【完結】地球の玄関口   作:蒸気機関

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ガウラ帝国のポンコツなロボ

季節の変わり目というのは体調を崩しやすい、ましてやこのクソ暑いのが急に涼しくなれば尚更である。

というわけで、私はたった今職場に休みの連絡を取ったところだ。

ボーっとしていて頭が回らない、きっと薄着で寝たのが良くなかったのだろう。

起きていても怠いので、さっさとベッドに横になってしまおう。

 

数時間ほど寝ていたのだが、訪問者による呼び鈴によって目が覚めた。

私は、きっとメロードのやつが看病にでも来てくれたのだろう愛いやつめ、と小躍りしながら扉を開ける。

「お察しの通り、この俺エレクレイダーが看病しに来てやったぜ」

くたばれ。私は扉を閉めた。

「ちょっと待て!開けろ!折角来てやったのに!」

呼び鈴のスイッチを押しまくるクソッタレポンコツロボ、一体何の用だというのか。

「看病だって言ってるじゃないか!」全く、こんな奴を寄越さなくても。

曰く、ガウラ人は親しい人物が体調を崩した場合、最も信頼できる人物に様子を見に行かせる文化があるのだという。

ともなれば話は別だ、具合が悪くなりかけていたが、たちまち気分が良くなった。

「それを言うなら機嫌だろう?」訂正、やはり気分は良くならなかった。

 

「この俺、と言うと正確じゃないな。俺たちバラックガウラ人はガウラ人の為の奉仕機械だ、つまり医療機能も付いているのさ」

奉仕機械と言うと若干嫌な響きである。ともかく、進んだ医療を受けることが出来るのはありがたい事だ(例え風邪の治療であっても)。

「そういうわけで、服を脱げ、全部な」なぜこう私の期待を裏切るのだろうか。

「腸内に体温計を入れてだな、正確な体温を計るというわけだぜ」

彼の指先からニューンと体温計らしきものが出てくる。

ひょっとしてひょっとすると、そこまで医療が進んでいないとでも言うわけではあるまいな。

別に尻の穴にぶっ刺さなくったって体温ぐらい計れるのだが?

「そうなのか?地球人ってのは随分楽な体質してるんだな」

まあガウラ人は毛皮に覆われているから外部から体温は計りづらいのだろうか。

私は自身の体温を計ってみたが、39度ほどあるのでこんなポンコツにかまけているヒマもないのだ。

早いところ横になってしまいたのだが、私は食事を取っていなかった。

「そうなりゃ、この俺エレクレイダー様の出番って訳だ」

何か宇宙的なもので栄よう補給をさせてくれるのだろうか。

「この辺の近くの食料品販売店に行ってくるぜ!」

彼は家のカギを手に取ると飛び出していった。

うん……うん……ありがたいなぁ……。

にしても、だれかが来てくれるのは実にありがたいことだが、メロードのやつもなぜ彼なんかにたのんだのか。

実さいこのぽんこつめはねついはあるのだが、いかんせんどうにもぽんこつである。

そりゃあかれがしんらいにあたいしないとはいえないが、にしてもあれだ。

あたまがぼんやりしてきた、これほどつらいのはひさしぶりであるのだが……すこしだけよこになろう。

 

気が付けば、私はベッドに横になっていた。

「帰ってきたら倒れていたから驚いたぜ」

ちょっと床で横になっていただけではあるが、考えてみるにベッドに戻る体力もなかったのかもしれない。

それを彼が運んでくれたのだろう、ここに来て初めて役に立った。

「へっ、だがこれを見てもそう言えるかな」

彼の掲げたスーパーの袋の中には肉、肉、肉などが入っていた。

「風邪の時はこれに決まりだな」

多分これもガウラ人基準である(連中元は肉食だし)。地球人にはちょっと厳しい、しかも脂身ばっかり!

見ているだけで胃もたれがしてくるようだ。

「さぁ、この俺エレクレイダー様の料理の腕を見せてやるぜ」

それは困るという物だ。どう考えても今の私には食べられない。

私が彼に、もっと胃に優しいものを食べさせてくれ、と伝えると、キョトンとした表情になる。

「肉は胃に優しいだろ? それにDNAに素早く届く」

どういう事なんだ!?全然話を聞いてくれないし、あまり地球人の身体の事を理解していない。

看病に来てくれたのは実にありがたい事なのだがこれでは全くの落第点である。

「なんだよ、食べないのか。じゃあ名医の診断を報告しよう、とっとと寝てな」

そうは言われても、栄養はちゃんと取れてないのでこのまま寝ても体力的につらいものがある。

まあ構わないといえば構わないのだが、水分と塩分ぐらいは取りたい。

このまま彼に任せておいても埒が明かないので、私は彼に指示を出した。

「あん?米を煮詰めればいいのか? わかったぜ。この俺の料理の腕前を見せてやらぁ」

腕前って程のものでも……とにかく、ガウラの奉仕機械の腕前を見せてもらうとしよう。

 

十数分後、香ばしい匂いを漂わせた鍋を持ってエレクレイダーは戻って来た。

やったぁ!お肉が乗ってるぅ!サムゲタンかなぁ!

「どうだい、エレクレイダー様風アレンジだぜ!」

彼は先ほどの話を聞いていなかったのだろうか?

「だ、だって、肉があった方が……!」

とにかく気持ち『だけ』は伝わったので、むやみに根拠不明の元気は出てきたが……全くこのエレクレイダーめが!

 


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