【完結】地球の玄関口   作:蒸気機関

65 / 169
消えた救世主:機械仕掛けの命

 

楽しいハロウィンパーティーという名の飲み会を楽しんでいたのだが、腹を空かせたのかエレクレイダーが席を立ってしまった。

一体どこへ行ってしまったのか。

 

 

「さあ、まあ大丈夫だろ」と吉田。

身の心配はいらないだろうが、彼の心を傷つけてしまったのではないかと、そっちの心配を私はしている。

「バラックガウラとかの第三世代人造人間のブレインサーキットは有機生命体のそれとさほど違いは無いからね」

とやけに事情通なバルキン。「だからこそ、第四世代人造人間は感情が制限されているんだけど」と続けた。

それは驚いた。しかし出会う機械は全て感情が豊かのように思えるが。

「感情が制限されてるっていうのは、外に行こうとか移住しようとかの感情も制限されているんだから」

なるほど、なるほど。となると、まさしくエレクレイダーは第三世代人造人間の典型である。

吉田も佐藤も彼女の話に感心しきりであった。「是非とも続きを聞かせて!」と佐藤が目を輝かせている。

「まあ、あんまり詳しくは無いんだけどさ……」と仕方なしに、というふうに続きを話し始めた。

 

バルキンの話は非常に興味深い。

ロボット技術自体はかなり古い歴史を持つようで、最初はこの地球のローマ帝国やギリシャの建築物などで使われていたような単純な工作機械だったのだという。

素人にはとてもそうには聞こえない。

こういう技術はサイボーグや人工四肢、人工臓器なども内包するのだが、ある時、ふとしたことから人工知能が生まれた。

メウベ人らが損傷した脳の一部を機械で治療できないか、という研究を行っていた時、機械人間(人造でなく自然に生まれた機械知的生命体)の脳をただ単にコピーしたものを作ったという。

それだけでは作動しなかったため、研究員が過労のあまりにそれを(もちろん生身の生物用の)培養液に突っ込んでしまうという判断をしてしまった。

すると、その人工知能は動き出したのだという。それから繰り返し再現実験が行われ、最初の人工知能が生まれた。

『八五式人造脳髄』と呼ばれたそれはメウベ騎士団の研究施設に『彼』が息絶えた今も保管されているという。

それを元にした人工知能が使われている人造人間らが第一世代人造人間である。寿命が数年ほどしかないという欠点があった。

そして、長寿命化が為されたが自身の死を受け入れられない第二世代、感情が豊かだが反乱の危険性もある第三世代、無駄な機能と感情を全て削ぎ落した第四世代と続く。

現在一般的に各国に使用されているのは第三、第四世代の人造人間だ(無論、ガウラ帝国のように第三を使う国はかなりの少数派だが)。

 

と、興味深い話をしているのにも関わらず、メロードは目がトロンとなっていた(佐藤もだが)。

相変わらず酒にはあまり強くないようだ、種族的な特性であるから当然といえば当然なのだが。

声をかけるとゆっくりと顔をこちらに向ける。

それで、頭をお辞儀をするみたいに下げると、私の頬に擦り付けてきた。

「人が話をしている時にっ!!何その顔は何っ!!」と鎧をジャラジャラ鳴らして喚きたてるバルキン。

私の顔を言ってるのだろうが、そんなに変な顔をしていたのだろうか。

にしてもバルキンは実に詳しいようだが、私は理由を知っている。

が、吉田は空気が読めないので「なんでそんなに詳しいんだ?」と聞いてしまう。

「それは…………趣味だよ趣味!」と言うバルキンだが、吉田は続ける。

「ひょっとして妹の為に色々と調べてたとか」酒の席とはいえ、そういう事は思ってても口には出さないものだ。

案の定、彼女は手……前足をバタバタさせて恥ずかしがった。

「そんなんじゃないよ~~違うよ違うって~~!次に無駄口叩いたら殺すぞ」

「うわぁー!ごめんなさい!」それ見た事か……えっ、怖い!

 

しかしながら、そうこう話している間もエレクレイダーは帰ってこない。

連絡を取ろうにも、彼は大の機械音痴(自身は機械なのに)で連絡手段が無いのだ。

メロードに聞いてもスリスリしてきて可愛いだけだし、3人も盛り上がっているところなので、やむを得ず私一人でも探しに行くことにしよう。

一人だけのけ者にして楽しむのも良くないだろう……え、ビルガメスくん?

あの人、めちゃしつこく誘っても来ないタイプだし、今日はなんかネトゲでイベントがあるとか言ってたし……。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。