サンジェルマンのパパになりまして   作:アラバス体系

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まだ、パヴァリア光明結社も黎明期ですからあまり研究も進んでないんじゃないかと思い、そのようにしました。つまり、まだ黄金錬成もないし、ファウストローブその他諸々もないよという話。


パパ(バカ)vs局長(無能)

 「いいでしょう、あなたからの誘いを受けるわ、アダム・ヴァイスハウプト。」

 「歓迎するよ、サンジェルマン。ともに目指そうじゃないか、人類の悲願である理想の世界、バラルの呪詛なき世界を。」

一室で、二人の男女が向かい合っている。だが、その光景は異常であった、何しろ完璧な肉体美を持つ男、アダムは風呂、表面に泡の浮いた後世でジャグジーと呼ばれる風呂に入っている。局部こそ隠れているがいわゆる全裸であり、それに対して女、サンジェルマンは一切の反応を示していない。おそらく、これが日常なのだろう。

 

 

 

 

 サンジェルマンが人を救う術を探すために苦渋の決断で父親から離れて学園に入ってから二年が経過し、その年月は学院への幻滅を覚えるのにはあまりに長い時間だった。確かに学ぶものはいくつかはあったがほとんどの物は既に家で学んだことであり、新しく学んだものも父親と学べばたやすく出来そうなものしかなかった。だがそれは良い、異なる者と多くの議論を交わすことこそが真に知識を得る方法だと知っていたからだ。

 

 「奴隷の娘風情が調子に乗りやがって。ここは貴様がいていいところではないんだぞ、恥を知れ。」

 

 「いやぁ、見事な意見だったサンジェルマン。どうかね、私のもとへ来ないかね。ぜひ君と例のプラテアスの証言について話し合いたい。・・・まさか、ダンボッドのところへ行くのではなかろうね。それはやめておいておいたほうがいい。奴は何もわかっていない、ただの愚か者だ。私の数学的理論実現方を否定するほどだ、なにも得られんぞ。」

 

 サンジェルマンが失望したのは学院でのくだらない対立であった。つまらない人間関係から正常な判断が出来なくなり、己の身分をかさに着て人を見下す。母の遺言をかなえるために人を救う術を知りに来たのに、覚えたことは人に取り入る方法や派閥争いをやりすごす方法、下らぬ言葉遊びの実用性に欠けた思想、そしていかに学院といえども純粋に知識を求める人は少なく、結局は皆権力争いに腐心しているということなのだ、これでは最愛の父親との時間の犠牲に釣り合っていない。学院のそんな事実に気付いた時、サンジェルマンははらわたが煮えくり返るほどの怒りを覚え、学院の総元まで赴いた。

 

 「私、サンジェルマンは学院の愚かさに失望しました。誰も彼もが、世界の行く末など考えずただ頭脳を権力の椅子取りゲームにしか使っておらず腐りきっている。つきましては今日を持ちまして退学させていただきます。」

 

 しかし、そのような現実にはっきりと気付くまでサンジェルマンはわずかな幻想を捨てきれぬために一切手を抜くことが出来ず、己の優秀さを既にもう知らしめてしまった。一を聞いて十を知り、長年の問題に答えを出し、上位の知識人と初期の段階で議論を交わす、これで彼女が賢いということが分からないほど学院の者たちがバカではなかったことが彼女の不幸だった。

 

 無論、それに嫉妬し邪魔するものや彼女の父親が元奴隷と結婚したことをもって馬鹿にするものもいたが、なぜかそういう物たちは彼女に悪態や妨害を行った次の日には病院のベッドで寝るはめになった。ともあれ、学院は優秀な彼女を逃すことは学園の評判に傷つくとして、父親への手紙は優先的に届けることや学費の免除を理由に留まるように懇願し、彼女も無理を言って父親に頼んだ負い目、なにより父親からの期待のことを考えてしまったがために学院に残っていた。

 

