サンジェルマンのパパになりまして   作:アラバス体系

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こう、うまく文章を書くコツとかないんでしょうか?


娘の悲しみを親知らず。

 その女にはいつもと同じ夜。結社の持つ拠点の一つである、城の最上階にある巨大な窓に腰掛けながらただ外を見ている。

 

 いや、正確には何も見ておらず、ただ眼をあけているだけに過ぎないのかもしれない。

 

 月の光が窓から差し込み、女の姿を照らしている。女の目は虚ろであり、ただ思い出にふけっている。雪も降り始めますます冷え込んで、掛けている毛布だけでは足りないが、それでも女には体の冷たさなど平気だ。・・・ただ、心の寒さだけはどうにもならない。心が凍てつき、感情が鈍くなっていくような感覚が女を襲う。

 

 だが、女にとってはそれすら意に介さない、むしろその方が良いとすら思ってしまう。この寒さも、今年で数百年目だ、もう慣れてしまった。

 

 あの日、父親がどこかへ行ってしまったあの日から、サンジェルマンの心は乾いている。

 

 いなくなったことが分かってから、即座に探した。アダムの協力のもと、結社のあらゆる人員を総動員して、探させた。西の海を、東の森を、北の荒野を、南の砂漠を探した、なのに見つからなかった。

 

 一年目は、焦燥感に駆られた、父を早く探さなければいけないと。三年目には、他の錬金術師たちが組織の長の役割を放棄していると騒ぎ立てたので、効率化した四大元素理論の運用方法、人体の再構築技術の構築、さらには賢者の石と伝えられたラピス・フィロソフィカスの原型を提出して黙らせた。百年目には、父がいなくなってしまったのではという絶望が生まれた。三百年目には、自分を置いてどこかへ行ってしまったという怒りをまき散らした。五百年目で、感情が死に始めた。

 

 ああ、どこへ行ったの、お父さん、私はこんなに大きくなりました、錬金術をさらに学んで、あなたに誇れる力を持ちました。だから、褒めてください、よくやったと頭をなでてください、さすがは俺の娘だと喜んでください。なぜ、会いに来てくれないの?私が嫌いになったのですか?なら教えてください、必死にそこを直すから。

 

 会いたい、逢いたい、アイタイ、あいたい。お父さん、私に会いに来てください、戻ってきてください。

 

 他の錬金術師たちは何も言わない、サンジェルマンが定期的に研究成果を報告して錬金術師としての仕事はしているから。

 統制局長アダムは何も言わない。ただ、静かに笑っているだけ。

 

 サンジェルマンは、今日も父が見つからなかったこと、人材が不足しているということ、ラピス・フィロソフィカスの精製がうまくいかなかったことなどの報告を聞き、捜索を続行や錬金術師のスカウト、精製過程の変更などを命令して下がらせる。これすら、もう千年以上も続いたやり取りだ。きっと、明日も、来年も、百年後もこれを続けるのだろう、サンジェルマンはぼんやりとそう思う。

 

 抱きしめていた父の服をさらに強く握りしめる。村の家に残っていた、父の名残、その匂い、その手触り、その思い出でで自身を慰める。昨日は花畑で、父と母に花冠をつくった思い出に浸っていた、今日は何の思い出に浸るのだろうか?

 

 外の雪は、ますます勢いを増し、寒さは強まっていく。その寒さに耐えるかのように、サンジェルマンは幼き日の記憶に意識を沈ませる。

 

 そこには、欧州を裏で牛耳るとされる秘密結社、パヴァリア光明結社の幹部などおらず、ただ寂しさに震える少女しかいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 欧州、後のヨーロッパと言われる地域のある地方都市。収穫の秋は既に過ぎ、作物を売るために農民が来るために人の往来が増えた冬。各家庭の母親は寒い夜に食べる温かいスープの材料を買い、男たちは工房や商店で精一杯働き、子供たちは裏道を走り回って遊んでいる。とにもかくにも、誰もが温まるためにせわしなく動いている。

 

 

  「~~~~~~♪~~~♪」

 

