とはいえ、連絡をするとして、一体何を伝えればいいのだろうか。好意を直接伝えればいいのか?
「それはちょっと待って欲しい」と吉田。何が不満というのか。
「いやいやいや、段階を踏もう。段階を」彼はいきなりは絶対断られるというのだ。
「大丈夫だよ、吉田いい男だし!……多分ね」バルキン・パイがポテトを摘まんで……つま……え、どうなってんのその蹄?
「吉田のいい男さ加減はある程度は保証するぜ、この俺様、エレクレイダーがな」
ぶっちゃけ価値観も何もかもが違う異星人、ましてや人造人間に保証されてもあんまり参考にはならないのだが。
「確かに俺はいい男だけど……流石に引かれてしまうだろ」いい男は自分の事をいい男とは言わないのだ。
いい男、といえば、例の親友……佐藤と言うのだが、彼女もあんまりモテるタイプではない。
眉毛太いし、顔と雰囲気は野暮ったい感じだし、眉毛太いし、変わり者だし、眉毛が太いのだ。
「ああ……すき……」変わり者はこいつもではあるが。案外お似合いかもしれない。
「まず作戦を立てよう。戦闘の前には作戦会議だ」メロードの尤もらしい提案。
「サーイエッサー!」バルキンが答える、ポテトはもう平らげたようだ。
「まず電話をするとして、なんと言って呼び出すか」確かに、口実がなければ不自然だ。
「この間のお礼、とか?」「それだと何故審査官が、って話になるじゃねーか」
意外と真面目に議論する宇宙人たちだが、当の吉田はダンマリを決め込んでいる。どうしたというのか。
「うまく呼び出せたとして、それからどうすれば……」
どうもこうもないだろうに、そこからは自分で何とかして欲しいのだが。
反ポリコレ的な事を言わせてもらうなら、大の男がウジウジしてちゃ情けないというものだ。
「大丈夫!積極的にね!」「その通り。なんでこの種族は普段から繁殖行動ばかりしてんのにこういう時は怖気づくのかねぇ」
まぁ、うん。地球人の性行為の頻度(それと性犯罪発生数)は銀河でもずば抜けて高い。日本でさえも上位に入る。
もちろん、理由は様々なのだ、繁殖期の存在や、クローンで増やせるから必要ないとか、性行為に快楽を感じない種族だとかなんとか……。
「パッと会ってバッとやればすぐ済むだろ」それでは犯罪である。
そのような積極論に異を唱えるのはガウラ人、メロードであった。
「先に吉田が言った通り、段階を踏むべきだ。まずは会って、その日はそれで解散。で、次に会った時は散歩でもしながら…」
これが彼の好みなのか何なのか講釈を垂れていたが、彼の目が私の顔をチラと見ると慌てて口を手で覆った。
「とにかく、『列車は屋台に停まらない』と言うのだから、慌てない方がいいだろう」
「それどういう意味?『走る者路傍の金子気付かず』、みたいな?」
おそらくかの国のことわざであろう。『急がば回れ』とか『慌てる乞食は貰いが少ない』とかそういう意味だろうか。
ともあれ、吉田の嘆願もあり、積極論は一先ず端に除けておくこととなる。
作戦会議を終え、帰宅してまず初めに、コンビニの弁当を電子レンジで温める。
最近のコンビニ弁当というのは女性向けだのと宣い値段をそのまま量を減らすので、本当にふざけた真似をするものだ。
ぶつぶつと一人文句を垂れながら、服を脱ぎ散らかし、ノートパソコンをスリープから立ち上げた。
レンジから取り出した熱々のなんか変なパスタを貪りながらスマホのメッセンジャーアプリを起動する。
はて、なんと書こうかとスマホ片手にノートパソコンで面白そうな動画を物色していると、スマホが鳴る。
だれか、と画面を覗き込むとまさに例の親友からの便りである。
「ちょっとよろしいかしら」と彼女。どうぞ、と返す。
「あの例の彼って、どういう人なの?」
例の、と言うと、誰であろうか。心当たりは3人ある。
「ちょっと紹介して欲しいんだけど」
メロードなら……ともかく、それが吉田ならば万々歳と言ったところなのだが、彼女はとんでもない返信を送って来た。
「あの、ロボットの人なんだけどさ」
えぇ……。