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目の前に確かに存在していた付属品、小惑星は瞬く間に姿を変えていく。手足が伸びていき、それ以外にも触手のような首が伸びて、その姿はまるで八本首の竜のようにも見えた。
その変形に三日月とF以外があっけにとられていて、ペペロ全員が高笑いがまるで合唱のようにも聞える。不愉快で表情を曇らせるのはモンタークだった。
三日月とFはこんな状況でも淡々と戦闘を繰り返している。
合体したスニーの大きな手が首のいくつかをつかみ取るが、ほかの首がスニーに噛み付こうとしていた。
それをエンビの大きなシールドが食い止めようとする。
「どうするんですか?」
エンビの素朴な疑問にジャニーとノインは「分かんない!」っとだけ答えた。首を引きちぎろうとスニーの力を人一倍籠めるが、抵抗しようと首が複数でスニーに襲い掛かる。
「この中に本体が居ると考えた方がいいだろう」
「ならこいつを落とせばいいわけですね?」
「そういう事だ」
モンタークとジャニーの会話を聞いていた他のメンバーも一斉にかかるが、そんな彼らにペペロはまるで楽しむかのように言ってのける。
「いいのかなぁ?この中には君たちの仲間もいるんだよ?」
彼らが脱出不可能になった段階で閉じ込め、彼らを囮として使う。
実際スニーの手にかかる力が緩み始める。攻撃できないジレンマが全員を襲うか中、中ではそんな彼らの代わりに鉄華団とオズボーンが粘っていた。
そんな中、三日月とFの戦いが熾烈を極め始める。
三日月は大型メイスを振り回しながらFの駆る零を補足しようとする。スピードでは零が圧倒的に上で、速度の面で振り回されている。
刀がバルバトスの後ろから振り下される。しかし、サブアームのビームサーベルで受け止めるが、ビームサーベルより零のビームカタナの方が出力が高いようで、押し返され始める。
バルバトスの大型ビームメイスを振り向きざまに、横殴りで叩きつけようとする。
それを腰を捻る形で回避して見せ、そのままカタナを振り下ろす。
ビームシールドで攻撃を受け止め、サブアームがビームライフルで反撃するが、零は一気に距離をとり、カタナでライフルを打ち落とす。
機動力、速度の面で負けているバルバトスが勝てる一面は機体の破壊力という一点のみだ。逆を言えば一発当てれば勝つことが出来る。
Fの過去を三日月はサブレからおおよそで聞いていた。テラの陥ったサブレとの因縁。そこから発展して生まれたテラとの信頼関係。
それが火星での戦いにおいて終わってしまった。
テラが死んでしまったから、そして、ペペロに唆された。
しかし、三日月は同情するわけでも無く、ただ殺そうとするだけだった。
同情はしない。情けはかけない。今はただ殺すだけだった。
一瞬の隙を探す三日月、押し通そうとする。
一瞬でも隙を見せれば死んでしまう。目の前に死がチラつくような戦いが、二人の目の前で繰り広げられており、吐く息のタイミングさえも考えてしなければ隙につながりそうな気がする。
いや、実際吐く息のタイミングすら隙に繋がりかねないのだと理解できる。
思考するより、本能の部分で機体を操作している部分はお互いに大きい。
三日月や昭弘はもとより本能の部分で戦う事が多く、Fも思考より直感で戦う事が大きなアドバンテージだろう。
それはサブレとはまた違う戦い方だと本人達が把握している。
直感を思考で理解して、才能を知能でコントロールできる人間。そういう人間が戦場では生き残りやすいのだと今なら分かる。
しかし、だからと言って今更考え方を変えることはできないし、変えようとは思わない。
羨ましいとも思わない。
生まれ持ったものが違うだけ。
実際、才能があっても失敗することはある。結局の所で周囲の人間………命の繋がりや行動が人生や運命を左右する問う事なのだろう。
鉄華団がもう少しましな人間、もう少し権力を持っている組織と出会えていたら違っていたのかもしれない。
今ならそう思う。
三日月や昭弘の後悔はそこなのかもしれない。立ち回りや行動というよりはもっと違う人間と出会えていればという後悔。
三日月はそう言う後悔はビスケットが一番大きいかもしれないと考えていた。
双子の弟が経済圏がバックにいる組織に所属しており、少しでも話していればと言う………後悔。
『人の運命を動かすことが出来るのはより多い人の行動でしかない』
サブレが最終決戦を前にして語ってくれたことでもある。
『人だけじゃない。あらゆる生き物の行動が運命になるんだ。どうしようもないことだってあるし、変えられないことだってある。だから、世界という道は多く存在するのが本来のカタチなんだ。未来は無限だけれど、過去は一本道だから。命は未来にしか進まない。だから、失った命の輝きは過去のモノ。未来には持っていけない。だから………俺は世界を元に戻したいんだ。俺は………』
