機動戦士ガンダムE   作:グランクラン

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いよいよ木星本土が部隊の話が始まります。今回はマクマード、皇帝、ククナ、オズボーンの視点で描かれています。お楽しみに!


君を想うⅠ《木星会談》

 

 テイワズの本拠地と呼ばれた移動型コロニー『歳星』は木星圏の要塞『グノーシス』が存在する宙域、船のように見える全体にリングのような物がくっついて見える船体が特徴的、そんな歳星がグノーシス宙域に辿り着いた。

 広い宙域に目立つ二つの人工建築物が存在する。

 そのうちの一つは二つの小惑星要塞を強引にくっつけた結果歪な形になっている。下の小惑星と上の小惑星の間は人工的なコロニーのような物でつなげられていて、要塞一帯の宙域にはとにかく様々な戦艦クラスが囲んでおり、否応なしに恐怖を駆り立てられる。

 もう一つは単純なコロニーのようにも見えるが、コロニーではありえないような大きな穴が開いている。そちらも多くの戦艦が守る様に鎮座している所をマクマードはパソコンの映像越しに確認する。

「逃がすつもりは無いってわけか……まぁ、こっちも逃げるつもりもあまりないがな」

 マクマードの居室には多くの部下がスーツ姿で待機しており、その中に異彩の人物も混じっている。

 ヤマギ・ギルマトンはキリっとした表情をしながら同じスーツを着込んでいる。マクマードが昔あった時はと言えば少々おかしいかもしれないが、マクマードはヤマギと何回か見たことがある。

 初めて見たのは鉄華団がテイワズの直轄の組織に格上げによる式典の場であった。

 正直最初の印象はその辺のガキと変わらないという点だった。だからだろう、戦力を求めていた際に会った時はまるで他人なのではないかと思わせたほどだった。

 マクマードはその辺の理由は聞かなかったし、正直に言えば興味を持ちたくなかった。興味を持てば同情してしまうかもしれない、興味を持てば手助けしてやりたくなるかもしれない、何よりそれができないことに絶望させるかもしれないことが嫌だった。

 マクマードはもう一度目の前にあるスーツケースに目を向ける。スーツケースを開封し、中に確かにカードキーを入れる。

 今回の会談はこのカードキーの取引である。しかし、マクマードの狙いは全く別である。

 カードキーを入れたところを多くの幹部が同時に目撃しており、そのスーツケースをもう一度締めて鍵を掛けない。

 同時にハンドガンを胸ポケットに入れていることを黙って確認するマクマードの狙いをもう一度確認する。

「オヤジ。あいつらがそろそろ会談の会場に来るようにって通告が……」

「ああ、分かってる」

 そういいながらマクマードは居室から出ていくためにスーツケースを右手に持つ、そのまま居室を出ていくとまっすぐにシャトルへと向かった。

 シャトルに入る前に歳星に残るメンバーに向けて小声で指示を出す。

「作戦が失敗したと判断したときは歳星は……」

「分かっています」

 マクマードは他にも残るメンバーに会釈をし、そのまま複数のシャトルのうちの一番大きなシャトルへと乗り込む。

 シャトルの座席にはマクマードしか座っていない。

 シャトルはゆっくりと歳星から出ていき、多くのモビルスーツや多くの戦艦を横目に少しずつグノーシス要塞へと近づいていく。

 マクマードは自分の目の前にあるスーツケースをじっと見つめる。

 

 皇帝は謁見の間に誰もいないことを確認し、自分が普段座っている豪華な椅子の手すりの下を触れていると、手すりの下にあるボタンを押す。

 椅子が横にずれていく。

 そこには隠し通路が現れる、階段を下りていき薄暗い部屋には寂しいほどにコンクリートでできており、部屋の一番奥には長方形の棺のような物が置かれており、太いパイプがいくつもつながっている。

