【完結】地球の玄関口   作:ターキィ

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ありえんエイリアン

 

宇宙人というのは日本人が作った少年向けの漫画に出てくるようなトラブルを起こしがちな美少女や、

アメリカ人の作った大衆向け映画に出てくるような凶暴なエイリアンや、

イギリス人が作った偏屈なタイプの人間向けの創作に出てくるような

意味不明でどうもご都合主義(人の事を言えたものだろうか?)にしか思えないようなガイドブックの編集者は少数派である。

が、いないわけではない。あまり会いたくはないものであるのだが。

特に凶暴なヤツには。

 

 

そして今日、大ピンチだ。会いたくない内の一つ、めっちゃ凶暴なのが来たのである。

私は今そいつの胃の中にいる。咀嚼されなかったので助かった(助かってない)。

人間ここまで追い詰められると案外冷静になるもので、

ヌメヌメとした外分泌液もこのような身動きの出来ない状況ではある意味一種の清涼剤となるものである(?)。

訂正、あまり冷静ではない。

それからもう一つの懸念は、消化液が衣服ばかりを溶かしている点である。

まあこのまま死んでしまえば関係は無いが、生き残ってしまった場合がちょっと恥ずかしい事になる。

こんな事になってしまったのも、ここに来るまでの全ての関係者が、

『こういう種族なんだろうねぇ』と見過ごして来たからである!

いや明らかに人を食べる気満々だったんですけど!

顔合わせた瞬間食われたし!やっぱ毛が多いと食べるの嫌なのかな?

臓器と筋肉が動く音と周りの騒ぎが聞こえる。

「どうする!撃つか!?」「いや、中に人が!」「とにかく取り押さえろ!」

みんな頑張ってくれ!私も溶かされないように努力するよ!

などと考えているうちにどんどん奥に入っていっているような感触がする。

もう考えるのはよそう、と目を閉じる。

しばらくそうしてしていると周囲が明るくなってきたように感じた。

きっとみんなが助けてくれたのだろう、と目を開けると、そこは見覚えのない部屋であった。

その部屋の真ん中に寝転がっていた。何事かと起き上がると、目の前に扉が見える。

これは夢だろう、まあ暇だったし、と扉を開けようとするも鍵がかかっていた。

するとアナウンスが流れる。

『ガムボールさ!』は?『ガムボールだよ!持ってるだろ?』

持っていない、というか意味がわからない。

『持ってないの?まあ確かに、ガムボールを食べない人種もいるわな……』

随分と変な夢を見るものである。この状況だと致し方はないが。

『ガムボール持ってないなら出て行ってくれる?』

なんて身勝手な、と思った次の瞬間、身体が宙に浮いた、

と思ったらエイリアンの口から放り出される!

一瞬の出来事で何が起こったのかさっぱりわからなかった。

「ウワーッ!大丈夫かよ!?」

幸いにも着地点に警備員がいてくれて、

受け止めてくれたおかげで床に打ち付けられる事はなかった。

「よし、拘束しろ!多少怪我しても構わん!」

「服を溶かしやがって、全くとんでもないスケベだ!」

アクアシ係長の号令により、そのエイリアンはお縄についた……。

その後、中での状況を事細かに話したが、ガウラ人らにも今一ピンと来るものではないらしく、

事情聴取を行おうにもそのエイリアンに意思疎通能力は無かった(どうやって宇宙船に乗ったんだ!?)。

実に不思議な体験であった……で済ますにはちょっとアレな体験だが。

 

さてもう一つは吉田の話だ。

通常、入国拒否というのは書類の不備や偽造以外のパターンではほとんどない。

余程危険と見做されない限り拒否されるという事はないのである。

話は変わるが実のところ、吉田というのはモテる。

地球人はともかく、意外にも宇宙人相手にもモテるのである。

まあ普通に好青年であるのは私も認めるところだ。

しかしそれにも案外苦労する事があるようだ。

 

ある時期、彼は同じ人物と会話することが多くなった。

親しい人物が出来たわけではない、同じ客が何度も訪れるのである。

「彼って素敵よねぇ!あなたから見てもそうでしょう!?」

これはその、いわゆる竜人のような容貌の種族女性が、私の方の列に来た時の言葉だ。

そうじゃないですかぁ、とてきとうな返事をすると、ギロリと睨まれた。

おーこわ、と思いつつ彼女を入国させる。

別に騒ぎさえ起こさなければ好きにすれば、という感じだが、吉田の方が参っちゃってる様子だ。

「勘弁してほしいぜ、俺には佐藤さんがいるのに」

いや、まだ君ら付き合っては……はともかく、彼にも選ぶ権利はあるだろう。

しかし前にも似たような事はあったな、状況は少し違うが。

来る頻度は徐々に短くなり、遂には一日に何度も訪れるようになった。

しかも入国スタンプを押しても居座り、仕事が滞るようになった(主に私の仕事が増えた)。

来るなと言う訳にもいかないので私の方に回そうとすると、まあごねるごねる。

一体全体どうしてそんなに惚れ込まれたのか。

「いや、単に『爪が綺麗ですね』と言っただけなんだよ……」

こういう事になるから文化の異なる相手の身体的特徴について言及するのはよろしくないのである。

みなも反面教師にして欲しい。

結局、用事もないのに来るのはやめてくれと頼むことになった。

だがそんな要求を素直に受け入れるはずがありもしない。

「なんですってぇ……!?」

「いえ、ですからねぇ」

「殺す!!!!」

彼女が口を開くとビャッと長い舌が飛び出て吉田の首を締め上げた!

これはいかんとエレクレイダー、光線銃で舌を焼き切った!場内に響く叫び声!

「これまでは俺も我慢に我慢を重ねてきたが、もう今日という今日は我慢できんぜ!」

そしてそのままその女性に掴みかかり拘束した。

「げほっ、全くえらい目にあったよ」

吉田の方は命に別状もなく、怪我にも至っていない様子である。

結局彼女は殺人未遂で母国に強制送還され、旅券も取り上げられたという。

多分しばらくは来ないだろう。

これには流石に吉田も懲りて、客に対する態度を改めるのではないだろうか。

「しかしなぁ、ちょっと好意を表す態度が乱暴なだけだし……銃を撃ったのはやりすぎじゃ……」

殺されかけたのにこれである、この分だとまたこういう出来事は起こるだろう、

そういう煮え切らない態度がよくなかったんじゃないのか!?

 

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