例えばの話、先進国の人間が発展途上国の農村を訪れたとき、
その不衛生さに耐えられるということは稀であろう。
一応、日本に存在する企業として健康診断を受けさせる義務があり、
宇宙港職員らもその例に漏れず何ヵ月かに一回健康診断があるのだが、
今回はいつもの駐屯地での検査が都合により不可能となった。
なんでも、人員の再配置?みたいなのがあるらしい。
そこで近所の病院に依頼する事となった。
「地球の原始的な医療機関なんて信用できるんかいな」
訝しげな表情のラスちゃん。そういう言い方はよくない。
「だってあれやろ、水素水とか血液クレンジングとか5Gとかトラン…」
それはそう!そいつらはそう!情報源が片寄りすぎている。
「第一、うちらの身体構造わからんやろ」
確かに、その点はどうするつもりなのだろうか?
結論から言えば、駐屯地の軍医が来た。
「地球の医療器具は実に興味深いよ。考古学的な意味で」
いきなり皮肉かよ、先進国民らしいな!
「また君か、よく会うね」
本当にね……。
さて、無事に健康診断が始まり、順調に進んでいるかのように見えたが、
なんだか前がつっかえている。
「嫌だ、それだけは受けない!」
何やら受診拒否をしている人がいるらしい。
周りのガウラ人たちもなんだか不穏な表情をしている。
「四の五の言わずに受けたまえ、地球人はみんな受けているよ?」
そう言う軍医殿は防護スーツに身を固めている。
その横には放射線技師らしき日本人の医師が困り果てた表情で立っていた。
どうやら、レントゲン検査を嫌がっているようだ。
「放射線を自ら浴びに行くなんて、そんな馬鹿な話があるか!」
「はっきり言うが我々の使う透過装置も放射線の一種を使っているんだよ」
「そっちは安全が証明されているだろ!?」
レントゲンだって安全は証明されとるわい!
彼らにとっては大昔の治療法を使用しているように見えるのだろう、
例えば、瀉血や武器軟膏のような。
「よし、私が行こう!」
メロードが先方として立ち上がった!いいぞ!
「ではまず、その軍服を脱ぎたまえ」
「……」
前職で使っていた超能力部隊の軍服を着ていた。
これは放射線を通さないのである。それじゃ意味無いだろ。
「軍医殿こそ脱いでください」
「私は何回も浴びるから」
「安全なのでしょう?」
「万が一って事もあるし……」
「はぁ!?」
軍医の方もビビっている様子である。
まあ得体の知れない異国の、しかも後進国の、カビの生えたような医療を
施されようものなら誰だってビビる、ましてや、放射線だ。
廃れた医療については教わっているとも思えない。
結局メロードは軍服を脱がずに、引き下がった。意気地なしめ!
「安全だとは思いたい!でもビビっちまって……」
ションボリしている。そう言う割にはわざわざ前の職場の服引っ張り出してよぉ。
ラスちゃんの方もあんまり受けたく無さそうな表情だ。
「勘弁してホンマに。よく平気やな地球人は!」
平気も何も、これしか無いのである。
「早く進歩してください!ウチらのレベルまで!」
進歩したいのはやまやまなんだけど……。技術供与してくれたらいいのに。
「俺は平気だぜ、受けてもいいがね」
エレクレイダーは語る。まあ……そうね……君はそう……。
同じX線照射でも手荷物検査のX線の方が彼には似合いそうだ。
「確かにな。人造人間も手荷物扱いになったら楽だろうがな~」
自分から言っておいてなんだけど、それでいいのか……。
そうこう話をしている間も一向に列は進まない。
「とにかく、X線照射は認めない。遺伝子に傷がつくからな……」
「つかないって!」
しちゃもちゃと押し問答を繰り返す。早くして欲しいんだけど。
「俺が行くぜ!」
そこでとある葦毛のガウラ人職員が名乗りを上げた!
「もし俺が、X線によって溶けてしまったら、その時は後は頼むぜ……!」
「お前誰だよ」
ウワーッ!知らない人!時々不審者出るよねこの職場!
すぐに摘まみ出された……。
しかしながら彼のせいで場の空気が白け、気勢をそがれてしまい、
職員たちは渋々、恐怖に慄きつつもレントゲン検査を受け始めた。
ありがとう!知らない人!
だいたい2週間後、体の不調を訴える職員が続出した。
というより、不調な気がする、という訴えであるが。
皆、当然のように一蹴された。
「なんか、調子悪い気がすんねんな~~」
とラスちゃんもこれである。
医学に限らず科学技術の進歩には早い遅いがあるし、
そもそも、なんというか同盟国なんだし、もうちょっと信用して欲しいものである。