面白い部族たちと別れ、近くにある都市に向かう事となった。
これできっと帰れるはずだ。
これできっと帰れるはずなんだが、もう二度は野宿している。
全然都市に辿り着かない、気配さえもない。
食糧は切り詰めつつ食べているのでまだ少し残っているが、水の方が底をつきた。
見渡す限り何も無い平野で、幾つかの木々がポツンポツンと立っているのが見えるぐらいである。
会話も殆ど無くなってしまった。つまるところ大ピンチである。
「あっ……」
オリビアさんが何かを見つけたようで、平原を指さしている。
小さな動物がいた。
「け、拳銃を!拳銃!」
慌てて彼女はキットから拳銃を取り出し、小動物目掛けて構える。
ポォン!と銃にしては軽い音が鳴ると、弾が煙の線を描いて飛んだ。
小動物には当たらず、地面で跳ね返ると空に飛びあがる。
「あーーーー!!んもぅ、Fucking hell!!」
拳銃は信号弾であった、これでは小動物を撃ち抜くことは、出来なくもないが難しいのではないだろうか。
結局、ヒューダーを信じて道を進み続けるしかない。
しかしオリビアは不貞腐れて道のど真ん中に大の字になって寝転んでいる。
「もぉーーーーーいやっ!!」
そうだよな、わかるよ。元はと言えば、私がボタンを押してみろと言ったばかりに……。
「実際に押したのは私ですもの!自己嫌悪ー!」
私も彼女の横に寝転ぶ。あーこのまま車に轢かれてしまえばなー、轢きに来る車もないけど。
すると何か遠くで音がする。きっと幻聴か何かかなぁ。
と思ったが、エンジン音のような音が近づいてくるではないか。
二人して慌てて身体を起こすと、目の前にはピックアップトラックのような乗り物がいた。
クートゥリュー人が乗っている。
「おみゃーら、こんなところで何やってんだぎゃ。煙が上がっとると思っとったら」
「そりゃあ、無事で何よりだがな」
事情を話すと、町まで乗せていってくれるそうだ。
しかも水筒の飲み物をわけてくれた。
「助かりましたぁ!」
この人物は、クートゥリュー政府運輸省国道整備対策事務所ミ=ゴ・インスマンス出張所の職員なのだという。
ミ=ゴ・インスマンスというのは、彼らクートゥリューが名付けたこの惑星の名だそう。
この頭の“ミ=ゴ”に『新しい』という意味も含まれているので、ニューイングランドとかニューカッスルとかそんな感じの名付け方だろう。
「しっかしおみゃーら、こんななげー道を歩いてこうだなんて無茶な事すんだなぁ」
部族の人間にこの道を真っ直ぐ行くように言われたので、こんなに長いとは思わなかったが。
「部族?おめーらあいつらに会ったんけ!?」
別に、そんな驚かれるようなものでもないのではないか。
「あいつらは人質を取って貢物を要求する惑星のならず者なんだぞ、ホントに」
そーなの!?
「でもそんな人たちには見えませんでしたが……」
めっちゃいい人たちだったんだけど……。
「最近政権交代したって噂があるでな、そんなら無事に帰ってこれたのもおかしい話でもねーでよ」
どうやらちょうどいい時期に訪れたらしい。
2時間ほどだろうか、結構なスピードで飛ばしてもらって、町についた。
この町には宇宙港が存在するというので、もしかするとガイドが我々を探しているかもしれない。
しかし宛てもないし腹も減ったし、適当にホテルを探してもらった。
「銀河同盟の子狐めらによろしくな、あばよだのん」
「ありがとうございます!」
職員さんは仕事に戻っていった、彼がいなければどうなったことやら。
ホテルの扉を開けると、そこには見慣れた人種が。
「あ!!飛行機で落ちてった人たち!」
一緒に乗っていたハンガリー人たちである。もちろんガイドも一緒にいた。
「ご無事でしたか!探しましたよ!」
ホントに探していたのだろうか……。
まさか漂流ツアーとはいえ、ここまでやらされるとは本格的なツアーであった。
「……! そうです!楽しんでいただけたでしょうか!」
皮肉だよぶっ飛ばすぞこのクソネコが!!
「ひっ!すみません!お代は取りませんから!」
元々払ってもねーけどな!!脱出ボタンの設計を見直しとけや!!
にしても、安心したらドッと疲れを感じてきた。早く部屋で休みたいものである。
オリビアはロビーの椅子に座り込んで、疲れ切った表情をしている。
何にせよ、無事に戻れてえがったえがった。
それから後日、まあなんやかんやクートゥリューの外交機関との手続きがあったりして、今は我が家に帰ってきている。
オリビアとは連絡先を交換した、共に苦難を乗り越えたし、そうでなくても同じ職種なので何かと話す事もあるだろうし。
そして、ヒューダーに送る荷物と手紙をしたためているところだ。
メロードも手伝ってくれている、まあ帰ってきたら旅行の話をする約束だったのでそのついでだが。
「まあ、命の恩人ならな、しょうがないけどさ……」
別にやましい事は何も無いと何べんも言ってはいるのだがこの調子である。
助けてもらったのに送り返さないのは不義理だと彼もわかってはいるのだろうが。
しっぽがシュンと垂れ下がっている。かわいい。
そうしていると、電話がかかって来た。ミユ・カガンからだ。
『どうだった、旅行は』
割と散々な目に遭ったけど、まあ結果オーライであった。
『……おかしい、そんな危険な目に遭わせるような予定は組んでいない』
電話越しにブツブツ言っている。おかんむりなご様子である。
『申し訳ない、君にこんな苦労を掛けるつもりはなかったんだ……』
まあまあ、結果的に楽しかったから……。
『今度埋め合わせはするよ、それと、あんな宇宙船を手配した担当者もどうにかしよう』
そこまでしなくても、と言いかけたところで電話は切れた。
あいつは終わったな……。
貴重な経験であったし、友人も増えたのは結構だが、もう二度とこんな冒険は御免である。
「今度は私も行くから!安心してくれ!」
えー……じゃあもう一回ぐらいにしとく。
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と後書きに書くといいらしいとの風の噂でのん。