 そんなサンジェルマンのもとに一人の男がやってきた。人を超越したような美形、贅肉も無駄な筋肉もない完璧な肉体、見た人すべてが美しいと評価するほどの美。まあ、サンジェルマンは毛ほども惹かれず、父親の体の方が美しいと無駄に張り合っていたのだが、それは誰も知らない。

 彼はアダム・ヴァイスハウプトと名乗り、サンジェルマンに人類救済に興味はないかと聞いてきた。どこからどう見ても怪しい勧誘であり、詐欺師か密教かと疑うところではあるが、サンジェルマンはその言に興味を持ち話を聞いた。

 

 「この世には、人同士の醜く下らない争いが満ちている。金・身分・しがらみ・嘘・嫉妬、いくらでもその理由は挙げられるが、それは根本的な理由ではない。人が争わなければならない原因、それはバラルの呪詛のせいだ。バラルの呪詛とはかつてこの世界を統べていた者たちが残した呪いだが、それを消し去ることで人の争いはなくなり、支配するものもされるものもいない完全なる平和が訪れる。そしてバラルの呪詛が残されたところ、それは・・・」

 

アダムは指を空に向けたのでつられて上をみるとそこには夜空の中、いかなる星々よりも輝く星が浮かんでいる。

 

「・・・・月だ!!!」

 

 そういって、アダムはサンジェルマンの顔を見る。いつも空に浮かんでいる身近な月が人々を苦しめる原因だと言い切ったのだ、さぞや驚くだろうと期待してみると、そこには真顔の、なんの感情も浮かんでいない能面があった。

 

「・・・・すまない、あなたは何を言っているのだ?」

 

 アダムの話をまるっきり信じていなかった。だが考えてほしい。彼女はつい先日まで学院をやめ、家に帰ろうとしていたのにどうしてもと引き留められ、しょうがなく残ったがそれで問題が解決するわけではなく、どうしようもない感情を抱えていた。ハッキリ言って、家に帰って父親に会いたいとイラついていたのだ。そこに変な男が現れて、暇つぶしにはなるかと話を聞いてみればわけのわからん話を聞かされ、困惑していた。話の途中から近くの時計をチラチラ見たり、指先でテーブルを叩いたりしたが、そこは人の話を聞かないアダム、全く気付いていなかった。

 

「・・・ああ、すまない。そうだね、こんなことを言われても普通は信じられない。けど、世の中にはそんな信じられない物が隠されているんだよ、こんな風にね!」

 

 アダムの手から魔法陣が広がり火が上る。サンジェルマンはアダムに許可を取って手をかざしてみるがその熱さは本物だ。注意深く手を観察するがイカサマの様子もない、正真正銘の魔法のようであった。

 

 「これは錬金術という物でね。黄金を創る技術の話を聞いたことがあるだろう。君の学院側では全く成功していないようだが僕たちパヴァリア光明結社では実現していてね。これはその錬金術の応用であり他にも水を出すとかいろんな研究をしている。」

 

 「・・・たしかにあなたの話は聞く価値があるようね。それで、あなたは私に何の用なの?まさか、自慢しに来ただけということはないだろう?」

 

 「率直に言おう。パヴァリア光明結社に入らないかね?君には才能がある。君が来れば、僕たちは君に錬金術を教えられるし、君が来れば錬金術の研究も進む。互いに利がある。ここのくだらない現状にも飽き飽きしたところだろう?君の才能はこんなところで腐らせるものではないよ。」

 

 サンジェルマンは考える。確かに錬金術には興味がある。それは父も教えてくれなかった、知らなかったものでありサンジェルマンにとって初めての体験であった。この学院には無理を言って入れてもらったのに、それで何も学べなかったというのはひどすぎる話だ、父には言うことが出来ない。

 しかし、この錬金術というのは魅力的だ。なにせ、あの博識の父でさえ知らなかったのだ、今のこの世のあらゆる知識よりも価値が高い。先ほどのバラルの呪詛ももしあるとするなら、それを解呪することで争いはなくなり、人を助ける最大の手段となり母の遺言のような優しい人になったと言えるのではないだろうか。それに、この錬金術を極めて父に報告すれば、よくやったとほめてくれるのではないだろうか!

