我が親友、佐藤は変わり者であった。
その、『気になる』というのが知的好奇心であるという事を祈ろう。
思えば佐藤はそういうのが好きだった記憶がある。
確か、宇宙から来た変形ロボが戦う作品を頻りに薦めてきていたが、私はあまり興味が持てなかった。
「そうそう、あの人航空参謀に似てるのよ。私の推しね」
本当に似てるとしたら、とんだ参謀である。
まあそういった、創作物の中のキャラクターが外に出てきたの如き状況なので気持ちはわからないでもない。
だが、まさか、恋愛的な意味合いを持つのではあるまいな。
「んー、それはまた会ってみないとかなぁ……」
何でまた急に。
「あんたがさぁ、あの狐とって話を聞いて、流石にもう事に及んであんたに引く事はないと思ってたんだけど、それにはドン引きしちゃってね」
酷い言われようである。そんなに引くかしら……。
「それじゃあ種族とかあんまり気にしなくてもいいのかーって思って」
それでも有機と無機じゃ天と地ほどの差があるとは思うのだが。
「今や宇宙時代だし、そういうのもありかなってさ」
無しではない、確かに、無しではないのだろうが……。
「あ、そうだ、セッティングしてくれる?」
そら来た、吉田と言い佐藤と言い、間に立って取り持つ人物の身にもなって欲しいものだ。
とはいえ私を介して出ないと連絡の取りようがないので、あのロボの話が出てからこうなることはすぐに予想出来た。
しかしながら私の独断でどうこう出来るものでもない。
というわけで、吉田以外を緊急招集した。
「なに?夜更かしはお肌の敵なんだけど」とバルキン・パイ。お前の肌は毛皮だろうが。
私はかくかくしかじかと佐藤の動向について話すと、エレクレイダーは驚いていた。
「この俺!?将来近衛部隊を背負って立つこのエレクレイダーがか!?とぉんでもない!」
まだ別に交際するとかしないとかそういう段階ではないのだが、彼は拒絶している。
「案外そう悪くないかもね!」と囃し立てるバルキン。
「お断りだ!なんで有機生命体なんかに……!」
全くもってその通りではある。おそらくは知的好奇心だとは思うのだが、佐藤の事だからなぁ……。
彼は有機生命体を見下したりとかそういうのは無いのだが、機械と生物が、というものに嫌悪感を覚えるらしい。
でも吉田の時はここまで拒絶していなかったような気もするが。
「機械にだって冗談は言えるぜ」
なるほどなるほど。懸案事項が一つ消えた。
「考えようによってはチャンスだよ!吉田がついて行けばサトーに会えるじゃない!」
「で、俺はあいつの誘いに応じろってか?絶対御免だ!」
かなり頭に来ているようだが、まだ彼女の心が恋心なのか知的好奇心なのかは定かではない。
その点を入念に説明し、これは作戦だと説得する。
「わかったよ、それで、どうすればいい」
それを今から考えるのだが、バルキンが手(前足)を挙げてブンブン振っている。
「まず吉田、エレクレイダー、と君の三人で向かって、途中で何か用事でもでっち上げてから吉田とサトーを二人っきりにするっていうのは!?」
何ともありきたりだ、上手くいけばいいのだが、現実的に考えると『じゃあ解散で』となりかねない。
「『解散で』じゃ済まされない予定を立てるんだよ。例えば……何か高級な物を予約するとか」
そう悪くはないと感じた、だが金は誰が払うのだろうか。
「……今月あんまり残ってないんだよねー」
「最近の油ってのは高いからな。大して純度も高くないくせに」
つまりは私が払う事になりそうだ。吉田が払え吉田が!後で吉田に言って取り返しておこう。
ところで、一言も喋らないメロードは地面に座り込んで寝ていた。
なんという可愛らしさか、是非読者諸君らにも伝わるよう表現したいところだがこのサイトのサーバーの容量が足りないだろう。
連れて帰ろうとしたがバルキンとエレクレイダーの何とも言えない視線を感じ、彼らに任せる事にした。