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戦場はコロニーレーザー攻防戦へと自然と移行していき、エデンとエンペラーは巨体をぶつけ合いながら戦っている。
現状はエンペラーが優位に働いており、戦艦タイプの外見では人型に近い外見をしているエンペラーの強化装備の方が優位なのは明白であった。
しかし、攻撃を受け、取り付かれながらもサブレは一機でも多くの機体を落としていく。
そうする間もコロニーレーザーをめぐる戦闘は激しさを増していくばかり、お互いの戦艦が肉薄するほどの至近距離で主砲を放つ。
また一つ、また一つと人が死んでいく。
その度にサブレは死を感じるだけ、そのすべてを新しい分岐した世界へと連れていく。
後悔が新しい道へとつながる世界を、そう信じてサブレは最後のミサイル・ファンネルを周囲へと一斉に解き放つ。
その瞬間、エンペラーがその大きな巨体毎突っ込んでくる。
エデンの強化装備の後方にしがみつき、圧迫で破壊しようとするエンペラーを振り落とそうとするが、エンペラーは全身をうまく使って抵抗している。
いっそのことエンペラーをコロニーレーザーにでも、ぶつけてしまえば落とせるのではないかっとも考えるが、その前にスラスターがやられてしまう。
このままでは落ちるだけだと覚悟し、サブレは強化外装から出る覚悟を素早く決め、飛び出していく。
エンペラーの視界にもその機体の存在に気が付く。
それがエデンだという事はすぐに理解したし、サブレの気配も同様に移動している。間違いない。
しかし、同時にどうしようもない不気味な気配がその機体から感じる。
基本的な色合いは白と青と赤のトリコロールカラーである。その辺は変わらない。機体だけを脱出させたからだろう、盾やライフルや翼などの装備もついていない。
それでも、体中から放たれる威圧感が周囲のモビルスーツを寄せ付けない。
機体中の装甲に線引きがされているようにも見え、背中しか見えなくてもまるで傷を負っているようにも見える。しかし、背中のバックパックですら折りたたまれている。
「でも………知っている。これを………この化け物を知っている」
機体の正面が見えてくると、それはガンダムには見えなかった。
両足、両腕は普通のモビルスーツに見えなくもないが、やはり体中に線が見える。それに最大の違いは頭部だろう。
顔はバイザーで覆われて隠れており、頭部にはガンダムには無い縦並びの二本角が見えてくる。
「ユニコーン……ガンダム!?」
バイザーの隙間から二つの目が光って見え、同時にアインの背中に嫌な汗が流れる。
異変はエンペラーの強化装備の両腕に起こった。
抵抗しようと両腕の武器の引き金を引くが、手ごたえがないどころか無反応。
「どうなっている!?接続不良?内部パーツを解体したのか!?」
焦りと動揺がアインの心に広がり、ミサイル・ファンネルを展開する。まっすぐエデンの方へと向かうが、エデンに近づいたミサイル・ファンネルが爆発することなくエデンにあたって弾かれてしまう。
またしても内部パーツを解体してしまう。
もっと言えば、周囲の木星帝国のモビルスーツも解体されてしまう機体が現れる。
「全機に及んでいるわけでもあるまい。範囲に限界があるのだろう。それと大きすぎるようなものは全部解体できるわけじゃないようだな。それに、サイコフレームを搭載機も解体できないと見た。落ち着けはどうとでもなる」
アインは強化装備からエンペラー本体を脱出させる。
その隙にエデンの装備を強化装備の中から呼び出す。
エデンは大型シールドと多機能ライフル、背中には壊れた翼の代わりにスラスター搭載式の大型シールドを三枚が装着される。
エンペラーも背中に大きなハンド・ファンネルを装備、両腕にはビームシールドとビームライフルを装備、背中にビームサーベルを二本、腹には圧縮ビーム砲を装備。
お互いににらみ合いが続き、サブレのビームライフルの一射で戦火が開かれる。
ハンド・ファンネルがエデンの後ろに展開すると、エデンの背中の大型シールドがIフィールドで防いで見せるが、一瞬後ろに向けられる意識の中、エンペラーがあっという間に距離を詰め、ビームサーベルを振り下ろす。
左腕の大型シールドで防ぎながら、至近距離で多機能ライフルで反撃を試みる。
細い一筋の光が遠くからでも見える。
しかし、エンペラーはそれをぎりぎりで回避、ビームサーベルを引っ込めながら蹴りで反撃する。
右腕で受け止めながらエデンはシールドで叩きつける。
「そこまで憎いのか!?人類が……世界が!?俺にはどうしてもわからない。かつて裏切られたからというのは理解できる。でも、それだけで全ての人類と全ての世界を滅ぼそうとは思わないはずだ。全ての命を………世界を……滅ぼすなど!」
並大抵の覚悟ではない。
全ての命を滅ぼし、全ての世界を無に帰す。命も、世界も、全て虹の彼方に押し込み、リセットする。
