【完結】地球の玄関口   作:ターキィ

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バッタ仮面の嬉しい日

宇宙人の容姿は様々だ。先の話に出てきたようにカラカルやエビなんかによく似た人種も存在する。

それでもって今回はバッタのお話。皆さんは直立二足歩行のバッタに見覚えはあるかな。

 

容姿の悩みというのは世界共通だ。男女問わず、容姿に気を遣っている人は多いし、

美容整形外科から客が途絶えることもなければ、仕舞いにはコンプレックスになってしまう人もいる。

そしておそらく宇宙においても多かれ少なかれ容姿の悩みがあるのだろう。

暗い面持ちでやって来たのはバッタ型人種の宇宙人だ。

この人物は書類を差し出すと突然、「私の容姿、どう思います、地球人から見て!」と情けない声で聞いてくるものだから、

そう悪くはないと思いますよ、と答えた。地球にはバッタよりももっと気持ちの悪い生物はいるし。(黒いアイツとかね)

しかしそれが今一信じられないらしく、彼は嘆き続けている。

「地球の、その、初等教育学校、ですかね、それに講師として呼ばれたんですよ、で、我々の種族はよく容姿が醜いといわれるんです!」

なんとも殊勝な心配だが、だったらそんな頼みを受けるな、とも思わなくはない。

しかし「だって、断れないじゃないですか!」と語気を強めて言うのだから、この人物はかなりのお人好し(おバッタ好し)なのだろう。

「ああ、子供たちに気味悪がられて、話を聞いてもらえなかったらどうしよう」とぶつくさと言いながら書類を受け取ると、トボトボとターミナルへと歩いて行った。

 

そんな出来事の記憶も薄れかけた一週間ほど後、彼は再び現れた。しかも今度は上機嫌だ。

ご機嫌ですね、と声をかけると待ってましたと言わんばかりに口を開いた。

「いや、実はですね、子供たちに気味悪がられるどころか、人気者になってしまいましてね」

なんでも、その容姿が特撮ヒーローとよく似ている、と結構な騒ぎになったのだという。

「あんなに喜んでもらえたのって初めてですよ!今度は友人も連れてこようかな!」

と満面の笑み(少なくとも私にはそう見えた)で語る彼の顔を見ていると、

きっと人間だったらここで嬉し涙を流しているんだろうなぁ、なんてしみじみと思った。

彼は虫人種だから涙腺はついていないのだろう、代わりに触角がカチカチと頻りに動いている。

故郷から遠く離れたこの星の子供たちに受け入れられたことが、彼にとってどんなに嬉しかったかは想像に難くはない。

容姿が醜い種族であると自分たちで思い込んでおり、どんな誹りを受けるかとビクビクしていたところで、

子供たちの大歓迎を受けたのだから、感極まるのも無理はない。なんだか私まで涙が出てきた。

泣いているのを不思議に思ったのか彼は「お、おや、どうされましたか」と慌ててこちらの心配をし始める。

「どこか痛みますか」と聞いてくるので、これは感動をしていて、人間はそういう時でも涙を流すことがある、と伝え、書類を返すと、

「あなたはとても良い方だ。どうもありがとう」と受け取り、颯爽と駆けて行った。

その日は一日、とても気分よく仕事が出来た。

 

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