 

 「あなたの話を詳しく聞きたい。そのパヴァリア光明結社に連れて行ってもらおうか。」

 

 「いいとも、こちらとしても願ったりかなったりだ。」

 

こうして、サンジェルマンはパヴァリア光明結社に入ることを決めた。その理由が人を救うことのほかに、父に褒めてもらうという年頃の娘にしてはいささかクレイジーな理由も入っていたことはアダムもまだ知らない。しかし、後にアダムはサンジェルマンへの考えを改める。こいつ、もしかして父親に褒めてもらうためだけにこの組織に入って錬金術を極めたのか?と。

 

 

ここまでがサンジェルマンがパヴァリア光明結社と接触するまでの話であり、冒頭で結社に入ることをアダムに伝えた。秘密基地までついてきた後、錬金術の研究室を見て回り時には参加した。そこで錬金術が本当にあることを確信して、研究を始めた。最初はまるっきりの素人であったが、自身の学才を最大限に発揮し既に中級レベルまで達した。最高位にたどり着くのは時間の問題だろうと噂されたが、さすがにまだ組織に参加していないものにそうなられるのはまずいとサンジェルマンに参加を求め、ようやく手続きを済ませて結社に属すことになった。

 

 しかし、ここで一つの問題が発生する。サンジェルマンは自身の始めたことを早く父に報告したくて手紙に書いてしまった。だが、パヴァリア光明結社とは秘密結社であるため、ごく一部の者を除いて知られていないし、知ってもいかにも怪しい組織にしか見えない。そのことを一刻も早くほめてもらいたかったサンジェルマンは失念していた。

 

 

 

 

 

 「ふあ~退屈だ。誰も来るはずがねえのにこんな仕事をしなきゃならんとは。早く交代の時間が来ないもんかねぇ。」

 「仕方ねえ、万が一のためだ。サボっていると局長に消し飛ばされるぞ。そういや、局長が連れてきたあの女はどうよ。噂では、既に自分の研究室を持っているとか。」

 「まじかよ。そんなことされちゃ、ここで何年も研究している俺たちの立場がねえや。早く、研究に戻って少しでも進めねえとな。・・・・あの女、どこがいい?俺は胸だな。」

 

 入口近くの門番たちは暇つぶしのためくだらない話を続けている。仕事に集中していないともいえるが仕方あるまい、この場所を知る部外者はおらず用心のために門番がいるが、実質何時間も突っ立ってるだけだ。無駄話でもしなくてはこの退屈は紛らわすことは出来ない。

 

 「ッ、そこで止まれ!何者だ!!」

 

 しかし、今日は違う。滅多に、というより完全に表れないはずの訪問者が来た。その事実に対して、門番たちは気持ちを入れ替え戦闘態勢に入る。錬金術の術式こそ発動していないが、訪問者が一歩でも近づけばすぐに光弾が飛び相手を消し去るだろう。彼らは常人よりはるかに強い。

 

 「・・・・・・・・・邪魔だぁ!!!」

 

 そんな彼らが、目にもとまらぬ速度で払われた腕の一振りで吹き飛ばされ壁に衝突し気を失う。そんな異常に気付いた警備兵たちが出てきて、侵入者に自らの錬金術を食らわせる。それを侵入者はわずかな間を潜り抜けることですべて避わし、自身の拳を近くにいた兵の腹に食らわせ、他の兵士ごと吹き飛ばす。

 

 「あれを全て避けるのか!?先ほどから攻撃はすべて力業だし、奴は化け物か!?そもそも、どこからの刺客だ、この場所は誰も知らないはず!!」

 

