9
増えていくのではないかというほどのモビルスーツの大軍、ガンジュは三機でまとまりながら移動していく。
囲まれないように、小惑星やデブリを使用しながらの戦法、ビームサーベルを抜いてモビルスーツの胴体を真っ二つに切ろうと手を伸ばすが、クラウン・クラウンは三機がかりで受け止める。
「クソ!数が多すぎる!」
「でも、逆に言えば数で攻めないと勝ち目がないという事じゃ?」
ダンテの不満をエンビがうまく流して見せ、チャドはその間にクラウン・クラウンを一機落として見せる。
「三日月の戦いの邪魔になってる。なるべく多くの機体を落とさないと」
チャドからの最もな意見に黙ってうなずきながら三日月の方を見る。
三日月は武者のようなモビルスーツと戦いながら、クラウン・クラウンと戦っており、大きなビームメイスが囲まれないように破壊していく。
「お前たちを破壊する。生かして返さない」
三日月への揺るぎ無い殺意。それを三日月はいつものクールさで受け流していた。
まだ本気を出すべき時ではない。
三日月はそう思いながらふとモンタークの方へと視線を移す。
モンタークも多くのクラウン・クラウンを破壊しながら『本物』を探していた。
「粘るねぇ~大丈夫ぅ~?」
「この中に本物が混じっているはずだ」
「どうかなぁ~?本物なんていないのかもよぉ?」
そんな言葉を聞き流しながら、ひたすら落としていく。ビームマシンガンで牽制しながらその後方に居る別のクラウン・クラウン目掛けてビームサーベルで切りかかる。
減ったように見えない状況が全員の精神を追い込んでいく。
ダンテのガンジュの右肩にクラウン・クラウンの攻撃が直撃する。右肩を貫いたビームライフルの攻撃で右腕に不具合を起こす。
ダンテの右サイドに死角が出来てしまう。
「誰か彼の右側を守ってやらないと落ちるぞ!」
モンタークの一声でチャドが咄嗟に動こうとするが、チャドのガンジュの右足にクラウン・クラウンがしがみ付く。
ギギギ!という不快音を立てながらクラウン・クラウンが大きな閃光を周囲へと放っていく。
爆発と共にチャドのガンジュが黒焦げになりながら小惑星の隙間に落ちていく。
「チャドさん!?」
クラウン・クラウンが複数がかりでチャドにとどめを刺そうと囲み始める。
「チャドォ!!」
チャドとクラウン・クラウンの間にエンビのガンジュが立ちふさがり、ビームサーベルを抜いて襲い掛かる。
しかし、数が多く決め手に欠ける攻撃しかできない。すると、エンビのガンジュにも複数のモビルスーツがしがみ付いて自爆攻撃を仕掛けようとしてくる。
「エ、エンビ!」
チャドがうめき声のような叫びをエンビへと向ける。
さすがのガンジュでもこれだけのモビルスーツに囲まれればひとたまりもない。
そんな時、三日月の中に居る昭弘が目を覚ました。
『これ以上………失いたくない』
『分かってる。昭弘。力を貸して』
『言われるまでもない』
バルバトスに三つ目と四つ目のアイカメラが起動して、まるで四つの目を持つ悪魔のような風貌をしている。
尻尾から放たれるビーム攻撃で、エンビに捕まっているクラウン・クラウンを打ち落とす。
「ありがとうございます」
『エンビはチャドの防衛に集中』
三日月の声がスピーカーを通じてちゃんとエンビに届き、ダンテもチャドの防衛に入る。
『行くぞ!三日月』『うん。行こう』
クラウン・クラウンをビームテールを振り回しながら、ビームメイスでクラウンクラウンを打ち落としていく。
「隙が出来た」
クラウン・クラウンを落とすのに夢中になっているバルバトス。その後ろから武者のようなモビルスーツが襲い掛かる。
しかし、バルバロスのサブアームが腰から姿を現し、ビームサーベルで攻撃を受け止める。
「な?」
『俺達は一人で戦っているんじゃない』
『俺達は二人で戦っているんだ』
『だから………このバルバトスはグシオンの名前も関している』
『ガンダムバルバトス・グシオン』
武者型のモビルスーツに乗り込むFは驚きと共に機体の態勢を整え、体をひるがえしてビームサーベルを抜く。
「君たちが全力だというのはよく分かった。ならこちらも全力でかかる。私の名前は『F』。この機体の名前は『零』。私には………何もない!」
零のビームサーベルとバルバトスのビームサーベルがお互いにぶつかり合う。
オズボーンと共にユージン達はペペロの研究所へと足を踏み入れ、薄暗い廊下を歩いていく。
