(習作)終末の痕跡   作:雑兵(仮)

4 / 7
更新が遅れました。
すいません。


4話 秘密

木々に囲まれた白い岩場にゾイドが二体転がっている。

確か、名前はガイサック。

二体とも足とハサミを斬られ、尻尾の砲台はへしゃげている。

 

攻撃してきたのは向こう側だが、反撃に対してはあまりに呆気なかった。

 

「タカナリ平気?盗賊とやりあうなんてしたことなかったんでしょ」

「……別に。自分でも意外なくらい落ち着いてる」

「そう、ならさっさと降下しましょ。賊を取っちめてどの方角に町があるのか聞かないと……」

 

俺達が新天地に辿り着いてかれこれ一週間になる。

 

 

 

 

「……おかしいと思わない?」

「そりゃ地球人の基準で、ということだったら何をどう考えたっておかしいよ。違う惑星なんだから」

 

茶化して答えると嫌な顔をされた。

食事時にそんなことを話し始めなくてもいいだろう。やっと焼魚以外のものが食べられるというのに……。

 

さっきまでこの大陸がまったく新しくできた大陸なのか、トーホー大陸かナンポー大陸の一部だったのか、という正直地球人の俺に言われてもさっぱりわからない独り言のような愚痴が展開されていただけにちょっと怠いと思ったのもある。

 

現在、俺達はガーゴとかいう街で昼食を摂るついでに滞在しているのだが、この大陸に上陸してから此処までに4回も賊に攻撃を受けているのだ。

食事も睡眠だって気軽にできやしない。

しかも、賊を取っちめたときは決まって“ある商人から珍しいゾイドがいると聞いた”と言ってくるが、商人の名前を訊ねると皆違う名前を出してくる。

ここまでくるとある商人が同一人物か共通の組織の人間だと考えたほうが自然だ。

 

「それにしても、俺達にちょっかいかけてくるやつらがいるってことはわかるんだけど、何が目的なんだか」

「そこなのよ。ガイサックならまだしも、モルガやサイカーチスでストームソーダーを落とせるとは相手方も考えてないでしょうから本気で倒しに来てるんじゃないとは思うけど」

 

シャマーラはこんなことを言っているが、それでも悪いことばかりじゃない。

今食ってる飯だって倒した賊の懸賞金から出た物だ。

そのうえ、賊からここら周辺の大雑把な地理情報が聴けたことも収穫だろう。

 

何より、自分達以外にもこの時代に人がいることがわかった所為か、少し余裕が出てきたような気がする。

現に、彼女は見てわかるほど元気になっている。

 

「随分物騒なご時世に起きちゃったわね」

「ディガルドとかいう国が侵攻してきた所為で難民が増加してるらしいからな」

「ディガルドねぇ、随分と新興国家が出張ってくるじゃないの」

「君からすればどこも新興国だろ」

 

相方と現状の再確認と愚痴を言い合ってるところへ

 

「ちょっといい?」

 

一人の女性が声をかけてきた。

 

「なんですか」

「あなた達が街で噂の二人組?」

 

大人びた容姿をしている、シャマーラの例を考えると俺と同じくらいか年下なのではないだろうか。

あと、その緑髪はもしや地毛なのだろうか。

 

「噂の二人組?」

 

二人組なのは間違ってないけど噂ってなんだ。

 

「私は珍しい空飛ぶゾイドで賊を立て続けに討伐してるって聞いたけど」

「なんだかそれだと私達が倒しに出向いたみたいに聞こえるけど、向こうから来たのを返り討ちにしただけよ」

 

俺に変わってシャマーラが答える。

さっきよりは少し機嫌がよくなった気がする。

因みに俺は上空から援護射撃していた時の方が多いなので殆どシャマーラの手柄である。

 

「あら、そうなの?」

「でも、珍しいゾイドっていうのは間違ってないけどね。なんたって私のあの子達は少数生産されたストームソーダーFXの数少ない二機なんだから」

 

“私の”って……いや、そういえば俺借りてるだけだったな。

なんだかもう馴染んできてしまってすっかり忘れていたが。

 

