機動戦士ガンダムE   作:グランクラン

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最終決戦がいよいよ始まります。


選び取った未来Ⅲ《ファントムブラッド》

 

 ノルバ・シノは葛藤していた。

 ヤマギの敵を討ちたいという気持ちに偽りはない。しかし、同時にそれでいいのかという自分の中に居る良心が「それでいいの?」っと語り掛けてくる。

 ヤマギの死を切っ掛けに『覚醒者』として覚醒し、それによってサブレが背負っている『何か』にも気が付いてしまった。

 憎しみ、悲しみ、怒りすらも抱え込んで、背負い込んで前に進もうとするサブレ。

 そんなサブレと自分を見比べしまう。

 サブレはサイガが死んでも、オルガが死んでも恨むことはしても、それで復讐しようとは思わなかった。

 復讐をするのなら、ガエリオ・ボードウィンを殺したはずだ。それでも、サブレが何を想い、どうして前に進もうとするのか、それは分からなかった。

 しかし、寂しくそれでも多くの命を背負って歩こうとするサブレの背中は………年下のはずなのに、大きすぎる。

 人としてどこか葛藤をしていた時期もあっただろう。

 人として、進化した『何か』を持つ者として、板挟みになるときもあった。しかし、それすら多くの支えで超えていった。そんな人間を前にして、自分がこの数年間で何ができたのか、ヤマギに何をしてやれたのかっと考えてしまう。

 立ち止まりそうになり、立ち止まるとヤマギの事だけを考えそうになる。嫌だから、思い出せば、後悔を思い出すとそのまま地獄まで落ちてしまいそうだった。

 最終決戦へと向かう中、自分だけが前に進めない。

 明楽も、サブレも既に進んでいるのに………シノだけが進めずにいる。

 パイロットルームで、たった一人、寂しく、怖気づいて進めない。

 そんな時、シノの背中に体を預ける存在を背中に感じ、振り返るとイオリが抱きしめていた。

「………イオリ」

「帰ってきて」

 イオリとシノの視線がぶつかり、シノを見上げながらつぶやく一言は儚くも力強い一言だった。

 イオリを抱きしめながら暖かを体中で感じる。

「守りたい者の為に戦う……か」

 多くの人が思う当たり前の感情。今なら………よく分かる。失ってしまったからこそ、これ以上失いたくないという気持ち、絶対に守り抜いて見せるという覚悟。

「君は………俺が守る。絶対に………」

 お互いに温め合い、前に進む勇気をイオリからもらったシノはメテオへとまっすぐ向かう。

 

 明楽もシムカスの中で待機状態になっており、既にエデンはこの格納庫にはおらず、外で強化外装と一緒に戦場へと移動している最中だろう。

 しかし、寂しくはない。

 先ほどから明楽が通信機を使ってちょっかいをかけているメアリーが面白いからなのか、それともようやくすべてが終わるという気持ゆえなのか。

 あと数分で戦場につくという時に、パイロットルームでイオリとシノが抱き合っているという状況前のめりになって頭の中でどうちょっかいを掛けようかと試行していると、目の前にメアリーが画面を開いて妨害に入ってきた。

「邪魔しないでよ」

 頬を膨らませながら文句を述べると、メアリーはうんざりしたような表情を浮かべながら苦言を述べる。

「アンタがちょっかいを掛けようとするからでしょ?」

 メアリーは「全く」っとつぶやきながら、やれやれと首を左右に振る。

 明楽はどうしても聞きたいことを聞くチャンスなのではっと考えてしまい、そのまま言葉にする。

「俺でいいの?」

「はい?どういう意味?」

「………」

 無言の圧力、というべき無言がメアリーを襲い掛かる。メアリーは大きなため息を吐き出しながらもう一度明楽を見る。

 昔と違って少しは成長したのかもしれない。そう思えた。

 昔はどこか危なっかしく、お調子者で、楽天的な所があった。しかし、今ではどこか成長したようにも思える。それがどこかと言われると困るが、それでもそう思えるぐらい少しは成長した。

