目が覚めると、モフモフに包まれていた。
子供たちが寒そうだからと一緒に寝てくれたのだという。
しかし、あまりにも醜態を晒したのでこちらについて語るのはよそう。
翌朝、朝食の時間だというので各部屋に食事が運ばれてきた。
乗務員がガシャガシャと音を立てながらワゴンを押して入ってくる。
シェフらしき、清潔な服装をしたガウラ人も後ろについてきているようだ。
「日本から遥々来られたということで、お口に合うかどうか」
日本人が来たらしいという噂は厨房にまで広がっていたようである。
食事は、肉!穀物!といったふうで、匂いはやはり香ばしい。
フォークのようなものでかぶりつく……ジューシィだがやはり日本人の舌には塩気が足りなく感じる。
そこで、私は例のモノをかけてもいいか、とシェフに聞いた。
「それはもちろん、あ、でもそれ味見させてもらってもいいです?」
それじゃ遠慮なく、と醤油を垂らし、再び口に運ぶと、うーむ、程よい。
趣向というよりは生理的な違いなのでこうする他ない。
日本人の口に合うように作ると、彼らにとっては味見も出来ないぐらい塩辛くなるだろう。
醤油瓶を渡すと、シェフは「これが例の」とすぐさま掌に落とし、一口舐める。
「しょっぱい!舌がビリビリする!」
グエー!と口を半開きにして舌を出した。
「……これ、頂いても?」
そこは抜かりなくお土産用に(まあこれが好きなガウラ人もいるかどうか……)いくつか持って来ているので、未開封の分を渡した。
「どうもありがとう!研究すれば使えるかもしれません」
そう言って、シェフは醤油を大事そうに抱えて出て行った。
さて、ようやくメロードの故郷、ベークトロハムに到着した。
人口3万弱の小さな、長閑な町……であるのだが、そこの警察組織から取り調べを受けている。
「宇宙人は取り調べを受けてもらう!」
なんとも、随分と高圧的で排他的な雰囲気であるようだが……。
「いや、前はこんな事なかったのだが……」
「去年条例で決まったのだ!」
ロクでもない条例が決まったものである。
なんでも一昨年(帝国歴での)の始め辺りに帝国の同盟国たるピール首長国での宇宙人犯罪の影響を受けて制定されたらしい。
「まあ正直アホらしいとは思うのだが、だが、だが!決まっているからには受けてもらう!」
マニュアルを!と部下らしき人物からやや埃の被ったファイルを受け取る。
「幾ら衛兵とはいえ、手荒な真似はやめてくれよ。私に皇帝を裏切らせるな」
メロードがかなり語気を強めて威嚇する。
「危害を加える事は書かれていない!単なる取り調べだからな!」
気にもしてないようで、ファイルから目を離さず答えた。
「危険物探知に、思想検査……まあガウラ人も一緒なら、ちょっと頭の中見せてもらうだけだな!検査官!」
もう一人いた部下が前に出て、私の頭に手を当てる。
「ちょいと失礼」
私の方は何も感じなかったが、彼の表情は険しくなった。
「耳をしゃぶるのは犯罪です?隊長」
「何!?耳を!?汚いだろ!何の話だ!?」
「素朴な疑問なんです」
おっと、どうやら今朝の出来事を……。メロードが呆れたような表情をしているのが横目に見えた。
「…………個人的な見解としてだが!しゃぶられた側が嫌がってなかったり!嫌がってたとしても許したのなら!犯罪ではない!」
「じゃ、シロです」「よし!釈放!」
よかったよかった。が、衛兵たちとメロードのこちらを見る目が痛い。
しょうがないじゃん!目の前にモフ耳が来たら、吸引するしかないじゃない!
「私のならいくらでも吸わせるから。そういうとこから直していこう」
すみません……。
衛兵の詰所から出てバス(どうみても兵員輸送車だが)に乗り、彼の実家へと向かう。
ふと窓ガラスを見ると、自分の顔が映って見えた。どうやらむくんでいるようにも見える。
標高が結構高いため、高山病にでもなったのだろうか。そういえば起きて数時間も経ってないが眠気もしてきた。
「いや、実は私もそうなんだ。地表暮らしが長かったからかな。家についたらアセタゾラミドを貰ってこよう」
ガウラ人といえども元々高所に住む種族ではないのでこれらの症状には万全を期しているのだという。
さて、最寄りのバス停に降り、しばらく歩いてようやく家の近くまで到達した……のだが、例のあの人物が仁王立ちしていた!
「あ、兄さん」「お前は……」