【完結】地球の玄関口   作:ターキィ

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読み物:地球の中の銀河、銀河の中の地球

銀河人と地球人の関係は概ね良好と言えるだろう。とはいえ衝突やトラブルが無かったわけではない。

また地球文明の存在とその歴史が知れ渡り、銀河諸国に少なくない影響を与えた。

 

 

 

【ガウラ公館事件】

 

最も大きな衝突であり、だというのに帝国の動向に敏感な人間しか知らない事件である。

帝国では同性愛は死罪であるので、もし同性愛者が公館に入ってしまえば逮捕処刑を行わなくてはならない。

なので、同性愛者の立ち入りを禁止する旨を地球上のあらゆる言葉で書かれているのだが、それに目を付けたのがLGBT団体である。

大勢のデモ隊が公館に殺到し、警備員らも押し流して公館へと雪崩れ込んだ。

数十名が公館、つまり帝国の領土に足を踏み入れた。このままでは危険と判断した責任者は戦闘命令を下す。

職員らは決死の覚悟で銃を持ち、侵入した暴徒らと『戦闘』を開始。

暴徒たちは次々と『戦死』し、公館に入り込んだ人間は全て帰らぬ人となった。

帝国は日本政府に「武装集団の襲撃を受け、これを撃滅した」と事後報告を行ったという。

日本政府はこれを大きく取り扱いはしなかったために外交問題にはならなかったが、遺族らは抗議を続けているという。

一方、帝国はこれを悪びれもせずに、特に告知もなく公式サイトに掲載している。

 

 

【君主あらずは国にあらず】

 

ガウラ帝国の君主と君主制の崇拝は邂逅当時から話題になっていた。

特にフランスやアメリカ、共産主義国に対しては悪意や嫌悪を隠そうともしなかったという。

例えば、帝国のあらゆる発表では彼ら『威光無き国々』の写真や出来事などは一切排除されていて、まるで存在しないような扱いであった。

米国は一連の無礼な振る舞いに抗議を行ったが「では君主を連れて来なさい」と門前払いされたという。

各国では王党派の支持率が若干増えつつあり、特にフランスはレジティミスト、オルレアニスト、ボナパルティストが三勢力が鎬を削っている。

またオーストリア、ハンガリー、トルコ、エチオピアなどは帝国の支援もあって本格的に検討中だという。

この事と、後述の原爆投下の件が尾を引いており、アメリカ人はすっかり宇宙人嫌いになってしまった。

 

 

【昇る太陽】

 

開放政策というよりは無理矢理こじ開けられたようなものだが、社会の風通しは多少は良くなった。

まず宇宙人労働者らは過労を促す空気を破壊し、蔓延る不正を破壊し、そして既得権益を破壊した。

これは反社会的勢力ののさばる裏社会においても同様であり、宇宙人マフィアの存在も確認されている。

ある種の侵略とも言える行為ではあるが、長らく疲弊していた日本社会は再び活気を取り戻す事となる。

その分の痛みを伴う事となり、路頭に迷う者も多く出た。中には会社を乗っ取られるような日本人までいた(自業自得とはいえ)。

しかしながら以前よりも消費活動は増え、景気も良くなり、人口も僅かに増加しつつあるというので、宇宙人様様である。

『旭日景気』と一部で呼ばれているというが、全然流行っていない。

 

 

【流入する宇宙文化】

 

他国の文化を取り入れるのは日本人の特性とも言えるものであるが、宇宙国家相手でもこれは例外ではない。

一例として挙げられるのが、ガウラ帝国における祝日に春の到来を盛大に祝う日、日本で言うところの節分や立春とも言える日があり、日本の商売人がこれに目を付けた事である。

これは長い冬が終わり実りの季節がやって来るのでもう備蓄を開けてしまおう、というのが由来とされており、穀物を中心としたご馳走が食べられている。

日本人もそれにならって、ご飯はもちろん、蕎麦、麦、豆、粟、稗、黍、トウモロコシの料理とそのレシピ本がコンビニやスーパーで販売され始めた。

また、ガウラ帝国の料理もこれを機に注目されており、肉料理が多い事と粟が肉料理と相性が良い事が偶然にも重なり、ちょっとした流行となっているという。

 

 

【『カープ』の流行】

 

常日頃から割と娯楽に飢えている宇宙人らに流行りつつあるのが『カープ』である。

これは野球を意味する言葉で、観光客の多い広島から宇宙へ広まったためにこのような呼ばれ方をしている。

広島の野球チームの誕生を描いた漫画が輸出されてから徐々に広まっていったとされる。

特にプロスポーツなどの文化を持たない地域ほど熱狂し、球団も既にいくつか出来ているという。

地球の野球チームと対戦する日も近いだろう!

 

 

【星間戦争の頻発】

 

とある与党幹部の地元にて会談、締結が為された『飯塚条約』により、メギロメギアは多くの賠償艦を日英に譲渡する事になる。

これによる地球艦隊の大幅な増強は、中堅諸国に焦燥感を与えた。

強力な艦隊を持ち、しかも列強の庇護下にある地球は他の覇権を狙う国家たちにとっては脅威である。

彼らがいつ『覚醒』してもいいように、中堅諸国らは軍備の増強を急いだ。

軍拡の波は銀河中に広まり、各国の緊張を煽り、銀河は戦乱の時代へと突入した。

かつての大勢力であった『銀河同盟』と『旧支配者連合』はこの事態を憂慮しており、連日治安維持の為の協議を行っている。

 

 

【核への忌避感の払拭】

 

地球人の理想とは裏腹に、広島や長崎の出来事に宇宙人らは「我々が最初ではないならば」と感じたようだ。

厳密に言うならば、核分裂爆弾を前宇宙時代において実戦で使用した種族は全て先の時代に進む前に滅亡している。

その為地球は核の使用後も生き残った稀有な文明ということで注目を浴びていた。

各国はこぞって構造も単純で安価な核分裂爆弾の製造と実戦使用に取り掛かった。

この影響で、防護壁として有用なコンクリートの原料である石灰の需要が増大し価格が高騰した。

更に、銀河における戦災難民の数が急激に膨れ上がったとマウデン家市民保護庁が発表している。

 

“先んじて汚名を着てくれたアメリカ合衆国とトルーマン大統領に、我々は感謝せねばなるまい!”

                        ――とある新興国の軍事担当相

 

“かつて原子爆弾は縁起の悪い物であった。知られている中でこれを使った種族は全て滅んでいたからだ。それが歯止めとなっていた。しかし生き残りが見つかった今、そんなものを気にする種族はいない。残念ながら偏見は取り払われ、原爆を蔑視する者は消えた”

                        ――マウデン家市民保護庁長官

 

 

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