転生成分なくしたので残っていたら報告お願いします。
パパ成分が久々に復活です。
ネーミングには突っ込まないでください。
太陽の光が雲で覆われて数日、その街にはどんよりとした空気が広がっていた。だが、それは天候のせいだけではなく、他にも原因があった。
街の隔離されたある区画、そこには死が蔓延していた。いつからか人々に広がったはやり病、町医者が必死に治療しても、治すことは出来ず死ぬしかないという現象は街に恐怖をもたらし、人々は怯えて家に引きこもる。その症状が出たものは連れてこられて毛布を渡されベッドの上で苦しみながら死んでいく。神の罰か悪魔の罪か、そんなことを考えながら絶望に沈んでいく人々の前にある旅の一行が訪れる。
眼鏡をかけ如何にも知識人の様ないで立ちをした男は、病気の人々を見て薬草を掛け合わせ瞬く間に薬を作る。それを渡された最初の病人は、全く期待はしていなかったが腹の足しにはなるだろうと思いそれを飲めば、数日の内に症状はやわらぎ、数週間後には完治することに驚愕する。それを見て、他の病人たちも口々に自分にも薬を要求する。
男は一緒に旅をしていた二人にも協力させ、薬を作っていく。一人の少女は一生懸命に働き、もう一人の男は不機嫌そうにそれを手伝う。
こうして旅の一行は街を救い、また旅を続ける。街の人々は彼らに感謝し、祭りを始める。
・・・しかし、人の心は移ろいやすく、正しき見識を持つものは少ない。自分の常識だけで考え、分からぬものは排除し、愚かなことをする。その感謝もいつの間にか疑惑と恐れに変わり、迫害の方向へ進む。彼らは一体なんであったのか、いったい自分たちに何をしたのか。医者でさえ匙を投げ、神父の祈りも届かぬ病。それをいともたやすく治した、これを奇跡と呼ばず何と呼ぶ。
けれど、人が奇跡を起こせるはずもなし。
「・・・・・・・・・ムスッ」
「お兄ちゃん、いつまで機嫌悪いの?それに何に怒っているの?あの人たちはパパのおかげで助かったのよ、それでいいじゃない」
「‥‥‥そうではあるけどさ」
「変なお兄ちゃん」
馬車に揺られながら俺たちは移動していた。運転はイザークに任せて、キャロルと俺は貨物部に乗っかていたのだが、俺のおかしな態度にキャロルは不思議がる。確かにキャロルには俺が何に怒っているか分からないだろう。その方がいい、俺の怒りの理由など知ってほしくない。
前の街の人々もそのさらに前の街の人々と一緒だ。最初は感謝しておきながら、段々と俺たちを疑い始め最後には俺たちを悪魔や異端として敵視する、いつものお決まりのパターンだ。そうなる前に、キャロルにそんなところを見せたくないから用が済んだら街を出る。
まあ、確かに素性も定かでない流れの者がよくわからん方法で病を治す異様さを感じることもあるかもしれない。そこを怖がるのは人間としては普通だ。
けれどもだ。俺は外を眺めているキャロルの髪を撫でる。気持ちよさそうにしているこの子を見て思う、この子のどこに恐怖を感じる要因があるのか、と。イザークと俺は怪しくて胡散臭いかもしれない、そこは認めよう。しかし、この年端もいかぬ少女は人々を救うために必死になった、そこをあの街の住人は見ていたはずだ。それで何も感じなかったというのか。
「‥‥‥こんなにキャロルは可愛いのに‥‥‥」
「フフフフフ、うん、何か言った?」
何でもないと返しながら、手はキャロルの上に置きながらイザークの方を見る。馬を操っていて顔を見ることは出来ないが、まあ、イザークのことだから笑ってでもいるんだろう。
結局のところ、この状況はイザークが人々を助けようとしているから生まれているのだ。あの夜以降、何度も何度もイザークには忠告したが結果はこうして人助けをしている。これが善行だというのは分かるし、イザークの理想の為に譲れないこともわかる。キャロルも喜んでいて素晴らしい方向に成長している、それは俺も本当に嬉しい。
だが、これは危険な状況だ。俺としては今すぐこんな危ないことはやめて、どっかの山にでも籠ってしまいたいと思うがこれは俺が大切なもの以外どうでもいいからだ。
結局のところ、部外者である俺には口を出す権利などないし、イザークの理想も間違ってなどいない。こいつの人を助けたいという思いはとても純粋できれいな行動だ。夢をかなえる行動が出来る、それが大人だ。
ま、なんにせよ、俺がイザークとキャロルを守ればいい話だ。たかが武装した人間の百や千はおちゃのこさいさい、錬金術師にだって負けはしない。
「俺が、俺が守ってやればいい、それだけの話だ‥‥‥」
「へえ、聞いてもいいかい、君は何を守るのか」