苦々しい表情と共に繰り出される言葉は………空白だった。
『 』
何を後悔し、何の為に戦うのか、三日月はそれを大事にしなければならないし、これからもそうなのだと分かる。
しかし、三日月や昭弘には大切にしたい人たちがいても、同じ道を歩こうとは思わない。
影で過ごし、闇と共に生きよう。
世界の陰で、世界の抑止力になっていく。
皆が表で、光を浴びて生きるのなら、自分達は影の中で、闇を抱いて過ごすのだと。
全ての人間が光を浴びて生きれるわけでは無い。なら、その犠牲は自分達だけでいい。
そう思った時、三日月や昭弘の脳裏には、幸せそうにしている知人たちの姿が映った。
そんな世界を作る。
これを夢で終わらせない。
こんな世界を現実に変えよう。
改めて三日月の昭弘の気持ちが一段と引き締まる中、大型ビームメイスを振り回しながら、ビームテールを使って牽制をしながら零の逃げ道を塞いでいく。
小惑星を盾にしようとするが、三日月はそれを粉砕しながら進んで行く。機動力と速度を売りにするのなら、それを塞いでみるだけだっと。
ビームテールと大型ビームメイスで小惑星を破壊しながら、破片を周囲にまき散らしていく。少しづつではあるが、機動力が奪われ始める。
小惑星の破片が、エイハブリアクターの疑似重力に引き寄せられているからか、視界がふさがれ、移動ルートに制限がかかる。
移動ルートが一本道になったところで前に立ちふさがり、大型ビームメイスを振り下ろす。しかし、零は小惑星の破片によるダメージなどを無視して回り込みながら、カタナを振り下ろす。
それをビームサーベルで受け止めながら、大型ビームメイスを振り回す。
その攻撃をよけようと思った時、零の背中に大きなダメージと共に身動きが止まる。
どうやら、ブースターに破片が入り込んでしまったようで、素早い動きが出来なくなり、仕方がないとカタナで攻撃を受け流そうとするが、腕が動かないことに焦りをにじませる。
小惑星の破片が腕の関節に挟まってしまい、動きに支障をきたしている。
Fの視界一杯に大型ビームメイスが移りこんだ数秒後、Fの意識は永遠に失われた。
研究所内に大きな振動と共に響き渡る衝撃、ユージン達は衝撃から身を守る為何かにつかまる。
オズボーンはそんな状況ですら、キーボードを打つ手を止めない。
ウイルスに対するワクチンをその場で、即席で、すぐさまに作り出す。問題はそこではなかった。
この部屋を調べてもペペロの本隊を殺すための手段が分からなかった。いや、正確に言えば、ペペロの正体は分かったし、その居場所までは分かった。しかし、それを殺すための手立てが分からない。
「分かったんならそこまで行ってみようぜ!」
「まあ、それしかないのか………しかし、言ってもいいが、あまり期待しないでくれ。これを知ればどうやって殺せば良いのか分からなくなった」
そう言ってオズボーンが連れて行った場所は、一番目立つほどに頑丈な扉が強固に守られている部屋だった。
ペペロ達に追いかけられながらそのドアの前までたどり着き、ユージン達鉄華団がドアを破壊しようと爆弾を取り付け始める。
爆弾を設置した場所は鍵の付いている場所を念入りに設置しながら、大きな爆発音と共にドアの鍵の部分が破壊され、ドアがゆっくりと開き始める。
その奥に鎮座しているそれは寂しさを感じさせるものだった。
ひとつの小さな脳みそが培養液に浸りながら様々な電気コードがつながっている。
「これが………こんなものが正体なのかよ」
「実際厄介だ。木星の衛星で見つかった人類最高強度の合金を使用した特殊ケースとでもいうのか。少なくとも外からの攻撃では破壊できないだろう」
キーボードらしいものも見つからず、打つ手がないような空気が周囲を満たしていると、ユージンがゆっくりと顔を上げる。
「絶対あきらめるかよ!」
アサルトライフルを構える中、鉄華団が持っているタブレットには追い詰められていくモビルスーツ隊の姿が書かれており、スニーが奮戦しているが、それでも決め手に欠けている。
モンタークも機動力をうまく使って首を少しでも斬り落とそうとするが、それでも致命傷にはならない。
そんな中、ユージンは思考を巡らし、外の光景と自分が見ている光景を見比べた際、ある方法に気が付いた。
「全部のペペロは繋がっているんじゃないのか?だったらどれか一つを使って連鎖崩壊を起こせねぇか?」
今度はオズボーンが思考を巡らせる場面だった。
そして、目の前にあるワクチンを手でいじっている際、ペペロの機体の構造のおかしさに気が付いた。
「そうか!ウイルスの事をずっと不思議に思っていた。ペペロはウイルスで体を構築しているんだ。だから、ウイルスの入っている機体でも問題なく動かせるんだろう。ペペロからすればワクチンは自分を殺すウイルスでしかないんだ」
「要するにそのワクチンをどれか一つでも刺せれば?」
「いや、それでは不十分だな。この脳みそに直接打ち込まなくてはならない」
「それを言い出したら振出じゃねぇかよ」
