると、普段整備をしていないような人など一部の人々が整備を手伝ったり、コンテナを運んだり普段しない仕事に手を付けている。それをしない人間は明楽がサボろうとコンテナの後ろでこそこそしているのをメアリーが怒って連れて行こうとしていた。最終的に一つのコンテナの周りで狩人のようなメアリーと逃げるウサギのような構図で追いかけっこをしていた。

「仕事をしなさい!」というメアリーの叫び声と共に明楽の「絶対嫌だ!」という奇声のような声を上げながら逃げ回っている間にサブレはイライラしたように震え始める。きっとアニメならこの時のサブレの目は力強く光っていた事だろう。明楽の方まで走っていき、ラリアットを明楽に決めながらそのままコンボでマウントをとると素早く目を潰して顔面を何度も殴り始める。

「ちょっ………!?せんぱ……!?」

「お前は………少しぐらいはシリアスにできんのかぁ!?」

 ビスケットはいつもの風景に少しだけ安心してしまう。先ほどまで周囲に漂っていたシリアスな雰囲気が一瞬で拭き飛んでいき、ビスケットは急いでサブレの後ろにまわって諫めようとする。

 この時、ビスケットは気が付くべきだったのだろう。シノが多少無理をしていることを。

 

 ビスケットは改めて雪之丞とライドの遺体が入ったボックスの上に改めて真新しい花束を置くと黙祷を捧げて赤いテントから出ていく。するとEDMの若い士官の男性が近づいていくと真顔で尋ねてきた。

「ビスケットさん。そろそろテントをかたずけて撤退したいのですが……」

「あ………二人の遺体だけは別に取っておいてください。その後撤退を」

 士官の男性は頭を小さく下げた後、周囲に撤退を指示し始める。ビスケットはそのままヴァルハラまで撤退していく。夕方にはヴァルハラをはじめ多くの部隊が撤退し始めたとき、夜になるとヴァルハラはEDMの空域まで撤退しているとき、サブレは不思議な夢の中まで導かれていた。

 

 重苦しい空気がながれており、息苦しさと圧迫感が襲い掛かってきて、瞼をゆっくりと上げるとそこま真っ暗な空間でどこまでが果てで自分がどこに居るのか、それどころかそもそもどっちが上でどっちが下なのかすらまるで分からず、サブレ・グリフォンはここが夢なのだと判断できた。しかし、不思議な夢でこの場所が夢なんだと認識した今でも信じられないようなほどリアルな感覚が襲い掛かってくる。どこに歩けばいいのか、なんでこんな夢を見ているかすら分からない状況で誰かの手が暗闇の中からサブレの方へと伸ばされる。サブレの右手をつかむと細く綺麗と言ってもいい腕がサブレの体をどこかへと案内させようとしていた。すると小さな光が広がっていき周囲に何があるのか分かってくる。すると、そこにはまるで………綺麗な青空が上と下に広がっているように見え、次第にサブレを引っ張っていた姿が現実のものになっていく。気が付けば周囲は青い空と真っ白な雲が広がる青空とそれを反射するような鏡のような水が地平線の先まで続いている世界だった。

「君は……誰だ?」

 次第に相手の姿が見えてくる。細い腕と同じように全体的に細くやわらかな物腰をしており、長く伸ばされた髪は無造作に伸ばしていることを感じ取らせないような透き通る美しさを見せている。顔はタマゴ顔でどこかのモデルような整った顔立ちは真っ白の肌に青い目、長い金髪と相まって一般的な外国人と言った成り立ちに見える。するとサブレには彼女を良く知っているような……行ってしまえばデジャブのような感覚が襲い掛かってくる。そのデジャブはまるで毎朝洗面台で自分の顔を見ているような感覚と似ていて、そんなことがあり得ないとわかっていながらサブレにそう聞くしかなかった。

「私は###よ。?もしかして………私の名前が聞えない?」

 サブレには名前の部分だけがノイズがかかったようにまるで聞き取れなかった。彼女はまるで嬉しそうな表情を一瞬だけ浮かべた後サブレに一歩近づいてサブレの顔を覗き込む。

「ここは世界の中心。どこまでが限界なのか分からず、どこまでも行けそうな狭く広い世界。何もなく、命すら到達できない世界。虹の彼方すら遠く過ぎ去っていく世界。人は昔この世界に名前を与えた………『アカシックレコード』世界のすべての知識がここにある。でも……今は何もない。アカシックレコードは二千万年前にある一人の男の手によって無に帰してしまった。未来がまるで意味をなさない世界。それは輪廻転生が否定されてしまった世界。原因は……」

「男が虹の彼方を造ってしまった?死んだ者達を受け入れる受け皿であり、世界を一本にまとめてしまった」

「そう。世界は無限に広げるのではなく、世界は有限にしか伸ばせない世界。いつか限界を迎える世界。それが彼が造ってしまった世界だった。それこそが呪いの正体でもあるの、言ってしまえば『限界を作る』というのが呪いの正体。何をしても、どんな抵抗を続けても世界は変わらず、命は全て虹の彼方へと向かってしまう。彼は生まれ変わる世界を否定したいの。それは自分を否定し、自分達という進化した存在を否定した人間への復讐心から来ている。彼は自分が何回生まれ変わっても同じ経験をするのではないかという恐怖心から来ている」