 警備兵は侵入者の強さに慄き正体が分からないために混乱する。足の速い何人かに奥の実力者を連れてくるように行かせて、残った者たちはせめて時間稼ぎをしようとするが拳や蹴りを食らい地面や壁にめり込んだり、周りの者を巻き込みながら吹き飛ぶ。せめて、正体が分かればと思った瞬間、侵入者は自らの素性を叫び始めた。

 

「サンジェルマンは、私の娘はどこだ!?私の可愛い娘が、貴様らのような、怪しげで、不気味で、胡散臭い組織に連れて行かれたことは分かっているんだ!!サンジェルマン!!!お父さんが助けに来たぞ!!!!」

 

 薄れゆく意識の中で、警備兵たちはあ、あの娘の関係者か・・・となぜか納得のいくような気持ちであった。

 

 

 「なんだか騒がしいね。何かあったのかな?」

 

 サンジェルマンを自室に帰してそのまま風呂でワインを飲んでくつろいでいたアダムはようやく基地内が騒がしいことに気付いた。錬金術師たちは実験を行っているが時には失敗して大惨事になることがある。比較的多いのがボヤ騒ぎだが他にも落雷や洪水なども起こりパニックになることがあったため、最初はそれであろうと楽観視していた。しかし、それにしてはあまりにも長く、何かあったかと思った時、連絡係がそれを知らせに来た。

 

 「アダム・ヴァイスハウプト局長に申し上げます!!」

 

 「ああ、ようやく来たか。今度は何だい、火か氷、いやキメラかな。」

 

 「侵入者です!!既に、この基地内の戦闘力の半数が行動不能!しかし、侵入者はいまだ健在!!なおも暴れまわっております。」

 

 「・・・・なんだ侵入者か。まだ、制圧できないとは、よっぽどの錬金術師か、それともほかの異端技術かな?」

 

 「素手です!奴は何も持たずにただ素手で・・・・ぎゃッ!!!」

 

 報告をしていた連絡員に人が突っ込みそのまま吹き飛ぶ。その突っ込んできた人になんとなく見覚えがあり、実際のところ現在のパヴァリア光明結社の上位の錬金術師だったのだが、アダムは気にも留めず、すぐに興味を失い、実行犯のいる方向を見る。

 そこには、一人の男が立っていた。身にまとっている服に焦げがついてはいるがそれほど損傷していない、おそらくここまで来るのに攻撃を全く食らわなかったのだろうことをアダムは見抜いた。

 

 「ようこそ、パヴァリア光明結社へ!さあ、君の目的は何かな、研究成果かそれとも錬金術師の討伐か!」

 

 「娘だ。裸ということはお前がアダムだな。」

 

 裸ということで人物を特定されるのはあんまりといえばあんまりだが別にアダムは気にしていない、彼は自身の体が完璧だという自負があり人目にさらしても何の恥も感じない。

 

 「娘?・・・もしかして、サンジェルマンのことかな?彼女はいつもいつも君の話をしてきてね、どんなに君が博識か、優しいか、素晴らしいか。いささかうんざりだったよ。でも、僕は彼女を許した、優秀だからね。それで、僕の質問に答えてくれないか。君は一体何をしに来たんだい?まさか、娘に会いに来ただけではないだろう?

 

風呂から立ち上がったため、その腰のダインスレイフが視界に入り、さらに男を荒立たせる。これを自分の娘が見てしまったという事実に。

 

 「なら言ってやろう。俺は娘を連れ帰りに来た、こんな怪しげな組織においておけない。何より・・・貴様のような変態の全裸を娘が、私の可愛い娘が見てしまった!!断じて許しておくわけにはいかない!!!」

 

 「悪いが彼女を手放すわけにはいかない。パヴァリア光明結社の発展の為に、この僕の目的の為に!!」

 

 戦いの火ぶたが切られ、男はアダムに一瞬で詰め寄り殴りかかる。音速を超え当たれば骨と肉を砕き絶命させるであろうその拳をアダムは軽々と受け止めて笑う。拳を受け止められた男は驚愕の表情を浮かべる、いままで、この拳を止められたのはかつて鍛えられた山の武芸者たちにのみ、それもまだ山にいたころの威力であり今の自分の拳はそれよりも上がっているはずだ。それをこのアダムという男は微笑みを浮かべながら受け止めて居る。さらに力を込めるがそれでもわずかに後退した程度。

