9
空が青と白で塗り固められており、ヴァルハラから降りたサブレとビスケットとクレア、そしてなぜかついてきた明楽の四人で作業施設最下層まで降りてくると、一番下にあった倉庫の床を四人で調べた結果、クレアが一番端に隠しドアがある事を気が付きビスケットはパスワードを入力する為の装置を見つけ出し明楽が三日月に連絡を取ると、三日月は
いくつかのパスワードを教えてくれた。三つ目のパスワードを入力した所でようやくドアが上の方へスライドしていき、重苦しい空気が少しづつ姿を現した地下への階段を覗くように前に出ていくと、サブレがその横で下へと降りていく。続いてビスケットとクレア、明楽の順に入っていきランタンのような小さな明かりが上の方に申し訳なさそうについているだけで、それ以外は寂しさを感じる造りになっている。まっすぐに進み今度は階段で下っていくと重苦しい空気を感じさせる鉄製のドアがあり、サブレ達が目の前に立つとドアが自動で開き騒がしい部屋が見えてくる。
部屋の中は実験道具や実験用ベットなど、様々な薬品などが点在しており入ることを躊躇わられる。サブレが意を決して中に入っていくとサブレは背中をチクチクするような嫌な気配を感じ取り、クレアも気持ちが悪そうにしている。ビスケットは不思議な空間に表情を曇らせる。明楽も何か変な感じを感じ取ってしまう。
部屋の中心にパソコンに囲まれるように椅子に座っている老人こそがゲイナーであった。空気がチリチリする感覚が気になりながらもサブレ達はゲイナーに向き合う。ゲイナーは厳しい目つきでまるで品定めするようにサブレから順に見ていくと、小さく息を吐き出し立ち上がろうとしたが何故かやめてそのまま椅子に座ったままでいると明楽は内心「偉そう」っと思いそれを口に出そうとするがビスケットが明楽の横っ腹を強く叩いて諫める。
ゲイナーはコーヒーカップに入っているであろうコーヒーに紫色の怪しげな液体を入れていき、サブレは若干青ざめていく。一口だけ飲むとゲイナーはもう一度サブレの方を品定めをするような目で見ると乾ききった唇を重く開いた。
「ようやく再開できたな。最後にあったのは……鉄華団壊滅時じゃから………もう八年ほどになるか。しかし、あの時の子供がここまで成長するとはな」
サブレはゲイナーの言葉を聞きながら夢か幻か分からないあの不思議な世界を思い出していた。『彼女』が言った最後の奇跡という言葉の意味をもし知る存在ならそれは彼女が作ったと言われている『アカシックレコード』しかいないだろう。そして、それを唯一知っているのはここに居るゲイナーしかいない。それがサブレの考えている事であった。
背中のチリチリとした感覚が増していくことへのストレスから早く聞き出したいという気持ちしかない。
「教えてくれ。あんたは知っているはずだ。アカシックレコードが今どこにいるかを」
ゲイナーは乾いた唇を開くことを一瞬だけ止めて、まるで唇の皮を切ってしまわないようにゆっくりと口を開いた。
「アカシックレコード本体は本来太陽系の外におる。しかし、地球での戦いの際に太陽系に帰ってきていることは木星帝国も確認ができておるようじゃ。そして、現在は―――――」
そこまで行ったところでクレアが弱い力でサブレの右腕をつかんでくるのを感じ取り、サブレは振り返ると顔を真っ青に変えたクレアの姿であった。そして、ゲイナーの言葉をかぶせるかのように弱い言葉を吐き出す。
「サブレ………見られてる。誰かが…聞いてる」
その瞬間にサブレの脳裏にアインの顔が浮かび上がった。その瞬間にサブレは明楽の腹を思いっきり蹴り飛ばした。悲鳴を上げる暇もないぐらい吹き飛んでいき壁に強く激突したところでクレアの表情の青さが嘘のように無くなり、その代わりにゲイナーは口を閉じた。
「さっきの言葉をちゃんと聞いていたのか?」
「言ったのか?アカシックレコードの居場所……」
「ああ、言ったぞ。木星と火星の間にあるアステロイドベルトにあるポイントEと呼ばれている場所だっとな」
サブレは唇を噛み締めそうになり小さく震える。そして、そのまま部屋から出ていくためにドアに手を掛けた瞬間にビスケットが振り返り声をかけた。
「どうしたのさ。いきなり」
「聞かれていたんだよ。アインに!」
そう言って駆け出していくサブレを追いかけるようにビスケットとクレアが駆け足で追いかけ復活した明楽は何が起きたのかまるで分からないまま呆けているとゲイナーは立ち上がり腰を何度も叩いていると明楽に「さっさと行くがいい」っと無理矢理どける。明楽は納得ができないという風に駆け足で進んで行く。
ゲイナーは明楽がぶつかった壁にしゃがみ込み静かに『何か』を拾い上げると、それは小型の機械であった。おそらくは足のような物が付いていて移動しながら脳波で聞くことが出来るのだろう。それゆえの小型化というわけだ。
「やれやれ。わしの事はあきらめたと思っておったが、彼らが見つけ出すのを待っておったのか」
