【完結】地球の玄関口   作:ターキィ

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平城京エイリアン

 

現在、奈良県在住の宇宙人人口は爆発的に増加しつつある。

一体何なのか、大仏様の思し召しとでもいうのだろうか……。

 

 

最近、よく見かけるのが鹿、のような容貌の宇宙人である。

こういう地球の生物によく似た種族というのは割とよくいるのだ、収斂進化というヤツだろう。

よく見ると似てる、というものから瓜二つというものまで、その度合いは様々だ。

だがこの種族、ミウビ人は地球の鹿とそっくりなのである。

若干前傾姿勢の二足歩行で、蹄のような二本の指がよく動くという点を除けばだが。

「ナラってどこ!?行きたい!」

それで、彼らに似た種族である鹿がたくさん、それも町中にいる奈良県が人気なのだという。

中には移住をしに来たという人までいる。

「おせんべいもらえて、神様みたいな扱いされるんだろ?住むぜ!」

毎日煎餅だけどそれはいいのだろうか?

そういうわけで、毎日のように移住者が訪れるので奈良市役所は大変な事になっているそうな。

彼らは鹿せんべいをねだる点を除けば治安を乱したり街を汚したりはしていないそうで、地元の住民からも邪険にはされていないという。

更にその宇宙人見たさに地球内観光客も増加しているというので、嬉しい事尽くし……なのだろうか?

「ミウビ人と奈良人の友好は永遠さ!」

奈良人て……まあミウビ人にとっても良い事ではあるのかもしれない。

 

人口増に税収増、観光業の活発化と好調を見せていた奈良経済であったが、数か月後に突然、その伸びに陰りが見え始めた。

ミウビ人の人口が減少を始めたのである。同時に入国も減り始めた。

しかし出国は増えず、人口だけが減っていく、実に奇妙な現象である。

そんな中ミウビ人の多分偉い学者が入国ゲートへと現れた。

「恐れていたことが起きたのです」

原因不明の病気か、あるいは鹿の感染症が移っちゃったのか。

「いいえ、それらではありません。病気ではない、ミウビ人は帰ったのです」

帰った、というと何らかの形で出国したのだろうか。

「違います、彼らは原始に、ありのままの、文明の無い時代へと帰ったのです」

一体何なのか……いや本当に何なのか、わけがわからないよ。

「ではわけがわかるように説明いたしましょう」

学者が言うには、彼らは帰化してしまったのだという。

これは日本国籍を取得した、という意味ではない、彼らは奈良の鹿になってしまったのだ。

収斂進化とはいえ、遺伝子的にも近しい種族であったミウビ人は、奈良の大勢の鹿たちに感化され、元の野生の姿へと還ったのである。

そして、彼らは『人間』であるとみなされなくなり、宇宙人人口が減少したのである。

彼らはここの生活を続けていくうちに奈良の鹿になる事を受け入れた。

知能も低下し、四足歩行へと戻り、ありのままの、原始の、祖先たちの姿へと変貌したのである……。

……やっぱりわけがわからなかった、そんな事ってある!?

「我々は特別、帰順しやすい種族ですから、こういう事は度々起こるのです」

なんとも難儀な種族である。

「私は彼らに強く呼びかけなくてはならない」

まあ、そうやってどこでもここでも野生に帰られては困るだろうし。

「良い土地を見つけましたね、幸せに暮らすのですよ、と……」

そっちであったか。

「素晴らしい土地でしょう、うう、私も、メェ~~~~!」

鹿はメェとは鳴かないよ。

 

ミウビ人的には問題なくても、奈良人的には大問題である。

突然鹿が大量に増えたようなものであるのだから。

とはいえ、ある程度の知能はギリギリ保っているようで、翻訳機を付けるかミウビの言葉で喋り掛けると反応を示すという。

また奈良の鹿との交配もどうやら可能のようで、徐々に同化していくであろうことが予想される。

市民たちは「これも仕方ない事だ(鹿だけに)」と対策に追われていた。

ミウビ人政府も支援金に人材派遣と対策には協力的である、奈良とミウビの関係は非常に良好のようだ。

この宇宙鹿と奈良の鹿は地元住民でも見分けがつきにくいらしい。

ミウビ人の言葉で呼びかけるしか見分ける手段がなく、それらと日本語が混ざった、通称『鹿語』が住民の間に広まった。

 

メロードらガウラ人やバルキンたちエウケストラナ人ではそういう事はあるのだろうか。

バルキンに聞いてみるも「さぁ、興味ないし……考えた事もないし……」との事である。そりゃそーだ。

「まあ時々大草原を思いっきり走り回りたくはなるよ!」

子供の頃はよく木登りをしていたが、これも一種の先祖返りでミウビ人の場合それが強烈に顕れるという事なのだろうか。

このような種族は宇宙でも稀な存在であり、実に奇怪で、この世の広大さを思い知らされるような出来事であった。

 

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