機動戦士ガンダムE   作:グランクラン

72 / 90
いよいよ会談開始です。四人の思惑が交差しながら物語が進むさまと、イオリとシノの関係が進む話をお楽しみに!


君を想うⅡ《思惑の交差》

 

 ヤマギ・ギルマトンは胸に右手を握りしめて置き、右手の中には流星号のマークをかたどったペンダントが握りしめられていた。

「シノ………力を貸して」

 彼は知らない。ノルバ・シノが生きているという事をいまだに。

 しかし、ヤマギは決めてしまった。シノに胸を張って会うために戦おうと、その為というのもあったはずだ。それ以外にはマクマード達に対する恩があったというのも確かに存在する。

 ヤマギ達がまともに仕事が出来るのもマクマードの後ろ盾があったからこそ雪之丞は会社を設立することが出来たのだろう。

 しかし、それはマクマードが………テイワズが存在していればという前提条件でもあった。

 テイワズが姿を消した以上、雪之丞の会社も存続の危機に落とされた。テイワズとの関係が会社経営を次第に悪くさせていった。そんな時にマクマードの密命を受けたアジーから連絡を受けた。

 その内容は「手伝ってほしいことがある」という事、「テイワズが造ってしまった兵器を壊したい」と立て続けに言われ最後には「死ぬかもしれない戦いになるから覚悟できるものだけついてきてほしい」っという言葉と共にヤマギは覚悟して参加した。

 そうすればせめてシノと会った時に胸を張って会う事が出来るような気がした。

 もちろんすべてのメンバーが付いてきたわけでは無い。しかし、鉄華団の元メンバーの内古くからのメンバーは付いてきてくれた。

 残った者達は各地に散っていった。

 それ自体をヤマギは責めることは無い。むしろ堅実的な判断を下したと尊敬できるぐらいである。そんな堅実的な判断を下したメンバーの中には古くからのメンバーも多少は存在した。

 そんな古くからのメンバーは会社経営の中で家庭を持ち、堅実的な生活を選び、戦いが起きる中で旧ギャラルホルンが作った自治地区に避難していった。その後は、EDMが自治地区の自治を引き受け、今も幸せに暮らしている。

 もちろん、ヤマギはそんなことを知る由もないが、少なくとも生きて生きている事切実に祈っていた。

 そんなヤマギ達の想いとは別に四人の思惑の交わる会談が行われようとしていた。

「君達鉄華団は要塞の連結部の内三番を破壊してくれ」

「分かりました」

 テイワズの幹部の一人からの連絡にヤマギが代表して話しかけていると周囲のメンバーたちの表情は一段と引き締まる。

 交渉の終了と同時に攻撃を仕掛け、要塞の連結部を破壊して要塞を破壊する。最悪は歳星を使ってコロニーレーザーだけでも破壊する。それがマクマードが周囲に協力を要請した理由で会った。

 しかし、同時にヤマギはこの話を今の今になって作戦を聞いたのだ。それまでは全く作戦内容を知りもしなかった。

 まるで、内部に裏切り者を感じ取っているかのようだった。

 その直感が当たっているという事をヤマギ達は知る由もない。

 ククナが送り付けた元ジャスレイの会社の生き残りこそが裏切り者だった。だからこそ、マクマードとククナの戦略は既に始まり、会談が始まる前にはオズボーンも自身の策の確認を行っていた。皇帝もまた、カードキーを手に入れようと必死になっていた。

 各々の思惑の交差する会談が始まろうとしていた。

 

 

 マクマードとオズボーンが長机の上にスーツケースを置いたのはほぼ同時だった。

 ククナはマクマードを見つめながらその口を開いた。

「では、マクマードさん。そちらはコロニーレーザーのカードキーの引き渡し、こちらはそれを買い取る為の多額の金塊の引き渡し。それでよろしいですね」

「…………それで構わない」

 こちらの意図を会話の中で知られぬようにと言葉数は少なく。それに対してククナはある程度はこの展開を予想をしていた。逆に言えばこれで確定的になった。

 間違いない。

 アインも別部屋で待機しながら時を待っていた。

 スーツケースをお互いの部下が交換する様に引き渡し、ククナの前にはマクマードが持っていたスーツケースが、マクマードの前にはオズボーンが持っていたスーツケースが置かれた。

 これに対してオズボーンもまた確信を得た。

(間違いない。テイワズの中にククナの刺客がいる。そして、いま受け取った人物もククナが事前に用意した人間であろう。だからこそ、俺ではなくククナの方へと持っていった)