自分のゾイドの自慢がしたいのか随分と上機嫌なシャマーラに対して、相手の女性は何を言っているのか理解できてないといった面持ちだ。

 

「……少数生産?」

「そうなのよ。詳しくは知らないけど父さんが勤めていた会社で開発してたらしいんだけど軍とのでごたごたがあった拍子に退職金として貰ってきたの」

「開発?退職金?」

 

なんだろうこの光景どこかで見たような気がするな。

 

「……私変なこと言ってた?」

 

さすがに反応が期待していたものと違ったからかシャマーラも気付いた。

 

変と言えば、退職金代わりで手に入るものじゃないと思う。

この惑星ではそれが普通なのかもしれないし、どうだっていいんだが、そうではなくて。

 

疑問を解消する機会に恵まれたので緑髪の女性は訊いた。

 

「貴女の言い方だと貴女のゾイドが造られたように聞こえるんだけど、ゾイドって普通は地面に埋まってるものでしょ?」

 

彼女の言葉に少し気になる点があってシャマーラを見ると、困惑顔で俺と顔を合わせた。

 

「ゾイドって埋まってるのか?」

 

おもわず訊ねてしまった。

勿論、目の前の女性二人に。

 

「……遺跡とかで古代文明のゾイドが出てくることくらいならあったと思う」

 

シャマーラが答える。

 

それでさっきの発言が聞き間違いでなかったことを理解したようだ。

 

「造るっていっても大抵はゾイドコア以外の話よ。人工ゾイドコアって代物もあるからほとんど人造だったりすることもあるけどね」

「ゾイドを……造ってるの?あなた達」

 

どうも認識にブレがあるような気がする。

 

「タカナリ、また私変なこと言った?」

 

シャマーラが小声で訊いてきた。

さっきもそうだが、変なことと言われても俺の常識と君の常識、緑髪の女性の常識はおそらく全然違うだろう。

 

「彼女からすれば、君が生きた時代が古代文明で、君は古代人なんだよ」

 

盗賊でなく街の人ですら服が質素だったというのもあるが、研究所で見た機械は日用品の類ですら見かけなかったのだ。

シャマーラのいた時代から数千年はないだろうが、数百年は経っているのかもしれない。

 

「それと、関係あるかどうか知らないけど、彼女殺気だってないか?」

 

眼の前の女性からはこの場には不釣り合いな緊張が伝わってくる。

どうも彼女はゾイドを製造することを気にしているような気がする。

 

「あの、信仰上の理由でゾイドの製造を禁止しているとかで怒っているなら謝るよ」

 

困惑したままのシャマーラに代わって訊いてみたが、この惑星にそういう人々はそもそもいるのだろうか。

 

「えっ?あ、ごめんなさい。そういうわけじゃないの、ただ、少しその話について詳しく聞かせてほしいだけど」

 

女性から殺気が弱まった。

宗教上の理由ではないようだ。

 

しかし、詳しい話か。

 

「どうする?」

 

相方に訊ねてみると“そうだ”とわざとらしく手を合わせて言った。

 

「自己紹介してなかったわ。私はシャマーラ・キャロウ、愛機はストームソーダーFX。はい次、タカナリ」

 

……何故、このタイミングで自己紹介を始めるのか。

順番が回ってきたからやるけど。

 

「俺は霧谷孝成、こっち風に言うならタカナリ・キリヤかな。シャマーラからストームソーダーを貸りてる」

 

自分の紹介が終わったので残った一人を見た。

 

「……そうね、まだ、名前は名乗ってなかったわね。コトナ・エレガンスよ。フリーのゾイド乗りで愛機はレインボージャーク」

「フリーのゾイド乗りか……コトナって呼んでいい?」

「いいわよ」

「あ、立たったままじゃつらいでしょ。隣に座って。それに、もしよかったら食べる?私が奢るから」

「さすがに、そこまでしてもらうのは――」

「いいのよ。ただそのかわり、これから話すことはあまり言いふらさないでね。これはその前払いみたいなものだから」

「……なら、ご馳走になるわ」

 

