【完結】地球の玄関口   作:蒸気機関

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銀河の奴隷事情

 

古今東西、奴隷制度といったものはこの地球にも存在した(ある意味では現代日本においても存在する、と言えるかもしれない)が、

奴隷の社会的な地位というものは近代ヨーロッパ的な一般的イメージの奴隷からカースト制度などまで様々である。

 

先にも述べたとは思うが奴隷については一応、日本では認められていない。

よって、奴隷階級の入国の際には所有物ではなく人として入国してもらう事になっている。

それについて、所有者側からのクレームというものはほとんど無いのだが、時々奴隷側からクレームが来ることがある。

「貴様私をなんと心得るか」と食って掛かられた時には驚いた。

私はこのアルマジロ人種の男性に、この国では奴隷は非合法なので入国書類を取得しないことには、と説明をしたが何とも納得しない様子だ。

「では私はこの国では平民のように振る舞えと言うのか」と苛立ちを露わにしており、私は益々混乱した。

彼に、観光に来ているのではないのか、と問いかけると「まあそうだが」とばつが悪そうに言う。

彼らの国というのは労働こそが素晴らしい物であり、即ち奴隷こそが高貴なものであるという風変わりな文化があるのだという。

勤労が美徳だとは私も思うのだが、少々行き過ぎではないだろうか。

そも奴隷だが高貴、というものも私には難解(というか意味不明)で頭の中がこんがらがってしまう。

それなら所有者はどうなるのだろうか、政府や政治家はどうなのか、と疑問は尽きない。

休憩時間中に色々と調べてはみたものの、どうにも頭が痛くなるものばかりであった。

資料作成者も困惑したのだろう、公の資料とは思えないほど『理解し難い』、『意味がよくわからない』などの言葉がふんだんに使われている。

宇宙にも変った人種がいたもんだ、と思いながら政府が彼らに就労ビザを渡さないことを祈った。

 

さて、変わったクレーマーはこれだけではない。とあるカースト制度の国の奴隷はその所有者以上に階級に厳しいのだ。

直立する巨大な蟻のような風貌の女性はこう語る。

「私は先祖代々この奴隷階級です、母もそのまた母も奴隷、だのにこの国では認められないとは」と。

彼らは身分や身体の自由を拘束される事が屈辱とは感じないのだろう。むしろ、先祖代々勇敢にして忠実である事の証左となるのではないか。

そう考えると納得はいかないが理解は出来る、しかしまあだとしても無理なものは無理だ、としか言いようがない、これは内政にも関わる部分なのだから。

彼らのような文明はやはり、少なくともこの天の川銀河では少数派ではあるようだ。

 

そしてもう一つ、厳密には奴隷ではないし、これは所有者側の問題なのだが、入国書類も無しに通ろうとした者がいた。

このムジナモ型人種(水生の食虫植物の一種)のオーナーは不思議そうな顔でこう言う。

「奴隷?奴隷ではないよ別に」しかし書類が無いのでは入国は出来ない。宇宙生物のペットも現在は持ち込みが認められていないのだ。

しかし肝心の書類を持たない蜘蛛型人種は「いや、その」と口をもごもごさせている。

いずれの知的生命体も書類が無くては入国は出来ない、という旨を所有者に伝えると、これまたあっけらかんと言い放った。

「違うよ、こいつは食糧、食べるのさ。活きの良いまま連れてきたんだ」

じゃ、尚更ダメだ、と私は入国不許可の判子を押し、警備員を呼び出した。

 


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