「アンタと付き合うかどうかはこの際保留にするとして……」

 明楽が聞き捨てならないような言葉を聞いたような顔をしながら、そんな表情を楽しみながら微笑んで見せた。

「アンタがイオリと付き合う可能性を排除しただけかもよ」

「まあ………その可能性もあるけど……」

 そこまで言われればそうかもしれないという気持ちになってしまう。しかし、それも本心かどうかも分からないというのが明楽の本心である。

「それも………嘘」

「………正解」

 適当に言った言葉が当たるという事はそうそうある事ではない。しかし、またメアリーの本心がどこにあり、明楽に対してどういう気持ちなのかがよく分からない。

「帰ってきたら教えてあげる」

 今はその言葉を信じるしかなく、明楽は戦いに対しるモチベーションが多少上がっていくのが分かった。

 

 明楽よりさらに早くパイロットルームから出ていき、格納庫ではなく、ヴァルハラの右側面につけられているエデンの元へと急ぐ。

 通路を通り過ぎ、ドアを開ければエデンの元へと逝ける手前でクレアが話しかけてきた。

「サブレ」

 振り返りクレアの方をまっすぐ見るめる。クレアは不安そうな表情を浮かべながらサブレに抱き着いた。

「どうしたんだ?」

「私……お姉様とちゃんと話をしようと思います」

「………決めたんだな?」

 サブレのその問いにクレアは黙ってうなずくという形で答える。

「つらい現実しかないかもしれないぞ。今更ククナの想いを知ったところで彼女の覚悟や気持ちへの返事なんかはできない。それでも………君は会うんだな?向き合うんだな?姉と、自分の家族と、何より未来と」

 クレアが今まで見ようとしてこなかったもの、逃げようと目をそらし続けてきたもの。

 家族が怖かった。父親が嫌いだった。姉が不気味だった。

 誰も教えてくれなかったから。

 周囲に居る人々も、姉も、父親ですら何も教えてくれなかった。

 クレアが人の心を覗くことが出来ると知ってからは、誰も彼女に触れようとすらしなかった。だからこそ、寂しくなり駆け出していった。

「もう……逃げちゃだめだと思うんです。多分、これが最後のチャンスだと思うから」

 これを逃せばチャンスが無くなるだろう。

 取り返しのつかなくなる前にちゃんと話をする。

「俺は君を送り届ける事しかできない。でも、送り届けるだけのことはさせてくれ」

「ううん。あなたはあなたであなたにしかできないことをしてください。アイン・ダルトンを止めることが出来るのはあなたしかいない」

 クレアが無理をしていることは分かっているが、サブレはそんな無理をしているクレアの顔を無理矢理近づけ、口と口をそっと触れ合わせる。

 長いようで短い三十秒が過ぎ去り、口づけをやめてお互いに再び視線を合わせる。

「想いはいつだって君の側に居る」

「私の想いもあなたの側に居る」

 二人はそっと離れ、クレアはドアの奥へと姿を消していくサブレを見届けた。

 

 サブレは薄暗い空間を超え、エデンのコックピットの座席へと座り込む。座席が沈み込み、薄暗く狭い空間が少しずつ明るくなっていく。

 リアクターがパーティクルドライブど連動する駆動音が聞こえてきて、サイコフレームがサブレの脳波を受信して、基本フレーム越しに全身の状態が脳内に映し出される。

『ガンダムエデン・フォーエバーの起動を確認。強化装備『アーマーズ』の連結も確認』

 全方位モニターが起動し、周囲の状況が見えてくる。

 流れるような星々、戦場が近づいているという感覚だけがサブレの体中から感じ取れる。

 目を瞑ると先ほどの口づけを思い出し、鼓動が速くなる。だからだろう、感覚が研ぎ澄まされていき、コロニーレーザーが第一射撃を行おうとしていると理解して、ヴァルハラから離れていく。

 戦場に到着と同時にコロニーレーザーの前へと立ちふさがる。

 何が出来るのかではない。何を守りたいかでもない。今動かないと後悔するというだけだった。

 しかし、その瞬間に声が脳裏を研ぎる。

『力を貸そうか?』

 そう言うとシンプルなガンダムから、翼を生やした目立つガンダム、不思議な粒子を周囲に飛ばしているガンダムまで様々なガンダムがエデンの周囲へと集まっていく。

 多くの人々の想いと、死者の想いがサブレに集まっていく。

「みんな願っているんだ。人々を消し飛ばす行為を止めてほしいっと。だから………ガンダム達!俺達に力を貸してくれ!!」

 不思議なな光が周囲を包み、同時にアインの怒号が聞えてきたようだった。

「亡霊が今更立塞がるかぁ!!??」

 