 

 (押しても全く動かねえ。山、は動かしたことがあるがそれよりもはるかに重く感じる。)

 

 アダムの実力が真なるもの、今まで戦った者の中で最強であると認識する。

 

 (なんだこいつの馬鹿力は!?さっきから足を踏ん張っているが少しでも力を抜くと吹き飛ばされそうだ。本当に人間か!?)

 

 一方で、アダムも男の力に内心舌を巻いていた。アダム・ヴァイストハウプトはある事情から自身のリソースを戦いとは別のところに割いており、一概には本気を出しているとは言い難い。しかしそれでも、あまり余るほどの力を有しており、人間程度を相手にするにはその力すらほとんど使わない。だが今はどうだ?膨大な魔力の大部分を肉体強化に割いており、それでもわずかに押し込まれる。

 

 (ありえない、この僕が下等な人間にここまで魔力を使わないといけないとは!この男はただの人間ではないのか!?)

 

 「人間にしては凄いじゃないか。いったいどんな技術をつかっているのか、ぜひ教えてほしいものだ。どうかな、君も娘と一緒に我が組織に入ってみる気はないかい?」

 

 内心の焦りを隠しながら、余裕がまだあるかのようにスカウトの言葉を吐く。顔にはうっすらと汗が浮かび、足は少し震えているが、それは拳を止められ驚愕の感情が生まれ少しでも力をこめようと意識を割いている男は気付かず、アダムは自身よりはるかに強大であると受け止める。

 

 「馬鹿を抜かせ!誰が、ボスが全裸のようなヘンテコリンの組織になんか入るか!!どう考えてもろくでないことを企んでいるとわかる!!俺はそんなことに興味はねえ!!そして、俺の娘はそんなとこに居させやしない!俺は託されたんだ、アルレウムにサンジェルマンのことを!!!」

 

 そういいながら空いている方の手を握り相手に向かって振りぬく。それすらも手で払われるが、それを合図に拳の嵐を降らせ始める。顔以外にも、腹を、肩を、腕を狙い、時には足を使った攻撃を加える。アダムはそれを、時によけ、時に払い、時に受け止め一度も食らわない。同時にアダムは防御することに必死で攻撃も出来なかったのだが、それはアダムの余裕にしか見えなかった。

 

 「それじゃ仕方がない、君はここで死ぬしかないね。安心したまえ、君が死んだ後もサンジェルマンのことは僕が面倒をみよう、彼女を立派な錬金術師にしてあげるよ。」

 「そして!あの世で見ていろ!君の言うヘンテコリンのボスが治める組織で!!君の娘がこの世界を開放するその偉業を!!!!」

 アダムは、男の拳を再度つかむとそのまま背負い投げで投げ飛ばす。男は地面に叩き付けられるや否や、すぐに体勢を立て直し、アダムに顔を向ける。

 

 「遅いんだよぉ!!」「グォ!!!」

 

 だが、すぐさまアダムの蹴りを顔面にくらいまたもや吹き飛ばされそうになる。何とか足を踏ん張るが、次のアダムの蹴りが迫る。それを体を後方に飛ばしながらわざと食らうことで距離を取ろうとするが、アダムはそれを許さない。

 

 アダムは目の前の男に危機感を抱いていた。何の技術も使っていないのにあまりにも強すぎる、理解できない、しかしそれを認めるのは完璧を自負するアダムにとってありえない。それなら、壊してしまえば理解する必要もない。

 

 (そうだ、理解する意味もなければ価値もない。このまま壊してしまえばいい!!)