自分と自分が大切にしている人以外のすべての命をリセットして、新しいアダムとイブになる。
「貴様に理解されたいとは思わない。自分が思う理想の為に戦い、理想の為に滅ぼす」
「人を拒絶し、なぜ理解まで拒絶する!世界には意思はない!世界には罪なんてない!?」
「……いったいどれだけの世界があったと思う?」
アインの唐突の問いかけにサブレは驚きと戸惑いを浮かべる。
「数えきれるわけがないだろう?」
「そうだ、数えきれない。しかし、生死は均一でなければならない。生が増える世界もあれば、減る世界もある。それは自然の審理でもある。しかし、増える世界はこの基本世界以外にあり得ない。基本世界を存続するための別世界でもある。その数多くの世界のすべてが人類は停滞した偽りの平和の中に居る。進化を拒み、前に進むことに恐怖を覚え、誰もが不幸という名の沼に首まで浸かって生きる。不幸の中に居る小さな幸せを奪い合う世界。分かるか?多くの分離した魂が多くの場所で経験した全てで全く同じ結果だったんだよ!何も変わらない!何も変化しないんだ!世界はそれを許容し、許容し続ける限り人は我々を犠牲にし続ける!そんな人類に何を期待する!!??」
怒りで表情を歪ませ、暴力的にエデンを吹き飛ばす。シールドで正面からやってくる攻撃に耐えて見せ、スラスターペダルを全力で踏みながら圧力を耐えて見せるサブレに対し、アインは怒りに身を任せてライフルの引き金を引く。
サブレは右側の操縦桿の近くにある小さな画面を操作してライフルの機能を変更する。マグナムモードに切り替えると、エンペラー目掛けてライフルを両手で持つ。引き金を引くと、射出する際の威力だけでエデンが吹き飛びそうになる。
目の前からくる殺意にとっさに回避行動をとり、攻撃を大きく移動することで回避する。ビームマグナムの威力は別の木星帝国製のモビルスーツにかするとそのまま蒸発してしまった。
「単純な戦艦の主砲クラスより上………」
回避して動きが一旦止まると、サブレは再び機能を変化させ、ビームマシンガンへと変化せる。
牽制目的でエンペラへと攻撃すると、エンペラーはハンドファンネルのIフィールドで防ぎながらもう一つのハンドファンネルが襲い掛かる。
エデンを後ろに飛ばして回避すると、エデンはビームサーベルを抜き一気に距離を詰める。エンペラーとエデンのビームサーベルのつば競り合いと、火花が目の前で散る。
「たとえそうだったとしても!自らの行動も原因だったはずだ!完全な被害者なんてこの世界には存在しない。すべての命は自らの行動を選択するしかないんだ!周囲の行動は結果として選択肢を狭めるだけだ。決めるのは、決断するのは自ら自身だ!!」
「たとえそうだったとしても、人を不幸にして、自らが幸福になろうとする愚か者が居る世界で!何を………何を信じる!!?」
「分かる!でも………!それでも!!」
エデンはエンペラーを吹き飛ばしながら再び距離を詰めていく。ビームマグナムに変化させ、牽制替わりでビームマグナムの引き金を引く。
同時に背中のシールドの中に隠しておいたネオ・ファンネルを周囲に展開させる。
「そんな言葉が人類を愚かに変えていく!だから、リセットすると決めた!」
サブレはその言葉を引き金にしてファンネルによる一斉攻撃を始めるが、エンペラーのハンドファンネルの中に隠れていたファンネルが周囲を飛び交い、防御する。
「誰かが示すべきだった!言うべきだったんだ!進化することは、前に進むことだと!恐れず進むことで命は繁栄してきたんだと!今自分達が居るのは祖先が進化し続けてきたからなんだと!!」
誰かが言うべきだった。
恐れず進むことを進言するべき人間がもっと早く表れていれば、そう言ってくれればきっと変わったはずなのだ。
そう思うと、不甲斐なさの方がきっと大きい。
サブレは歯ぎしりしながら押し返していく。
「お前だってそうなんじゃないのか!?あの時にああしておけばよかったと!そう後悔しているはずだ。だから、誰かが教えてやるべきなんだ、後悔は決して無駄にはならない!!俺はそれを証明したいだけなんだ!」
「そんな言葉がなんの役に立つというのだ?あんな奴らに後悔などクソの役にも立たない!」
エンペラーが踏みとどまり、押し返そうとするが、その言葉に、その行動に怒りが最大値まで高まったサブレの心に、エデンが反応して見せる。
サブレの正面の小さな画面に『EF-S《エデン・フォーエバー・システム》』という文字が見えてくると、コックピッチ中に虹色の光で満たされる。
全身に虹色の光が装甲の隙間から漏れ出し、足から少しづつ装甲がずれて中身が露出する。最後に頭部のバイザーが隠れていき、ガンダムフェイスが姿を現す。最後に二本角が分かれていくとアンテナに変化する。
「この…………馬鹿野郎が!!!」
『EF-S』システムが発動されたと同時に両足と両腕に内蔵された隠しスラスターが機能し始める。