小型の盗聴器を回収しながらサブレ達が消えていった方向へと眺めながら小さく呟いた。
「これも運命かもしれんな。なあ……」
ゲイナーはコットンへと連絡を飛ばした。
10
サブレはヴァルハラを出撃させようとビスケットはブリッジに上がると各員は持ち場に付こうと移動をひっきりなしにせわしなく忙しそうにしているとサブレは遠くの視界に映る渓谷を眺めているとブリッジから警報音と共にメアリーの声が響き渡る。
「木星帝国のモビルスーツ隊が多数接近中!各員準備に入ってください」
サブレは明楽達に指示を飛ばした。
「お前たちは先にヴァルハラの中に入っていてくれ。急いでここから出る必要がある」
サブレの意見にサラが前に出ていき真剣な面持ちをサブレに押し付けながら前に一歩だけ進み出る。
「待ってください!一人で戦うつもりですか?」
「エデンだけが宇宙に一人で出ることが出来る機体だ。準備ができ次第すぐにでも宇宙に出ると思ってくれ。最初に言っておくがアイン達が先に目的地に辿り着いている可能性がある。あくまでも地上にいる部隊でも対処できそうだと判断できたところで離脱するつもりだ。上に上がってすぐにでも加速をかけて一日かけてアステロイドベルトのEポイントへと向かう。言っておくが遊んでいる場合じゃない」
サラは何かを言いかけようとしてあきらめた。サブレがこういった以上絶対に引かないことは明らかだった。諦めながらサブレの指示に従うことにした。他の全員も同じあきらめ顔で指示に従うとサブレは単身エデンに乗り込んでそのまま戦場へと向かう姿を全員が見送っていた。
サブレがEDMのモビルスーツ隊の前に出て空中に浮かんだ状態でネオ・ファンネルを開放し、エデンの両肩で待機状態になると渓谷を超えたモビルスーツ群が見えてくる。エデンが攻撃状態になると、警告を超えたモビルスーツの数が軽く100は超える。後方に待機している『ジム・キャノン』に乗っている若いパイロットの声がサブレにも届いた。
「こんなに残っていたのか?敵は何を考えているんだ?」
少なくとも地上に展開している戦力のほぼすべてを使っているのではないかと予想される数がそこにいた。肩にキャノンやシールドを背負っていたり、近接武器だけ構えている機体すら存在する。幸いなのはモビルアーマーがいないことだけだろう。
ヴァルハラが空中に浮かんでいくのを確認するとサブレはエデンを空中に浮かせてモビルスーツ群に突っ込んでいく。エデンはファンネルを使った攻撃とライフルの攻撃の並行で一気に十機のモビルスーツを倒していく。敵モビルスーツ群も一斉にエデンに向けてビームライフルの引き金を引いた。しかし、エデンはまるでサブレの意思を確認する前に動くみたいにサブレ認識する前にリングファンネルを周囲に飛ばしてビームを屈曲させてしまう。
「今……勝手に」
勝手に動いた。それだけは確かに分かった。
少なくともサブレは特に操作も意識もしていなかった。それなのにエデンはまるで意識がある様にリングファンネルを操作して見せた。
「エデンにはAIで搭載しているのか?」
そう思った時、目の前に存在している小さな画面に文字が書かれているのが分かった。
『私の名前はサポートプログラム・アーティフィシャル・インテリジェンスと申します。昨日よりエデンのサポートをすることになりました』
サブレは内心「余計なことをしたなソニア」と呟きながら大きなため息を吐きシニカルに微笑みながら語り掛けた。
「ああ、よろしく頼む。このまま敵の数を数えていてくれ。あとは未確認のモビルスーツの数もな」
『了解しました』
ファンネルを操作しながら二十五機のモビルスーツまで落としたところでサポート・AIがバルバトスとガフェイン・マークⅡが戦場に辿り着いて攻撃を開始したときメッセージを受け取ったと連絡を出した。
『メッセージ:今のうちに離脱してください。戦力はこちらで用意した戦力で十分だと判断します。追記:宇宙にも戦力が展開しているようです。急いで離脱してください。Byコットン・アドモス』
サブレはバルバトスとガフェインの方を一瞬だけ見るとサブレは宇宙に上がっていくヴァルハラを見上げるとサブレはサポートAIに指示を出そうとするが、とっさに名前が出てこない。
「あっ……えっと」
言いよどみ宇宙へと出るための準備をしながら脳内で『サイガ』と『オルガ』の事を思い出す。
(いや……それだけは無いだろ)
そう思いながらも名付けたくなる名前なんだと自ら認めなずけることにした。二人の名前を色濃く受け継ぐような名前を―――――。
「『サルガ』それがお前の名前だ」
『?分かりました。それがご主人様の要望であれば従うまでです。それでは、ご要望をおしゃってください』
「サルガ。宇宙に出るぞ!エデン加速モード!」
『了解。【ガンダム・エデン】加速モードに入ります。カウントは?』
「いらない!準備が出来次第一気にいけ!」
『加速モードON。宇宙に出ます」