足音だけが響き、一寸先が見えないような闇だけが広がっている。
生活感の無いような廊下にはドアが一つもない。
「ペペロはここで生活していたはずだが」
「なんか……ここでせいかつしていた感じがゼロなんだけどよ」
ユージンは不安そうな表情を浮かべ、オズボーンや他のメンバーにすら不安にさせる。それも仕方がない事だとオズボーンは思う。
人が歩いているのか不安になってしまうほど染みや汚れがな全くない。清掃をしているという風の感じではなく、単に人が生活をしていないような感じしかしない。
『僕はクローンだ』
ペペロの声が廊下中に響き渡り、奥の方から一筋の光が見えてくる。光に向かってひたすら歩いていく。
『『アグニカ・カイエル』のクローンで、人間を人工的に進化させることが出来るのかどうかという目的で拉致された実験動物』
「どこから声がしてるんだ?」
ユージンは周囲を見回してみても何も見つからない。
スピーカーどころか、音を出すような隙間も見当たらない。
オズボーンが壁に手を触れ、かすかに感じる振動に確信を得る。
「どうやらこの壁がスピーカーの役割をしているようだな。声とは空気の振動だ。この壁は微かにだが振動している」
「確かに」
「周囲を全く同じ振動を放つことで、声が出ているような錯覚を与えているのだろう」
誰かがふとつぶやいた。
「まるで体内に居るみたいで不気味だ」
壁が生きているみたいで不気味な気分がやってくる。
恐怖心を表情に出さないようにオズボーンとユージンが率先して前を進む。
光りがさす方向へと、部屋の中へと足を踏み出した途端………声を失い。表情を引きつらせる。
『だから……僕はどうやれば永遠の時間を生きることが出来るのか考えたんだ。そして、分かったんだ。肉体への執着を捨て、脳だけの存在になればいい。でも、それじゃあ脳のメンテナンスができない。かといって他人に任せる何て嫌だからね。だから考えた。行動を起こし、実行して、完成させた。僕は僕を複製した』
そこにあったのはガラス一枚挟んで、大量の培養器と培養器の中に入っているペペロのクローン体。
そんな培養器を動かしている機械。
正面に存在するコンピューターの画面すら、ペペロが全部動かしているようで、誰かが言った体内に居るみたいだという言葉、それがあながち冗談ではなかった。
「貴様………人間をやめるつもりか?」
『それで僕が永遠に生きることが出来るならね』
永遠に居る為に捨てた物、人で在る事、人間としての器をあくまでも仮初の入れ物としか考えない。
セブンスターズ、ギャラルホルンが三百年の間に作り上げた人類の業。
いや、そうではないとオズボーンは思う。
別段、ギャラルホルンだけが悪かったわけでは無い。
宇宙に上がってから大きな権力を持ってきた組織、それは多く存在する。そして、その多くが間違い、自らが戦火を広げていった。
その過程の中で進化した人類という『テーマ』を軍事力という形で落ち着けようとした。
それが間違いだったと誰もが気が付かない。
進化とは感じるものであっても、知るものではない。進化していない人間が、進化を知ることなどできない。なぜなら、進化したものですら知ることが少ないのだから。
そんな傲慢さ、浅はかさがペペロという化け物を生んだ。
「貴様は我々人間が殺すべき存在なんだな」
『僕だけでいいだよ。僕は………人間を超えたんだから!!!』
人類の業。
人工的な方法で人間が進化できるはずがなかった。
間違っていた。
そんな過ちを後に生まれてくるだろう進化していく者達へ引き継いで良いわけがない。
「俺達も協力するぜ。鉄華団の罪を償っていくためにもな」
ユージン達なりのやり方で『鉄華団』を終わらせる。
オルガや多くの仲間たちと共に混乱に陥れた罪、周囲が許しても彼らの心は未だに晴れない。
家族を手に入れた者、仕事を手に入れた者、多くのメンバーが今だ心晴れずにいる。
それもこれで最後にしよう。
ビスケットやシノと共にこれで鉄華団を本当に終わりにする。
何より、今傷つき、人類の生存を信じて戦っているたった一人の人間『サブレ・グリフォン』。
ビスケットやシノが教えてくれたサブレの真実。
鉄華団が一人でも救われるようにと奮闘してきた者が居たと、傷つき、たった一人で憎しみを背負ってでも歩いている者が居ると。