推力が高まっていき、徐々に押し返されていく。
エデンの目とエンペラーの目が完全に合う、恐怖が一瞬心をよぎり、距離をとろうとする。ファンネルを呼び戻し、一斉攻撃で反撃を試みるが、サブレは体中についていた全部で四枚の大型シールドをまるでファンネルのように操る。
両腕にビームシールドを構えて一気に距離を詰める、シールドとビームサーベルでファンネルを落としていくと、再び距離を詰めていき、エンペラーのハンドファンネルがエデンをつかもうとする。しかし、シールドがそれを邪魔し、エデンがその隙に後ろにまわってハンドファンネルを落とす。
「クソ!もうあれを使うしかない」
そう言うと、戦艦の隙間を縫うように要塞方面まで戻っていく。其の姿にサブレは嫌な予感を抱く。
「あっちにはヴァルハラが!?まずい!」
そう言って追いかける。
基本武装をビームマグナムに切り替えると、エンペラー目掛けて引き金を容赦なく引く。何度か回避したとき、要塞に近くなってくると、エンペラーの足が吹き飛ぶ。
『サブレ。ライフルにチャージされているエネルギー不足。ライフルの使用を一旦停止を推奨。銃口も射出の熱でダメージを受けています』
「言わなくてもわかってる!」
サルガからの警告にそう言ってビームサーベルに再び切り替え、距離を詰める。エンペラーは振り返りざまに反撃を試みるが、サブレはそれをうまく操縦しながら回避し、同時に反撃する。
エンペラーの左腕が宙を舞い、エデンのビームサーベルがコックピット目掛けて突き進む。
このままでは要塞外周の格納庫への出入り口にぶつかってしまいそうになる。
しかし、サブレはそんなは気にしないように突き刺す。
それでも、手ごたえがない。
アインの気配が消えない。
要塞のドアが開き、エデンとエンペラーの体が要塞の中へと倒れ込み、同時にサブレの視界に小さな戦闘機のような機体が見えた。
それを視認するとサブレはエンペラーからビームサーベルを引き抜き、エンペラーの背中を見る。
そこは空だった。何もなかった。すっぽり抜けていた。
「コアブロックシステム!?脱出機能付き!?そんな古臭いシステムを採用しているのかあの機体!」
急いで追いかけるが、距離が開いてしまった上、通路が狭くぶつからないように移動するだけで精一杯である。
ライフルを使おうとするが、サルガから忠告が入る。
『サブレダメです。ライフルはエネルギー不足で後1分使用できません』
「クソ!こんな時に!」
『自分の使い方が悪いのでしょう?あんなに適当にバカスカ撃てばああなります』
サルガからの忠告にサブレは内心舌打ちをしながらも、自らの責任ゆえに反論もできずにいる。
「バルカンを使え!」
頭部に格納された実弾兵器であるバルカン。本来は牽制以外には使えない武装であるが、コアブロックと呼ばれる戦闘機を破壊する事は出来る。
しかし、左右上下に動く対象物に対し、バルカンの弾丸は小さすぎる。
当たらない。
コアブロットが閉まりゆくドアの奥へと消え、エデンの前の前に大きなドアが隔たれる。
ドアをどうやれば破壊できるか刹那の思考の果て、向こう側の風景が見えた気がした。
新しいガンダム。それにコアブロックがくっつき両目が開く、同時に背中についている大きなバスターライフル以上の大きさの長距離兵器。それが……まっすぐエデンの方を向く。
「シールド!!」
四枚のシールドが正面に展開すると同時に凄まじい衝撃がシールド越しにエデンを襲う。
シールドをエデンが押し返そうとするが、そのままシールド毎外へとはじき出される。
機体は無事でシールドもダメージなく周囲を浮かんでいる。しかし、要塞の奥から漂ってくる威圧感を前にエデンは動けずにいる。
「ククナに隠れて用意するのには大変でな。ペペロが用意していたクラウン・クラウンや零のデータやレッドクイーンとブルーレイの戦闘データを元に私自身が開発した新しい機体。ガンダムアーク」
「ノアの箱舟………ノアズアーク」
「その通り。創世記において描かれる人類が生き残るための船。私は私が選んだ人類と共にやり直す!その為のガンダムだ!」
エンペラーより多少大きいガンダムが姿を現した。背中の長距離砲が存在感を出しているが、それ以外にもビームカタナや高性能スラスターなど最低限の武装ながら、シンプルに出力だけを高めていると言える。
エデンと同じ。
あえてトリッキーにではなく、あくまでも性能の底上げを図る。
「ガンダムの箱舟と言った所かお前が楽園を作るなら、私は箱舟を作る」
サブレはエデンを走らせ、アインはアークを走らせる。
ビームサーベルとビームカタナががぶつかる中、同時に大量の脳波が宇宙中に広がる。
どうだったでしょうか?次回はエデンとアークの一騎打ちになります。同時にヴァルハラ方面でも動きがあります。
次回のタイトルは『選び取った未来Ⅺ《ヴァルハラ》』になります。お楽しみに!