 その棺の一番上は透明なガラスケースになっており、棺の中にはフレアが腕を体の上で握りながらまるで眠っているようでもあった。

 フレアはまるで眠っているような形になっているが、彼女は既にこの世にはいない。生前の姿で冷凍されている彼女を皇帝は涙を流しながら抱きしめたい衝動に駆られていた。

 棺の上から体を預けながら涙を流す。

「フレア……もう少しだ。もう少しで我々を追い詰めた地球を滅ぼすことが出来る」

 地球という恵まれた環境が存在すると、木星や火星のような恵まれない環境に押し込まれて過ごす人間たちは苦しみを受けることになる。

 実際火星は乾燥した大地に苦しみを受け、木星は汚れたコロニーの空気で病原菌の蔓延を体で受けていた。犯罪者を一つに押し込めて、見向きもしない地球という星に住む人々を多くの惑星の人々は妬み、恨み、嫉妬していた。

 恵まれた環境。緑の多い大地、生き物の多く生息できる海、安定して住むことが出来る土地。それらを考えるだけで嫉妬に狂う人間は出てくる。

 実際フレアは木星の環境の悪さが原因で命を落としたと言っても過言ではない。

 いくら当時の皇帝が地球に環境改善を訴えても何も改善策も示さないどころか、無視をし続けるだけだった。

 そもそも、皇帝の一家はバーンスタイン家と同じ木星では首相という存在であるが、逆に言えば厄祭戦の後で木星の地へと追いやられた。

 立場で言えば、多少はましというだけで地球から支援を受けられないという点ではあまり変わらない。

 皇帝は憎しみを原動力に、たとえ悪魔の所業と言われたとしても地球を滅ぼして見せると覚悟を決め突き進む。

「後少しだ……あと少しで地球を滅ぼす力を手に入れることが出来る」

 皇帝は憎しみの目で地球を見る。

 一丁の銃を胸にしまい、覚悟と憎しみを抱えていざ会談へと向かう。

 

 ククナは改造を終えたエンペラーの前で腕を組みながら眺めていた。

 エンペラーの背中には金属製の大型アームクローがくっついており、全身のシルエットも不気味さを増したように見える。

 エンペラーの改造プランBこそがこの姿だった。

 背中に大きな手のひらがくっついているような姿はある意味悪魔のようにも見えるが、その手のひらが単純にマントに見える。

 彼女は改造の最終調整を他の整備士に任せ、自らの部屋へと赴き服を着替え始める。白を基本色に金色の装飾が施されたスーツに身を纏い小さな手のひらサイズのハンドガンをスカートの中へと隠しながら彼女は部屋を出ていく。

 最後にエンペラーの姿を確認しつつククナは船をそのまま降りて連絡通路に足を踏み出す。

 グノーシス要塞の中へと足を踏み出すと、若い士官達がせわしなく動き回っている。足音を若干鬱陶しそうに聞きながらも、ククナは誰にも遭遇しないままに会談会場前までたどり着く。しかし、腕時計を確認すると時間はまだ一時間以上開いている。

「仕方ないわね」

 そう思いながらククナは会場から五分ほどにあるジューススタンドへと足を運んだ。

 時間を潰すだけならここで十分だろうと思い、ホットのブラックコーヒーを購入すると、彼女はコーヒーを飲みながら作戦を頭の中で思い出す。

 今回の作戦次第では邪魔な人間をある程度始末出来るつもりであった。

「会談に参加するメンバーはテイワズからはマクマード。こちらからはあの人以外に私とオズボーンぐらいだったはず。あの人の考えは読めるからいいけど、問題はオズボーンよね。彼については私はあまり知らないのよね。私が色々と外している間にテラが勝手に推奨したって聞いているし」

 ククナとしては問題はオズボーン一人と言っても過言ではない。

「オズボーンについてはある程度予測が出来るからいいんだけど。多分、コロニーレーザーの破壊、もしくは要塞の破壊でしょう。簡単にカードキーをわたすとは思えない。かといって自分以外の誰かに簡単に渡すとは思えない。しかし、こうなった以上自分で責任をとろうとはするはず」