そう言ってエデンは加速していく中流れる景色の端で薄っすらとクリュセが見えた。脳裏によぎるレレとアスナの姿を思い出し。脳裏で二人に再会の言葉を告げて去っていく。
(すべてが終わったら必ず会いに行く!行ってくるよオルガ)
暁の空の向こう側へと強く進んで行く。赤く染まっていく視界と流れる雲が重なって見えていく中、サブレは宇宙へと進んで行く。
ヴァルハラが宇宙へと出るとサブレが追いかけてくると信じそのまま待機モードへと入った。すると、左側から距離こそあれど木星帝国の軍勢が襲い掛かろうとやってきた。今度こそモビルスーツを出撃させようとしたが、まばゆい光が木星帝国のモビルスーツである霊電と元ギャラルホルンから奪取したキッシュの混成部隊を襲い掛かった。すると、ヴァルハラを追いかけるように宇宙へと昇って来たエデンの姿だった。
エデンの砲撃モードを持っても怯むことなくやってくる霊電とキッシュの混成部隊を前にエデンはネオ・ファンネルをケーブルに繋げない形で射出する形で放ちそのまま敵モビルスーツ隊へと送り込む。ビームの強烈の光が何度もモビルスーツを落としていく。すると、敵は何とか近づこうとエデンの方へと向かていき。エデンはあえてその場から動かず、ライフルで攻撃しながら後退していくと、後方の方からEDMの主力隊が回り込む形で姿を現した。すると、モビルスーツ隊の中に見慣れないモビルスーツがある事に気が付いた。
「済まないな、ファントムブラッド隊!新型モビルスーツである『ガンジュ』を受領するのに時間が掛かってしまった。こちらは我々が引き受ける。君たちは行くといい!何か理由があるのだろう?」
第三艦隊の総隊長からの力強い言葉を背にヴァルハラは加速をかける準備をしながらエデンをヴァルハラの中へと入れていく。エデンが固定されたのを確認した後、加速をかけながら突き進んで行く。星々が流れ星のようになっていく中、みんなの心には不安がよぎっていた。
ヴァルハラが最終加速をかけてアステロイドベルトのEポイントへ向かったのは既に十二時間が経っており三日月と元鉄華団のメンバーであるチャドとダンテ、デルマを含んだ現在確認できている者達が集まっており、すると彼等にとって懐かしくも真新しく見えるイサリビ改の姿が入港しようとしていた。
イサリビ改の中からユージンが姿を現してチャド達へとあいさつがてらハイタッチを決めていく。三日月頭を一回だけ叩くと一旦距離を置いた。
「で?結局どうするんだ?お前の言う通りここまで来たぜ」
三日月は手元の端末を使って自分の意思を伝えた。
『いざとなったらきっと俺達の力もいると思う。だから俺だけでも向かわせてほしい』
すると、チャド達もアイコンタクトで言葉を交わすと代表してチャドが前へと出た。
「だったら俺達も連れて行ってくれ。これも俺達がしたことなんだ。それにここでジッとしているなんて耐えられないしな。これを俺達元鉄華団の最後の仕事にしよう」
三日月があっけにとられているとダンテやデルマも笑いながら覚悟を決めた顔をしていて、説得するのが無理だと判断できた。ユージンは「やっぱりな」っと笑いながらイサリビ改の方へと親指を向けつつ驚く言葉を向ける。
「そう思ってEDMから最新機を三機ほど手に入れてるぜ。あと二機入れられるけどどうする?一機はバルバトスを入れるとして。これだけか?」
そこまで行ったところで三日月たちの後ろから話しかけてくる人影があり、驚いて後ろを振り向くとそこにはモンタークがゆっくりと近づいてきていた。
「私も仲間に入れてくれないか?戦力ぐらいにはなろう」
チャド達は不安そうな顔をしているがユージンと三日月はアイコンタクトで会話をするとユージンが代表して声を出す。
「いいぜ。確かに戦力は大いに越したことは無いしな」
そう言って中に全員を入れると中にはバルバトスやガフェインが中に入れられているところで元々存在するモビルスーツは『ガンジュ』と呼ばれているモビルスーツが鎮座していた。
濃いめの青と肩や膝の部分は薄い水色のようなカラーリング。左肩についている耐熱シールドに右側にはビームサブマシンガンを装備されており、ビームサーベルも一本だけ右肩に装備されている。耐熱シールドにはミサイルが三つだけ装備されており、ブースターも特殊仕様で木星の高重力にも余裕で動けるようになっている。
「EDMの主力である一番艦隊から五番艦隊も木星へと向かうことになっているらしい。俺達も邪魔をしないという理由で連れて行ってくれるらしい。行こうぜ!」
そういう彼らも最終決戦の地へと突き進んでいく。
《暁の空の向こう側へ編 火星編終わり 断章Ⅱ開始》
どうだったでしょうか?楽しんでいただけたら幸いです。次回から三話ほど断章を書くつもりです。それぞれメインの三人が存在します。『ペペロ』『ククナ』『テム』の三人になります。
次回のタイトルは『ピエロの怒りの理由』になります。お楽しみに!