正直、どこまで話す気なのか知らないが、彼女が俺達にちょっかいかけてきた人間に雇われている可能性もなくはないのだ。

だが、シャマーラもそのあたりは心得てるだろう。

本人も親と各地を回っていたから旅慣れていると言っていた。

寧ろ、素人の俺が一々気にすることでもないだろう。

 

 

 

 

「……じゃあ、まず最初にコトナ、よく聞いて。到底信じることはできないかもしれないけど、私はゾイドが造られた時代の人間なの」

「……はやっ?」

 

シャマーラはあっさり言った。

俺が止めに入る余地すらないくらいあっさり。

なんで止めようと思ったのかすら忘れてしまうくらい淀みなく喋った。

 

「……」

 

コトナさんの目は何を言っているのかわからないと言わんばかりだ。

 

「私は天変地異が起きたときからずっと機械の中で眠ってて、起きたらこの時代だったの」

「……証明できそうな物も持ってないの?」

 

それは証明できそうな物があったら信じるということだろうか。

 

「ストームソーダーのところに戻ればバイクと冷蔵庫があるけど……」

 

冷蔵庫のことは最初は知らなかった。

大きさは一人でも持って運べるほどだったのでそれほど目立たなくて、魚が余ったときシャマーラが詰め込んでいるのを見て初めて知った。

 

「冷蔵庫……」

「食料を冷やして保存する箱よ」

 

何故、冷蔵庫が気になるのか知らないが、コトナさんはそのまま考え始めた。

 

「……信じてもいいわ」

 

まるで冷蔵庫が決めてになったように聞こえるがいいのか?

 

「そういえば、タカナリだったけ。貴方も眠ってたの?」

 

俺か。

別にシャマーラが喋ったからといって俺も喋らなくちゃならないわけじゃないんだが、どうしようか。

 

「タカナリ、コトナに話してみたら?もしかしたら帰る方法が見つかるかもしれないし」

「……6万光年って時点であきらめてるんだけどな」

 

聞いたときは軽く聞き流していたのだが、段々帰っても家族どころか知り合いもいないのに帰っても意味ないとこに気付いてしまった。

何というかここ数日でやっとその現実を受け入れ始めたところだ。

 

「なんていうか、俺はそもそもこの惑星の、この世界の人間じゃないんだ。地球ってわかる?」

「チキュウ?聞いたことないわ」

「まあ、すごく遠いところってことだよ」

 

口で説明しようも俺の場合はシャマーラよりも現実味がない。

 

 

 

 

「また機会があったら会いましょう」

「ああ、じゃあまた」

 

そう言って別れたときも、言葉のわりにコトナさんはどこか釈然としない顔をしていた。

何か思うところがあるのだろうが、それを隠している余裕があまりないようだ。

その所為か連れていた鳥の方がまだ愛嬌があったかもしれない。

 

彼女と別れた後に露店で聞いた話だと、ゾイドの製造技術どころか製造できるということされも知られていないようだ。

露店の反応は彼女の反応とはやはり違っていて冗談だと思ったか本気で取り合ってすらくれなかった。

 

「タカナリ、女性のことを詮索するのはあまり褒められたことじゃないと思うけど」

 

シャマーラが苦言を呈した。

 

「そうかもしれないが、ちょっかいかけてきてる連中と関係があるかもしれないだろ。そもそもなんであんなにあっさり喋っちゃったのさ」

「もしそうであっても逃げればいいじゃない。私達この土地とは縁もゆかりも無いんだからこの街に渋る必要もないでしょ」

 

シャマーラは気楽そうだ。

俺だってコトナさんのあの様子を見るに多分ないだろうと思っているが。

 

「まあ、それもそうもな」

 

あまり難しく考えてもよくないか。

俺の常識なんてどこまで当てになるかわからない。

そうして俺達は晩飯になりそうな物を買ってストームソーダーのもとに戻った。




プロットを大幅に変更したので矛盾やおかしいところがあるかもしれないのでもし見つけたらご報告お願いします。
それと、こうしたほうがいい、という意見もあると嬉しいです。

ちなみに今回の話は実は本編開始より半年以上前になっております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。