 そんな中、鼻歌を歌いながら髪の黒い一人の青年が歩く。特に理由もないのに足取りが軽く上機嫌で、歩くたびに足下のタイルがカタカタとなる。すれ違う街の娘の目を引き付ける程度には美形であり、現に娘たちは一度は声を掛けようとするのだが、男の顔をしっかり見るとそれをやめて、軽蔑するような目に変わる。娘の態度がなぜそんな急に変わるのかといえば、男の左頬にその原因、真っ赤で見事な紅葉の跡があるからだ。

 そんな冷たい目線をものともせず、男は歩き途中で果物売りからリンゴを買い、かじりながらまた歩く。その行先はいまだ決まらず、とりあえずこの頬の跡が消えるまで街中を歩き続ける。

 

 

 

 

 

 

 お~痛。あーあ、とうとう追い出されてしまった。この頬っぺたの紅葉マークは、ついさっきまで俺が転がり込んでいた女にやられたものだ。まあ、仕方がない、これでもどっかの戦闘狂みたいに寝ている間に剣をぶっ刺されないだけいい。

 あの女と会ってから数百年、俺の記憶は一切戻ってくることがなかった、悲しい。けれど、それにくよくよしてもしょうがないので前向きに生きることにした。

 

 あの女と出会ってから、いろいろと変化が起きた。愛、それがどうしても俺の精神を維持するのに必要になったのだが・・・それはどうやら性欲も伴うらしい。自分でも最低のことを言っている気がするが、世の中の愛も性欲を伴うはずだ、おかしいはずはない、うん、きっとそうだ。

 いや、できるなら性欲は抑えたい、以前までは抑えられたのだが、あの時愛を求めていたことを自覚したことと、ちょっと皇とごにょごにょあったことで‥‥無事抑えきれなくなった。いやーしょうがない、うんしょうがない。

 

 あと、この精神の変化と同時に能力が使えるようになった。あの戦いで全身から発して風鳴之皇を焼いたもの、電気だ。なんか全身から電気を発せられるようになったけど‥‥あの時は無意識に使ったから大丈夫だったが、攻撃に使おうとして電気を放出すると全身が焼かれる記憶が浮かんで能力を切ってしまうのだ。どこかで雷にでも打たれたことがあるのだろうか?なので使うときは主に牽制に使ったり自分の体内の中で放出していろいろ体をいじくる。

 

 まあ、つまるところあまり使えない能力ということだ。あれ?抑えきれない愛という名の性欲、使おうとするとトラウマがよみがえって使えない能力、なんか劣化してない?

 

 そんなふうにぼんやり考えながら、食べ終わったリンゴの芯を投げ捨てる。さて、どうしようか?山に籠って、また修行でもするか、用心棒でもして、路銀を稼ぐか。それとも、なにか別のことをするか。

 

 一か月前に来たこの町は、それなりの規模があるので大抵の建物が集まっている。中堅ぐらいの役者の集まる劇場。最近は、十字教の宗教劇がはやっているが、信徒でもない俺は居心地が悪いのでパス。図書館はそれなりの身分や地位がないと入れないのだが、流れ者の俺にはそんなものあるはずがないので忍び込むしかない、がそんな危険を冒すのも面倒なので今回はなし。酒場に行って、酒でも飲みながら賭けはどうか、いや、三日前に喧嘩を起こして警戒されたんだった。賭けが出来ないなら頭を巡らして安酒を体に回すこともできない、そんなの何が面白い。

 

 暇な時間のつぶし方を思案していると、ん?と足と思考を止める。

 

「———————————————」

「‥‥‥‥‥‥だから!‥‥‥」

 

 建物の間、日の光も差し込まない暗い裏の路地、人通りの少ないはずのその場所で声が聞こえた。しかもただの声ではない、強い口調で言い争いをしている、感情のこもった声だ。

 

 酔っ払い同士の殴り合いか、夫婦の痴話げんかか、それとも盗人の分け前の取り合いか。それが少し気になり、どうせ暇なのだと野次馬気分で裏路地に足を踏み入れ、声の方向に歩いていく。

 

