転生オリ主ドロップアウト   作:クリネックス

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幕間ー寝る前の妄想のようなもの

時計の針は12時を回っていた。しかし一向に眠りに落ちる気配はない。布団をかぶり、目を瞑ってみるのだが、自分の心の奥でいろんな感情がドロドロに渦巻いていて頭が冴えてしまっている。

仕方がないから眠るのは諦め、何かを考えることにしようか。

 

今日一日は自分の人生の中で一番楽しい日であったと言っても過言ではないだろう。友達ができた。それも4人も。

 

自分はコミュニケーションを取ることが嫌いなわけではない。それこそ、心を許せる家族と馬鹿な軽口を叩き会う時は確かに楽しさを感じていた。

それでも、他人に踏み込む気は起きなかった。それは、踏み込んだところで絶対に自分を理解されないというのがわかっていたから。

 

自分は死ぬのが怖かった。

 

きっと人に話せば馬鹿にされることだろう。自分の死なんて考え始めたらきりがないからだ。明日通り魔に刺されて死ぬかもしれない。車に跳ねられて死ぬかもしれない。雷に打たれて死ぬかもしれない。

しかし、人は簡単には死なない。雷に打たれて死ぬのは宝くじに当たるのと同じ確率だと聞いたことがある。そういうことを除いても、自分の周りの人が次の日になっても死んでいないことから普通の人は死を日常から切り離すのだろう。

だが、自分にはそれができなかった。

自分には異能の力が備わっていた。モノの死を見ることのできる目。

それが前世の創作物と同じものであるとは思ってはいない。自分は別に紙の中に飛び込んでこの世界に生まれてきたわけではないのだ。だから自分ではわからないが、きっと神様や宇宙みたいなスケールの大きなものの仕組みに組み込まれているのだろう。

だけど、簡単に人を殺すことのできる力であるということはまぎれもない事実ではあった。

普通人が拳銃を見ても特になにも感じないだろう。だが、その拳銃で人を殺す場面を目撃したことがあったらどうだ?きっとそれを見るたびに人の死というものを実感するに違いない。

拳銃程度ならまだ問題ないのだが。人は忘れる生き物だ。日常的に目に入るものでないのなら、生活しているうちにいつか記憶から抜け落ちるのだろう。

しかし、自分のは目だ。いや、第六感と言ってもいいかもしれない。それは言わば、常に爆弾のスイッチを握っているようなものだ。いつでも人を殺すことができるということを常に実感し続けている。

 

それに未知への恐怖もあった。

 

未知とは恐怖だ。だが、日常生活で人が未知を実感する場面は少ない。

自分は違う。

自分は前世の記憶を持っている。そして、異能の力も持っている。そんな自分と同じような存在、人を簡単に殺す力を持った人間がどこかに存在しているのではないか。それがたまらなく怖く感じる時があった。

 

 

 

……とまあ、頭の中で長々と語ってみたのだが、そんなこんなで自分はぼっち人生を突っ走っていたのだ。

しかし、今日一日でその価値観は一転した。ラフィやガヴリール、ヴィーネにサターニャ。前の2人は今までの自分が恐怖していた条件に当てはまる存在だ。おそらく、未知の力を持っているであろう2人。しかし、初対面の時こそ警戒心を覚えたものの、話してみれば簡単に心を許すことができた。

きっかけはラフィなのだろう。彼女が自分に踏み込んできてくれたおかげで、自分はいくつかのしがらみから解放された。

 

…………ん?結局自分は何に悩んでいたんだっけ。っていうかそもそも何かに悩んでいたのだろうか。

まぁいいや。つまり今日は楽しかったってことで。ダラダラと考えにふけっているうちになんだか眠くなってきた。

 

寝返りを打ち、意識を沈めるために頭を空っぽにする。

 

ああ、眠る前に最後に。

きっと、明日も楽しい1日になるのだろう。




漫画だとガヴリールが駄天したのは入学前で、アニメだと入学後なんですね。

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