 

 戦闘が始まると同時にEDMの戦力はコロニーレーザー破壊部隊と要塞攻略戦の二手に分かれて行動しはじめる。

 ヴァルハラは要塞攻略戦へと急ぎ、エデンも一旦はヴァルハラの護衛へと急ぎ、エンペラーは補給を受けながらコロニーレーザーへと近づく部隊を叩き落す。

 アインはサブレとの決戦を前に武装を消耗しすぎるわけにはいかない。

 それはサブレも同じで防衛の為に前に出ていき、ある程度武装を減らしてしまったら開発部が持ってきた補給専用艦へと戻っていくをひたすら繰り返す。

 エデンが前方へと走っていき、大型タンクから三百のミサイル・ファンネルを周囲へと飛ばし、ミサイルはサブレの脳波を受信すると敵の攻撃を回避してモビルスーツや戦艦へとまっすぐ突っこんでいく。

 推力を失った戦艦を大型ビームサーベルで切り裂きながら、別の戦艦を主砲で打ち落とす。

 周囲のモビルスーツはエデンの周囲を囲みながら、ビームライフルで交戦しようとするが、エデンはIフィールドで攻撃を受け止めながら一旦ミサイルで撃退する。

「明楽!一旦下がる。補給まで戦局を維持!シノはそのまま艦の護衛を維持!」

 エデンが一旦下がり補給を受ける中、サブレは一瞬だけサラ達の事を思い出してしまう。

 ここにいない者達を思い出しても仕方がないという想いと共に、背負っていった命の為にも今は前に進むしかないという気持ちで切り替える。

 倒しても、倒しても戦力が減る気がせず、ミサイルでダメージを受けた機体は素早く離脱して整備を受け、その間に別の機体がサポートに姿を現す。

 キリの無い戦いが続きそうな中、敵が後退する一瞬の隙を見つけたのはビスケットだった。

「シノ!次、敵のモビルスーツが後退する時に攻撃の手が一旦止む。その隙に両肩の圧縮ビーム砲で要塞の砲台方面に向けて撃って。場所はシノに任せる」

「分かった!やってみる」

 シノがライフルで敵の牽制を始めながらサブレが一旦前に出ていく。

「俺が敵の数を減らす!そうしたら敵は後退するしかないはず。そうしたら」

「分かってる。準備をするから一分だけ待ってくれ」

 シノのメテオが四つん這いの状態になり、両肩の砲台がほのかに光を放ち始める。チャージが始まり、シノは照準を要塞右側の砲台へと照準を合わせる。

「ハロ!狙いは要塞右側砲台周辺!」

「了解!了解!上手クシロヨ!」

 一分を経った時、エデンによって敵が後退していき、エデンとシムカスが射線上から引いていき、目の前にモビルスーツや戦艦が居なくなる。

 シノは容赦なく引き金を引き、大きなモビルスーツ三機分の大きな球体のエネルギー体が邪魔される存在が無く、そのまま突き進み砲台一帯へと着弾。大きな爆発音と閃光が広がっていき要塞からの弾幕が薄くなる。

 それは要塞内部にいるククナも把握していた。

「EDMによる圧縮ビームだと思われます。要塞Dブロックの砲台が全滅!」

「Dブロックから火災が発生!」

「Dブロックを封鎖。内部に展開中モビルスーツにDブロックを中心に展開を変更。EDMの上陸部隊が近づいてくるわよ」

 その予想は正しく、ヴァルハラを先頭にユグドラシル級が次々と要塞Dブロックへと上陸しようと近づいてくる。

 ククナは素早くモビルスーツと戦艦の編隊を組み換え、上陸部隊へと迎撃戦力を送り込み、同時にDブロックから多くのモビルスーツが上陸しようとしている戦艦へと攻撃を仕掛けようとする。

