宇宙諸国から禁忌、というよりはあんまり褒められたモノではないと思われているものはいくつか存在する(無論どの国でも秘密裏に研究はされているだろうが)。
カニバリズム、次元跳躍、タイムマシン、麻薬、皮膚刺激のヤベーやつ、そして高度な遺伝子工学。
メギロメギアとの戦争の結果が全宇宙に広まったことで、思わぬ珍客が現れた。
彼らは移動可能な宇宙ステーションに乗りこの太陽系まで遥々やって来たのである。
名をハマル人といい、彼らの母星はメギロメギアに征服されたのだという。
そして、そのメギロメギアに勝利したこの地球(しつこいようだが、我々は何もしていない)のある太陽系に是非とも住みたいとの事であった。
太陽系の所有者、というのが特に決まってもいないため、ガウラ帝国が代表して、いいんじゃない?って感じで受け入れられることとなる。
今日はそのハマル人の博士が来ている。
「私はジャークナ博士じゃ」
彼らの見た目というのが全身が鉱物で出来ているかのようであり、岩石人間、とでも言うべきだろうか。
皮膚には宝石なんかも見受けられて部分的に美しい?容貌である。
「まずは戦勝おめでとう、と言っておきたいところじゃ」
まあ……素直に受け取っておこう。
「いい気味じゃ!あのクソッタレのカスのメギロメギアに一泡吹かせるとは!」
余程溜飲が下がったのか、朗らかな雰囲気である。
「あの忌々しい『痰』『腐ったゲロ』『絞り出された膿』まだあるが、まあともかく連中が嫌な目に遭えば我々は幸せじゃな!」
は、はあ……。そもそもなぜ侵略されたのだろうか。
「まあ、我々が異なる種族の動物を掛け合わせ、新しい種族を作ろうと研究を進めておったのじゃが」
なるほど、それでメギロメギアが怒ったわけだ。動物園ですらキレるのでこのような研究は以ての外であろう。
それで、研究はどれほど進んだのだろうか。
「まあ、機密と言えば機密じゃが……わ、わかった、教えよう!だから拒否スタンプを置いてくれ!」
ご厚意により教えてもらえることになった。
「全く、酷い入管じゃ……ゴホン、そうじゃな、ハッキリ言って卓越した、と言っても過言ではないじゃろう」
曰く、ある程度似通った種族のグループ、即ち有性生殖同士、無性生殖同士であれば交配を可能にする技術を得たのだという。
そんでそんで?
「まあどんな人生を歩むかまでは保証できんが、ある程度見た目の操作は可能じゃ。塩基配列の解析が終わっていればな」
して、それはどのようなプロセスで行われるのであろうか。
「雄に手を加える方法と雌に手を加える方法とあるが、基本的には……精子か卵子、に手を加えて、その……」
何かを言い淀んでいるが、どうしたのだろうか。
「そ、そのう、チョメチョメするのじゃ」
は?
「アレじゃよアレ!あの、こう、男と女がこう、するヤツじゃて!」
セックスの事だろうか。
「わっ、地球人に羞恥心は無いのかね!?」
仮にも博士が、ていうか彼は鉱物種族だし恥ずかしがることもないだろうに。
「そんな事はないじゃろう!我々とて……繁殖、そう繁殖はするからのう!」
とにかく、こういう技術があるというのは非常に興味深い事である。
「こんな事を聞くとは、さては異種族の想い人でもいるのかのう?」
…………。
「わ、わかった!すまんかった!拒否スタンプを持つな!……まあ、いずれにしろ、これらの技術は地球にも知れ渡るじゃろうな」
それから数日後に、ハマル人との条約、デブレツェン条約が結ばれた。
正式名称は『ハマル人と日本国とイギリスとハンガリー王国とガウラ帝国の間の相互協力及び安全保障並びに地球三国におけるハマル人の地位に関するデブレツェン条約』である。
この条約は要約すると、ハマル人が地球に遊びに来るし、技術面でも全面協力する、という地球にとっても相当に美味しい取り決めであった。
彼らは征服されて以来はする事も無く研究に没頭して宇宙ステーションに引きこもっていたために、久方ぶりに惑星の大地を踏んだようだ。
およそ50万人ものハマル人、全人口の9割が地球に降り立ち、逆にハマル人のステーションが空っぽになっているという話である。
戦争だのなんだのには常にネガティブなイメージや悪影響が付きまとうものである。
しかしこういう良い出来事が起こるというのはまさしく思わぬ福音であったと言えるだろう。