【完結】地球の玄関口   作:ターキィ

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エピローグ:最終報告書

 

銀河の辺境、ちっぽけな田舎の星、地球が、揺り籠から降りて幼年期の終わりを迎えようとしている。

外来者の手による不本意なものであるが、それでも、天上を知ってしまった人類の衝動を止めることはできない。

 

 

地球人類の幸運は、来訪者がガウラ帝国であったことである。

彼らは基本的には礼儀正しく、我々の文化にあまり関心を示さない方であった。

唯一、王族の存在さえあれば、彼らは技術も兵器も人材も提供してくれた(お金は貸してくれなかった、金欠だったので)。

紛争解決にも積極的であったが、やや強引に地域を一纏めの王国にしてしまうきらいがあった。

それらの是非はともかく、地球人は彼らを通して初めて次なる時代、星間国家を垣間見た。

隣人の訪問の衝撃からしばらく、人類は目を覚まし始めた。

思ったほどでもなかった、と感じるものもいれば、新鮮さに高揚し、すぐにでも宇宙へと飛び出そうとするものもいた。

 

ところで、ルベリーのとある外来人種(より正確に訳すなら『毛唐』が近い)対策学者が残した言葉がある。

「知的生命体はムラを大きくして発展してきた。銀河帝国といえど巨大なムラである」

地球人類は巨大な銀河ムラの一員となった。人権などという奇怪な因習を持つ、銀河の因習仲間、因友である。

銀河系皆兄弟とまでは言わないが、どこも同じようなものなのだろう。

そういう奇妙な連帯感が、銀河社会を辛うじて形作っている……らしい。ホントなら嫌だなぁ。

 

さて、この作品を多様性だの多文化共生だの高尚なことを伝える意図は一切無い。

私はそういう高尚なのは嫌いだし、これらは出来事、事実の羅列に過ぎない。

だから、この作品を見たからといって多様性だの何だのを尊ぶ必要はない。

私とて、宇宙人はともかく、外国人つまり日本人じゃない人類はそんなに好きではない。

ちょっとしたトラウマも持っている、持っていたような……あの二人組は何だったのだろうか。

とにかくもしも、何かの間違いでこの作品から高尚なものを受け取ってしまったのだとすれば、それは捨ててしまったほうが無難だろう。

 

あの事件から一年とちょっと経つ。一応みんなのことを報告しておこう。

吉田は、なんとか佐藤と付き合うことが出来たようだ。あの事件の時に思い切って告白したのだという。

尤も佐藤の方は、もう付き合っていると思っていたようだ。彼女も未だに宇宙人向け理髪店をやっている。

ラスは、ちょっとだけ偉くなった。私のポストが空いたのもある。いつの間にか彼氏もいて驚いた。ヒヤムンと金魚と楽しく暮らしているそうだ。

バルキンは相変わらず呑気している。時々家に遊びに来るが、騒がしくってかなわない。結局里帰りはしていないらしい。

エレクレイダー、なんと近衛師団の採用試験に挑戦している。今年度は二次試験で落ちたそうだが、一次試験は突破できているので大したものだ。

ビルガメスくんも変わらないが、なんでも博物館を建てるのが夢で、最近は色々と集めて回ってるらしい。

局長、彼も相変わらず飄々と仕事をこなしている。浮ついた話は聞かないけどいいのかな。

その他、ヒューダーや■■■■などの友人らとも時々連絡を取っている。元気にしているようだ。

 

「それじゃあ、行ってくるよ」

いってらっしゃい。チューはしないけど。

「し、してくれてもいいんだけどなぁ!」

メロードとは同棲し始めた。彼はまだ宇宙港の警備員をやっているが、私としては早いとこ辞めてほしいと思っている。

私は宇宙港での仕事を辞めた。命と体が幾つあっても足りないからだ。

籍を入れて、式を挙げたが……まあ、式のことはあまり聞かないで欲しい。

あんなめちゃくちゃな式はなかなかお目にかかれないだろう。当事者じゃなければ面白かっただろうけど。

「うわぁ、なんだ、ミユ・カガン!毎日のように文句を言いに来るのはやめろ!」

カガンは何が気に食わないのか、以前よりもメロードに突っかかるようになった。こうして時々……ほぼ毎日玄関で待ち構えている。暇なのかな。

そうして、お茶を出してやるまでが日課だ。

「いやぁ、いつもすまないね」

そう思うならやめてほしいのだが……最近、私は彼女の気持ちに気がついた。

「だめだ、やめてくれ、そういう申し訳ないから仕方なく、みたいなのはよくない」

……そう思うなら、メロードに突っかかるのも程々にしておいて欲しいかな。ああ見えて私の伴侶だ。

「うわーん!ボクはどうすればいいんだぁ!」

彼女の気が済むまで、付き合ってやるべきなのだろうか、それはそれで彼女を傷つけそうな気もする。

「あ、それはそうと今回の翻訳だけどちょっと修正してほしいところがあってね」

うわぁ、急に仕事モードに入るなぁ!玄関先ではなんなので彼女を中に入れる。

リビングで仕事の話をしていると、うちの小さいのが泣き声を上げ始めた。

「おっと、じゃあ少し中断しようか」

それが助かる。「見てていい?」ダメ。

 

そんなこんなで、今は山のようにあるガウラやルベリー、ミユ社の本や製品の説明書を翻訳して生計を立てている。

カガンの提案であり、彼女の会社に所属する形になっている。非常にありがたい。

機械翻訳を使えばいいのだろうが、精度が安定するには時間が掛かるだろうし、物語となると、やはり人間が翻訳したほうが良い物ができる。

いつも使っている翻訳機を使えばいいかもしれないが、仕様上、翻訳機使用者の主観が入ってしまうらしい。初めて知った……。

まあ正直なところ、以前の方が楽な仕事ではあったが、言葉の通じないわけのわからない人間の相手をするのは今は一人が手一杯だ。

相手をしているのは、二つの種族を掛け合わせて誕生したこの銀河における新たな種族だ。対応も手探りでやるしかない。

幸い、メロードや家族、研究者、そして友人たちの助けもあるのでなんとかなってはいる。

私……私たちのエゴによって生まれたこの人物にどのような未来が、明るい未来か辛く苦しいものが待っているのかはわからない。

正直なところ不安でいっぱいだが、でも私は色々な人々を見てきた。私ほど色々な人を見た地球人も私の他には吉田ぐらいしかいないだろう。

それらを鑑みて、この世界、この宇宙は今のところは信頼するに足るのではないかと判断した。

 

この報告をもってして、本作の結びの文とさせていただく。

 




数年間、ダラダラと続けてまいりました。
お付き合いどうもありがとうございます。

「思ってたより灰汁が出てしまった…」「これ面白いか?」「これはつまらないな…」
などと思いつつもまあええかの精神で作られたので品質にバラつきのある作品ではございましたが、
お楽しみいただけたのであれば幸いです。
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