 同時に皇帝もククナの元へと持っていったことへの不信感をあらわにしたが、しかし、皇帝はこの策はマクマードだと考えた。

 そして、この場合正解は皇帝である。

 ククナの前に持ってきたことに誰よりも驚いたのはククナであった。

 一瞬、オズボーンを疑い実際目が合った時に嫌疑の目を見て考えを改めた。皇帝とマクマードの睨み合いに気が付いた。

 その段階でオズボーンもこの考えに気が付いた。

 オズボーンは逆にその策のその先に気が付き、ククナも気が付いた。

 しかし、皇帝だけはその先の思惑に気が付いた。

「マクマード貴様との付き合いも長い。だからこそ、私には分かるぞ」

 そんな低めの声にマクマードはスーツケースに伸びていた手をふと止め、視線を皇帝の方へと向けた。マクマードはスーツケースを開ける手間をあえてやめ、皇帝を無言の目で見つめた。

 ククナが刺客を送り込んだように、マクマードもまた刺客を送り込んでいた。

「ククナ。中身を確認しろ」

 その言葉を受けてククナはゆっくりと蓋を開くと、そこにはカードキーが入っていなかった。

 マクマードの後ろで待機していたククナの送り込んだ刺客は驚きと共にマクマードを見た。その瞬間にマクマードは裏切り者が誰かを瞬時に把握、ククナは舌打ちをしたくなる気持ちでいっぱいになった。

 ククナの思惑ではマクマードとの交渉の最中に後ろから皇帝を撃つことでマクマードに責任を押し付け、自身の手によってマクマードを撃つことで木星帝国掌握の建前を得ようとしていた。しかし、マクマードによってそれが未然に阻止されてしまった。

 オズボーンはこの段階で自分が一番有利だと確信に至る。

 この段階でククナの思惑は外れてしまうことになった。

「マクマード。カードキーをどこに隠した?」

 ククナの明けたスーツケースの中にはカードキーが入っていなかった。

 しかし、マクマードがカードキーをスーツケースに入れるところをテイワズのメンバーが見ていることは誰もが見ていた。だからこそ、驚きと共に全員が凝視していた。

 しかし、同時にククナはカードキーのおおよその場所を推測した。

(用心深いこの男の事だ。自分の手の内から手放すとは思えない。だとするならカードキーはあの男の手の打ちという事になる。どこかに隠しているんでしょうね。少なくとも一度はスーツケースの中に入れているんだから。シャトルで移動する際に彼は一人になった。間違いなくあの時に隠したんでしょうね)

 その瞬間に皇帝がマクマードにハンドガンを向け、マクマードも瞬時に反応しハンドガンを向ける。

「そちらのお嬢さんが仕掛けたことではありませんか?」

 マクマードのそんな声はククナにハンドガンをとらせるには十分だった。

「あら、私が盗んだとおっしゃる?盗んだのはそちらではないかしら?」

 しかし、この状況下で同じようにハンドガンを取り出したオズボーンだけが状況を冷静に考察していた。

(おかしい。この状況で問題を起こす。という事は、マクマードはこの状況にしたいという事だ。やはり、マクマードの目的自体は問題を起こす先という事か。この会談に持ち込んだ時点でマクマードにとっては勝ちという事だろう。やはり、目的はこの要塞とコロニーレーザーの破壊だろう。しかし、カードキーを手放さないという事は、カードキーの中身までは知らないという事だ。それを確かめないことには手放す気にならないという事でもある。偽物を仕込まない時点である程度の策は予測できる。問題を起こすことが目的という事だ。なら……)

 マクマードがハンドガンの引き金に指を懸けた瞬間。他の四人も同時に指を懸けた。しかし、オズボーンだけがポケットの中に入れておいた小さな機械のボタンを押し、その瞬間に二つのスーツケースからスモッグが立ち込めて視界を生める。

 皇帝はこれをマクマードからの宣戦布告と受け取り、マクマードも同時に混乱を起こしながらもチャンスと受け取りハンドガンの引き金を引こうと力を籠める。ククナはこれがオズボーンの策だと考えながらもオズボーンが皇帝を守るためだと判断する。しかし、同時に別の思案が思い浮かぶ。

(オズボーンの狙いは皇帝の守護でしょう。という事は……マクマードからカードキーを奪い取ることが先ね)

 そう思いながらもククナはハンドガンをマクマードの方へと向けた。しかし、オズボーンがやはり一番確信に近い所に居た。

(この状況ならククナが皇帝を殺すことはしないだろう。何せこの場でマクマードを殺さないとカードキーが手に入る可能性が格段に減るからな。それならククナの狙いは間違いなくマクマードのはずだ。皇帝の腕ではマクマードを殺すことはできないだろう。いや、むしろマクマードが皇帝を殺す事をククナ自身が望んでいるかもしれないな。それぐらいなら勝手にしてくれて構わない。こちらはマクマードを生かしておくことが先決だ。少しでも長く生きればそれだけ彼らがここに来る可能性が生まれるだろう。問題があるとすればそこから彼らがどうやって逃げるかに尽きる)