突然、男の声がした。無意識に声の聞こえた方向に顔が向けられる。そいつは丁度、俺の反対方向、真正面の荷台のふちで、馬車の揺れを関せずに、いつの間にか立っていた。
全身白づくめ、帽子すら白い長身の男、顔は帽子でよく見えないが美形であることは分かる。そして、何よりも底知れぬ力を感じる。
「ん、これは‥‥‥そうか、そういうことか!ようやく再会できたということか、僕は。それにしても、気付けないはずだ、どうしたんだい、その髪の色は?、なぜ取らなかったんだい、連絡を」
目の前の男は何やら親し気に話しかけてくるが、俺たちは初対面のはずだ。こんな奴、一度会ったら忘れるはずがない。そんな風に怪しんでいる俺をみて、男は一人合点がいったような顔をする。
「どうやら飛んでいるようだね、記憶が。あまりのエネルギー量で焼き切れたのかな、脳が。それぐらいのポテンシャルは持っていたはずだ、君に埋め込んだ聖遺物は」
目の前の男が何を言っているかは分からない。しかし、その言葉の中には決して聞き逃せない単語があった。俺がずっと探し求めていたもの。
「記憶だと?まさか、お前は俺のことを知っているのか?」
そう、こいつは間違いなくかつての、記憶をなくす前の俺を知っている。こいつから俺のことを聞き出せば、ようやく俺が誰であるのか、どうやって生きてきたのか、普通の人とどうして違うのかが分かる。何より、ずっと頭の隅に引っ掛かる何よりも大切なものが何かようやくわかる。
「そうさ、君が誰であるのか知っているのさ、僕は。自己紹介しよう、アダム・ヴァイスハウプト、それが僕の名さ。肩書はパヴァリア光明結社の統制局長。要するに、親玉というわけさ」
パヴァリア光明結社、あのしつこい錬金術師たちの頭。道理で胡散臭いわけだ。
「私は以前から勧誘は受けてきたがずっと断ってきました。それが癇に障ったのかもしれません。しかし、それでわざわざ結社のトップ、錬金術師の頂点が来たというのですか?たかだか私程度を捕まえるために?」
いつの間にか、馬車を止めて荷台の方まできたイザークが尋ねる。そうだ、パヴァリアの連中は精鋭ぞろいなことはいつも戦って分かる。そいつらが追い返されるのだ、不審に思っても仕方がないがそれでトップが来るとはずいぶんと暇な組織だ。
「謙遜することはないよ、イザーク・マールス・ディーンハイム。そこそこの有名人だよ、君は。記されている、薬草調合に秀でていて、確かな実力をもつと、結社の報告書には。まあ、僕としてはどうでもいいんだ、君は。君の近くに文字どうり腕っぷしのたつ錬金術師がいると聞いてね」
視線が俺に向けられる。俺はキャロルとイザークを背にするように、二人を守るためにじりじりと移動する。
「確かにわずかな期待はあったさ。けど、所詮はありえないと思っていた。けれどッ!こうして君が目の前にいる、僕のッ!」
瞬間、奴の体が吹き飛ぶ。理由は簡単、俺が殴ったからだ。奴から攻撃の気が感じられた。こいつからは並外れた力を感じる、それは、俺は大丈夫でもイザークやキャロルは消し飛ぶ、そう予想できるほどだ。こいつはここで沈めておかなきゃならない。
「イザークッ!馬車を走らせろ、全速力でッ!」
「君はッ!」
「後から追いつく、追いつかなかったらもっと遠くへ逃げろ!」
見ると、アダムはもうすでに立ち上がって、こちらへ走ってきている。俺の攻撃は全く効いていないように感じられるほどに、超スピードで。俺の声の激しさにイザークも真剣になり、馬に向けて思いっきり鞭をふるう。
「待って、パパッ!お兄ちゃんを置いていけないッ!」
キャロルの悲痛な声が聞こえる。俺を心配してくれる声だ。こりゃ、必ず追いつかないといけないな。
「キャロル。俺もあとで追いつくから今は逃げろッ!夜中のトイレぐらい一人で行けよッ!」
その言葉を言いきって、俺も走ってくるアダムに向かって飛ぶ。後ろから抗議の声が聞こえるがそれも徐々に聞こえなくなっていく。精神を切り替える、闘うための精神に。前方で、アダムの獰猛に笑う顔が見えた。
「ひどいじゃないか、いきなり殴りかかるとは」
「最初に拳を掲げたのはお前だろ。ここら一帯を吹き飛ばすつもりか」
拳を何度も何度も振るう。その威力は岩を砕いて人間を殺すのに十分な威力。こんな力を発揮したことはいつもの錬金術師たちにはないし、これまでの長い生でも数えるほどしかなかった。
しかし、それをこの男は防いでいる。しかも、ただその肉体で防いでいるのではない。さっきまでその頭にあった、なにやら奇妙な模様や文字が浮かび上がった帽子で防いでいる。さっきから何度も殴っても全く壊れることがない。いったいどんな帽子なんだ?
