【完結】地球の玄関口   作:ターキィ

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魔法の飲み物

 

宇宙社会とて麻薬の類はある。当然、規制されている事が多いのだが。

意外なものが禁止薬物と指定されていたりするのだ。

 

 

宇宙の薬物と言えば、まあ例のマウデン家が使っている『カーマルマミン酪酸』である、まあ詳しくは知らないが。

地球上での話になると、大麻や阿片、覚せい剤諸々である。

こういったものは基本的に身体の構造が似ている種族(例えば、同じ哺乳類であれば、など)になら効くので、当然輸出は禁じられている(そもそも日本では非合法だ)。

ところが、種族によっては未知の影響を及ぼしたりするなど、この辺りの管理は非常に煩雑で難しいものなのだ。

 

例を挙げるとするなら『マタタビラクトン』である。

これはその名の通りのマタタビはもちろん、ケイガイやイヌハッカなどの植物に含まれる成分なのだが、これはネコ科の動物を恍惚、酩酊の状態にしてしまう。

まあ、それでオチは察するだろうが、ネコ科に似た種族にも効果を発揮するらしく(しかも大抵の場合本国では非合法)、よく嗜みに来る者がいる。

「いいなぁ、自生しているなんて羨ましいなぁ~~~~ッ!」

とサーヴァール人の女は言う。明らかに絡みたくないタイプだ、地球人で言うなら、大麻やってるヤツみたいな……。

「この星じゃ『マタタビ』と言ったかね、うーん、実に幸運の音色を感じるよ」

なんだか別世界が見えているようだ。こういった顧客が多いのだから、当然商魂の逞しい連中が出てくる。

現状マタタビに関して規制したりなんたりの法律は無いので持ち出し放題である。

まあ、禁止されている国には持ち込めないのだが、麻薬の生産地となっては気分がよくないというものだ。

そして、柄の悪いネコ科の連中が最近増えているのもこれらが原因であろう。

わざわざマタタビを吸いに遥々地球までやって来るのだからご苦労な事だ、ただ治安は悪化の一途をたどっている。

最近では『庭に入ってくる』『ゴミを漁る』『路上で寝ている』などの苦情が多いという(まるで猫だ)。

結局、帝国軍によって過度に迷惑をかける連中は拘束され、惑星外退去の処分を受けてしまった。

 

実はコーラも一目置かれている。

まあカフェインが入っているからというのは当然であるが、糖質といい味といい宇宙人にとっては結構ヤバいらしい(いや地球人にもヤバいのだが)。

「これは効くアルよ。本当ネ。疲れたカラダ吹き飛ぶアルよ!」

そう言う彼は宙に浮くタツノオトシゴのような容貌のマルトア人の男性である。

「一体これほどの物を作るのにどれほどの人体実験をしたアルか、気になるコトよ!」

いや人体実験はしてないかと……大衆に飲ませて味を改良していったものなので、それもある意味人体実験ではあるが。

この絶妙な味に病み付きになる宇宙人が続出なのだというのだ。

これは商機だ!と各国の個人輸入業者から大手星間商社の営業マンまで続々と買い付けにやってくる。

栄養ドリンクや更に混ぜ物をして飢餓対策、戦闘糧食としても飲まれているらしい。

もっと他にも良いものがありそうなものだが……。

「いつも同じ味だと飽きるコトよ!」という訳なのである。

さぞや大手飲料メーカーは儲かるだろうと思いきや、格安スーパーにおいてあるようなインチキコーラの味の方が好まれているらしい。

しかしながら清涼飲料水はある程度の需要が常にあるので、全体的な売り上げは上々である。

ただ、コーラのバブルも規制によってそのうちはじけてしまうだろうとされている(炭酸だし)。

 

意外にもお茶も警戒されている。

これは身体にはいいはずなのだが、それがダメらしい。

資本主義国家の、特に医療と製薬関係が政権を牛耳っている国家が存在し、それらの国では禁止薬物に指定されている。

だがこれを求めに地球に来る者たちが後を絶たない。この密輸出には帝国はもちろん日本も目を瞑っている。

持ち出されるものは緑茶はもちろん、紅茶、麦茶、烏龍茶、マテ茶と幅広い。

これには切迫した理由があった。

「わが国のみならず、多くの資本主義国家では飲料水に有害物質が混ぜられています。もちろん医療サービスや薬を買わせる為です」

両生類のような見た目のヒドラ人男性はそう言う。

真綿で首を締めるかの如く、ジリジリと国民から税金と反乱の芽をむしり取るのが目的だという。

先述のコーラなどをはじめとする清涼飲料水を飲むことは奨励されているため、お茶をそれらと偽って秘密裏に流通させるとか。

流石に既製品に混ぜ物をするのは企業の信頼を毀損するので、出来ないでいるのである。

「様々な国から多様な種類の飲料を入手する事で、目くらましにもなるのです」

彼らが何の心配事もなく普通にお茶が飲める日が来ることを祈ろう。

 

最後に、かなりの人気を集めているのはかの有名なチューハイである。

パワフルゼロという商品だが、これはヤバい。我々地球人からしてもヤバい。

飲んだ宇宙人の大半は「これヤバい」と言うらしい。

こういった庶民の風俗というのは瞬く間に広がる、そしてそのかなりのヤバさが銀河でも広く認知されているらしい。

地球という星の存在よりも有名であるとか。

そうして、お酒が大好きな宇宙人が結構な頻度でやってくる。大体入国時点で酔っ払っている。

「パワフルゼロ!早く飲んでみたいなぁ~~!!」

と書類も出さずに行こうとするし、特に悪意もない癖に警備員に抵抗するので結構質が悪い。

「わかった!出す!旅券だろ、それからえーっと……あった!」

くしゃくしゃになった上酒で滲んだ書類一式を出された時は頭を抱えたものである。

しかしながら、それほど威勢が良くても出国時には人が変わったようにおとなしくなる。

「パワフルゼロ……あれはヤバい。ホントヤバい、なんであんなの販売してるの、ていうか出来るの」

そう、ここは過労死の国日本であり、こんな魔法のような飲み物を飲んでいないとやってられんのである。

最近は多少改善しつつあるけど。

 

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