【完結】地球の玄関口   作:ターキィ

45 / 169
宇宙のキューピッド:吉田の話

「大事な話なんだ」と言うのは吉田である。今我々はファミレスに来ていた。

彼らしくもない、彼ほど深刻、重大、大事、責任など、堅い言葉が似合わぬ者もいまいて。

「それはちょっと言い過ぎだろう、とにかく大事な話なんだ」

金なら貸さないとだけ先に言ってしまうが、不満気だ。

「わかるだろ、深刻な話ってさ」

何の話だろうか。確定申告とかかな。

「違う!俺は一目惚れしたんだ……」

……申し訳ないがその気持ちには応えられない、悪い人物ではないんだが。

「あ~~~~もう!だから!」

と彼が苛立ちを露わにしているところでメロードが通りかかり、吉田を一瞥する。

はて、ここに来る事は彼には伝えていないはずだが。

「ね!面白い事があるって言ったでしょ?」「確かに言えてらぁ」

バルキン・パイにエレクレイダーまで来ている。一体何なのか。

 

 

「で、だ!俺が一目惚れしてるのはお前じゃない」

それは知ってたが、面と向かって言われると傷つくのだ。

「なんだと!」と食って掛かるメロード。

「まあまあ落ち着きなよ。あ、店員さん、大盛ポテトとざるそば一つずつ!」「あ、サラダ油ある?コップ一杯持って来て」

勝手に注文する馬とロボ。そういえば今日は有休を取ってきているのだが、これだけ抜けると誰が代わりにいるのだろうか。

「アヌンナキ人の新人、ビルガメスくんだよ!」あっけらかんと言ってくれるが、可哀想なビルガメスくんである。

話を戻そう。では誰に一目惚れしたというのか?

「お、俺ぇ!?よせよ、俺は近衛部隊のニューリーダーになる夢があるんだぜ?そも、男性型ロボットだし」

ちょっと満更でもなさそうなのが若干キモイ。メロードとか超嫌そうな顔をしている。ガウラ人は同性愛が大っ嫌いなのだ。

ついで言うならガウラは結婚年齢の下限が男女ともに無かったり、異種族との性行為など(要するに獣姦!)を禁止する法律が無かったり、の割に『不倫』『浮気』などの概念、単語が近年まで存在しなかったり何とも言い難いお国柄である。

「そんなわけあるか!」「じゃあ私!?」「違うってば!」全く話が進まない。ので、読者諸君には先に言ってしまおう。

要は私の親友である例のトリマーに一目惚れしたというのだ。

……まぁ、まあまあ、別に悪い事じゃないとは思うが。いささか気が進まない。

「そんな事言うなよな、俺とお前の仲だろ」ただの仕事仲間だった記憶だが。

別に拒む理由もないので連絡先を教えてやるが、スマホを片手に固まっている。

「どうしよう、なんて電話すればいい?」そのような事は私の知る由もないのだが。

「遊びに行こうって!」「先日の礼を言うのは?」「まどろっこしい事はやめて言っちまえよ」

意外にも、この三人にとってはそうでもないようだ。

「だってあれでしょ、積極的に行かないと!」「その通りだぜ」

馬とロボの意見は押して押して押しまくる事であった。

「いや、それはダメだ。女性というのは奥ゆかしさにグッと来るものなのだ」

メロードの反論。それはガウラ人女性がだろうか。まあ彼には奥ゆかしさなどあんまりない気もするが。

「言葉にしないと伝わらないよ!」「そうそう。困るなぁ、有機人種ってのは。心とか絆とか言うつもりだろう?」

「だが急に押しても、引くだろう、引かないか?引くだろう?」私に同意を求めてくる。

そりゃあ、熱烈なアプローチが好きって人もいるだろうが、開口一番にそれだとちょっとマズいかもしれない。

そもそも電話する口実さえも元々無いのだから。まあ私が電話して約束取り付ければ済む話なのだが。

「じゃあやってよ!頼んだからね!」とバルキン・パイ。なんでだ。

「頼んだぞ……俺には勇気が足らんかった……!」

まぁ、別にいいけどもさ……。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。