 マクマードの狙い。

 今頃になってマクマードがコロニーレーザーのカードキーを引き渡すと言い始めた。その狙いが何なのかをククナなりに推測した結果でもある。

 マクマードは敵の懐に入れるこのタイミングを待っていたのだろう。

 しかし、ククナとしてはむしろ望む所といった感じであった。

 何故なら、マクマードが問題を起こしてくれれば木星帝国の掌握自体は難しくない。あのテイワズが全く問題を起こさないで終わらせるはずがないと心の奥での確信があったからだ。

 あのテイワズが全く問題を起こさずに事態を終わらせるはずがない。相手は義理と人情に強く行動を起こすマクマードである。名瀬・タービンの死に反応してジャスレイを斬り捨てたように、鉄華団のメンバーが一人でも多く生き残れるように手を打ったように、必ず義理と人情と基に行動する。

 名瀬・タービンやオルガ・イツカだけではない。鉄華団やタービンズなど、テイワズの名前で散っていった多くの人々の分まで戦うはずだ。

 敵ながらそれが分かってしまう。

 ククナはそれ自体は嫌いにはなれない。少なくとも皇帝より好きになれる性格だと思っていた。

 しかし、好きになれるという理由は味方になるという理由にはならない。

 マクマードをギリギリまで利用して自分が有利になる様に動くだけである。

「そろそろ会談会場に行こうかしら……」

 腕時計で時間を確認すると、時刻はニ十分前になっていた。再び会談会場前に辿り着くと大きな木製のドアを開いていく。

 

 オズボーンは黒いスーツを身にまとい、胸には木星議会の象徴である円卓の黄金バッチが目立つ。

 手元にあるスーツケースには大量の黄金が用意されており、彼は念入りに黄金のチェックに入っていた。

 しかし、彼はスーツケースの底をひっきりなしにチェックしていた。

「ふむ。隠し底自体はうまく機能できている……か」

 そういいながらスーツケースを閉めながら実質の椅子の背もたれに体を預ける。会談開始まで多少の時間がある為、自ら入れたコーヒーに角砂糖を一つまみとミルクをたっぷり入れたカフェオレを口に含む。

「ふう。うまくいくといいが……念のためにハンドガンを一丁隠しておこう。おそらくククナは問題を起こそうとするはず。問題は俺が先かククナが先かという問題だな」

 カフェオレの入ったグラスを机の上に置き、机に置いておいた縦長の謎の端末を手に取る。

「戦後の事を考えればここで手を打っておきたいところだ。しかし、問題は彼等がこの要塞宙域まで来てくれるかという事だ。こればかりは神頼みしかないだろうな」

 グラスのふちを指でなぞりながらブツブツと呟く。

 これからの会談の結果をどう持っていくかが今後の計画に響くと言っても過言ではない。ようは、ククナとの戦いでもあると言えるだろう。

 木星帝国が一枚岩ではないどころか、何枚岩で例えてもきりがない。

 ククナは皇帝を殺そうとしているような気がするが、それ自体を阻止しようとは思わない。むしろ、オズボーンとしては都合のいいように行動できる気がする。

 オズボーンの脳内では数百の戦略があり、ある程度のククナの行動は予測することが出来る。問題はアインであるとオズボーンは予想していた。

「あの男だけは予想しきれないところがある。だからこそ、こちらも秘策を用意する必要があるだろう。だからこそ、『彼ら』が来てくれることを祈ろう。それが多くの命を救う事にもなるのだから」

 オズボーンはカフェオレを飲み干し、最後にハンドガンを胸ポケットの中に、スーツケースを片手に持ちながら部屋から出ていく。エレベーターで会談会場まで降りていくと、会談会場には既にマクマードを含めた全員が揃っていた。皇帝に会釈をすると、オズボーンは自分が指定されている席に座る。

 いよいよ、泣いても、笑っても、後悔しても、悔しがっても、これから起こる会談で戦いの行方が決まろうとしていた。

 背筋を凍らせるような嫌な予感がにじませる『木星会談』が始まろうとしていた。




どうだったでしょうか?面白かったと言っていただけたら幸いです。次回ではオズボーンや皇帝など多くの人の思惑が混ざった会談へと向かいます。
次回のタイトルは『君を想うⅡ《思惑の交差》』になります。お楽しみに!
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