「最近錬金術師たちに作らせたものだよ、これは。聖遺物の欠片で錬金した糸に、いくつかの術式を織り込んである。ちょっとやそっとじゃ壊れない、それにかっこいいだろう?」
「人の心を読むなッ!それに、そのわけのわからん模様は、スゲー不気味だぞッ!」
「‥‥‥どうやらまだ改良させられそうだね、これはッ!」
アダムの投擲した帽子が地面を引き裂きながらこちらへ向かってくる。心なしか自分のファッションセンスがけなされたことに対する怒りがこもっている気がするのは気のせいだろうか。
帽子が俺を引き裂こうとした瞬間、紙一重でかわしそのままアダムへ飛ぼうとする。それをみてアダムはうっすらと笑い右手の中指を折る。その動作が視界に入った瞬間、俺の背筋に寒気が走る。
「ぐぁ!」
「浅かったか。まあ、一杯食わせられたんだ、君に。よしとするさ」
何をされた?切り裂かれたんだ。アダムが指でくるくると帽子を遊んでいる、そうか遠隔操作で帽子を引き寄せたのか。こんな単純な手に引っ掛かってしまうとは。
「なんて無様なんだ」
「まったくさ」
近づいてきたアダムはその足で思いっきり俺の頭を踏みつける。
「がぁっ!」
「引っ掛からなかったよ、以前の君なら。強かった、あの時の君は、たかが人間風情が。分からなかった、何故なのか。そして僕は持った、その強さに興味を。だから生かした。さまよい始めて記憶を失ったのは予想外だったけど、僕は楽しみに待っていた、千年の月日の中でどれほどの強さを持つか、その強さはどこから来るか。それなのにッ!」
踏みつけが強くなる。頭が地面に埋まり始め、何やら熱いものを感じる。きっと、頭が割れて血が出てきたのだろう。
「千年の中で一歩も進化せずにむしろ退化するなんて!ああ、失望させてくれるよ、本当に!僕を更なる高みへ連れて行ってくれると思ったのに、君の強さが!まさか、糧にすらならないとは!」
なんか叫んでいる気がするが、こちとら頭を勝ち割られてるんだ。あまりの痛みで聞くことに集中できない。それでもなんとなく俺に怒っていることが分かる。けれど、記憶がない俺にはなんで怒っているかがわからない。こいつがさっさと俺のことを教えてくれれば何か思い出せるのに、それをしようとしない。そう思うとなんだかムカついてきた。
「なにぺっちゃくっちゃしゃべってんだ、何いつまで人の頭を地面に埋め込んでんだテメーはよぉっ!」
無理矢理体を引き起こし、その勢いでアダムを吹き飛ばす。それを何事もなかったように着地するアダムをみて、俺は確信する。このままでは勝てないと。奴は、アダムはそれほどまでに強いと。
背中の傷から血が流れすぎたのか体から力が抜けていく。視界も滲んできた。頭の中をこれまでの記憶がよみがえる。走馬灯か?縁起でもない。
自分が誰か分からず森の中をさまよっていたこと。ある時であった皇がきれいで勢いで告白して、断られたこと。一緒になって数年で、彼女が言ってしまったこと。イザークとであったこと。キャロルと出会ったこと。
『なあ、キャロル。さっき俺が寝ていたところだけどさ、あそこ春になったらきれいな花がたくさん咲くと思うんだよ。そしたら、一緒に行ってみないか。イザークも一緒でさ、あそこでランチでも食べようか』
ああ、こんなことも約束したな。きっと、キャロルはまだ覚えているだろう。約束破ったら、怒るかな、怒るだろうな。なら、こんなとこで死ぬわけにはいかないな。
体中の魔力を総動員させ、錬金術を発動させる。難しい術式ではない、基礎中の基礎、
「
「当たらずとも遠からずだ。これしかお前に有効な手がないんでな」
こんな無理やりの錬金術、俺もただでは済まない。けど、こいつをぶっ飛ばして生き延びるのはこれしかない。絶対に生き延びて、キャロルとの約束を果たすために。
「さあ、準備はいいか、アダム。これが俺の最期の」
「つくづく失望させてくれるよ、君は」
俺の言葉をアダムが遮る。その顔には改めて深い失望が浮かんでいる。