自分を憎むことで、誰かが歩いてくれるならそれでいいっと開き直り、一人になろうとした寂しがりやが居た。
しかし、多くの人を救ってきたように、彼もまた多くの人に救われてきた。
支え合う事が『人』であるという事であり、進化とは『人』を捨てる事ではなく、人で在る事だとサブレは悟った。
この数年間は決して無駄ではなかった。
一人で歩けないとオルガの戦いから通じて知った。
仲間を頼る事、敵すら救う事、憎しみからは何も生まないことを地球での戦いから知った。
憎しみを集めることをやめる事、愛することを知った火星の戦い。
昔を知り、未来を求める。
だからこそ、サブレがその戦いに向かう中、そんな邪魔をさせるわけにはいかない。
「邪魔させるかよ!お前はここで俺達がぶっ潰す」
コンピューターをいじってみるが、手ごたえを感じない。
「どうやらこのコンピューターでは操作ができないようだ」
「だったらこの施設のどこかにあるんじゃねぇのか?さすがに全部を内部からコントロールはできないだろ?」
「だろうな。しかし、それなりに広さのある施設のようだし、一個一個調べて回るのは全滅を意味するだろう。どうやって………」
本命を探し出すのか。
この施設のどこかにペペロの本体が居る。そして、そこにコントロールできる場所が必ずあると信じる。
すると、ここで殺そうとしているのか大量の培養器が一斉に動き出す。
「まずいぞ。ペペロの大群がここに押し寄せようとしてやがる」
「あの数はさすがにまずいな。それに、このウイルスに対するワクチンを製造する必要がある」
やるべきことが多すぎてどこから手を付けるべきか分からない。
しかし、そんな中三日月達を囲むようにさらに多くのモビルスーツが射出される。
「これ以上増えたらやばいぜ!!」
「ペペロ!我々を先に殺すのではなかったのか!?」
『目の前で仲間たちが死んでいく姿を見ているといいよ!僕に教えてほしいな!絶望しているときの人間の表情を!!さぁ!!!』
「下種野郎!!」
多くのペペロが銃を持った状態で部屋の中へと入ってこようとしている。
「団長!!やばいっす!」
「団長って言うんじゃねぇよ!団長じゃねぇしな!!」
こんな時でも頼もしいとそう思う。
三日月達もまだあきらめていないようで、必死に抵抗している。
すると、オズボーンは施設の地図とにらめっこにしていると地図の不可解さに気が付いた。
「電力の供給率に不透明な部分がある?」
地図の中に不審な供給ラインがあると気が付き、それがある一点に集中している。そして、そのすべての配給ラインが何かに似ていると気が付いた。
「もしかして………この施設。モビルスーツ?いや………モビルアーマーか!?」
「どういうことだよ!?」
「この電力の配給パターンはモビルスーツやモビルアーマーと似ている。おそらくだが、この施設はモビルスーツやモビルアーマーへの変形を可能にしているんだ」
「はぁ!?この施設が……変形するって言うのかよ!?マジで言ってんのか!?」
「そう考えるのが自然だと思うが………まだ、変形するほどではないと考えた方がいい。変形する前に決着をつけた方がいいだろう」
「でも………このままだと三日月達の方が持たないぜ!」
「今は信じるしかない!」
そう言いながらオズボーンは外の様子を確認しながら廊下を歩いていく。どうやら、廊下の中や部屋の中には鍵をかける機能はまるでないらしく、その代わりに至る所にペペロが現れるためのスペースが存在する。
まずは、地図の中にあるウイルス研究室へと目指そうとする中、三日月達が地道に追い詰められていく。
特にダンテとチャドのガンジュが今にも落ちそうになる。
ユージンが見ている事しかできない悔しさをデスクにぶつける。
そんな時、多くのモビルスーツを一瞬で落とされていく。
「こちらEDM所属のパイロット『ジャニー』と『ノイン』です。ガンダムスニーが援護に入ります」
同時に開発局専用の補給艦も同時に戦場に姿を現す。
「そちらのガンジュをこちらで修理補給いたします」
そう言いながらダンテがチャドと共に補給艦へと向かい、補給艦から大型シールドをエンビへと射出する。
戦局は総力戦へと向かいつつある。
どうだったでしょうか?鉄華団編………終われませんでした。多分、次でこそ終われると終われると思います。
次回のタイトルは『選び取った未来Ⅵ《罪と罰》』になります。お楽しみに!