実は、観光客よりも多いのが生物学者連中だ。全ての入国者の半分はこれで、しばらくは続くだろう。
そして、地球上で逮捕されることが多いのも生物学者なのだ(ついでに病院にかかるのも)。
入国管理においても、地球外生物の持ち込みを取り締まることはある。
私も幾つか取り締まったことがあるが、いずれも観光客がペットを連れ込もうとした場合だった。
こういう問題は宇宙船に乗り込む前に何とかして欲しいものだ。きっと出国は問題ないのだろう、
こちらに入国する際に法律に引っかかるだけで。ならば周知をするとか、してくれてもいいだろうに。
しかしまあ、案外この地球は地球人が思っているほど有名ではないのかもしれない、
それでいつもの感覚で連れてきてここで引っかかる、という事なのだろうか。
ちなみにパスポート他書類を持たせていない奴隷もここで止めることになっている。日本は奴隷を認めていないからだ。
それはさておき、学者と言う人種は宇宙においても(というか地球以上に)変わり者らしく、
時々常識が通用しないのだ(地球の常識が、ではなく宇宙の常識でさえも)。
しかも彼らは悪い事しようと思ってトラブルを起こしているわけではないので余計に質が悪い。
なので、研究目的での入国者にはいつも注意を呼び掛けている。
すると大半が決まってこう言うのだ「私がトラブルを起こすだって?バっカにしてくれちゃってェ!」と。
いやいやそれでもトラブル無きように、とは念を押して伝えるのだが、そういう事言う人物に限って、
やれ私有地に侵入しただの、誘拐未遂だの、土地をそのまま持ち帰ろうとした(地下20mぐらいからゴッソリと)だの、事件ばかり起こしている。
これには流石の日本政府も抗議をしたらしいが、実は宇宙諸国もこの迷惑学者たちには悩まされているが、
かと言って、研究資金を減額するのも良い事ではない、講習や指導も全然聞いてくれない、という状態で苦慮しているという話だ。
一応、日本政府も補償は受けているのだが、被害が多過ぎて調査もまだ終わってないところもあるというらしく、とても足りないのだとか。
生態系が破壊されたとは聞かないので、そこは流石に学者だなぁ、とは思った。
そしてついに今日、日本政府から通達が来た。対策を講じるまで学者を国に入れるな、と。
こちらとしては大いに助かるのだが、当然学者連中の反発が起きる。
書類の職業欄に学者、研究員と書いている人物をバンバン弾いていると、
とあるサボテン型宇宙人が大変ご立腹といった様子でこちらを睨んでいる(多分、睨んでいる)。
そして「何故だ!私は研究のためにここにやって来たのだぞ!」と怒鳴り散らす。
私は、規則ですから、問い合わせは軌道ステーションもしくは太陽系ワームホールステーションの日英臨時共同大使館へどうぞ、と言い放つも、
当然火に油を注ぐ事となった。「科学をなんと心得る!」などと宣うので、
あなたこそ法律を何だと思っているのですか、とこちらも負けじと言い返す。
するとこの人物は、なんと演説をし始めた。
自分がいかに科学と研究を大事にしてるかということ、それに人生を捧げてきたこと、
そしてどのような賞を取った、権威を持っている、などなどを長々と語る。
私は呆れ果て、つい警備員呼び出しのボタンを押してしまった。
数秒もしない内にキツネ型宇宙人の警備員がエネルギー警棒を振りかざして突入、
そしてその学者を叩きのめすと小脇に抱えて連れ去って行った。
この手に限る。