転生オリ主ドロップアウト   作:クリネックス

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厄災の予感

自分が転生者であると認識してから数年が経ち、俺は無事中学卒業までこの世界で生き残ることができた。そして、この数年間でわかったことがいくつかある。

 

1つ目に、この世界は型月時空ではない。たぶん。

というのも、あの有名な冬木市が存在しないことがわかったからだ。型月時空はたしかすべての作品が共通の舞台でのお話であったはずなので冬木市が存在しない=not型月時空で問題ないだろう。

 

2つ目はこの世界は前世の俺(ニワカオタク)の知る作品の世界ではおそらくないということだ。断片的で、なおかつ歳をとるにつれて薄れゆく前世の記憶だが、自分は一通りの有名な漫画やアニメには目に通していたのでニワカ知識だけは幅広かった。そういった記憶をなんとかひねり出し、一通り地名や過去に起こった事件、有名人などを片っ端から調べて見たのだが、特に引っかかるものは見つからなかった。この世界は自分が転生する前の世界にほとんど近い現代日本であるようだ。

 

とりあえずの最悪のパターンを免れたことに安堵した自分であったが、まだまだ油断はできない。自分が転生者で異能持ちである以上、似たような存在の否定は困難だ。

 

それに自分には新しい危険分子が発癌していた。

ここ数年間で霊感が非常に高まっていたのだ。自分の異能力が親戚一同にバレていこう定期的に本家で修行をつまされ、また腕利きの退魔師である祖父の仕事を手伝わされたが故に、幼い頃はたまに幽霊っぽいなにかが見える程度であった霊感は、今でははっきりと人の姿をした幽霊を捕らえるにまで成長していたのだ。

浮遊霊?地縛霊?そんなもん歩いてたら嫌という程見かけますよ。

 

この数年間では悪霊らしい悪霊というのはほとんど出会ったことはないが、存在が確認できている以上、自分はお家柄いつかは遭遇することになるはずだ。こわい(小並感)

 

しかしまぁ、自分には直死の魔眼(チート能力)が備わっているため全く対処できないわけではない。これまでの修行と成長期のおかげで身体能力も人並み以上には高まっているので、明らかな死亡フラグを避けながら生きていけば問題なく生き延びられるだろう。

 

これからしばらく気をつけなければいけないことは先に述べた通り他の転生者と悪霊らしい悪霊くらいだろうな。後者は霊感によって回避は可能だしチート能力によって対処も一応可能、前者はそもそも現代日本で普通に生活しているうちは出会う確率は低いだろう。

 

つまるところ、中学校を卒業した自分は後最低3年は平穏な生活を送れるということだ。やったね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「白羽=ラフィエル=エインズワースです。中学卒業を機に海外から帰国したため日本にはまだ不慣れなところがありますが、皆さんどうか一年間よろしくお願いしますね」

 

いるじゃねぇか転生者。

え?いるじゃん転生者、なんだよ白羽=ラフィエル=エインズワースって。ミドルネームじゃん意味わかんねぇよ。

ok、落ち着いて考えてみよう。今日はドキドキ高校の初登校日。自分のクラスは1年A組で今はクラスメイトと初顔合わせであり、最初の自己紹介の時間だ。

挨拶をしている女子生徒白羽=ラフィエル=エインズワース、顔立ちは恐ろしいほど整っており、スタイルもいい。挨拶からも柔らかな物腰が感じられ、帰国子女のハーフのはずが日本語もペラペラ。

 

いや、問題はそこではない。これまででも十二分に異常な彼女だが問題はそこではないのだ。

 

なんか後光が見えるんですよね、、、?ここ数年間で祖父の仕事や修行の中で出会った巫女やイタコさんの軽く10倍くらいは濃い、霊感が強い自分だけが感じ取れるオーラのようなものが彼女からは発せられているのだ。

どう考えても異能力者で転生者です。本当にありがとうございました。

 

そんなことを考えているうちに挨拶中の彼女と目があってしまい、咄嗟に逸らした。

 

落ち着け春彦、ここで動揺してはダメだ。

奴に自分が転生者であるということを悟られては絶対にいけない。自分はあくまでモブ生徒であり超人美少女転生者オリ主には全話を通して10字以内の会話でしか登場しない存在でなければならないのだ。

自分の目標は死なないこと。下手に関わって断罪系オリ主だった場合や、この世界がバトルものの世界であった場合ほぼ確実に巻き込まれてしまう。それはいけない。春日野春彦にとって生存意欲は超絶美少女との出会いよりも優先される事項であるのだ。

 

そういって白羽さんについて考えているうちに自分に自己紹介が回ってきた。

落ち着け春彦、自分はモブ生徒なのだ。アニメ1話、ナレーションに被さりながら徐々に小さくなっていくレベルの影の薄い自己紹介を行うのだ。決して彼女に自分が異常であると悟られてはいけない。

 

覚悟を決めて席から立ち上がる。頬を伝う冷や汗の不快な感覚を意識しながら乾いた口の中で無理やり唾を飲み込み、第一声を絞り出す。

 

「春日野春彦です。趣味は読書と剣道、一年間よろしくお願いします」

 

決まった。完璧な自己紹介だ。

答えるのは自分の名前、趣味、それと挨拶。余計なことは語らず、そして最低限の紹介を付け加える。総文字数を40字以内に抑えることで完璧なモブオーラを発することができる。

周囲から軽い拍手を送られながらゆっくりと席に座る自分。ここまでの一挙一動、完璧にこなすことができた。

 

さぁどうだ白羽=ラフィエル=エインズワース。自分は取るに足らないモブ生徒だ。転生者で美少女のお前とは関わらに値しない人間だ。踏み台だかチートだか知らないが勝手にやっててくれ。イケメンの主人公や美少女ヒロインだってくれてやる。

 

席に座った時点で周りに目をやる。皆の視線は次の生徒に移り始めている。これでいい。これがあるべき姿だ。自分に興味なんか持ってくれる必要はない。その存在を5秒で忘れてくれて構わない。

 

 

 

なのに、あぁ、白羽さん?

どうして貴方はまるで新しいおもちゃを与えられた子供のような目で私のことを見つめているのでしょうか?

 

 




目に見える地雷。回避は不可能。

次話以降4000字くらいの文量にはしたいなぁ

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