 

 アダムは錬金術を発動し、風の刃や氷の杭をぶつけて牽制しつつ、次の一手を考える。

 

 「変な手品つかってんじゃねぇ!!・・・・そうか、その手品をサンジェルマンに魔法だとか言って見せて、引き込んだんだな!?あの子は賢いから本当ならすぐ見抜くけど、手前のやっているのは今まで俺も見たことがないぐらいすごい技術だ、俺もどうやっているのかさっぱりわからねえ!けど、オカルトなんてこの世に存在するはずがない、だからきっと種も仕掛けもあるはずだ!!でも、サンジェルマンは純粋だから、信じてしまった!!・・・・やっぱり胡散臭い!!!」

 

 「・・・・・・・」

 

 アダムはどこから突っ込めばいいか分からず黙り込んでしまう。今やっているのは、オカルトに見えるがしっかり理論建てた錬金術であり、世の中に蔓延しているものに比べればよっぽど科学に近い。サンジェルマンが純粋?・・・・・・確かに純粋かもしれない、ある意味。一日おきに家に手紙を書いたり、会うたびに自身の父親の話を聞かされたりもしたがあれも純粋だからか。ある意味純粋すぎてやばいが。

 

 アダムがそんな風に意識がそれた隙をつき、男は身近にあった瓦礫、優に人一人がつぶされるぐらいの大きさではあったがそんなこともお構いなしに、まるでフリスビーかのように投げつける。当たってもダメージはないが、男の攻撃に対して警戒していたアダムはつい砕いてしまい一瞬視界が悪くなる。そして、それは立派な隙だ。

 

 「奴め、どこへ行った?」

 「後ろに気を付けろ!」

 

 アダムが気付いた時にはもう遅く、そのまま背中から腕を腰に回され後ろに放り投げられる。のちの世のジャーマンスープレックスであり、頭にダメージをくらったアダムは一瞬気を失う。しかし、アダムにも完全という意地がある。逆に勢いを利用して、足を男の首に絡めそのまま放り投げる。間合いが空くが、既にどちらも戦いの空気に呑まれており、落ち着く気配はない。お互い飛び掛かりお互いの拳を顔面に叩き付け、そのまま吹き飛ぶ。そこから数時間は戦い続けた。アダムが殴れば男は蹴り、男がアダムを吹き飛ばすことで突っ込んできたアダムにより壁が飴細工のように砕け、貴重な研究成果がアダムの錬金術で使い物にならなくなるのに男はあまりダメージがない。また、アダムが錬金術を使用してもそれははじかれてしまうため、だんだん使うのは互いの肉体のみとなっていった。

 

さて、これほどの戦いでもお互いの肉体は無事だったが、一つ無事ではないものがあった。それは何か?答えは男の服である。男の肉体は鋼より硬いが服はただの布であり、アダムの放つ火や風といった攻撃に耐えられるはずがない。いつの間にか、二人の裸の男が殴り合っている異常な空間が生まれていた。この時代、確かにスポーツをするとき裸ではあったので時代としては変ではないのだが、それはそれとしてあまり想像したくない光景である。

 

そしてそこに、ある一人が現れる。自身の研究を行っており、一休みしようと部屋から出たら何やら騒がしいので様子を見に来ていたのだ。

 

「一体どうしたというのですか。また局長がなにかやら、か、し、て・・・・・」

 

こうして、サンジェルマンは見てしまった。自身の愛する父親が何故かここにいて、何故か統制局長アダムと殴り合っていて、何故か二人とも全裸である光景を。

 

「な、なななななななな、なな、何やっているんですかお父さあああああああんんんんんんん!!!!!」

 

こうして、侵入者とアダムの戦いは周りに甚大な被害を出して終わり、後には烈火の表情でお説教をするサンジェルマンとしょんぼりしてうなだれているその父親が残された。

 

え、アダム?体が汚れたと言って、また風呂に入ったよ。片づけを押し付けて。

 

 




この戦いの原因は、パパがバカなのと、アダムが説得する気ないなという説得をしたこと、サンジェルマンがほめてほしいあまりうっかり手紙に書いちゃったことです。

主人公・・・名前必要かな・・・
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