 見てみると、無精ひげを生やして眼鏡をかけた、金髪の人の好さそうなおっさん(本当は俺の方がずっと年上だが)が、フードを被って顔の見えない胡散臭い奴らに囲まれていた。雰囲気からして浮世絵離れしており、裏の世界の住人であることが分かる。耳を澄ませて、会話を聞く。

 

「だから、私はあなたたちの活動に興味はありません!私の研究は人のための研究であり、あなたたちのように世界をどうこうしようというものでは断じてない!」

 

「しかし、研究にはそれなりの資材や資金が必要だ。私たちのところへ来て、組織の活動に少しだけ貢献すればいいのです。それだけで、あなたは充実した研究室や資金などのサポートが受けられるのです。」

「それに最近、教会で不審な活動がありましてね。私たち錬金術師を異端者と認定しようと動いているとか。このままではあなたの身に危険が‥‥」

 

 ‥‥うん、ちょっとやばいやつだこれー!錬金術とか異端者とか危ないにおいがプンプンする。まあ、異端者といっても教会の教えに背いた者、古くからの神を信じるもの、薬草の調合法を知っている森の民とか悪い人ばかりではなく、古の知識や文化を受け継いだ人々の場合もある。ただ、こいつらはそうではないだろう、だって世界がどうとか言ってるもん、めっちゃ胡散臭い。

 

 ‥‥まあ、数百年単位で生きている奴が何言ってんだという話だが。剣をでっかく出来る剣士や体から超電流を流す俺もいるんだ、錬金術もあってもおかしくないのかもしれない。

 

 とはいえ、こんな危ない話に首を突っ込む話はない、変に目をつけられてもめんどくさい。別に電撃で顔を焼いて再生させれば顔も変えられるが、やっぱり元の顔が一番だ。そうと決まったら、善は急げだ。表に戻ろうと回れ右をしようとする。

 

 さて、俺たちは一体どこへいたのか思い出そう。そう、日の光も届かない暗い裏通り。この中世の時代、街の道路の整備は十分にいきとどいてるとは言い難い。普段、多くの人が通る表の道さえそうなのだ。ましてや、こんな人の通らない裏に整備が入るわけもない、一応の舗装が届いてるだけでも役所はよくやったと言えるだろう。踵を返そうとしたその一歩は湿気で腐った道路を圧迫しタイルを砕いてしまった。

 

「ッ、誰だ!?」

 

 ‥‥なんでこうなるかなぁ。思わずため息をつき、俺は警戒を始めたフード軍団の前に姿を見せる。

 

「まて、まて、まて。怪しいものじゃない、ただの通りすがりの野次馬だ。怒鳴り声が聞こえたから、見に来ただけ、お前らの話の内容は一切聞いていない。」

 

 手を上にあげて怪しいものじゃないアピール、そして話をきいていないアピール、決まった、これで俺は怪しくない、すぐに解放されるだろう。

 

「・・・お前は我らの組織に来る気はないか?」

 

「いやぁ、錬金術なんて怪しげなものをできる気はしないし、騙されて金を巻き上げられるのも嫌だから興味はないわ。」

 

「我々はそんなえせ宗教家とは違う!錬金術をもって真理を追い求め、世界の真の姿を明らかにする。それが我ら結社の理念!というか、しっかり話をきいているじゃないか!」

 

 しまった、つい本音がでてしまった。フードの男たちは、警戒を通り越して、攻撃態勢に入る。目撃者は消せという奴だろう。持っている杖が光始めて、空中に炎やら氷やらが出始めた。対して俺も迎撃しようと両手を構える。見たところ、こいつらは闘い慣れしている、攻撃態勢に入るのに無駄がなかったし、俺の行動よく見ている、少しでも動きがあれば即座にその攻撃をぶつけてくる。

 

 お互いに睨みあい、待ちの態勢に入る。どちらが先に動くのか、それによって打つ手が変わる。フードの男たちが先ならそれを交わして拳を叩き込む、俺が先なら相手は向かってくる俺に対して後退しながら技を解き放つだろう。

 

 だが、先に動いたのは俺でもフードの男でもなく、この場にいた第三者。荒事に向いてなさそうな、優し気な風貌のおっさん。

 

「ここは僕に任せて、君は逃げなさい!」

 