 しかし、それはユグドラシル級も予想していた。

 素早くナパーム弾を要塞表面へと撃ちつけ、上陸阻止を試みるモビルスーツ隊へと攻撃を行う。しかし、敵モビルスーツのうちに大きなバズーカのような装備を持っている事に遅まきながらサブレが気が付いた。

「兄さん!ビームバズーカが狙っている!」

 しかし、今更何を言っても遅い。サブレが阻止しようと前に出ていこうとするが、ここでサブレがダメージを受ければ後の戦いに支障が出るだろう。そう思い、ビスケットは大きな声でその行動を阻止する。

「駄目だ!メイデン回避行動」

「無理だ!回避しきれない」

「ダメージを側面に集中!全員衝撃に備えよ!」

 大きな衝撃と共に左エンジンを貫き、左エンジンから火災と一緒に推力が落ちていき大きく左主翼が要塞の壁にガリガリという音を立てて削られていく。

「ヴァルハラの損害率35%!」

「左エンジンから火災発生!隔壁を封鎖します!」

「推力低下!」

「ヴァルハラはこれより要塞内部に不時着する!総員衝撃に備えよ!」

 ヴァルハラがゆっくりとした速度で要塞Dブロックの隙間になっている穴へとケツから突っ込んでいく。衝撃と共にヴァルハラが左エンジンから煙を立てながら不時着した。

 所々傷が目立つようになり、三機のモビルスーツでヴァルハラ護衛するが、それでも隙はどうしてもできてしまう。

「先輩!このままじゃ作戦に移れませんよ!」

「どうする!?」

 明楽とシノの疑問にサブレは直感で答えてみせた。

「二人は作戦に移れ!第二連結と第三連結を破壊しろ!その間は俺がこの場を守る!」

「無理だよ!サブレ一人なんてこの場を守り切れない。それにこの後の戦いだってあるんだから!」

 しかし、誰かがこの場を守る必要がある。そんな中、大型ビーム砲の射撃で木星帝国のモビルスーツが撤退を余儀なくされており、その隙を作形で的確な射撃がさらにモビルスーツを落としていく。

 それが誰なのか、そんなのは考えるまでもないことだった。

 考えることなく叫ぶのはサブレだった。

「どうして戻って来たんだ!?お前達!!」

「私達の判断で戻ってきたんです!」

 渉とジョシュアが周囲の敵に牽制を仕掛けながら隙を作り、その隙にレオが突っ込んでいく。ジャニーとノイン以外のメンバーが戻って来たらしく、周囲を散開しながら敵を落としていく。サラとマークが艦の上で護衛へと入っていく。

「どうして自由に動かない!お前達を期待している者達も戦場にはいるんだぞ!」

「その人達から助けに行ってくれって頼まれたからです。それに私達は自由にしてもいいと言ったから自由に考えて行動しました!」

「だったら!」

「だから戻ってきたんです!」

 サブレの大きな声を超えるほどの怒号で答えて見せたサラ、サラから初めて見る気迫に圧倒されそうになる。それだけ、彼らが真剣に考えた結果なのだと理解できる。

 サブレはビスケットと視線を合わせ行動に移る。

「明楽とシノは予定通り作戦を開始!サブレはコロニーレーザーの破壊に!俺はクレアさんと一緒に要塞内部へと入っていく!サラ達はヴァルハラの護衛を!」

 そう指示を出すとシノと明楽は別々の通路から移動し始め、サブレも補給を受け始める。これが最後の補給だと心に決める。

「先輩。コロニーレーザーではスニ―が攻撃しています。すぐに向かって後退する様に言ってください」

「分かった」

 そのままエデンはコロニーレーザーへと向かって姿を消していく。

 この時、サブレ達は気が付かなかったが鉄華団の方は一足早く最後の戦いへと進んでいた。

 ペペロの闇と立ち向かっていた。




どうだったでしょうか?次回から鉄華団サイドの話になります。ペペロの話になります。鉄華団やオズボーンがギャラルホルンが造ってしまった闇と立ち向かいます。お楽しみに!
次回のタイトルは『選び取った未来Ⅳ《角笛の闇》』になります。お楽しみに!
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