「敵うわけないだろう、錬金術で君が、僕に、そんな無理矢理のもので。行き掛けの駄賃に見せてあげよう、僕の錬金術を」
アダムが手を掲げる。そこに突風が吹き荒れる、あまりにも膨大な魔力のためだ。風が止んだとき、そこには太陽があった。
「黄金錬成。可能とする、錬金術の由来、金を作ることを。まあ、ようやく可能となる、僕の魔力があって初めて」
勝てない。あの熱に、あの光に。いったい太陽に誰が勝てるというだろうか。それはきっと神だけだろう。それが分かる、分かってしまった、分かりたくないのに。
「さあ、教えてくれ。君の命の価値を!」
俺一人の命を消し飛ばすために太陽が向かってくる。水の錬金術を発動させても片っ端から蒸発していく。こうなれば小細工は無しだ。さっきの暴走の発動準備をする、少しでも太陽を吹き飛ばすために。
「こんなとこで死んで、たまるかぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」
「へえ、まだ生きてるとわね。変わらないな、しぶといところは」
きっとそれは一つの奇跡。黄金錬成の理論がまだ完璧ではなかったか、アダムの適当さが黄金錬成を完全に発動させなかったか、対抗して発動した暴走が少しはエネルギーをかき消したか。
しかし、それは生きていると言っていいのだろうか。全身の皮膚が炭化したその姿を誰が人間だと分かるのか。辛うじて息をしているだけのその姿を。
服が焼けて全裸になったが、まったく恥じることなくアダムは話を続ける。完璧な美を誇る体に一切の欠点はないのだ。
「さて、戦いも終わったがどうしようか。そうだ、話をしよう、君の連れの話を」
アダムは反応を期待して話をするのではない。これは単なる独り言に近い。
「イザークとその娘はどうなるんだろうね。まあ、きっと殺されるんだろう。少々有名になり過ぎてしまったからね、彼らたちは。聞いている、教会の連中が彼らを捕まえようとしていると。少し勿体ない気もするが、まあいい。いくらでもいる、彼らの代わりは」
アダムの話に反応してか炭と化した指がかすかに動く。しかし、それに気づかず、話を続ける。
「しかし、どう説明しようか、彼女には。どう思う、君は。いや、答えなくていい。彼女を手放す気はないよ、僕は。優秀、そう、あまりにも優秀さ、彼女は。これからも尽くしてくれるだろう、パヴァリア光明結社の発展に。」
「それじゃあ、そろそろ失礼するよ」
それは、アダムとしては気まぐれの最期の言葉のつもりであった。やがて死ぬ彼への最大の誉め言葉。
「僕を除けば、最高の錬金術師であるよ、君の娘、サンジェルマンは」
「・・・・・・・・・ルマン」
「うん?」
かすかに聞こえた言葉。空耳かと思ってアダムは立ち去ろうとする。
「・・・・・・・・・ジェルマン」
だがそれは決して空耳ではなかった。確かに炭と化した彼から聞こえてくる。
「サンジェルマン!」
閃光が発せられる。炭が崩れ去り、その下から新しいものが現れる。
「サンジェルマン!サンジェルマン!サンジェルマン!サンジェルマン!サンジェルマン!サンジェルマン!サンジェルマン!サンジェルマン!サンジェルマン!サンジェルマン!サンジェルマン!サンジェルマン!サンジェルマン!サンジェルマン!サンジェルマン!サンジェルマン!サンジェルマン!サンジェルマン!」
それを見てアダムは笑う。ようやく自分が望んだものが出てきたことに。あの時の成果が出たことに。
「それだよ、僕が望んだものは!あの時埋め込んだ完全聖遺物、『ゼウスの雷』!かつて神が、奴らが振るいし力。さあ、示してくれ、神へと至る道を!」
雷撃が走る。それは雷が人間になった姿。人間からの進化。けど、男には関係ない。アダムの言葉すら耳に入らない。ただ、自分の最も大切な者、娘の名前を叫ぶのみ。
「サンジェルマァァァァァァァァァンッ!!!」
主人公の姿は暴走響を原型に白く光って電撃が走っている感じです。
XDイベントいいですね。ここらへんの話もやりたいです。