「ええい、離せ!教会に知らされてもいいというのか、イザーク・マールス・ディーンハイム!」

 

 おっさん、イザークはフードの集団の先頭にいた奴にしがみつきながら、俺に逃げるように促してくる。無関係の人間、通りすがりの一般人だと思っている俺を守るために、イザークは自分の命を危険にさらしている。顔見知りでも何でもない俺が死んだところで別にどうということもないはずなのに、むしろ俺が教会に逃げ込んでこのことを話せば、即座に弾圧されて火刑にかけられて死ぬことになる。きっと、そうなるとしてもこのイザークという男は俺を助けるという予感がある、底抜けにお人好しだから。

 

「おい、おっさん、そいつから離れろ、危ないから。」

 

「な、何を言っているんだ!?少しは、闘い方を知っているようだけどそれじゃ敵うわけがない、彼らは闘いのプロなんだよ!」

 

「いいから。俺だって伊達に数百年(ながねん)修行していたわけじゃない。ここで負けるようじゃ、その間の時間は何だったのかという話だ。」

 

 油断させようと思っていたのだが、イザークを安心させた方がいいかと思い、抑えていた闘気を少し出す。雰囲気の変わった俺に驚いたのか、イザークは無意識にフードをつかんでいた手を放し、瞬間フードの集団は姿を消す。気配を探っても見つけられない、撤退したのだろう。どれほどの実力差があるか分からない、負ける可能性があるなら戦うのを避ける、諜報員、いや戦士としてもこの上なく優秀、ああいう手合いは厄介だ。

 

 呆けているおっさんに手を差し出して話しかける。

 

「イザーク、立てるか?」

 

「あ、私の名前・・・ああ、いや、うん、ありがとう。すまなかったね、巻き込んでしまって。」

 

「別にいい、野次馬根性で近づいたのは俺だ。それよりここから離れるぞ。あいつらは俺を脅威として認めて去った、けどそれは増援を連れて戻ってくるということだ。このままここにいれば、ドンパチをするはめになる。」

 

「・・・分かった。じゃあ、私に付いて来てくれ、家に案内しよう。」

 

「・・・いや、俺は別にいいけど、いいのか?見ず知らずの俺を招き入れて。ぶっちゃけ、めちゃくちゃ怪しい奴なんだけど。」

 

「うーん、確かにすごく怪しい、怪しいを絵に描いたような存在だよ。手練れの錬金術師を追い返すなんてね、僕の家で暴れられたら、きっとどうしようもないだろうね。」

 

「はっきりいうな、おい。」

 

「でも、君はきっといい人だ。さっき僕のことを気遣ってくれたし、無用な争いを避けていたしね。だから、大丈夫だよ、たぶん。」

 

 ニコニコしながらそんなことを言うこいつを見て思う、いい人すぎだろ、というかどんだけお人好し?もうこれ、ある意味とんでもない馬鹿だぞ。

 

 そんな事を思いながら先を進むおっさんについていく。後をつけられないように裏道から裏道へ、複雑な迷路のような道を進んでいく。

 

 数分後、援軍を連れた錬金術師たちが到着したが、既に二人の姿はなく、街中を捜索するもついぞ見つけられず、地団駄を踏むしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 草木の生い茂る険しい山道を歩く。道といっても舗装なんてされていない、人が歩くせいで周りと比べてわずかに野草の量が少ないぐらいだ。街からはずいぶん離れて、もう何時間も俺たち以外の人の姿は見ていない。

 

「悪いね、歩かせてしまって。もう、そろそろ着くはずだ。」

 

 俺を気遣ってそんな言葉をかけてくる。大丈夫だと返し、そのまま歩き続ける。常人には少しきつい距離だが、俺の身体能力としては苦にもならない、むしろイザークの方が大丈夫かと思ったが、彼も少し息を切らした程度で平気そうだ、おそらくこれぐらい歩くのには慣れているのだろう。

 

 歩きながら、さっきの奴らについての話をする。

 

「なあ、さっきの奴らは何だったんだ?錬金術とか言ってたが、あんたもそっち側の人間か?」

 