「いや、この培養液は定期的に入れ替えなければならないだろう。脳みそはデリケートな機関だからな。それを放置することはしないはず。という事は、どこかから薬品を注入する場所があるはずだ」
そう言いだすと、鉄華団のメンバーが気が付いた。
「あそこじゃないっすか?」
指さす方向はケースの上方、ハチの巣のようになっている部分が存在する。
「あそこから薬品を注入する必要がある」
「どうすればいいんだ?」
「外から差し込む必要がある」
ノートパソコンに映し出されている施設内外の地図、それと外のから送られてくる映像。二つを組み合わせておおよその場所を検討する。
「ちょうど首の付け根の部分に出し入れする場所が存在する。あの敵の数を掻い潜り、首の攻撃を受け止めながらワクチンを注入装置に入れる必要がある。それも、外のロックは内部からハッキングする必要がある。ハッキングは私がするが………問題はそこの外部ハッチからウイルスを受け取って、それを首の付け根に辿り着いてそのままワクチンを注入する者が必要だ」
全員が黙っていると、外部ハッチの方からノーマルスーツを着た三日月が現れた。
黙って手をさし伸ばしている三日月、ユージンがオズボーンからワクチンを受け取ると、三日月に手渡す。
「首の付け根まで頼む!」
三日月は黙ってうなずくと、外部ハッチから再び戦場のど真ん中へと走っていく。
バルバトスがクラウン・クラウンを撃破しながら首元まで行こうとするが、そこまで来てバルバトスの機動力では掻い潜れそうにはなかった。
そんな三日月の目の前にモンタークのガフェインが現れた。
「私が引き受ける」
三日月から手渡しでワクチンを受け取ると、三日月はモンタークにクラウン・クラウンを寄せ付けまいと次々と撃墜していく。
スニーはモンタークの代わりに敵の攻撃を受け止める役目を全うするべく、『HCOCPモード』を起動する。
全身が真っ赤に光りながら首を押さえようとする。
しかし、八個の首の内四つが襲い掛かってくる。首を引きちぎろうとしながら力を込め、竜の顔を模した頭部がスニーの左腕にかみついて、そのまま噛み千切ろうとする。
傷口からスパークがはじけ、激しい戦闘を物語る中、モンタークは残り四つの首の攻撃を掻い潜りながら付け根までたどり着く。
三日月の援護をしているエンビ、スニー以外にモンタークを守る相手がいない、ガフェインからモンタークが出ていくと、首がモンタークを殺そうと襲い掛かる。
しかし、そんな中、ダメージの大きいガンジュが二機がかりでモンタークを守り始める。
「早くしてくれ!」
モンタークは装置をいじり始め、内部からオズボーンがハッキングでシステム内に侵入し、外のカギを完全に外してしまう。
一刻を争うような状況でモンタークは手順を間違えることなく、ワクチンを内部に注入していく。
「止めろ!!!お前達普通の人間如きが!!!!」
「貴様に未来を生きる権利はない!!お前を作ったことがギャラルホルンの罪だというのなら、私がその罪を償う!!」
オズボーンはユージンからの援護を受けながら、システムをクラックしながら最終システムまで忍び込む。エンターキーを押すだけでワクチンがペペロを襲い掛かる。
「止めろ!オズボーン!取引をしよう!僕が生きていればお前も世界を支配しよう!僕たちで選別する人間を支配しよう!」
「…………ペペロ」
エンターキーを押す指を一旦止めながら低い声で………自分の気持ちを告げる。
「貴様が今までしたことを許すとはできない。貴様の行動は木星帝国への背信行為だ。それに………貴様という人類の業を未来に引き継がせるわけにはいかないんだ」
そう言いながらエンターキーを押す。
培養液に交じって青い薬液が入ってくる。
「やめ―――――だ―――もう――――くぁwせdrtfgyふじこlp!?!?!?!」
脳が少しずつ崩壊していき、ユージン達へと襲い掛かろうとするペペロから、クラウン・クラウンに乗っているすべてのペペロがその場で即答してしまう。
全員が大きく息を吐き出す。
すると、全員の脳裏にヴァルハラが炎上していく姿が映し出されていた。
「何だよ?今のイメージ」
「おそらくは………サブレ・グリフォンから送られた現状ではないか?おそらくヴァルハラは今、陥落しそうになっているのだろう」
そこまで言われれば、ユージンのやりたいことは既に決まっていた。
「処理はあんたに任せてもいいか?」
「君たちはどうする?」
「俺達はビスケット達を助けに行ってくる」
ユージンはイサリビ改に乗り込むと、要塞目掛けて突き進み始める。
戦争は終盤へと移行していた。
どうだったでしょうか?次回から再びファントムブラッド隊視点に話が変わります。時系列はまた少しだけ戻り、サブレ達が三つに分かれて作戦に行くところからですね。
次回のタイトルは『選び取った未来Ⅶ《デブリと称された未来》』になります。次回はジャックと明楽回になります。次回でジャックとの因縁は終ります。