 そう思いながらハンドガンの引き金に指を載せハンドガンの銃口をマクマードとは別の方向へと向けた。

 スモッグが視界を潰し、誰がどこにいるかが分からないこの状況でなった銃声は三つだった。

 思惑の交差する会談は終わりをつげ、予想外の行動へと至る戦いへと向かおうとしていた。

 

 

 ノルバ・シノは焦りと共にパイロットルームの椅子に座りリラックス出来ずにいた。

 両手を握りしめながら出撃のタイミングを今か今かと待ちわびながら貧乏ゆすりを起こしていた。そんなシノに対してサラが苦言を呈す。

「止めませんか貧乏ゆすり」

 シノは無言のまま貧乏ゆすりを一旦止め、数秒後には再び行い始める。苛立ちは全員に伝染する様に苛立ちが募っていく。

 マークが怒鳴り散らそうと声を出そうとした段階でサブレが口を開いた。

「止めろというのが聞えないのか?シノ」

「………」

「別にお前だけが焦っているわけでも無い。今お前が焦ってすぐに到着するならそれでもいい。だが、お前が焦ったところで何も変わらないという事は分かっているはずだ」

「………」

「それとも、俺に対して返事ができないくらいに追い詰められているってことか?」

「………!」

 全員が分かっている事、サブレだって分かっている事である。ここ数日のシノは明らかにおかしかった。無意味に明るく振舞おうとする傾向がみられたのは一か月くらい前のクリュセ攻防戦での時である。

 そう、シノはライドの死に対しそれなりにショックを受けはした。しかし、涙を流すビスケットに対し、自分がしっかりしなければという想いから踏みとどまって明るく接した。しかし、それは同時にシノに自分を追い詰めるきっかけになる。

 それが分からないサブレではない。しかし、サブレとて苛立ちを抱えながらそれを発散させようとため込んでいる時期である。みな同じ、ストレスの吐け先に敵のモビルスーツを求めている。しかし、シノだけは今までの分を含めてそれ以上のストレスを爆発させようとしていた。

 実際、サブレの言葉でストレスは爆発する。

 サブレの胸倉に食らいつき壁に叩きつけながら睨みつける。

「分かってるよ!!俺が焦ったも仕方がないということぐらい!」

「………だったらイライラするようなことぐらいきっぱりやめたらどうだ!?」

 サブレも同時に叫び苛立ちシノの胸倉に食らいつく。その瞬間にパイロットルームの中にイオリとビスケットがジュースの差し入れをもって現れた。イオリがシノを前から抑え、 ビスケットはサブレを後ろから抑えた。

「みんなも頼むから押さえて!」

 皆が一斉に二人を押さえる。イオリはシノを連れて部屋から出ていき、小さな小部屋に落ち着かせる。ソファに座らせて落ち着いたところでジュースを手渡す。

「すまねぇ。情けない所を見せちまった」

 イオリは隣に座りシノの方へと視線を向ける。そんな沈黙の時間が三十分だけ続くとシノが昔を思い出しながら語りだす。

「鉄華団の時代はさ、ユージンってやつと一緒に風俗に行ってたりしたよ。鉄華団には女との出会い何てあまりなかったしな。メリビットさんはおやっさんと付き合ったし、アトラやクーデリアのお嬢さんは三日月に好意を抱いていたしな。まあ、俺はそういう意味じゃあ縁がなかったしな。鉄華団にはヤマギって奴がいるんだけどよ。そいつ、女みたいなやつでさ、俺に好意を向けてい事に俺は最後の戦いまで気が付かなった。結局ヤマギとはそれっきり話をしていなかった。気づいたってことも話せなかったよ」

「シノさんは………そのヤマギっていう方とはどう……なりたいですか?」

「何っていうかな……そういうのも家族っぽくていいかもなって。俺、家族って知らないしさ。みんなに言えることだけどよ。俺達はみんな家族を知らないからな。知りたかったんだよ。家族を………だけど…………!」

 そんなシノの想いは自らの行動でフイになってしまう。

「もちろんさ。このファントムブラッド隊だって感謝しているし、楽しいと思うぜ。でもさ………俺、あいつにあってやらなくちゃいけないんだよ。そうでないと俺は………前を向けない」

 イオリは強く、強く抱きしめながらシノの耳元でささやきかける。

「会えますよ。会えるように私も祈ります。私の想いはあなたの想いですから」

 君を想う。

 この戦いはどう向かうかは誰にも分からず、シノとイオリは祈り、想う事しかできなかった。

「想いは通じるかな?」

「通じますよ。シノさんが忘れなければ……伝えてください」

 それぐらいしかイオリにはできなかった。




どうだったでしょうか?楽しかったと言っていただけたら幸いです。次回では続いて四人の視点で話が進んで行くことになります。
次回のタイトルは『君を想うⅢ《誇りの向かう先》』になります。お楽しみに!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。