転生オリ主ドロップアウト   作:クリネックス

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総合ランキングに乗れるとは……
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ガヴドロ流行らせコラ!


厄災の予感ー4

「春日野くん?今のは一体何をなさっていたのでしょうか?」

 

春日野春彦は焦っていた。入学早々出会った転生者(仮)こと、白羽=ラフィエル=エインズワースに先ほどの除霊(物理)を見られてしまっていたのだ。

 

落ち着け春彦。冷静になれ。まずは状況を整理しよう。

悪霊を発見した自分は彼女を成仏させるために人気のない場所へと誘導した。そして、物理攻撃(殴る蹴る)にて幽霊を成仏させた。その際に溜まっていた鬱憤を吐き出していたので口から漏れていたかもしれない。

 

まずい。非常にまずい。何がまずいのかというと2パターンが考えられる。

 

1つ目、白羽さんが幽霊を見えるパターンだ。

その場合、自分が霊能力があることがバレていることになる。彼女は聖なる力(仮)を持つ転生者候補だ。もし彼女にテンプレート(裏事情)があったとしたら、今のが引き金となり十中八九物語に巻き込まれるだろう。

 

2つ目、白羽さんが幽霊を見えなかったパターンだ。

その場合の自分を客観的に考えてみよう。高校デビューに失敗した少年がブツブツと愚痴をこぼしながら何もない空間に暴力を振るっている。

 

うん、どちらを取っても救いがないな(白目)

前者ならば生存確率の下降要素になり、後者であれば社会的に殺されかねない。どちらであってもDeathしか存在しない。救われない。こんなの死ぬしかないじゃないか。

 

「ど…どこから見てた…………?」

 

なんとか心を落ち着け、言葉を捻り出す。

 

「ええっと、春日野くんが喫茶店から出てくるのが見えまして、教室でご挨拶できなかったのでぜひお話がしたいなと思いまして。そしたらお一人で(・・・・・)どんどん人気の少ない方に進んでいくので急いで追いかけてみたのですが、なにやらお取り込み中であったようで声をかけづらくて……驚かせてしまってごめんなさい……」

「あっ(察し)」

 

後者であった。

まずい。まずすぎる。このままでは高校デビュー失敗どころの騒ぎではない。社会的に死んでしまう。

このままではいけない。なんとかこの場を取り繕わなければならない。考えろ自分。都合のいい言い訳を考えるんだ。

 

「それであの……先ほどは一体なにをなさっていたのでしょうか……?」

 

ええい急かすな白羽。今なにをしていたか説明するために考えているのだ。

落ち着け春彦。彼女はどうやら幽霊を見えていなかったようだ。それはそれで都合がいい(・・・・・)。彼女が記憶持ち転生者である可能性が低くなった。

彼女が転生者である線を捨てて改めて分析してみる。白羽=ラフィエル=エインズワース。帰国子女。物腰は柔らか。お嬢様っぽい。

 

お嬢様っぽい?

これだ。ここをつくしかない。どの道このままではじぶんは社会的に死んでしまう。だとすればどれだけ僅かな可能性であっても救われるルートをつくしかない。

 

すなわち、白羽さんが無知系純真お嬢様キャラであると仮定するのだ。

 

「いっ….いやぁ白羽さん?実は俺、最近流行っているエクササイズにハマっててさ?それを今やってたんだ」

「は…はぁ、エクササイズですか。自宅ではなくこんなところで……?」

 

白羽さんは困惑しているようだ。いけるか?いや、考えるな。自分はいくしかないのだ。気合いを入れろ春彦。このままノリとテンションでゴリ押すんだ。

 

「な…なんていうのかな。イスラム系ブートキャンプっていうの?毎日決められた時間に神への祈りを唱えながら体を動かさなきゃならないんだ。今日は偶々家まで間に合わなくってさ、し…仕方なく人気の少ないところでやってたんだよ」

 

なんだよイスラム系ブートキャンプって。意味わかんねえよ。アッラーとビリーに謝れ。

 

白羽さんは怪訝そうな顔でこちらを見つめている。いけるか?いや、流石に無謀だったか?でも引いてるようには感じられないし何かを考えているようだ。いけたのか?わからない、とにかく何か反応を示してくれ。俺をこの状況から救ってくれ。

 

「……」

「……」

「……」

「ハハッ……」

 

いかん、某ネズミのような声が出てしまった。

 

白羽さんは何かを考えるような顔で俯いていたが、ゆっくりと顔を上げると笑みを浮かべながら話しかけてきた。

 

「そうなのでしたか。ごめんなさい。私帰国してからまだ日が浅いのでそのようなものが流行っていたとは知りませんでした。私が無知であるが故に春日野くんを不快な気持ちにさせてしまっていたのでしたらごめんなさい」

 

通じた!?冗談だろ!?

いや、こちらに考えている余裕はない。たとえ白羽さんが天使(悪魔)のような笑みを浮かべているとしてもそんなものを考えている余裕はないのだ。自分が生き残るにはたとえ罠であったとしてもこの流れに乗るしかない。

 

「い…いやぁ全然構わないよ。流行っているといってもアングラでだしさ?仕方ないって。そ…それより俺も白羽さんとお話がしたいって思ってたんだ。偶然だね」

「まあ!春日野くんもですか?それは嬉しいです!よろしければこのままお話しながら歩きませんか?」

「も…もちろんだよ!白羽さん!さぁ行こうか!自分のことだったらなんだって答えるよ!」

「うふふっ、元気が良いのですね。それもエクササイズの効果ですか?」

「そうだよ(混乱)。当たり前だよなぁ?」

 

もはや自分が何を話しているのかもよく理解できていないが、とりあえずこの場は乗り切ることができたようだ。自分の横に立ち、歩き始める白羽さんからはなぜか寒気と恐怖しか感じないがとにかく今は取り繕う。

 

「ふふっ、春日野くん、今度私にもそのエクササイズ教えてくださいね?」

「もちろんだよ!神から与えられる加護も相まってとっても調子が良くなるんだ!俺の父さんもこれを始めてから宝くじで7億円当てたんだよ!?」

「それは凄いですね!うふふっ、楽しみです」

 

美しい笑みを浮かべるラフィエルを横に、春彦は死んだ目と真っ白な頭のまま帰路へとつくのであった。




厄災の予感はこれにて終了の予定です。予定です。

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