肌寒くなってきた今日この頃。カネキくんにある隠しごとをして早半年以上が経過している。
実は私は妊娠しているのだ。カネキくんとの子どもを。最初は誰にも言えなくて、自分が人間社会に溶け込んでいることもあって自分で人間用の食品を調達していた。それにしても本っっっっっっっっ当に人間の食べ物って不味いんだね。ガソリンとかスポンジとか粘土とか・・・本当にトーカって凄いと思う。ちなみに私は外の公共施設は危ないし、自宅の自分の部屋で食べるわけにもいかないので自分用のトイレに引き込もってちまちま食べている。
でも結局お父様と使用人のみんなにバレた。単純に私のミスで。食べて直ぐはやっぱり吐かないようにするのが精一杯でゴミを外に捨てに行くような余裕がないので、私の部屋のゴミ箱に袋詰めにして次の日持っていくようにしていた。それでなんとかしていたのだがウチの使用人たちも鈍くはない。私が肉を食べているのにどこか弱っているのを察したお父様と使用人たちは私が例のセーフハウスに行っている間に掃除という名の家宅捜索を実施。私はそれ以外に見つかって困る物がないだけに厳重にしておいたつもりだったのだが、逆にそれが違和感になってしまったようだった。私がこういう状態であることに感付いた人もいたようだが、私にはちえちゃんという人間の友達もいるので、確証が持てなかったらしい。で、確信を持ったのがトイレから聞こえてくる私の吐き出す音と苦しみながら暗示をかけるように繰り返す声を聞いた時。その日はお父様とみんなに事情を話し納得してもらった。その後はみんなの協力もあって隠す必要が無くなったので家では気持ち的に楽である。食べ物の苦しみはあるけど。
反アオギリグループでもヒナミちゃんにだけバレた。なんでも、私の気配が弱っていっていることに気付いて心配してくれていたんだとか。でもわけを話したら満面の笑みで喜んでくれた。その後、出掛けるときは大抵ヒナミちゃんと一緒である。
そして11月。原作の時間軸でいうと今日がグループ解散の日だったはずだ。そう思っていたら案の定、解散宣言をされた。カネキくんも「あんていく」に戻るそうなので一件落着である。襲撃に関してはどうだったっけ?一番なんとかしないといけないところなのにもうほとんど思い出せなくなっているのだ。どうしよう、月山さんはどうしたんだっけ?というかその前に私は子どもが出来たことをカネキくん本人に話していないのでまずはそこである。いつ言えばいいんだろう。迷惑かけたくないしまた「あんていく」に戻るなら解決した後でもいいかもしれない。もうほとんど思い出せなくなってるからどう対応したらいいか分からないけど、甲赫を分離してトラップで捜査官を倒すくらいはできるだろう。ただ出産予定日が12月半ばくらいなのでお腹が重くて動きづらいからうまくいくかな・・・
ちなみに久し振りに「あんていく」に顔を出した。と同時に妊娠していることも暴露した。芳村さんは考え込むように、けれど穏やかに祝福してくれた。ヨモさんは身体が冷えないように気遣ってくれたし、トーカは私のお腹に手を当てて胎内で動き回る子を実感して嬉しそうだった。ニシキくんは来ていなかったが入見さんと古間さんにも祝福してもらいそのまま笑顔で店を出た。
12月20日。カネキくんの誕生日。
夕方、私はテレビで流れたニュースの速報を見て止める使用人たちを振り切って駆け出した。
途中ニシキくんに出会い驚かれたけど(私が鉢合わせたことに驚き、私が妊娠していることに更に驚いた。私は体型が目立たないワンピースを着ているため分からなかったという。まあ、私が解散宣言後に「あんていく」行った時いなかったもんね)、私にも時間がないことを悟ったのかカネキくんの元に連れていってもらえることになった。カネキくんはビルの屋上にいた。
「あんていく」はカネキくんにとっての始まりの場所で「居場所」だったのだ。私との出会いも「あんていく」がなければ成立しなかったかもしれないし、私にとっても切り離せない場所だった。だけど―――君がたった一人で死に場所に向かうというのなら。
「行くなら私を倒してから行きなさい」
「はあ?!ちょ、おま、何言ってんだ!!」
「レイさん・・・」
ニシキくんの制止も虚しく私は赫子を展開しカネキくんに飛び掛かった。でも一撃で沈められた。あー、これは手加減されたのかもしれないけど今の私はだめだ。ただでさえ人間の食べ物を食べて具合が悪いうえ、我が子を吸収する懸念があるから肉もなるべく最低限にしか食べてなかったし。
「お願い、行かないでカネキくん・・・」
「それは・・・」
目を伏せるカネキくんにああ、やっぱりだめか・・・と思っていたら急に激痛がして立っていられなくなりその場に倒れそうになったところをニシキくんが受け止めてくれた。
「おまえ、やっぱりアホだろ!」
「は、はは、でもやっぱり・・・あのニュース、見たら、さ」
カネキくんは私が倒れたのを見て啞然としたまま固まっている。私もそろそろ本当にまずい。そう思っていたら家のヘリが空に見えた気がした。
*****
出産はなんとか無事に終わり、病室にカネキくんがやってきた。
「・・・なんで言ってくれなかったんですか」
「ごめんね、いつ言おうか迷っていたら結局言えずにここまで来てしまったんだ。きみに、拒絶されるのが怖かった」
「そんなわけないです。言ってくれたら僕だって・・・」
「うん、そうだね。君は優しいから」
「優しくなんてないですよ、僕。でもそれ以上に、あなたは馬鹿だ。頼ってください。甘えてください。一人でかかえこむの、やめて、ください」
「うん、ありがとうカネキくん。やっぱり、私は、君がいないとダメなんだ。君じゃないとダメなんだよ、だから・・・だからもう置いて行こうとしないで」
「・・・はい、心配かけて、ごめんなさい。もうどこにも行きませんから、僕と結婚してください。玲さん」
「うふふ、こういうのはやっぱり照れてしまうね・・・はい。ずっと、ずっと寄り添わせていただきます!」
その後、おくるみに包まれた我が子を抱いて涙するカネキくんを私は静かに見守っていた。
こうして、「あんていく」は救えなかったけど、カネキくんは私の家に婿養子として入り、大学に復学しながら執筆した物語を本にしてみたところ大ヒットし、大学生と小説家、二足の草鞋でがんばっている。
残った「あんていく」のメンバーは新しい喫茶店をオープンしまた働き始めた。
私は月山家の跡取りとして本格的に動いている。あ、でもカネキくんや我が子との時間は絶対に減らさない。何としてもね!
(今日も騒がしくも幸せな一日でした)
(願わくばこの幸福が、末永く続きますように)
トイレでの暗示はトーカちゃんのものに近いです。それに主人公は漫画でトーカちゃんの「子供のため」のではなく「普段」の食事風景が描写されていなかったことと月山家も喰種同士での結婚しかしてこなかったことから知識がなく、少しでも我が子の生存確率を上げようと食べる肉の量を最低限にまで減らしていました。
というか予定日にまだ破水してない陣痛が来てないだけなのにカネキくんの下に行くって根性があると言えばいいのか馬鹿なのか・・・
ちなみに原作ルートではやっぱり動けず出産に専念し取り残されます。月山さんと同じように弱っていますが子供がいるので月山さんほどおかしくはなってないです。佐々木くんとの接触もあまりしないようにしています。子供がいることと、親になったことで月山家のことも考えるようになっているからです。