「だったら………俺はどうなるんだ!?俺は………」

「あなたは特別、あなたは私の生まれ変わりだから。正確には私のオリジナルの生まれ変わり、私は生まれ変わる前にここに辿り着き、未来を見た。絶望しかない未来を。どんな道を選んでも世界は不幸になる。でも、たった一つだけ見えない針の穴のような小さい希望が残っていた。それがあなたの世界。その為には彼が死ぬ前に輪廻転生に入らなければならない。その為にはうまくこの時間にあなたを送る必要がある。だからこそ私は分けられ、半分はこの世界に残った。だからあなたは性別が反転してしまったの。私がいるからこそあなたは男としての一生を受けることになった。その為に必要な道具は全部用意した。機械で似通った存在である『アカシックレコード』とそれを導けるように『人工知能』、『ニュータイプ』をはじめとする進化した人類の理論。そして………その力を使いこなすための受け皿である『モビルスーツ』」

「だったら君は………どうしたいんだ?どうしてほしい?」

「私は流れを作るだけ、決めるのはあなた。でも……これだけは言わせて虹の彼方には限界がある。いずれは破綻して終わりを迎える。そんなことをすれば世界は『完全な無』の世界が始まる。新しい何かを作ることもできず、先に進むこともできない。その代りに誰も苦しまず、誰も失う恐怖を覚えない世界」

「俺は………」

「今は結論を出さなくていい。でも、近い未来にあなたは結論を出す日が来る。私はその流れを作りたかったから。もう………分岐点が目の前に来ているの。あなたが『ゲイナー』という人物に会えるかどうかが分岐点なの。このままあなたが見つけられなかったら『アイン』は必ず自分の力で『私が作ったアカシックレコード』を見つけ出す。そうなれば終わり、だから私はあなたに道を示すだけ。高重力作業施設の地下への隠し通路がある。そこから移動すればゲイナーという人に会うことが出来る」

「君は………あなたは」

「最後に……ごめんなさい。あなたを巻き込んで」

 彼女は悲しみに表情を曇らせサブレの体を抱きしめる。

「こうするしかなかった。多くの人の命を使うこの手段しか存在しないの。呪いを解くための手段は同時に虹の彼方を利用する手段でもある」

 そこまで言われた時点でサブレにはなんとなくでそれを理解した。

「『奇跡』を起こすこと……『死者の奇跡』を起こすことが………呪いを紐解く唯一で最後の手段」

「そう。ガンダムは………人間の希望であり、時に時代を象徴するような存在だった。あなたのガンダムは既に奇跡を起こして見せた」

 彼女はサブレの唇に自分の唇を重ね合わせ一瞬という永遠のような時間が流れ離れてしまった。彼女は瞼を開いてもう一度サブレの方を見た。

「最後の奇跡にもう一度会いましょう。その時に聞かせて欲しい。あなたの答えを……最後の時はもう……すぐそこまで来ている」

 そういわれた時サブレの時間は一気に現実世界に戻されてしまった。

 遠くなる景色、光りの速度で遠くなる彼女の姿、そして………宇宙に投げ出されたような感覚と同じく虹が周囲を満たしていくそこには多くの意思と信念がまじりあったまま複雑で今にも壊れそうなほどの不安定さを感じ取れた。そこが虹の彼方なのだと実感でき、手を伸ばしてみると、一人一人の記憶を覗くことが出来る。本来であれば別の世界で生まれ変わるはずだった命。その場所すら奪われ、苦しみも悲しみも思い出せないほど閉ざされた『無』の一歩手前の世界。意識はあるのに、妙な力が感覚を阻害しているのが分かる。

「ここは………人間が来て良い世界じゃない………こんな場所……苦しみも、悲しみも、喜びも、楽しさも、怒りすら存在しないじゃないか。思い出す事が出来ても、何も変わらず、どこにもたどり着けない寂しい世界じゃないか。こんなの……………嫌だ!!ガンダムゥ!!!!」

 すると、エデンがまるで待ち構えていたかのように飛来してサブレをコックピットの中へと入れるとそのままこの世界から逃げようとする。しかし、どこに行けばいいのか分からない時、『白い一角獣を模したモビルスーツ』と『金色の不死鳥を模したモビルスーツ』がまるで「こっちだよ」っと言っているようにエデンの両手をつかんで現実へと連れていく。最後の力強さと共にエデンは現実という『真実』へと向かていく。

 

 ふと目を覚ますと嫌な汗でTシャツを濡らしており、重い息を吐き出した後で自分が見ていた場所を思い出す。最後に自分を助けてくれた彼らは何を訴えたいのだろうか。もしかしたら………まだ、存在するのだろうか?っと考えてしまい。二つの機体の名前を呟いた。

「『ユニコーンガンダム』………『フェネクス』か」

 太陽が火星の大地から登ってくると、ようやく雨雲は晴れていくのが分かった。サブレは制服を手に持ちながらエデンの方へと歩いていく。真実へ向けて歩き出していく。




どうだったでしょうか?面白かったと言っていただけたら幸いです。次回で暁の空の向こう側へは終わりになります。どんな決着を迎えるのか楽しみにしていてください。
次回のタイトルは『暁の空の向こう側へⅤ《終わりへ向けて》』になります。お楽しみに!
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