オリジナル要素てんこ盛り。
名前は双矢(フタヤ)、女の子です。
下鴨の長女は引きこもり
私たちは人を化かす狸である・・・私を除いては。
私はある時を境に蛙に化けたまま狸に戻ることも他のものに化けることも出来なくなってしまったのだ。
つくづく情けないとは思うがこの井戸の中で一生を過ごすというのもなかなか乙なものである。だって狸だった頃よりもずっと皆に頼りにされている・・・と思うから。ここに蛙になって住み着いてからというものの悩みや愚痴をこぼしに来る奴が結構いるのだ。私が聞き手に徹するから変に周りに意見されるよりもずっと話しやすいのだろう。狸に限らずさまざまなものたちがやってくるが、一つだけちょっと気掛かりなことがある。人の子よ、私は神様じゃなくてただの狸が化けた蛙だ。願掛けや御利益のために参拝の真似事はいかがなものか。私には君らの願望を成就させるような力も御利益を与えてあげられるような徳の高いこととも無縁である。
「とかなんとか言いながら、結局全部聞いてやるんですか双矢姉さんは」
井戸の上で淵に腰掛けながら弟の矢三郎が言った。
「まあ他にやることもないし、聞くだけただだから」
「姉上は外界に出ようとは思わないんですか?」
「・・・ないよ。とは言い切れないけど、私はこの姿から戻れないし、ここでのこういった生活にもある程度満足してるから」
「左様で」
「それはそうと矢三郎。おまえまだ弁天様に未練があるの?」
「・・・一体誰がそんなことを」
「海・・・いや、これは言わないでおくか。あーあ、可哀想に。我が弟ながらこの鈍感さにはさすがの私も同情を禁じ得ないよ」
「そういうなら姉上だって呉一郎殿とのことがあるではないですか」
「・・・私のことはもう終わったことさ。私が告げる前にあの人は夷川の家を出て行ってしまったし。まあいわゆる初恋は叶わないというやつさ。少なくとも私はそうやって割り切ったつもりでいるよ」
「ふーん、そういうものですか」
「そういうものだよ」
そうして矢三郎は話題を切り替え、もう少し話すと帰っていった。我が弟は罪作りな奴である。海星も苦労するな・・・いや、元はと言えば私が原因なのかもしれない。私があの日父上に本音を打ち明けられるほど二人で呑まなければ、父上を置いて先に帰らずちゃんと一緒に帰っていれば、父上は狸鍋にならずに済んだのかもしれないのだ。父上が死んだことで両家の関係は更に悪化し、矢三郎と海星の婚約も一方的に破棄されるなんてこともなかったはずだ。
考えたくなくて井戸の水に浮いてみたものの、思い出したことは流れることなく突き刺さったままだった。
双矢の場合は呉一郎がキーマンになっています。一期のアニメに登場してなかったですが。
想いを告げる前に呉一郎が出てってしまい普段はそんな様子を微塵にも出さなかったけど実はまだ・・・っていう設定。
それを酔って父上に打ち明けて後はそのままです。ただ矢三郎と海星の婚約破棄は原作と違って関係悪化の余波を受けてそうなってます。そのうえ呉一郎は恐らく所在を掴まれていないと思うので全く誰の願いも叶えられていない報われない、下手すると元より暗いかもしれない過去になってしまっています。
ここから2で再会からのカップリングエンドにするか、吹っ切れて未来に目を向けるエンドで迷ってます。