「そうだな、君は錬金術というものを知っているかい?巷じゃ、卑金属を金属にすること、簡単に言えば黄金を錬成することだと言われている。確かにそれも錬金術の一つだけど、あくまでほんの一部でもっと多くの分野の事柄を総称しているんだ。炎や氷を作り出す人や、人のマナと呼ばれる力をを利用できる特殊な武器を作る人、人体を組み替える人もいるらしい。僕は、薬草なんかの研究をしているけどね。個人で出来る研究は限りがあるから集まって共同で研究する人たちもいるらしい。」

 

 錬金術師て言っても、科学者たちと変わらない。研究するために、人と共同作業することもあるし、どこかに研究成果を売りつけることもある。人員と予算は裏の世界の住人にも天敵ということだ。

 

「で、そういう集団の中には組織としての理念を掲げているところもある。別にそれは悪いことじゃない、錬金術とは世界の真理を追い求めることだし、私も錬金術師としての考えは持っている。けれど、組織というものでは往々にして暴走した考えを持つこともある、世の中を壊してやろうだとか支配しようとかね。さっきの彼らもそうだ、彼らは欧州を影で操っていると言われるパヴァリア光明結社と言われる存在でね。」

 

「パヴァリア光明結社・・・」

 

「知っているかい?」

 

 何故か、聞き覚えのあるその組織名。そういえば、闘った奴らの中にそんな名前を名乗っていたやつらがいたかもしれない。そう結論づける。

 

「どこかで聞いたことがあったかもしれない、それだけだ。中身を知っているわけじゃない。」

 

「そう。まあ、彼らは錬金術の研究を進めるために、領主や国王とのつながりを持っていたり、戦争に傭兵として参加したりしていたり多岐にわたる活動をしているんだけど、その中の一環としてフリーの錬金術師の参加の呼びかけを行っている。人材はいくらあっても足りないらしく、しがない一錬金術師の私のところにも来たんだけど、僕としては彼らの活動に興味がなくてね。それで断ったんだけど、彼らもはいそうですかと簡単には引き下がらない。それで揉めているところに君が野次馬に来たというわけさ。」

 

 イザークの話を聞く限り、まっとうな組織というわけではなく、裏でこそこそやっていて、しかも上流階級とつながりがある、強大な組織らしい。パヴァリア光明結社、最大級の警戒をした方がよさそうだ。

 

 そんなかんじで話をしていると、なかなかの大きさの建物が見えてくる。どうやらイザークの家についたようだ。太陽も落ちてすっかり暗くなり、夜の中で家の灯が際立っている。

 

「うん、灯り?お前以外にも家に誰か住んでいるのか?」

 

「ああ、娘がいてね。おそらく、夕食を作ってくれているだろう。あんまりいい材料は買ってきてやれないけど、娘の作った料理は絶品だよ。ぜひ、味わってくれ。」

 

 ちょっぴり誇らしげで自信満々に夕食を進めてくる様子から、イザークが娘を大事に思っている、はっきり言って親ばかが入っていると確信する。娘か、うーんどこかにいるのかも、ひょっとしたらもう孫とかひ孫もいたりするかなと自分の女性遍歴を思い返す。

 

 そんなアホなことを考えていると家の玄関の前につく。まず、最初にイザークが扉を開ける。

 

「キャロル、ただいま。」

 

 すると、家の奥の方からパタパタとかわいらしい足音がして、一人のこれまたかわいらしい少女が現れる。イザークと同じ金髪のくせっけで、背の低さから年はそこまでいっていないと思うが、それで家を任せられるというのはかなりしっかりしているか、それともただ背が小さいだけか。

 

「おかえりなさい、パパ!あれ?そっちの人は?」

 

「この人は街で知り合ったパパの恩人でね。今日は夕食を食べて止まっていくんだ。初めてのお客様だから、丁重におもてなししないとね。」

 

 コートを脱ぎながら、イザークは俺の方を向く。

 

「ようこそ、我が家にして我が工房へ、歓迎するよ。それでこっちが」

 

「初めまして、キャロル・マールス・ディーンハイムです!パパを助けてくれてありがとうございます!」

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